死神の幻想   作:エヌラス

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お久しぶりです。前回の更新から2ヶ月も経ってしまった…申し訳ない。

それにしてもヘブバン、メインストーリー更新が全然音沙汰ないですねぇ…ゲームシステムもかなり変わったみたいで慣れるまで一苦労……

このまま更新止まってたら俺に追いつかれますよ(!?)


103.侵入

 

 

「そろそろ合流地点だな……、もう着いてるかな」

 

ユイナから伝えられた合流地点を元に31Aは塩尻峠とは真逆の場所、麦草峠付近へと歩みを進めていた。この場所へ来るまで1時間半という時間を費やしているが司令部からは何も無かった。

 

恐らく未だ混乱は続いているのだろうと予想する。そうでなければここまでの行動は出来なかったはずだ

 

「一護……交代してくれんか」

 

「ついさっきまで俺が持ってたじゃねぇか、交代したばっかだぞ……」

 

後ろの方では、タマを巡ってめぐみと一護がわちゃわちゃしていた。峠ということもあり体力をかなり消耗していた。ほかのメンバーは耐えているものの最初に倒れたのはタマだったのだ。

 

それをめぐみが抱えて、しばらくしたら一護が抱えて、まるで小学生が放課後にやるランドセル背負いのようにここまでやってきていた。

 

「ウチかてか弱い乙女やで」

 

「……はっ」

 

「なんで笑いおってんコラ喧嘩売ってんのか?」

 

そんな2人を微笑ましく見守る可憐とつかさ、だが2人もかなり体力を消耗しているのか疲労がチラチラ見えていた。

 

 

 

「相変わらずのろまだね、待ちくたびれるかと思ったよ」

 

「聞いてなかったぜ、蔵っち」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、全員がそこで足を止めた。目の前の少し開けた場所には月城と蔵の2人が立っており、戦場でありながら2人には凄まじい余裕の気配が渦巻いていた。

 

「ひとの親切を邪険にするもんじゃあないよ、可愛い後輩を助けてあげようと部隊内工作までしたのに」

 

「一言くらいあってもよかったじゃん……」

 

「なんにせよ、蔵がいれば戦力は確実に上がる」

 

相変わらず掴みどころの無い蔵の態度に苦言する月歌。だが月城の言う通りだ、このふたりが居れば恐らく向かうところ敵なしと言っても過言ではない。

 

「ああ、瞬きする間もなく股間を指先でなぞられて匂いをチェックされたあのスピード、尋常じゃなかった。頼もしいぜ」

 

「なんだそのエピソード!!」

 

「……」

 

「それが蔵の恐ろしさだ」

 

とんでもエピソードを披露する月歌に和泉が高速のツッコミを叩き込む。後ろでおぶられてただけのはずのタマに水やりしていた一護は聞こえていたが聞いていないフリをした。

 

多感な時期の女ってのは本当に分からない。一護は未だ会うことがないであろう2人の妹を思い浮かべつつ、しみじみと思ってしまった

 

 

――――――

 

 

 

「それで、フラットハンドの索敵なんだけど……」

 

「ちょっと待った、提案がある。この混乱に乗じていっそイージスタワーに向かうのはどうだい?」

 

少しばかり休憩を挟み、月歌が蔵達へと今後の展開を話し合おうとする。だが蔵から出た提案は意外にもイージスタワーへの潜入だった。

 

「……知ってたのか?」

 

「月城ちゃんの事ならなんでもお見通しさ、どれだけの付き合いと思ってるんだい」

 

「やはりか……不覚」

 

(おしどり夫婦かコイツらは……)

 

傍から見ればそう見えてもおかしくないなと思いつつ一護は話に耳を傾ける。

 

「確かに悪くないな、作戦が中断してる今、イージスタワーに向かう時間が作れるのは大きい」

 

「ほら、ハッカーのユッキーだってそう言ってる」

 

「うーん……でもなぁ」

 

「月歌が危惧するのも分かる、何せ諏訪湖周辺はクリアになっていないからな。もしキャンサーに囲まれてその上フラットハンドにでも出くわせば……目も当てられないぞ。それにフラットハンドの移動方向は北西、イージスタワーと合致する」

 

「おー!流石ユッキー!!私の言いたいこと、全部理解してくれてる!!」

 

「……まぁな」

 

少し小っ恥ずかしいのか、ユキが眼鏡を触りながら俯く。月歌はそんなユキを見つつも未だ決断できずに悩んでいた。

 

「どの道リスクがあるのは変わりねぇ、今動くしかねぇんじゃねぇか?」

 

「……一護」

 

「予行練習はあれ程したんだ、今のお前らなら何の苦労も無く辿り着けると思うぜ」

 

「……」

 

「作戦から抜けるならフェーズ7の開始だ。決めるのは月歌だ、どうする?」

 

全隊員の視線が月歌へと集まる、月歌自身は暫く悩む素振りを見せたが

 

(自分のするべきと思ったことをするといい)

 

ユイナの言葉が月歌の中で反復する。それが背中を押したのか――

 

「わかった、イージスタワーに向かおう」

 

 

最終的には、全員でイージスタワーに向かうことになった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「そろそろイージスタワーが見えてもおかしくない頃だな」

 

麦草峠から休むこと無く走り続け暫くした時、小さな街並みを抜けながら月歌がそう呟いた。

 

「ついに……」

 

あそこに行けば東城つかさの母親の死の真相が分かる。月城最中の長年の謎を解く鍵がある。

 

この場所は、2人にとっても、少なからず月歌達にとっても切っても切れない何かがある。

 

「あたしが持ってる偵察分析データはあの湖畔手前までだ、そっから先は未知数だ。気をつけてくれ」

 

「わかった、こっから先は慎重に行こう」

 

そう言って進み始めた、そしてユキが言っていた箇所を超えた瞬間だった。

 

「なんだアイツ……、明らかにやべぇぞ!」

 

並のキャンサーとは違う大きなサイズ、両腕には鎌のような武器が着いており、月歌達を視認した瞬間に2つを擦らせ金属音を響かせた。

 

「やるしかない、もうイージスタワーは見えてるんだ!正面突破で一気にくぐり抜ける!!あたしらでデフレクタをぶっ壊す、一護後は頼んだ!」

 

「わかった!――――卍解!!」

 

見ただけでわかる、並大抵の技では恐らくこいつの命を全て削りとるのはむずかしい。それに、月歌達の期待を裏切る訳には行かない。そのための卍解。

 

『――!!』

 

両腕の鎌を大きく開き、こちらを斬り刻もうと構えるキャンサー。だが遠方からのユキとつかさの射撃が鎌を捉えそのまま相手の体勢を少し崩す。

 

「ヒヒッ!!!」「どらぁ!!」

 

その隙逃さず、可憐――カレンが右脚にダメージを与え左脚をめぐみの大剣が大きく捉える。

 

「こりゃあたいらの出る幕は無いね」

 

「そのようだな」「……」

 

セラフを召喚し、一応待機していた蔵と月城だったが、31Aの連携技を見た瞬間に少しばかり気を抜いた。白哉も刀にてを起きつつも静観の姿勢をとる。

 

「参ります!!」

 

「タマ!ウチ使い!」

 

「はい!」

 

頭を捉えようと駆け出したタマを、めぐみが大剣を構えて呼び込む。まるで跳び箱の跳躍板のような役割を果たした大剣を踏み台にし、タマが空中へと跳ね上がった。

 

「思ったより高いっ!!――でもここからなら!!」

 

「行こうおタマさん!!」

 

「はい!!」

 

微笑み横に並んだ月歌と、タマが交差するように斬撃を叩き込み、完璧に体勢を崩し――デフレクタがはじける音がした。

「一護!!」「一護さん!!」

 

 

「月牙――――」

 

タマと月歌からの合図と同時に、卍解し天鎖斬月を握った一護が凄まじい速度で駆け出していた。だが相手のキャンサーもデフレクタを壊された事に一瞬だけ動きが止まったが、即座に一護へとカウンターの体勢を取ろうとする。

 

「――天衝ォッ!!!」

 

それよりも早く、霊圧を込めた斬撃がキャンサーを襲いそのまま地形をエグりとっていく。

 

『――――!!!!!』

 

月牙天衝を喰らい、そのまま為す術もなく討伐されたキャンサー。悲鳴を上げながらもそのまま砕け散ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず凄いねぇ、アンタのその技」

 

「うむ、今迄に何回か見たが、我らに真似できそうには無いな」

 

戦闘を終え、再び集合した31Aに、月城と蔵、白哉の3人も合流する。

 

「お前らには真似出来ねぇよ、てかされたら俺のアイデンティティがなくなっちまうだろうが」

 

「そういやそうだね、アンタそれしか出来ないもんね。朽木から聞いたよ」

 

「白哉テメェ……」

 

「紛れもない事実だ」

 

「テメェ……」

 

「……1つの技を極限まで研鑽し高める、それもまた戦い方の1つというものだ。」

 

「月城、アンタは分かってくれるんだな」

 

散々な言われようからのこのような言葉はなんともまぁ心に染みる。そう思いつつ一護は頷く。

 

「我は不器用な故ひとつの技を磨きあげることしか出来ぬ。黒崎一護、我と同じなんだろう?」

 

グッと拳を握りこちらにガッツポーズのようなものをする月城、一護は励まされているのか自分も不器用だと思われているのか、そんな様々な感情が入り乱れたままの顔で――

 

「おう……ありがとな」

 

そういうことしか出来なかった。大半は少し離れたところに立っていた蔵のせいだが……まるで月城が励ましてんだから感謝しろよオラ、それ以外の言葉喋ったら分かってんだろうな?と見て取れる表情をしていた。

 

年頃の女性ってわかんないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……タワーの近くまで来れた。戦闘もこれで一段落かな?」

 

キャンサーを退け、月歌達は漸くイージスタワーの麓へと到着した。

 

「敵影なし、暫くは大丈夫そうだ」

 

そう言って蔵が警戒態勢を解く、一護は未だ卍解のまま姿を保っていた。

 

「想定よりもだいぶ敵が少ないから、ありがたいね」

 

「この後はどうするのだ?」

 

((アレで想定よりも少ないから、ありがたいんだ……))

 

蔵のさり気ない強者発言にその場にいた月城、白哉を除いた全員が一斉にそう思考する。

 

「とりあえず交代で休憩取りながら周囲警戒かな。ユッキーはイージスタワーのクラッキングお願い」

 

「了解。」

 

「しかし……」

 

「気味が悪いくらい綺麗だねぇ、イージスタワーってやつは」

 

そう言いながらイージスタワーの周りを見渡す、言われてみれば確かに気味が悪い。周りは人の手が付いておらず荒廃が進んでいるのに、タワーのバリアが貼られている箇所から先はまるで定期的に人の手が加わっているのかというくらいに綺麗だった。

 

「……外に付いてるメンテナンスハッチも、とんでもない設備だそこれ」

 

瓦礫を避けつつ歩いた先に、メンテナンスハッチがあったようで、和泉が早速中に入っている。

 

「今でも電力が届いてる、こりゃ感動もんだぞ」

 

そう言いながら電子軍事手帳などを取りだし早速作業へとかかる。月歌との話も終わったようでこちらへと歩いてくる。

 

「ユッキーが解除するまで、ここをなんとでも死守しよう。もちろん軍にバレないようにね」

 

「ああ」

 

「しっかし、和泉はすごいな。ウチには何してるか全然分からんわ」

 

「私も……ゲームとは全然違う」

 

「空間ディスプレイを使って、動作プログラムを模式化してる……よくあんな高速演算についていけるもんだ」

 

全然理解していない月歌や逢川達とは打って変わって、蔵は感心するように和泉を見ていた。

 

「わかんのかよ、ああいうの」

 

意外だなと言わんばかりの顔をしながら一護が聞く。

 

「ちょっとだけだね、セラフ部隊にも一応情報収集訓練はあったもんだ」

 

「うむ……そんなものもあったな」

 

「もなにゃんはどうなの?」

 

「……さっぱりだ」

 

「よく出された課題を一緒にやったもんだよ」

 

「昔の話だ」

 

イタズラするようにほほ笑みかける蔵、月城は珍しく顔を背けて小さな声を漏らす。そんな光景を微笑ましく見てしまう一護。その視線に気がついたのか、月歌がこちらに話を振る。

 

「一護と白哉は?」

 

「私はその様なものを学んだことは無い……」

 

「俺もわかんねぇな……」

 

「……予想はしとったな」

 

「一護さんは分かるけど、白哉さんは普段から和風っぽいもんね、どんな生活してたんだろう」

 

「凄い敷居が高い家の出身とか……?」

 

東城の憶測に一護が苦笑いする。

 

確かに白哉やルキアが居る朽木家は尸魂界の中では四大貴族というものの1つではある。

 

(俺も偶にアイツらがすげぇってこと思い知らされるんだよなぁ)

 

尸魂界の飯屋が一生タダになるチケットみたいな訳の分からないものを貰ったりもした(もちろん突き返した)

 

でも彼女達には尸魂界なんて説明してもなぁって感じはしていた。卍解とか知ってる時点で驚かないだろうが……それでも困惑だけはさせたくない。

 

「それはさておき、あたいじゃ防御プログラムに引っかかって終わりだね」

 

蔵がそういうと、再び全員の視線が和泉へと集まる。流石の和泉も背中に突き刺さる大勢の視線に気付いていた。

 

 

(やりづれえよ〜!!!!)

 

集中が何とか勝ってはいるものの、背中に刺さるものに対して内心絶叫していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あんたもお節介だね」

 

「んだよ急に……」

 

イージスタワーを解析する和泉の為に防衛網を敷く傍ら、蔵と2人きりになった一護。突如としてお節介扱いされる事に不満気な顔をする。

 

「今回ばかりは、本当にアンタらにとっては何も得がないことさ。月城ちゃんと31Aの独断、軍にバレたらもちろんクビってレベルさ。知らないふりをしてればいいのにって思ったのさ」

 

「……アンタもこうやって着いてきてる、それは多分、月城の事が心配だったんだろ?」

 

「……」

 

それに返事は無いが、二人を見てれば嫌でもわかる。月城がそれに気づいているかはさておき蔵は過剰なくらい彼女を気にかけている。一護の言葉に返事こそないものの、それを肯定だと勝手に捉えて話を進める

 

「俺もそれと同じだ。目を離せねぇからついて行く、そりゃこの世界にとったら一体でも多くキャンサーを倒す方が特になると思うかもしれねぇ」

 

卍解したままの姿で、ぐっと拳を握る。あの日、迷いを晴らした一護には今更悩むことは何も無かった。

 

「でも、それでもアイツらが何かしたいってなら、俺も手伝う。それが軍に背くことになっても……」

 

「……あたいはてっきり、あの中に好きな奴でもいるのかと思ってたけどね」

 

「はぁ?――んなわけねぇだろ?」

 

「……そうかい」

 

呆れたように笑う蔵に一護が怪訝そうな顔をする。

 

(アンタのことを好きな奴は沢山いるけど、アンタはそれに気付かない所かそもそも好意すらない……なんて残酷な一方通行の愛だよ。)

 

――あたしも、だけどね

 

そう付け加えてしまったのは、この鬱陶しいほどの快晴と近くにある水辺……そして剣を通じて分かりあった黒崎一護がいるから、なのだろうか――

 

風が吹く中、蔵は髪をなびかせながら、視界の先にいる月城を見ていた。

 

(月城ちゃん、あたしはね……)




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ではまた次の話で!
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