感想で教えてもらったんですけどね、初期設定の中にキャンサーのデフレクタは破壊出来ないことはないらしいんすよ。ただそれにはほぼ不可能な火力がいるだけで…
おや、これは…(月牙天衝を見ながら)
「…すげぇな」
彼女達が組んでこの基地内で演奏しているバンド、シーイズレジェンド。
時偶やるライブだがやはり演奏のレベルが凄まじく高かった、あれで未経験者が居ると聞くので素直に驚かされる。だが今日は何時もより演奏に気合いが入っている様にも見えた
そして其処に入っている蒼井でさえ、何の違和感も無く見れていた…手にある傷は相当楽器を練習したようにも見えた
(…んだよ、すももといちご達も居るじゃねぇか)
ふとカフェテリアの端を見ると水瀬姉妹の2人が覗く様にして見ていた。ほんとあの二人は素直じゃない…一護に気持ちを明かした後も蒼井自身には何も伝えられていない様だ
「其れじゃあラスト!!聞いてくれ!_____”Dance! Dance! Dance!”」
気付けばラスト楽曲、彼女達のテンションがより一層上がっていく。最初は乗り気ですら無かったユキでさえ、あの中でも1位を争うくらいにはノリノリでは無いのだろうか…
(楽しい…!!)
蒼井は只、只管に今を楽しんでいた。少し演奏が先走ってしまっても、周りが直ぐにカバーしてくれて…そして皆が自分達を見てくれて、自分も前に立てている様になって
(そして……黒崎さんが見てくれている)
1番前で、1番自分に近い所で、叫べば気付いてくれそうな距離で聞いてくれている。
素性も全く分からない
言動は荒っぽくて、戦い方も技も何処かワルそうな感じも在って、でも強くて…その強さは暖かさも在り、一緒に立っていると自分も強くなった様な心強さが有り
____そして自分が初めて好きになってしまった
セラフ部隊に居る限り、自分にそんな感情が生まれる事など無いと思い切っていた。其れは茅森月歌達も同じだと思うし…一護は何時か取り合いになる可能性だってある
(其れなのに好きになってしまったんです…蒼井は悪い子ですね)
今此処で好きと叫びたい、思いっきり心の底から口に出して…大きな声で…
(だけど其れは”あの約束”に取るって蒼井が決めたんです…我慢我慢…!)
一護と交わした約束、お互い忘れられる筈も無い…
その時まで、その想いはそっと仕舞っておこう
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〜2時間後〜
「「アンコール!!アンコール!!」」
最後の楽曲を弾いてからアンコールを受け付け2時間が経った。だが未だに耳を塞ぎたくなるくらいのアンコールがカフェテリアを包み込んでいた。だが月歌達は明日から作戦でもある為、もうアンコールは出来ないとそう伝えた
全員残念がったが明日からは作戦の者も居る為お開きとなった
「黒崎一護、少し良いかしら?」
ステージ奥に入っていく彼女達を見届けた次の瞬間、一護は手塚司令官から声を掛けられていた。見た所七海も付いていないみたいで私情の様だった
「何だ?__俺に何か用か? 」
「ええ、今からアリーナに来て頂戴」
「…?__分かった…」
突如としてアリーナに呼ばれた一護、この時の一護はまだ知らなかった…手塚司令官がこれから行う事を…
「黒崎さーん?__あれ…?」
ライブが終わり、直ぐ様一護の場所へ向かった蒼井。だが一護の姿は見えずに少しばかり寂しさを感じる。さっきまで居た筈の一護…一体何処へ行ったのだろうか
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〜アリーナ〜
「んで、用って何だよ。わざわざこんなとこに呼び出して」
「単刀直入に言うわ、あの姿になりなさい」
「死神のか?___今の俺は霊圧が略無ぇんだ…もしかすれば戦えねぇかもしれねぇ」
「ああそう、なら今回の作戦は参加させられないわね」
「…!?」
溜息をつき、手塚が帽子を深く被る。そしてまるで一護に対し冷たい目でこう言い放った
「今回の作戦______誰かが死ぬわよ」
「ッ…!!」
突然言われた一言に一護が困惑する、その困惑を見透かしさらに畳み掛ける様に司令官が言葉を放つ
「そうね…蒼井えりかさんが死ぬと言ったら?」
まるで未来がそう決まっている、そんな風な言動をとっていた。その瞬間に一護が懐から代行証を取り出し叫ぶ
「____巫山戯てんじゃねぇぞッ!!」
次の瞬間、死神の姿へと変わった黒崎一護が手塚を斬り掛かろうと斬月を振り下ろしていた
「そうやって直ぐに頭に血が上る、貴方の悪い癖よ______”夏草や、兵どもが夢の跡”!」
「っ!____づぁ…!?」
斬月を振り下ろした瞬間に手塚司令官が自身のセラフを呼び出しそのまま斬月を下から掬い上げた。薙刀型のセラフはそのまま一護の身体を下から斬り裂いていく
「クソッ…!!」
血をポタポタと垂らしながら後ろへ下がる一護、手塚司令官は感心している
「あら、今ので少しは抉り取ったと思ったのだけれど」
「なんなんだよ…!!此に一体何の意味があんだよっ!!」
困惑に怒り、そして何処か悲しみを感じさせる一護の問いを手塚司令官は一蹴する
「愚問ね、其れに気付けない貴方が1番愚かなのよ」
「意味が分かんねぇよ!!突然斬り掛かって……っ!?」
「ふっ…!!」
一護が話をしている最中に、手塚司令官がトランスポートを使い背後へと回った。流石の一護も其れに気付いて振り返るが、反応が遅く肩辺りを切り裂かれる
「…っ!」
肩を抑えながら再び後ろへと下がる一護、だが司令官はそのまま突っ込んで行き_____2人の武器が鬩ぎ合い拮抗状態へと陥る
「何で…!俺があんたと戦わないといけねぇんだよ…!?」
「卍解はどうしたの?_貴方の言う月牙天衝は?」
「さっきから質問ばっかりしてきやがって…!俺の質問にも答えてくれよ!」
さっきから手塚司令官は一護に対し質問しか投げておらず、反対に一護からの質問には一切答えていなかった
「…貴方分かってるの?自分が弱くなっている事に」
「んなもん言われなくてもわかってる…!」
「私が言ってるのは其処じゃないわ、貴方の戦う意思よ」
「…戦う、意思だと…!?」
「そうよ、貴方最近力を失ってる…蒼井さんから聞いたわ」
「分かってんならなんで…!?」
「なら其れを取り戻そうとは思わないの?」
核心を突かれてしまった、その瞬間一護に致命的な隙が生まれた。
「はぁっ…!!」
薙刀を巧みに扱い、拮抗状態を押し返しそのまま右足、そして左腕を斬り裂く
「ぐっ………!!」
後ろに蹌踉めく様にして下がる一護。斬月を突き立て、何とか体勢を崩すのは防いだ。だが様々な箇所から血がポタポタと垂れており本来なら既に痛みで動けるレベルでは無い
「此だけ切り刻んでも倒れない、さっきの戦う意思が無いと言う事は訂正しようかしら…でも」
再び薙刀を器用に振り回し突き立てる
「今、貴方は何処か霊圧とやらを戻そうとするのを諦めてるんじゃ無い?」
「…っ!!」
その一言に、今まで手塚司令官を睨む様にして見ていた一護の目が揺らぎ目線を外した
「____どうやら当たりの様ね」
一護自身にも分かっていた事だった。今回の霊圧の失い方は前回と違って余りにも急速に進んで行った。まるで誰かから霊圧を奪われている…そう錯覚するくらいには一護も感じていた
(だがもし誰かから奪われたとして…其れを本当に取り戻せるのか…?)
もし仮に奪われていたとしてもだ、外に1度放たれた霊圧は循環していく。だが略の人間が霊圧を持たない世界で誰に対して循環するのだろうか…
基地の彼女達には感じられず、チマチマ出撃する任務でさえ周りに霊圧と思われる物は一切感じられ無かった
(どうすれば良いんだ…斬月…)
自身の斬魄刀に問い掛ける、だが答えは帰ってこない。きっと自分自身の問題なのだろう…
(俺は…もう、立てないのか…)
心が凍ってしまったかの様に冷たい、其れのせいか両手両足からも力が抜けていく様な感覚に陥っていく。斬月でさえ握るのがやっとだった
「もし其処で終わりだと言うなら…司令官として私は貴方を殺します。元々外部の人間である貴方を、何とか上の反発を押し返して此処に入れた…其れは正解だったわ。31A達との戦いで我々人類は急速に領土を取り返しつつある…でも」
司令官が1度空気を吸い、吐く。
「其処で終わりと言うのならずっとそうしてなさい。今楽にしてあげるから…」
(気付いて頂戴、貴方は此処で終わる様な男では無い筈よ)
セラフ部隊司令官である手塚咲、彼女は今心の中で最早祈る様にしながら一護に歩みを進めていた。勿論彼を殺す事など彼女にとっては余りにも重すぎる事である
だが鬼の司令官としてこうするしか他には無いと、自分は余りにも不器用過ぎる事を今は呪うしかない
(力を無くしかけた事は周りから聞いていたけど、其れを更に加速させているのは黒崎一護自身の気持ちの強さ…)
根本から叩き治さねば、どうしようも無い領域だ。其れに自分は人を励ますのには向いていない…
ふと、茅森月歌ならどうするだろうと考える。だが其れも一瞬にして消え去った
_________目の前まで、歩んだからだ
(蒼井にも約束をした、この世界でも仲間が出来た…其れも此処までかもしれねぇ…)
「良いのかしら?」
目線の上から声が掛かる。だが其れに答える声は無い
「本当に良いのね…?」
2度目の忠告、だが答えは無い
「あの子達は一体どう思うのでしょうね______」
「…っ!!」
薙刀が振り下ろされる直前の一言に一護の目が大きく開く。そして薙刀を斬月で受け止めた
「……!?」
最期の抵抗かと想い力を込めるが、其れ以上の力で受けているのか薙刀は一向に動かない
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「此処は…」
気が付けば大量のビル街の屋上へと立っていた、見覚えが有る世界。此処は___良く斬月のおっさんや内なる虚と何かしらある時に呼ばれる場所だ
「斬月のおっさん!居るのか…!?」
周りを見ながら叫ぶが一向に斬月の姿も、内なる虚の姿も見えない
「黒崎さん…?」
「っ!?_____お前は…」
後ろから突如した女性の声、其れに気付いて振り向いた____そしてその正体に驚く
「佐原…、何でオメェが此処に…其れに其れ、死覇装じゃねぇか…!?」
「え、えっと…イマイチ状況が掴めなくて…此処に私を呼んだのは黒崎さんですか…?」
「俺がお前を…?」
「私も分からなくて…と言うか…話せば長くなると言うか……っ…あれ?」
「お前…何泣いてんだよ…」
気が付けばヒユは目から涙を流していた
「あれ…何で…、こんな大切な事を忘れてたんだろ…、そうだ…!黒崎さんだ…、柊木さん…!」
「お、おい…!?」
気が付けば、一護に抱きついてワンワンと泣き始めたヒユ。取り敢えず分からないから、頭を撫でておくと更に泣き方が酷くなった。
「ずび……すびばせん…」
「お、おう…落ち着いたか?」
「はい…!其れに私が此処に呼ばれた理由が分かりました…」
「そうか…!」
「___此です」
そう言って懐から取り出したのは、黒い球体だった。球体のサイズは差程は無いがその中に眠る霊圧は凄まじい物だった…
「て言うか此…俺の霊圧じゃねぇか…!?何でオメーが…!?」
「あの時、その斬魄刀に触った時に私はそのまま逝くと思ってたんですけど…”空っぽの私に多分死神の霊圧が入った”んですかね…その時に黒崎さんの霊圧をガッポリ食べちゃって…」
「て事はお前まさか…!?」
「はい…今は尸魂界ってとこで平子隊長達と」
「平子とォ!?」
取り敢えずヒユが、尸魂界に行ってしまったとか言う訳の分からない事に驚くが、其れと同じくらいにまさかの平子のお世話になってる事に驚いた
『なんやお前文句あるんか!?』
とドヤされそうではあるが其処は驚かせてもらう、アイツにそんな事が出来るとは…
「そして其れからは…多分、私の存在をあっちで維持する為に一護さんの霊圧をまた少しずつ食べちゃって…」
「お前なぁ…そんな菓子みてぇに…」
まさかのヒユが犯人だったのだが余りにも怒りづらく呆れ声しか出す事しか出来ない
「でもやっと自分の霊圧を持つ事が出来て、一護さんの霊圧が無くても動けるようになったんだと思います。そして今此処で漸く返せる。多分私の中から一護さんの霊圧が無くなるのでこうやって話せる事は出来なくなりますが…その球には少しだけ私の霊圧を入れてるのでもしかしたらです…へへ!」
「今さり気無く怖ぇ事言いやがった…」
「其れはさておき!早く行かないといかないんじゃ無いですか!_____皆さんを、護るんですよね!」
「でも…」
「良いから早く砕いちゃってください!___こっちは皆さん無事ですから!」
「そうか…」
ヒユの目を見る、彼女は明らかに最初に出会った時よりも確実に強くなった。心も…身体も
(其れに比べて俺は…情けねぇ)
「私はこっちを護る為に頑張りますので、私の場所もお願いします___そして何時か、全てが元通りになります様に!」
「ああ、任せてくれ…!」
ヒユの手から受け取った球を握り潰す様に砕く
「また会いましょう、黒崎さん」
「ああ、お前も元気でやれよ」
次の瞬間、視界が白く染まっていき…精神世界の崩壊を直感した2人は別れを告げ____元の世界へと戻って行く
(何…、この悪寒は…!)
手塚咲が何かを感じ取り一護から距離を取った、その直後___一護から凄まじい圧が解き放たれ、其れは凄まじい爆風となりアリーナを包み込んだ。その風が止んだ後黒崎一護の声が聞こえる
「有難な、手塚司令官。俺は行かねぇといけねぇ」
「…ええ、そうね。でも彼女達は数十時間前に行ったわ」
「は…!?俺達そんなにやってたのかよ…!?」
「ええ、お陰様でお互いクタクタよ 」
「言われて見りゃあ身体が重い…、クソ…」
2人が疲労を感じた直後……
「手塚司令官…!」
アリーナの中に入って来た隊員の1人が肩で息をしながら走って来た
「オペレーションプレアデス範囲内に、何か異様なモノを識別しました…!!」
「「…!?!?」」