死神の幻想   作:エヌラス

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お久しぶりです。

私情でございますが、自分は4月から社会人として実家がある京都を離れ東京にて一人暮らしを始めました。
慣れるまで割と更新頻度などが落ちますが何卒見守っててください。


70.怒り___2人の想い

 

 

 

『ヒユちゃんはさ、優しすぎるんだよね』

 

 

かつてセラフ部隊にいた時、メンバーから言われたそんな言葉が頭をよぎる。その時はそんな事ないよと笑って冗談交じりに返した記憶がある。

 

 

 

 

 

 

 

「フーッ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着け、たった今怒りに任せて刃を振るい…額に切り傷を受けたばかりだ。

 

(頭では理解してる…、でも身体と心は…目の前の男を今すぐにでも斬りたいって……)

 

まるで手足のコントロールを別の誰かに移してるかのような感覚に襲われていた佐原ヒユ。彼女の目の前には剣を持った眼鏡の男が立っており、その佇まいからして強さというものを纏っていた。

 

(躱すのがあと少しでも遅れていたら…今頃は頭の中身を見せていた…、雀部さんを殺った人達はこんなに強いの…!?)

 

様々な情報が脳内で錯綜する中、ヒユは必死に目の前の敵へと刀を向ける

 

「おや…?___よく見れば貴方、見ない顔ですね?」

 

「…」

 

首を傾げながら挑発のようにこちらへと声をかける男。だがヒユはその言葉に返事すら返さなかった

 

「…まぁいいでしょう。多弁は銀、沈黙は金とも言いますから。ですが______」

 

 

「っ…!?」

 

反射的に下へ向けた刀に男の剣が交わり拮抗状態となる。

 

「…その力は危険だ。情報に載ってないとはいえここで始末させてもらいましょう」

 

 

「誰がアンタなんかに…っ!!」

 

刀を上へ押し上げ男を後ろへと押し飛ばす。男は一瞬驚いた素振りを見せたが直ぐに再び能面のようになる。

 

 

 

 

 

 

再び虚圏に火花が散ったのはそのすぐ後だった

 

 

 

 

 

 

__________________________

 

 

 

〜虚圏・上空〜

 

 

 

「っ…!」

 

浦原喜助特性の黒腔を抜け最初にヒユ達が見た景色は上空からでもわかる数々の炎と……そして横たわる人達、その周りにはおびただしい程の血が流れ、凄惨な戦場だということを突きつけた。

 

「三天結盾!」

 

着地する寸前に織姫が自らの髪飾りを変形させ防護壁の様なものを作成、それを足場に着地する。

 

「……」

 

着地した場所は丁度、どこかのグループが住んでいたような村の中だった。

 

 

「おい、そっちはどうだ?」

 

 

「「っ…!?」 」

 

かなり近い場所から声が発せられ反射的に物陰へと身を隠す。井上や佐渡、浦原の3人も近くの物陰へと隠れ息を殺していた。

 

「むぐっ…」

 

足音すら聞こえる距離の中何かを喋ろうとしたヒユの口を塞ぎヒユ自身も自分の手で自分の口を塞いでいた。

 

 

「もうここには居ないな、あっちへ行くぞ」

 

「ああ」

 

近づいていた足音が離れていき、ひとまずは難を逃れる。完全に音も聞こえなくなってからもう一度外を覗く。

 

(こういうのは再度確認必要っと…)

 

そんなことを思いながら確認をしている時だ、さっきまで抵抗していたネルがなんの抵抗もしなくなった。

 

「えっあれ……あっ!!」

 

気づけばヒユに抱かれていたネルがぐったりして動かなくなっていた。

 

「ごめんネルちゃん…!!」

 

「ご、殺す気ッスかアンタ…!!」

 

「よかったネルちゃん!!ほ、ほんとごめんね…!!」

 

「ぐえええええっ!!!」

 

息を吹き返したネルをギュッと抱きしめていると、付近に隠れていた浦原や茶渡、井上がソロソロと集まってきた。

 

「ひとまずはやり過ごせたみたいッスね…でもあの様子じゃもうここに生きてる破面や虚は居ないと見るのが妥当でしょ」

 

「…ほんとだ、誰も反応してくれない」

 

井上が髪飾りの1つを飛ばし周りの破面や虚の様子を見ていく、彼女の双天帰盾が反応しないということは…浦原の言った通り治療できる物がないということの証明となった。

 

「まさか、ペッシェとドントチャッカも…」

 

「その2人はどうしてるの?」

 

平常時ならその名前のインパクトに少しばかり混乱しそうだが、今はそんなことを言ってられやしないだろう

 

「わかんないッス、一護達に助けを呼ぼうとしたあたしを守ってそのまま……」

 

「いや、その可能性はないみたいッスよ___ほら」

 

「「…?」」

 

2人の話を遮り、指を指す浦原。その先で地面の砂がもそもそもと動いており____その次の瞬間

 

 

 

 

「ぶはっ…!!!」

 

 

 

砂からお尻が生えてきた。

 

 

 

「……!?」

 

「このケツ…!!さてはペッシェッスね!!!」

 

「フンガあああァァァっ!!!」

 

生えてきたおしりに喜びながらネルが頭突きをぶつけていき、ネルの言葉に井上があたふたとなぜか慌てていた。

 

「ネルちゃん女の子がケツとか言っちゃダメだよ…!!」

 

「いや…、あの……」

 

混乱するヒユを他所に「痛い!!痛い!!」と泣き叫ぶケツを蹴り続けているネル。茶渡がヒユの肩を叩き呟いた。

 

「一応あれが…、ペッシェだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人が…ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということで、この人がペッシェさんです!」

 

「…」

 

ヒリヒリと赤くなっているお尻を擦りながらようやく砂から這い出てきたペッシェを浦原が紹介する。だがヒユの目はもはや不審者を見るような顔になっていた。

 

「そこの少女!初対面なのにその目はなんだ!?失礼とは思わないのか!?」

 

「いや…、初対面でおしり向けて登場されたら…多分誰でもこうなるかと」

 

「ぐぬぬ…!!」

 

何も言えないのを悔しがるかのように拳を握りしめているペッシェを見ながらヒユが内心で呟いた。

 

(この人がかつてネルさんを守ってたって聞いたけど、もしかしてドントチャッカさんもこんな人なのかな…)

 

もし次もこのテンションで出てこられたら流石に刀を抜きそうだ。

 

「違う違う!!こんな話をしている暇は無い!!_黒崎一護が居ないのは少々困ったがまぁいい…」

 

再び黒崎一護の名が出る中、ペッシェは少しばかり息を吸い落ち着きを取り戻す。

 

「ペッシェさん、ネルさんの時もそうだったんスけど…今回のご相手はそこまで強いんスか?」

 

扇子を仰ぎながら浦原が聞くと、少し間が空いてからペッシェは語り始めた。

 

「…ああ、奴らが使う戦術は今まで戦ったことがないやり口だった。それにあの炎…あれは霊子で作られた炎だ」

 

「霊子の炎…ですか」

 

「そのせいで本来燃えるはずのない虚圏の砂や建物が燃やされ、子供や女までも容赦なく殺されたいったさ」

 

「そんな…」

 

「惨い事をする…」

 

周りを見れば分かるが、改めて説明を受けるとその凄惨さがひしひしと伝わる。

 

「我らもただやられている訳では無いと武器を取り戦ったが、奴らがとるもの全てに対応できず…統率は崩れていった。逃げ惑うしかなくなった我らをまるでいたぶるかのように次々と殺していき…」

 

「…………」

 

「ドントチャッカともはぐれた私は、1人砂の中に潜り何とかやり過ごした。そして今に至る」

 

「状況は理解しました…、ですが助けに行くと言っても彼らの向かう先が分からないとなれば…」

 

「それに関しては問題ない、あいつらは使えない女や子供は殺して行ったが、私たちのように戦う破面や虚は捕獲と盗み聞きしていた____ドントチャッカ、アイツは強い。もしやられているとしてもあれほどの手練を捕獲しないとは思わない」

 

「なるほど…、じゃあドントチャッカさんの霊圧を…」

 

どこから取りだしたか分からない端末を懐から取り出した浦原、だがそれと同時に少し離れた場所からかなり大きな爆発音が響いた。

 

「「っ…!?」」

 

 

「っ…!!」

 

「あっ、、ヒユちゃん!!」

 

気がつけばヒユは1人走り始めていた、直ぐに気づいた井上が止めようとするが、聞く耳を持たずそのまま走って行く。

 

「こういう所、なんとなく黒崎サンに似てるというか…、皆さん追いましょう!」

 

その言葉に茶渡と井上が目を合わせ、少しだけ微笑む。彼女に最初から不信感などをあまり抱かなかったのは…本当に彼に似ているのだからかもしれない。

 

「わかった」「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそんなことを思っていた井上や茶渡を他所に、ヒユは1人胸の内から溢れる怒りを抑えようと必死だった。

 

 

 

(もうこれ以上殺させやしない…!!破面だって虚だって死神だって…!!)

 

溢れ出る怒りは彼女をどう導くのだろうか…、その時のヒユ達にはまるで検討もつかなかった。

 

 

 

__________________________

 

〜セラフ部隊・アリーナ〜

 

 

(…なんだ、この気持ちわりぃ感じは…)

 

31Aとの共同訓練の最中、一護は自身の奥から溢れる怒りに似たようなモヤモヤに苛まれていた。

 

一護自身現在、怒りに包まれているわけではないはずなのにそれとは真反対にどんどんと膨れ上がるのを感じる

 

(これじゃあまるであの時みてぇじゃねぇかよ…)

 

 

 

『俺が…”斬月”だッ!!!』

 

 

 

久しぶりに自身の中の白い自分に唆されているような感覚……あまり気持ちいいものでは無い。

 

 

「クソッ…!!」

 

気づけば目の前に立っていたキャンサーの攻撃を始解の斬月で受け止める。

 

(ただでさえ今は31A自体がギスギスしてやがんだ…っ!!これ以上面倒ごとは辞めてくれってんだよ!!)

 

前回の任務から時間は立っているが、今は月歌もユキも2人して最低限の会話…ほぼ作戦内でだがそれ以外に言葉を交わすことは無くなっていた。

 

他の31Aのメンバーも無闇に入りづらいのか今行っている訓練も連携があまり取れていない。

 

一護自身誰かを引っ張ると言うことはあまり得意では無い。彼女達には力で答えていくしかないというのに部隊長と作戦参謀のような立ち位置の2人が険悪ではどうしようもない。

 

(近くデケェ作戦ってやつもあるんだ…、このままじゃ困るのは俺たちだけじゃねぇ……)

 

キャンサーを払い除け、そのトドメを逢川めぐみに任せる。

 

「ほんま、あの2人喧嘩しとるで」

 

「ああ、見りゃわかんだろ…」

 

「ウチらもやりにくいったらありゃせーへんわ」

 

「お互い…譲れないからだろうね」

 

 

生命をとしてまで東城つかさの記憶にたどり着きたいという茅森月歌

 

 

反対に生命が1番大事だと、もっと慎重になるべきだという和泉ユキ。

 

 

(それに囲まれた東城の気持ちも考えてやれってのに…)

 

その2人を引き離してしまったと、東城つかさはかなり悔やんでいた。

 

 

『あの二人を引き剥がすくらいに、私の記憶は大事なのかしら…』

 

おそらくあの二人はその事には気づいていない、もしかすれば自分の意見だけを見ているせいでそれに気づいていないかもしれない。

 

 

 

(この訓練が終わったら、アイツに相談でもしてみるか…)

 




作者のXです。このような作品を作っている主の生態はここにあります

https://twitter.com/NLAS1106?t=w8Xgm-0H20wuB5PtJmu4fQ&s=09
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