死神の幻想   作:エヌラス

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此処で改めて説明を1つ。

ヒユちゃんの斬魄刀の進化について。
1つ目は初めての始解の力ですね。大太刀と表現しました、分かりやすく言えば黒崎一護が初めて持ったあの身の丈程の太刀を想像してもらえれば分かりやすいかと。
彼女自身がこの世界を理解してないというものと、彼女の中に眠る黒崎一護の霊圧が主体となって生み出されました

その次は彼女が仕組みを理解して、大太刀になりました。取り戻した記憶の中の一つ、自分のセラフを朧気に形取り、大太刀へと進化しました!

それではまた、気が向いたら色々と補足説明兼解説やりたいと思います


110.喪失の戦場

 

 

「入れ」

 

 

尸魂界に来てから直ぐ、ヒユの存在は山本元柳斎重國に知らされており、五番隊に来てからその日のうちに話す時間が設けられた。

 

「し、失礼します!」

 

自分が何人分だろう……という大きな扉が開かれ、そこから佐原ヒユが一人で入ってくる。入るとすぐに扉が閉まり、そこは元柳斎とヒユだけの二人きりの空間になった。

 

(どうしよう……めちゃくちゃ緊張する)

 

直前まで雛森と平子の2人が付き添っており、平子から今までの元柳斎の活躍や逸話を聞かされていたヒユは正直言って緊張でガクブルしていた。

 

『怒らせたらあかんで、おっかないからな』

 

扉が開く寸前に平子からそう言われた時、ヒユは自分が生きて帰れるのか少しだけ不安になった。扉越しからは既に凄まじい霊圧が漂っており、平子の言葉が予め嘘では無いということを分からされた。

 

「佐原ヒユです、よろしくお願いします……!」

 

初対面の人にはまず挨拶だと思ったヒユが、大きな声でそう言い頭を下げる。

 

「――そう固くならんで良い」

 

その言葉、そしてそこから感じる暖かさと優しさに触れ、ヒユの肩から少し力が抜ける。

 

「は、はい……!」

 

「儂もまだ名乗っておらんかったな。護廷十三隊総隊長……山本元柳斎重國という。呼び易い名で呼ぶといい」

 

椅子に座りこちらを見下ろす元柳斎が、ヒユにそう言う。

 

(平子さんから言われた人とは思えないくらい優しさを感じる……)

 

だがそれと同時に、今ここで本気で戦ってしまえば恐らく数回斬り合うことも無く自分が殺されるというのが嫌でもわかった。総隊長の部屋にしては護衛も誰もおらず警備に不安があるなと思ってはいたが……この人がいれば他は必要ない、そう感じさせた。

 

「何、そう怖がる必要も無い。別に取って食いはせんぞ」

 

(やばい、冗談で言ってるのか本気で言ってるのか分からない……)

 

ひとまず笑みを浮かべつつ、ヒユは元柳斎の冗談を受け流す。

 

「お主の事は浦原に事前に聞いておる、そしてこの目で見てわかる。行方不明になった死神代行――黒崎一護を知っておるな」

 

「はい」

 

今の一瞬でそれらを全て把握するだけの洞察力、ヒユは驚きながらも答える。

 

「なら良い」

 

「え……?」

 

聞きたいことも色々とあるだろうと、質問攻めされることを覚悟していたヒユだが、呆気なく質問が閉じられ唖然とする。

 

「色々と聞きたいこととか、えっ……?」

 

「心配せずとも、彼奴はそう簡単にやられるようなやつでは無いことを知っておる」

 

「そうですか」

 

短い言葉だが、黒崎一護が尸魂界にどれ程信頼されているのか理解させられる。ヒユは無意識に、自身に眠る黒崎一護の霊圧に手を当てるように胸に触れる。

 

「此度お主を呼び寄せたのは、聞きたいことがあったからじゃ」

 

「聞きたいこと、ですか?」

 

 

 

「お主はこの先、どうしたい?」

 

 

 

先程まで閉じられていた両目のうち、片目だけが開かれる。その瞬間ヒユの心がドクンと脈打った、金縛りにあったかのように全身が動かなくなる。

 

「勿論、我等が厳重に保護する手筈で進めておるが、お主は何を望む?」

 

「私は……」

 

この世界にやって来てから既に時間は経っている、だがヒユ自身自分がこれからどうするべきなのか、その身の振り方を悩んでいる節があった。

 

きっと、目の前の元柳斎が言うように、尸魂界の人達に保護されて過ごせば安全に手掛かりを探せる。自分から危険な目に合うことは無くなる。それに自分はかつて死ぬ一秒前まで必死に全力で日々を戦い抜いた。安泰くらいあってもいいんじゃないかと……

 

(でも、本当に私はそれでいいの?)

 

そうして安全に過ごした先に、自分が求める結論があるのか。毎日外から入る情報だけを耳に入れ、自分からどこかへ行くことも無く……それで自分は良いのか。

 

(嫌、いい訳がない)

 

心の中で首を横に振る。今の自分が何をできるかなんて分からない。だけど、自分がどうしてこの世界に引き寄せられ産まれたのか。

 

ふと、目を下ろした先にある腰に掛けられた斬魄刀に目が行く。こちらに来てからずっとあるソレに、吸い寄せられるように手が動いた。

 

『ヒユちゃんなら大丈夫だよ』

 

「……!」

 

柄に触れた瞬間、懐かしい声が耳に届く。背中を押すように受けた言葉を、ヒユは確かに押されて前を見る。

 

「――どうやら結論は出たようじゃな」

 

「はい」

 

「申してみよ」

 

「私は、私なりに此処で頑張ろうって思います。自分の目で、心で、肌で、感じて生きていきたい」

 

「……」

 

「それに私があの人の霊圧を宿してこの世界に生まれたことには、きっと意味があると思うんです。今はまだ結論なんか出てないですけど、きっといつか……わかる日がくる。何となくですけど、そんな気がするんです」

 

たどたどしいが、これが今のヒユの本心だった。

 

「今の自分にどんな力があるのか。まだ分からないけど……可能性があるなら私はそれに掛けたい。誰かが傷ついてるのを見捨てない、自分に力があるならそれを使って生きていくって誓ったんです……」

 

「誓った……?」

 

「――誰にでもない、自分の魂に」

 

その言葉に元柳斎が頷いた。そして立ち上がる。

 

「その言葉、しかと聞き入れたぞ佐原ヒユ」

 

「……」

 

隻腕ながら確かな力を込め、杖を床に突く。

 

「佐原ヒユを、五番隊隊士として我らが受け入れようッ!」

 

「っ!!」

 

確かに認められたと感じたヒユが、笑みを浮かべた。

 

「薄々感じておったわ、お主はこの提案を断るだろうと」

 

「……」

 

「だがそれで良い、それでこそ彼奴を受け継ぎし者じゃ」

 

「……ありがとうございます!」

 

確かに微笑み、そう言葉をだした元柳斎にヒユが頭を下げる。緊張感がどっと抜け倒れそうになるがなんとか立つ。

 

「まずは――」

 

だが次の瞬間、再びヒユは緊張に肩を震わせた。再び立ち上がった元柳斎がこちらに歩いてきていたのだ。

 

(な、なんだろ。地獄のトレーニング的な……?)

 

「――茶でも飲みに行くか」

 

「……はい?」

 

隊士として恥じぬようトレーニングじゃ!!的なことを言われるのかと覚悟していたヒユだったが、目の前まで迫った元柳斎から言われた言葉は――茶飲みの誘いだった。

 

「ほれ、ゆくぞ」

 

「えっ、あ……はい!」

 

拒否権は何となく無さそうだなと感じたヒユはひとまず元柳斎の後に続いて歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(めちゃくちゃ茶立てが上手い人だ!!!それにお菓子美味しい!!!)

 

その少しあと、元柳斎の茶室で振る舞われた茶と菓子を一通り楽しんだヒユだった。元柳斎は終始笑みを浮かべ、美味しそうに食べたり、飲んだりする彼女を見つめ続けていたという……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……」

 

そして今、確かに元柳斎の死を感じ取ったヒユが声を漏らす。それと同時に先程まで晴れていた天候が一気に曇り――直ぐに雨が降り始めた。

 

「アンタの所リーダー、死んだみたいだな」

 

同じく感じ取ったであろうリルトットがそうヒユに言葉を投げる。そして同時に飛ばされた拳がヒユの腹部に直撃した。

 

「が、あっ……!!」

 

呆然としていたヒユに防御や回避などといった選択を出来る余裕は無く、まともに喰らい後ろへと吹き飛んで転がった。

 

「ちっ……静血装最大でもこれか」

 

だが勢いの一部を利用したカウンターのようなものは成功しており、リルトットの拳から血が吹き出ていた。

 

「痛そうだねぇ」

 

「うるせーよ」

 

先程まで姿を見えなかったジゼルも再び目の前に現れ、再び2対1の状況が作り出されてしまった。

 

「う……ぐっ」

 

自身に押し掛かる瓦礫を払い除け、ヒユが立ち上がる。元柳斎が死んでも尚ヒユの闘志は完璧に死んだ訳では無かった。

 

誓った約束を反故にする訳にはいかない。死んでしまった元柳斎の為にもこの世界は守らなければならない。

 

(向こうの世界で頑張ってるあの人達の為にも……!)

 

己をそう鼓舞し、再び斬魄刀となったセラフを構える。

 

「……な」

 

だが漸く立ち上がり、ヒユが目にした光景は、余りにも鬼畜なものだった。

 

ジゼル、リルトットの2人が尸魂界の地面に手をついて影を生み出している。それは見ればすぐに分かった、だがその影から、無数の兵士が産まれていた。

 

 

 

 

 

 

山本元柳斎重國を殺害し、死して尚くってかかろうとする彼を煩わしく感じ、その死体を消し飛ばした滅却師のリーダーであるユーハバッハ。

 

特記戦力筆頭である黒崎一護すら今は現れず、世界の異分子と呼ばれた彼女ももはや自らが出向く必要すら無いほどに消耗。

 

――尸魂界を蹂躙せよ――

 

それが、ユーハバッハの下した仕上げの命令だった。

 

 

 

 

 

「賊軍の援軍か……っ!!」

 

別場所でも星十字騎士団による影の生成、そこから大量の兵士を生み出す行為が行われていた。既に追い詰められ、疲労困憊の隊士達が、現れた大量の兵士を前に様々な表情を浮かべた。

 

「こんな奴らっ!!――がっ!?」

 

「う、うそだろ…………ぐっ!!」

 

感情すら一切感じられない兵士は、生み出された瞬間にすぐさまサーベルや槍、霊子で作りだした滅却師の弓……神聖弓を構える。

 

その1人が斬魄刀を上から振り下ろした隊士を、刀ごと叩き斬った。それを見て膠着した隊士数人を、大量の神聖弓が襲い掛かり、抵抗虚しく矢に貫かれて死んでいく。

 

 

「何なんだコイツらは……っ!!」

「数が多すぎる……!!」

 

お互いに背中を預けあって戦い始めた2人の隊士、だが既に疲労していた彼等は、直ぐ様兵士により両腕をサーベルで斬り落とされ、複数の兵士が槍で挟み撃ちするように穿いた。

 

雪崩のように押し寄せる兵士に、散り散りになっていく隊士。バッタの大群が稲穂を襲撃するように、通り過ぎた後に生きていた隊士は誰も居なくなっていた。

 

「え、援軍を…………っ!」

 

辛うじて息をしていた隊士が、必死に、誰かに届いているか確認する余裕もなく、うわ言のように呟く。だが次の瞬間、兵士の1人が頭を足で踏み、そのまま首をへし折る。

 

ある場所では、刀を折られ、頭が真っ二つに切り裂かれ隊士が死に

 

ある場所では見せしめのように神聖弓を全身に受け、槍で空中に固定された隊士がいた。

 

戦場に迷い込んでしまった子供も、母親も、例外なく筆舌に尽くし難い殺され方をした。それを許さないと叫んだ隊士もまた、次の瞬間には物言わぬ骸と化していく。

 

 

 

「嫌……嫌ァッ!!」

 

目の前で死んでいく仲間を見続けた隊士の1人が、とうとう持っていた刀を手放し後ろへと走っていく。

 

「お、おい……!!」

 

「お、俺も嫌だ!!」

 

「お前まで……ぐぁ――」

 

制止しようとしたひとりが、次の瞬間には殺され、逃げようとした隊士達も直ぐに殺害された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……はぁっ!!――あああッ!!」

 

ヒユの場所も例外ではなく、大量の兵士が押し寄せていた。後ろには臨時の技術開発局があり、そこには阿近含めた負傷した隊士が取り残されていた。

 

(通さないっ!!――絶対に!!)

 

ヒユは濁流のように迫る兵士を、1人も残らず只管に斬り続ける。

 

制服に傷がつき、身体の肉がサーベルや槍や矢によって抉れても、ヒユは只管に刃を振るい続ける。

 

「ぐっ、うっ……っ!!」

 

槍が左肩に突き刺さり、痛みに顔を歪めるヒユ。だがすぐさまその槍を抜き、それを持っていた隊士に大剣を突き刺し、背後から迫る兵士に槍を突き刺して吹き飛ばす。

 

「破道の四――白雷!!!」

 

先程まで槍を持っていた左手を、迫る複数の兵士の方向へ向け鬼道を放つ。放たれたのは貫通力のある光線。凄まじい速度で複数の兵士を穿ち抜いた。

 

「っ!!」

 

血が流れ、視界が奪われる。だがそれを拭き取る時間を敵は与えてくれない。

 

(一人で複数のキャンサーを相手する時なんていくらでもあった……!!この程度の奴らなんかに――!!)

 

かつての自分を重ね、只管に戦い続けるヒユ。だが次の瞬間、上空から霊圧と気配を感じ、直ぐ様大剣を頭上に構え防御の構えを取った。

 

「ッ!!!」

 

次の瞬間、ピンクの髪をなびかせた少女の拳がヒユの大剣に激突する。その衝撃が開いていた傷口から血を吹き出させ、全身を激痛が襲った。骨が軋む音を耳に捉えながら上空から来た敵――ミニーニャ・マカロンを弾き飛ばす。

 

「はぁ……はぁ」

 

額が割れ、顔からも血が流れ始めたヒユ。対して目の前に立つミニーニャには目立った傷は見受けられなかった。

 

「……副隊長もこの程度ですぅ?」

 

そう言いながらミニーニャは、左に抱えていた”何か”をヒユに放り投げた。

 

「……あ」

 

ヒユの足元に転がったソレを見た瞬間、全身の毛が泡立った。

 

「……」

 

その正体は、つい先程背中を預けあったはずの朽木ルキアの姿だった。死んではいないものの、体のあちこちはボロボロになり、霊圧も余りに微弱になっており、既に死んでいてもおかしくないほどだった。

 

手に持っていた刀も、刀身の上半分が消滅しており、戦いでへし折られたんだと理解させられる。

 

「兵士さん達は他の場所に行ってくださいですぅ」

 

目の前のミニーニャは、ヒユ達に襲いかかろうとする兵士たちを止め別の場所へ誘導する。

 

「ミニー、どういうつもりだ?」

 

「あの人、あそこの副隊長さんより強そうだから、無駄遣いしないようにしてるんですぅ」

 

リルトットが少し怪訝そうに聞くが、ミニーニャは平然とそう答えた。

 

「……成程な、一理ある」

 

そう言うと、リルトットも神聖滅矢を装備させミニーニャの横に立った。

 

「ボクはいいかなぁ、死んでから呼んでよ」

 

ジゼルはそう言って後ろを向いた。

 

 

 

 

 

 

 

「――――――逃がす訳ないでしょ」

 

「……は、ぁ?」

 

だが後ろを向いた瞬間、眼前には佐原ヒユが居た。防御する暇もなく、ジゼルは上半身と下半身が斬り飛ばされる。

 

大量の血が、ジゼルの身体から噴水のように吹きこぼれる。だが既にその特性を理解していたヒユは直ぐ様量子化。その場所を離れてミニーニャとリルトットの間に移動していた。

 

 

 

――彼女が持つ、かつてセラフと呼ばれていたものの斬魄刀は先程とは打って代わり、煌々と輝いていた。




最後のセラフが煌々としているというのは、ヘブバンをプレイしてる人になら何となく伝わると思うんです。

AスタイルやSスタイル、そしてSSスタイル。レア度が上がれば上がるほどセラフも色々と立派になっていくじゃないですか??あれを表現しました!!

理性というものが1番、彼女の力を抑制していますから。




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