死神の幻想   作:エヌラス

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お久しぶりです!!
最近執筆欲が完璧に消え失せてて全然書けなかったんですよね……、仕事もちょうど繁忙期に入って余計に忙しくて……




102.合流

 

 

「……なん、だと?」

 

山頂付近から一護が、フラットハンドが存在していた方向を向いた。だが目の前に移るのは景色のみ――――そこにいたはずのフラットハンドは突如としてその姿を消していたのだ。

 

「フラットハンドが消えてる……!」「どないなっとるんや……!」

 

可憐やめぐみも、目の前の光景に唖然としていた。

 

「司令部!こちら茅森!」

 

目の前の光景、それに突如行われたジャミングによる司令部との通信の断絶。様々な訓練や実戦を経てきた月歌でもかなり混乱していた。

 

「落ち着け月歌、ったく次から次へと想定外が続くな……」

 

「ユッキー」

 

「フラットハンドはとりあえず後回しだ、まずは司令部との通信回復を急ごう」

 

「……でも」

 

月歌はそこで口を噤んだ、ユキも直ぐにその理由がわかり目を伏せる。

 

「言いたいことは分かる、だが先に司令部との通信を回復させておくべきだ。フラットハンドがもし動き出してほかの部隊が被害を受けている可能性だってある」

 

ユキは冷静に、物事を捕える。今の月歌に必要な判断を与えていく。

 

「……わかった。」

 

「2人もそれでいいか?」

 

「ああ」「……」

 

一護は返事をし白哉は静かに頷いた。それを見たユキはひとまず2人から目を離す。

 

「司令部、こちら茅森……!」

 

再び電子軍事手帳へと声を掛ける月歌。

 

『……ら司令部七瀬』

 

「よし、繋がった……!」

 

微かにノイズが入ったりはしているもののひとまずは司令部との通信が回復した。それにその場にいた全員が少しばかり安堵する。

 

『ご無事ですか?』

 

「ああ、被害は受けていない」

 

『了解、31Aの現在位置はポイントベータあたりで間違いないでしょうか』

 

「そうだ、後ここからフラットハンドが確認できない。まるで消えたかみたいに居なくなってる」

 

「……了解しました。司令官と繋ぎます」

 

七瀬では無く手塚司令官が呼ばれた。その事の重大さを嫌でも理解させられる。

 

『こちら司令部手塚よ、皆無事で何よりだわ』

 

「こちら茅森、さっきも言ったけどフラットハンドが確認できない。この先の行動支持を求める。」

 

そこからしばらく月歌と手塚司令官の2人は今後の展開などについて話し合っていた。それらは全て一護達の手元にある電子軍事手帳にも共有されており全員の耳に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

『……塩尻峠付近は未だ未開拓のままです。気は抜かないようにね』

 

「……了解」

 

通信を終え、ひとまずため息をつく月歌。その表情は決していいものではなかった。

 

「フラットハンドは監視区域から離れて、前線に出てくる可能性も少ない……か」

 

手塚司令官達も完全な状況把握はまだできておらず、現時点での情報が月歌たちへと渡された。フラットハンドはオペレーション・ベガ開始時刻と同時に移動を開始、そのまま前線を離れていき今ではドームなどに被害を及ぼす可能性も限りなく少ないとの判断を下された。

 

 

 

「それじゃあイージスタワーに行く作戦は……!」

 

タマがユキへと問い掛ける。このままでは一護達の作戦も、月歌達の計画も全てが白紙になってしまう。

 

「オペレーション・ベガ自体が仕切り直しだからな……」

 

ユキも今はどうすることも出来ないのか、歯噛みする。

 

「諦める言うんか」

 

「いや、そうじゃない。まだタイミングはあるはずだ。今は様子を伺うしかない」

 

「そうだな、皆、今はとりあえず命令通り索敵に向かおう」

 

「ああ、31Aが索敵に出ることを他部隊に知らせてから行くぞ」

 

「わかってる」

 

電子軍事手帳を取り出す月歌、和泉達も一先ずは気を入れ直していた。

 

「……この状況、どう捉える」

 

焦りつつも一護は冷静に考えていた。まるでそれを見抜いたかのように白哉が声を掛ける。

 

「どう捉えるも何も、今はコイツらについて行くしかねぇよ」

 

「……」

 

「アイツらが待ってる、だけど今ここで強引に動いて、それを司令部に把握されちまえば確実に俺たちは命令違反だ。それにフラットハンドが原因って確実に言い切るにはちょっとな……」

 

「驚いたな、そこまで状況を把握する力が兄にあったとは」

 

本気で驚いたのか、珍しく目を見開いていた白哉。一護は「テメェ失礼だぞ」と言いつつも、確かに今まで割と突っ込んでたような……と内心感じてしまった。

 

「だがこれからどうする、仮にこのまま居ればフラットハンドは前線から離脱。我々が再びフラットハンドと相見えるにはそれ相応の時間を要するぞ」

 

「……」

 

「兄も感じているはずだ、この感覚を」

 

そう言われ、一護も少し拳に力を込める。どこからこの感覚が溢れてきているのかは把握できないが、嫌な予感のようなものが突き刺してきていた。

 

自分達が居なければ何処かが危ないと訴えかけてくる、思い当たる節は1つしかないが、最悪の予想だけは避けたい。

 

「ああ、ずっとだ。ずっと感じてる。だからといってこいつらの世界がどうなっても良いって訳じゃねぇんだ。俺達が消えた後もコイツらは存在し続ける。俺達のせいで狂わされたなんてあっちゃいけねぇんだ」

 

「……そうか」

 

 

「えー、こちら31A茅森。今から私達は単独で塩尻峠方面に向かい、フラットハンドの索敵を開始する。」

 

その後ろでは、月歌が他部隊に向けて連絡を入れていた。それを片耳に聞いていた一護はそれを白哉へと伝える。

 

「それにまだフラットハンドとは会えないって決まったわけじゃない、これから俺たちはそいつの索敵に向かうんだろ。だったらそこで見つけ出して……それからはどうにかなるはずだ」

 

「……捕らわれてる訳ではあるまいな」

 

その言葉の意味、今の一護は直ぐに理解した。そして理解した上で首を横に振った

 

「もう俺は捕らわれねぇ、アイツらにも背中を押してもらったんだ。それに恥じないように前を見て進む。今の俺にできるのはそれだけだ」

「そうか」

 

その言葉を聞いた白哉は納得したのか目を伏せ、今にも動き出しそうな足をそっと戻した。

 

「悪ぃな、またアンタにも付き合わせちまう」

 

「いつもの事だ」

 

ふっ……と笑みがこぼれる一護に、白哉がいつものように答える。その顔はいつかのように穏やかになっていた。

 

 

 

 

 

『こちら30G白河だ』

 

通信を終えた月歌が、一段落したであろう少し離れた場所にいた一護達を呼び戻そうとした時だった。

 

「ユイナ先輩?どうしたの?」

 

『月城と蔵、2人をそちらの援護に回す』

 

突然言われた言葉に驚く月歌、まさかこれ程早い段階で合流出来るとは思っていなかった。

 

『ああ、これは本人達の希望なんだ。それに訓練時よりも状況は厳しいものと推測される。最前線の31Aの援護が多いに越したことはないだろう、既に司令部から承諾は受けている』

 

「ユイナ先輩……」

 

『それにあの二人は現セラフ部隊では最強だ。頼りにしてやってくれ』

 

「……わかった、ありがとう。でも人数が減ってそっちは大丈夫?」

 

こちらの援護が増えた事は素直に嬉しい、それに月城と蔵ならば都合がいい。だが30Gの中でも上位2人がいきなり抜けてしまえばいくらユイナ達でも厳しいではないだろうかと月歌は考えた。

 

もしそれで30Gがやられてしまえば、おそらく一生消えない後悔になる。

 

『私達は他の部隊と合流して作戦に当たる、心配するな』

 

「わかった、その申し出有難く受けさせてもらうよ」

 

『了解した、それからこれは蔵からの伝言だ。合流地点は麦草峠だそうだ』

 

「了解」

 

塩尻峠とは真逆……敢えて月歌はそこに触れなかった、恐らく真逆な事はユイナも理解していることだろうがそれでも蔵を信じてこうして伝言を月歌へと伝えている。

 

ならばそれを信じて月歌も向かうだけだ。

 

「じゃあユイナ先輩――」

 

『月歌』

 

通信を切ろうとした月歌を、いつにも増して真剣なユイナの声が止めた。

 

『自分のするべきと思ったことをするといい、それが例えどのような結果を招いたとしても、自分の行いを信じて最後まで貫き通せ』

 

「――!!」

 

『既にそちらに合流している朽木、そして黒崎一護もだ。この通信はお前と私だけにしか聴こえていないが、あの二人も充分に気をつけてくれ』

 

「……了解、ユイナ先輩も気をつけてね」

 

『ああ、この作戦が終わったら、一護達も含めてまたぱーてぃをしよう。月歌』

 

「うん」

 

その言葉を最後に通信が途切れ、電子軍事手帳からユイナの文字が消えた。

 

「……やっぱり凄いな、ユイナ先輩は」

 

そう呟いた月歌の声を、聞き取るものはこの場には居なかった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「いいんですの?」

 

「いいもなにも、私が言えるのはこれくらいだ」

 

月歌との通信が終わり、再び仲間の方へと振り向いたユイナ、先程の確認の言葉は同じ30Gの菅原千恵の言葉だった。

 

「その感じだと、今回も”天啓”ですか?」

 

「……ああ」

 

 

(前回の天啓はオペレーション・プレアデスの時だった。最後の力、光の柱……だがその天啓は外れた。私の人生で初めて天啓が外れた時だった)

 

今まで一度も外れたことの無い天啓、それがその時……白い柱というものは現れず、代わりに黒い柱が立った。そして全員生き残って帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

(これも黒崎一護が及ぼす影響なのだろうか、ならば今回の天啓もまた、彼の手によって……)

 

 

未来。それを指し示すように映る天啓。そしてそれを打ち壊す者。

 

白河ユイナは、未だ見ぬ未来へ思いを馳せて、この場に立っていた。

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