死神の幻想   作:エヌラス

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お久しぶりです!投稿1ヶ月も空いてしまった……
お仕事が忙しい故に執筆する時間が取れないんですよねぇ。土日とかほぼ死体のような過ごし方してますしおすし……。

あ、ちなみにユニゾン豊後は私の記憶から消えました。



101.熾天使(セラフィム)

 

「……ヒユサン、貴女は」

 

聖隷により身体まで分解されかけていた浦原が、膝で立ちながら目の前に立つヒユを両眼で捉える。彼女の傷は正確に言えば治っているようには見えなかった。今も女性が背負うべきではないほどの傷が見えて痛々しい。

 

だがその傷から一切血が流れていなかった。正確に言えば百均で売られているキラキラしたスライムのような謎の液体がその傷を覆い尽くしている。

 

背中には片方だけ翼が生えその姿は先程キルゲ・オピーが魅せた滅却師完全聖体にも捉えられかねなかった。

 

『なんです……?その姿は』

 

ヒユに傷を負わされ、蹴り飛ばされたキルゲが舞う砂をサーベルで振り払いヒユ達がいる方向へと振り向く。

 

その身体、そして声は既に先程のような神聖さは無く、もはや化け物そのものになっていても過言では無い。そんな印象を与える。

 

「ヒユさん……今の敵サンは虚を吸収した瞬間に大きく姿が崩れています。もしかすればアヨンと呼ばれている、吸い込んだ力を使いこなせていない可能性があります……」

 

敵に図られないように小さな声でそうヒユへと伝える浦原。ヒユはキルゲの方向へと身体を向けながらもしっかりと「はい」と返事をした。

 

「浦原さん、井上さんと茶渡さんをお願いします。私は私の力で、あの人を退けてみせます」

 

「……頼みます」

 

この現状では自らの斬魄刀を振るえないと考えていた浦原は大人しくヒユへと託す。あのような姿となったキルゲには自らの卍解を使うしかない。だが浦原の卍解は……使えない。味方さえも巻き込む可能性があるからだ。

 

『お話は終わりですか?』

 

「ええ、終わったわ」

 

目を細めキルゲが口を開く、ヒユは一切物怖じを感じさせない素振りで言葉を返した。

 

『その力、気になる事はあり〼が……』

 

そう言うと、右手と一体化した自らのサーベルを上へと向ける。

 

『卍解……と言いましたね』

 

「ええ、これが私の卍解……”熾天使”」

 

『天使、ですか。随分と大それた名前をしてい〼が――』

 

そう言うとキルゲはサーベルとは違う方の歪な左手に何かを持っていた。それを見た瞬間……浦原は全身から血の気が引いていく。

 

(なんだ…あの金属盤は…!?だがあれは嫌でもわかるっ……!!)

 

『貴女のその力ァ!!私が星章化し、私の力の一部へと……』

 

そう言い金属盤をヒユへと向ける。ヒユはどのような攻撃が来ても対応できるように腰を低く落とし大剣を両手で構える。浦原も警戒する。

 

 

 

「……?」

 

 

『なんだ……?』

 

 

だが何も起こらない、大量の矢が放たれる訳でも無く、聖隷のように様々なものを吸い出す訳でなく、金属盤は光さえせずキルゲの手の中へとあった。ヒユも浦原も何が何だか分からず困惑するがそれと同じ……いやそれ以上にキルゲは動揺していた。

 

『何故だっ!?何故奴の卍解を星章化出来ない……!?』

 

何度も何度も叩きつけるようにヒユへと金属盤を向けるキルゲ、だが何度試しても金属盤は一切反応せず、キルゲの焦りと冷や汗だけが増えていく。

 

『何故だ……!?”黒崎一護だけでは無いのかっ”……!?』

 

その言葉に浦原やヒユが困惑する。キルゲは困惑するが自分がなにか口走っては行けない事を言ったのか口を噤む。そして先程までの無表情へと戻る。

 

「どうして一護さんの名前が?前の人もそうだったけど、貴方も一護さんを知っている」

 

『知っていたとて貴女に伝える必要はありませんよ。それに星章化出来ぬからと侮らない事です。例え出来なくとも貴女の”それ”を無効化する手段など幾らでも思いつくというものッ!!』

 

再びそう高らかに叫び再び腕と一体化したサーベルを高く振り上げる。次の瞬間眩い光が明滅しキルゲへと集まる。再び虚圏の砂や岩が霊子となり吸収されていく。

 

『”聖隷”!!貴女がどのような力を持っているかは知りませんが、陛下の障害になるというのならここで倒させてもらい〼!!』

 

「……」

『なっ…!?』

 

叫ぶキルゲに対し、ヒユの第1歩はあまりにも静かだった。地面を滑るように右足を前へと出した瞬間――――――ヒユの姿がその場から消えた。

 

「やぁっ!!」

 

『ッ!?』

 

次の瞬間、瞬きをする暇もなく突如背後へと姿を現し大剣を振りかざすヒユ。化け物を吸収し凄まじい力を手に入れたキルゲだがその速度に一瞬反応が遅れ、頭の上にある天使の輪のようなものが破壊される。

 

だがそのまま頭をぶち割るつもりで振りかざされた大剣は惜しくもキルゲのサーベルに阻まれ激突する。火花を散らし2人の顔を照らす。

 

「その頭の輪っか壊せば、聖隷ってやつも!!」

 

『それがわかったところでっ!!』

 

「でも破壊はできた!霊子も元に戻ってる、当たりって事よね!」

 

『貴女と言う人はッ!!』

 

キルゲがそのままサーベルを押し出し力比べに負けたヒユは大きく上空へと放り投げられる。だが翼を拡げすぐさま体勢を立て直したヒユ。同時にキルゲも凄まじいスピードで上空へと上がり追撃に出る。

 

「ふっ……」

 

まるでそこに地面があるかのように上空へと着地するヒユは下から迫るキルゲに攻撃を仕掛ける。

 

『ッ!!』「っ!」

 

再び激突――――次の瞬間、上空で凄まじい速度同士で動く2人がひたすらに激突しあい刃を交える。

 

(なんて速度だ…一護さんの天鎖斬月にも匹敵する速度。ヒユサン……貴女は一体何を見て、どんな力を身に付けたと言うんですか…)

 

その戦いを辛うじて目で追う浦原、そう思いながらヒユを見る。片翼の死神という矛盾をその身に宿しつつ制服を身に纏うヒユ――――だがその手に握られた大剣はそれらを持っても隠しきれぬ物騒さであった。

 

「…?阿近サン…?」

 

それと同時に浦原喜助の携帯が鳴り響く。その着信相手をみた瞬間浦原の顔が険しくなった。

 

 

 

 

 

「はぁっ!」『ッ!!』

 

両手で振るった大剣がキルゲの腹をぶち抜き、地面へと叩きつける。だが次の瞬間、その空中にヒユの姿は”存在”せず、気が付けば地面でボロボロになりながらも立ち上がるキルゲに追撃を叩き込んでいた。

 

『クッ…ウゥ!!!』

 

回避と防御に全てを注ぐキルゲ、今の彼は静血装と呼ばれる技を使いヒユの攻撃へと対応していた。

 

(この速度に攻撃力、全てが情報に載っておらず、更に厄介だ。静血装を全開にして漸く対応出来ているッ!!)

 

再び後ろへと弾き飛ばされる。そして瞬きをした瞬間再び目の前からヒユの存在が消え――――その一秒後にはキルゲの背中に十字の傷が刻まれていた。

 

『バッ……ガァッ!!』

 

(こちらが反撃しようにも静血装を全開にしていれば攻撃用の動血装を発動できない……だが静血装が無ければこの攻撃は防ぎきれない……そしてこの厄介さを後押しするのは――!!)

 

その間にも四方八方からの斬撃に襲われ、防御と回避に全ての力と神経を注ぐキルゲ。目で追おうとしても存在が消えているに等しい速度で動く彼女は追えない。

 

(霊圧に探りをいれても霊圧事消えるッ!!前にあったはずの霊圧は瞬きした瞬間消えるのだ。まるで最初からそこに存在していないかのように……そして次の瞬間には後ろにある。あれだけの霊圧、一ミリでも見逃すはずがないッ!!)

 

今ここで自らが倒されると感じたキルゲは、歪な翼を盛大に拡げ逃亡に全てを入れる。

 

(これ以上の戦闘は厳しい、それに援軍を要請しようものなら……ならばせめてこの事を陛下へと――)

 

そう考え再び速度をあげる、この時点で並大抵の人物なら着いては行けぬ程だった。だか…………

 

 

「逃がさない」

 

肩を掴まれ、無理矢理その場へと押さえ付けられるキルゲ。気が付けばヒユが右肩を掴んでいた。そのまま地面へと投げ飛ばす。

 

 

『クッ…!!』

 

「っ!」

 

落下していくキルゲを追い掛けるように下へと飛ぶヒユ。だが真横に着いた瞬間――その場から無理矢理体勢を変えサーベルを振るう。

 

ヒユは突如の攻撃に防御態勢をとるが下からすくいあげるように放たれた一撃はヒユの手から斬魄刀を奪い取った。

 

「っ、この…!!」

 

『やはり所詮はッ!』

 

最後の空中戦の一撃はキルゲがサーベルを振りかざすことで終わった。だがその一撃は身を捩り回避される。

 

「っ!」『ッッ!』

 

同時に虚圏の砂を足で踏みしめる。ヒユの斬魄刀はキルゲの背後へと突き刺さり、取りに行こうにも必ずキルゲを越える必要がある。

 

だが相手もそれをわかっているようで、まるで自らの体で隠すかのようにヒユの前へと立ち塞がっていた。

 

『貴女のその力、幾らか喰らって分かりましたが霊圧事消すことは……成程今迄見ないタイプときましたか』

 

「……」

 

『気配を消す瞬間移動のようなものですね、それを巧みに扱うことで連続して瞬間移動を行い、私をも撹乱させて見せた』

 

その言葉にヒユが俯いた。図星を当てたのか……そう考えたキルゲが笑う。

 

『だがそれは斬魄刀の恩恵があればこそッ!今の貴女はただ片翼というだけのもの。恐れるに足りぬ――――――』

 

「もういい?」

 

『なっ………………』

 

その一言がヒユの口から冷たく放たれる。その言葉を聞き取り、脳がその意味を処理する前に再びヒユは消えていた。

 

「はぁっ!!」

 

『ガッ……!?』

 

次の瞬間、霹靂のような速度で繰り出される一閃がキルゲを襲った。ヒユの手には斬魄刀が握られており、いつの間にかキルゲの背後から回収されて再び手に納まっていた。

 

(何故ッ……!?何故何故何故!?)

 

目の前で次々と起こる現象に怒りと焦りで顔を歪ませるキルゲ、それに対して佐原ヒユの顔は至って冷静だった。見惚れる程美しい羽根を携え目の前に立つヒユにキルゲは耐え難き屈辱を味わう。

 

「ッ!!」「はぁっ!!」

 

己のサーベルと少女の斬魄刀から繰り出される剣戟、、次から次へと四方八方から迫る大剣を只管に受け止め、躱し、時にはカウンターに移ろうとする。だがそれよりも早く彼女の足が、大剣を持たぬ方の腕が、それを阻み……防御に徹するしか出来なくなっていく。

 

(私は自らの力の全てを解放し、それに加えあの化け物をも取り込んでいる)

 

静血装を全開にし、彼女の攻撃を防ぐ。だが100%防げた訳ではなくキルゲの肌に傷が付く。痛みに、怒りに、キルゲの顔が歪む。

 

(なのに…なのに何故ッ!!!)

 

『なっ……!?』

 

目の前から少女が消え、すぐさま霊圧などを辿るキルゲ。だが霊圧の痕跡も移動あとさえ見つからず――――――

 

「うううぁぁっ!!!」

 

次の瞬間、自身の頭の上に現れた少女の大剣が、キルゲのサーベルを捉えた。再び拮抗するが、じりじりと僅かではあるが上から攻めているヒユが押し出そうとしていた。

 

(防御の静血装を全開にしていればまだ攻撃が防げる、だがそれだと攻撃用の動血装が使えないっ!動血装無しの攻撃が佐原ヒユに通じる様には見えない。だが静血装無しではあの斬撃は防げない……!!)

 

じりじりと空中から引き摺り下ろされそうになるキルゲ。

 

(奴の卍解は星章化出来ない、情報によればそれは黒崎一護だけだったはず……!とんでもないイレギュラー、不確定因子だ。)

 

キルゲ・オピーが陛下から承った命令は自らの命を賭して黒崎一護を足止めする事。だが黒崎一護は依然として現れず作戦は瓦解。それに突如現れた不確定因子が何かの拍子に目覚め、自らに牙を剥く。

 

(だが黒崎一護が現れずとも私のすべき事はただ1つ!!)

 

 

一体どこからそんな力が湧いてくるのか――先程まで押されていたはずのキルゲが徐々にヒユの斬魄刀を押し返していく。驚愕するヒユとは正反対にキルゲは叫ぶ。

 

『私は私の命を賭して貴女を足止めするッ!!』

 

次の瞬間、閃光が弾け――ヒユは押し返されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まずい……)

 

キルゲに押し返されたヒユは、表面上は平静を取り繕っているものの内面はとっくの昔に限界を越えようとしていた。

 

こうしている今も視界は所々明滅し、手に握る斬魄刀を落としてしまいかねなかった。

 

(霊圧もかなり消耗してる、この移動……体力と霊圧の消耗が激しいんだ……)

 

彼女の斬魄刀の力、未だ持ち主である彼女ですらその真価を理解しきれていない力。

 

可能性の塊である反面、どのような副作用が潜んでいるか――それは彼女にすら理解出来ていなかった。

 

(敵はまだ戦う姿勢、私だって負けてられない。一護さんの世界を護る……!!それが私の今の1番やるべき事っ!!!)

 

明滅する視界を無理矢理拭い、副作用に怯えそうになる心を奮い立たせ抜けかけていた力を込める。

 

「やはり貴女の卍解は星章化出来ませんか」

 

「……なんでそこまで卍解に拘るの?、前の人もそうだったけど、どうしてそこまで」

 

金属板を再びヒユへと向けていたキルゲが、今度こそ諦めたのか首を振りながら金属板をしまい込む。その事にヒユがどうも気にかかりキルゲへと聞く。

 

「それを答える必要が私に?」

 

 

 

「卍解が、怖いとか……?」

 

 

 

「〜〜っ!!!そんな訳あるかァ!!!!」

 

 

ヒユの、何となくそう思っただけの言葉だった。だがそれはどうやら相手にとって地雷のようなものだったらしく、凄まじい暴風とともに霊圧が吹き荒れる。

 

「我ら”見えざる帝国”に恐れるものなど――――――――」

 

「っ……!?」

 

激昂し、再びこちらへと突っ込もうとしたキルゲの胸元に、突如として穴が空いた。口をパクパクとさせていたキルゲだが、そのままその場に倒れ込む。

 

 

 

 

「ヒユサン。どうやら緊急事態みたいッス。尸魂界から貴女の力を貸して欲しいと」

 

気付けば、杖の先端をこちらに向けて浦原喜助が立っていた。察するに先程の攻撃は浦原喜助が行ったものなのだとヒユはすぐさま理解した。

 

(凄い……鬼道をあの一瞬で)

 

驚愕に包まれたヒユだが次の瞬間――

 

「……っ」

 

気が緩んだのか限界を迎えたのか、それともその両方か……ヒユの卍解が解け倒れ込みそうになる。だが斬魄刀を地面へと突き刺し何とか倒れることは回避する。

 

「はぁ……っ、はぁ……」

 

「大丈夫ですか……!?」

 

直ぐさま浦原が駆け寄りヒユを支える。茶渡や井上もこちらへと駆け寄っていた。

 

「かなり霊圧を消耗しています……、やはり今の貴女では……」

 

電話がまだ繋がっているのだろう、再び尸魂界と連絡を取ろうとする浦原喜助。今の佐原ヒユではダメだと、やはりこの人は優しいな……と感じる。

 

だが、ヒユは肩で息をしながらその携帯端末を持つ。

 

「……大丈夫です、大丈夫だから。」

 

「ヒユサン……」

 

ヒユを見て浦原喜助は出そうになる言葉を抑える。今の彼女は恐らく言っても聞かないだろう、1度言えばその言葉を最後まで果たそうとするその姿に黒崎一護と姿が被る。

 

 

 

 

 

 

「わたしを、尸魂界に連れて行ってください」

 

 

 

佐原ヒユは、次の戦場へと赴こうとしていた。




オリジナル卍解を考えてたのはいいんですけど、改めてBLEACH作者様の圧倒的なセンスを感じた。ほんとにすごいよあの人、千本桜景厳も天鎖斬月も何食べたら思いつくんだ。

色々とノートに書いて悩みに悩みまくったんですけど、最終的に熾天使(セラフィム)に落ち着きました。

彼女達の使うセラフ要素を組み込みながら、天鎖斬月とかと並べられるような漢字にしたいなと思ってて色々調べあさってると熾天使にたどり着いたんですよね。

見た目は天使のような翼を生やしたと思って下されば想像しやすいかなと……俺自身絵が書けないのでそこは想像を膨らませるしかありゃせんぜ。

ちなみにもっとイメージしやすくするとデスティニーガンダム的な感じですよ。

能力に関しては分かりづらいかもですが霊圧を使った座標ずらし移動的な感じです。語彙力が無さすぎて伝わりにくいかもですが、ヘブバンの世界で言うデフレクタを使ったテレポートだと思って下さればいいかと。それを卍解レベルに持っていってます。

ここの活躍だけでは卍解っぽくないかもしれませんが、なぜこれが卍解レベルだと言えるのかなどは後々のお話です。

私達が見ている彼女の熾天使はまだ生まれたばかりの天使。何に触れてどう進化していくのは__これからの物語しだいとなっております。




〜作者X宣伝〜

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