死神の幻想   作:エヌラス

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パワプロ月歌、当たりません!!
いちごもあたりませぇん!!


107.想いを繋げ

 

 

「っ……」

 

目の前の阿近に叩かれた瞬間、ヒユの脳内は全て困惑に費やされた。そこに怒りは無くただ純粋に驚いていた。

 

「あのな、佐原ヒユ」

 

目をぱちくりさせ頬を抑えるヒユに阿近が正面から目を合わせて言葉を話す。

 

「お前は黒崎一護じゃない、佐原ヒユだ。それに俺達もこの戦いが始まってから……いやそれ以前に護廷十三隊という場所に入ってからいつかは死ぬ、その覚悟を決めて今日まで生きてきたんだ」

 

「……でも!」

 

「亡骸を弄ばれないように配慮してくれた事には感謝する。だが俺達も隊士だ、一死以て大悪を誅す。それが護廷十三隊の意気だ」

 

「阿近さん……」

 

気が付けば、周りの隊士が集まりヒユに目線を送っていた。一人一人目を見配る。全員が全員死に対して恐怖が無い訳ではない。死ぬのは怖いし痛いのは嫌い。人として当然の事だ。

 

だがそれよりも、自らの命を賭しても踏み躙られたくない誇りが、彼ら護廷十三隊の隊士にはあるんだ……

 

(全部私独りで背負う必要なんてない、阿近さんはそう言いたかったのかな……)

 

「……その生暖かい目をやめろ、それに俺はお前に対して他意は無い。ただここを守る為に、1番動けるお前に冷静でいて欲しかっただけだ」

 

調子が狂う――と髪をかきながら話す阿近に思わずヒユが苦笑しそうになる。周りの隊士もそれぞれ口に笑みを浮かべていた。

 

「周りの隊士は俺達でどうにかする」

 

「でも相手はかなり強いです、それに私も速度を上げれば巻き込む可能性も……」

 

「だから舐めるなって言ってんだろ、そこは上手くタイミングを合わせる。お前はあの滅却師を倒す事だけに集中すればいい」

 

それでも尚心配の声を漏らすヒユに阿近が頭に手刀を入れて黙らせる。再び頭部をぶたれヒユが擦りながら抗議の目と共に頬を膨らませていた。

 

「話は終わったか?」

 

「「っ!!」」

 

こちらを見つけたのか、牽制の様にクナイを投げて攻撃するシャズ・ドミノ。

 

 

 

「終わったよ」

 

 

 

それを全て払い除け、佐原ヒユは彼の前に立つ。うーんと、悩む素振りをしつつシャズ・ドミノは辺りを見回す

 

「隊士を逃がしながら俺を捌く技量は素直に褒めてやるよ」

 

「……どうも」

 

「ただ俺もずっとお前に構ってられないんだ、だから早く首をくれよ!!」

そう叫び尸魂界の地面を蹴りヒユへと一気に接近する、ヒユも一先ず防御の体勢をとりカウンターの用意をする。

 

「っ!?」

「なっ……!?」

 

だが次の瞬間、有り得ない現象を2人――否、尸魂界を包み込んだ。その事にヒユも驚愕し、彼女を刺そうとしたシャズ・ドミノも足を止め距離をとった。

 

尸魂界に降り続いた雨が、いきなり、瞬きする間に一瞬で蒸発したのだった。土砂降りだった雨は雲一つない快晴へと変わっている。

 

「これは……」

 

濡れた地面が急速に乾いていき、ピシッとヒビを走らせる。それと同時に急速に喉の乾きに襲われた。

 

「それに、なんだこの霊圧は……」

 

先程、人が飛んで行った方面から凄まじい霊圧を感じ思わずその方向を見てしまう。シャズ・ドミノも珍しく驚きを隠せずに居たようで、ヒユなんだそっちのけになっていた。

 

(見えるのは……炎?)

 

直感でわかった、あの炎が現れた瞬間に尸魂界の全ての水が蒸発したのだと、そして恐らくそんな芸当をやってのけるのは……

 

「護廷十三隊総隊長……山本重國元柳斎っ!」

 

ヒユが名前を口にする前に、シャズ・ドミノが歯噛みするように言葉を放った。

 

「陛下ッ!」

 

その場を離れようとするシャズ・ドミノ、だがヒユはそれを逃す訳でも無く即座に接近。足を2本とも切り飛ばしその場に転がらさせる。

 

「貴様……ッ!!」

 

「行かせる訳がないでしょ!!」

 

相当油断していたのか、それともこの凄まじい霊圧に鼓舞されたのか、再生が一瞬遅れたシャズ・ドミノを再び佐原の斬魄刀が斬り落とす。それと同時に、阿近が解析する

 

「佐原!ソイツは霊子だ!霊子で身体を再生してやがる!!――ぐっ!?」

 

「余計な事を……っ!」

 

「阿近さんっ!!」

 

簡潔に、シャズ・ドミノの力を分析し佐原に伝える阿近。だがそれと同時にシャズドミノのクナイが阿近に何本も突き刺さった。

 

「行け……佐原ヒユ……ッ!!」

 

「……っ!!――はい!!」

 

悲痛な声を漏らし、駆け寄ろうとするヒユを手で制止し、言葉を投げる。何処までもこの人は――そう思いながらも駆け寄る足を止め、後ろから迫っていたシャズ・ドミノを大剣で弾き飛ばした。

 

「ぐっ!!」

 

流石にこれは予想外だったか、防御の静血装を回せずにまともに食らったようで盛大に瓦礫をぶちまけ転がった。

 

「クソ……たかが死神如きっ!!」

 

「はぁっ!!!」

 

瓦礫を砕き立ち上がるシャズ・ドミノにさらに追撃の手を叩き込む。再生しても再生しても只管に斬る。

 

「このっ……!!」

 

いい加減にしろと思いつつも攻撃をかわし、また斬り落とす。

 

「無駄だっ!!」

 

「ぐっ…うっ!!」

 

再生した脚からの蹴りをくらい再びヒユが吹き飛ぶ。やはりこの再生は厄介極まれりだ。

 

いくら経験を積み重ねていても、斬り落とせばどのような生物もその時点で終わり、再び生えるまでにはかなり時間を要するし戦闘中にすぐさま再生というのは難しい。だが目の前の滅却師は斬り落とされることを前提に攻撃をしてくる。

 

油断すれば足、油断すれば手にあるクナイ。警戒する場所が絞れずにいた。

 

この状態じゃ、このままじゃ恐らく決め手がない。一瞬で全てを消し飛ばすくらいの火力を出さなければ……

 

「どうした?もう終わりか?」

 

瓦礫が舞い、煙が立ち込める。ヒユが吹き飛んだ方面を眺めながらクナイを手で遊ばせていたシャズ・ドミノが笑いながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

「……卍解」

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

はっきりと聞こえたその言葉、次の瞬間、立ち込めていた煙が一斉に晴れ、佐原ヒユの卍解-----”熾天使”が露になる。

 

(アレが……佐原ヒユの卍解)

 

その場で応急処置を受けていた阿近が、無理を言って佐原の様子を見る。

 

(黒崎一護の様に衣装ごと変わる卍解、それにあの斬魄刀……大剣もやけに姿を変えている)

 

それに背中に生えている片翼の翼、その見た目は死神というよりも滅却師に近い。傷口からはスライムのような液体が彼女の身体を包み癒そうとしているのか蠢いている。

 

「それがお前の卍解か」

 

「ええ」

 

「ダーテンにも記載されてなかったその力、俺が下せばそれで終わるだろうがっ!」

 

次の瞬間、立つ佐原ヒユに対し全能力をブルートアルテリエに注ぎ込み攻撃を始めた。最初に投げ飛ばしたクナイ数本をおとりのように使い、凄まじい速度で接近する。

 

「遅い」

 

「なっ……!?」

 

だが、それよりも早くヒユがシャズ・ドミノの懐に飛び込んだ。驚愕に包まれたシャズ・ドミノを他所に何か所にも斬撃を叩き込む。

 

「速すぎる」

 

あの大きさの斬魄刀をどのように振ればあれほどの連撃を叩き込めるのだろうか、それにあの速度……まるで瞬間移動のそれだ。佐原ヒユの戦いを見ていた技術開発局の面々も感嘆の声を漏らす。

 

舞い降りた片翼の天使、今の彼女はその言葉がピッタリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

(コイツ……卍解した途端に速度と攻撃力が上がりやがった!)

 

防御のブルートをまるで貫通させるかの勢いで攻撃を叩き込んでいく佐原ヒユ。あれだけの威勢を張っていたシャズ・ドミノも徐々に焦りを隠せなくなっていた。

 

(早く…早く!!)

 

だが佐原ヒユも特段余裕があるわけではなかった。尸魂界に来て、戦いを得て仲間と共に手に入れたこの力。その全ては未だ理解出来ずにいたが、2回目の卍解で少しづつそれを理解し始めていた。

 

最初に、前回も今回も初めから自分の傷口を覆って脈打っている粘膜のようなもの。何処かで感じた事のある感覚だったが、元々基地で撫でていたナービィ、その感覚に妙に似ていた。何故自分の身体からナービィ要素が出てくるのかは微妙だが、今はこれがあるお陰で傷の痛みを引くことが出来ていた。

 

(それにこの瞬間移動だと思ってた力、想像以上に頭と霊圧を使う……っ!!今も連続で使ってるけど結構キツイよ…!!)

 

周りも、自分も瞬間移動だと感じていたソレはようやく慣れてきた今だからわかる。己の身体を1度粒子サイズまで分解して自分の行きたい場所へ、行きたい位置へ瞬時に移動できる力だということだ。

 

1度粒子まで分解された身体をその場に再構築するには、己のイメージをしっかりと保つ必要がある。それが出来ないと……恐らく空中で分解してそのまま逝ってしまう。

 

それに粒子から人体に戻る瞬間、周りの霊子やその残穢まで巻き込んで戻る為、その記憶や感覚が頭に入ってきていた。

 

「はっ……やぁっ!!」

 

「くっ……うぉお!!」

 

剣戟に続く剣戟、大剣とクナイがぶつかり火花を散らし、霊子が渦巻き、お互い霊子が腕となり足となり、身体となっていく。

 

(流れ込んで来る、コイツの記憶が……っ!!)

 

目の前の男、シャズドミノと名乗る滅却師の記憶。産まれから今が嫌でも頭が処理しようとする。

 

「っ!?」

 

だが人間の脳みそはそれを全て処理しきれるほど有能ではない。突如鼻から血が溢れ、一瞬動きと思考が麻痺する。

 

不味い――と感じた時には遅い。超速戦闘に突如置いて行かれれば相手がそれを逃すはずもなく、次の瞬間には佐原ヒユの身体のあちらこちらから血が吹き出た。

 

「ぐっ……うあっ!」

 

痛みに顔を顰め、よろける。そして先程から感じていた辺りの温度の急上昇。切れた傷口に日光が染み込み痛みがさらに拡張される。

 

「っ!」

 

「卍解も大したこと無かったな、今のも自滅だろうに!!」

 

膝を着くヒユに容赦の無い猛攻。何とか体勢を立て直し飛んできたクナイを躱す。幸い速度は落ちておらず、瞬間移動を使わずとも素早い移動が可能だった。

 

「っ!」「くっ……」

 

シャズ・ドミノも慣れてきたのか、更にヒユへの攻撃速度をあげる。動血装と静血装、それを切替える速度も上がっているようで、再生に頼らずとも、適度にヒユの攻撃を躱しつつ此方に致命傷となりそうな一撃を入れてきていた。

 

(これ以上瞬間移動は使えない、セラフといえども万能じゃない。だけど今の私にはセラフ以外にも武器がある。チャンスが決たら一気に、吹き飛ばす……ッ!)

 

「っ……!?」

 

戦闘中も思考を止めないヒユ、やがて結論が出たのか更に攻撃速度を上げていく。シャズ・ドミノは再び上がった攻撃に一瞬遅れをとる。

 

「何処からそんな力が出てくる……!!」

 

「約束した人が居る。私を落ち着かせてくれた人がいる。そんないい人達が居るこの世界を護る為にっ!!」

 

「くだらないなっ!!」

 

「貴方だってあるでしょ!?」

 

「俺は陛下の為に戦う、その為ならどんなことだだってやるさ!!」

 

「っ!!」

 

クナイを何本も取り出し、辺りへと投げ飛ばす。ヒユも意味もない攻撃だと割り切りたいがその先には未だ避難できていない技術開発局の隊員が居た。

 

助けようと走り出すヒユだったが、その足が不意に止まる。

 

『俺たちも護廷十三隊の隊士だ』

 

その言葉が脳内で流れる、それにクナイが飛んできた方面に居る彼らは――後悔などではなく、ヒユを見て笑みを浮かべていた。

 

託したと――想いを繋いでくれ、と

 

「っ!!!」

 

止めた足を軸に回転する、一瞬で正面を向いたヒユに面食らうシャズ・ドミノ。同時にその先に居た技術開発局隊員から血が吹き出る音がする。だがうめき声等は一切聞こえなかった

 

(みんなごめん、だけど、コイツは必ず倒すから!!)

 

下から上へと大剣を振りかざし、クナイを突き刺そうとした右腕を根元から斬り落とす。そのまま上へ振り上げた大剣を今度は下に振り下げ左腕を斬り落とした。

 

「何度言えば……っ!?」

 

「縛道の三十 ”嘴突三閃”!!」

 

不意打ちの鬼道。さしものシャズドミノも驚く。その瞬間にヒユは3つの嘴を飛ばし、対象に突き刺して行動を制限していく。

 

「縛道の六十一 ”六杖光牢”!!」

 

突き刺し行動が遅れ、それに伴い再生が遅れた。だがヒユはそのままの勢いで六杖光牢を発動させる。指先から光が放たれ、対象は6つの光に胴体を突かれ、身動きが取れなくなった。

 

「なっ……!?」

 

「千手の涯、届かざる闇の御手、映らざる天の射手、光を落とす道、火種を煽る風――」

 

ヒユは、雛森と特訓した鬼道の中で、今使えそうなものを瞬時に選択した。

 

「――集いて惑うな、我が指を見よ。光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔……」

 

離せと、抑えられ再生できなくなった腕の代わりに身を捩り、シャズ・ドミノが叫ぶ。だが今のヒユにはどの様な言葉も通用しない。彼女を動かす意思は……決して折れない

 

 

「――弓引く彼方 皎皎として消ゆっ!!」

 

大きく、高らかな声で叫ぶ。

 

初めてこの技を使った時は、雛森さんも平子さんも驚いたっけ……

 

 

 

 

 

「破道の九十一 千手皎天汰炮!!!」




ヒユ虐って言われてもおかしくないな……
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