〜セラフ部隊基地・屋上〜
ぶっ倒れてるであろう31Aを他所に、1人屋上へと向かった黒崎一護。正直死神のまま瞬歩を使えば一瞬で辿り着けるのだが他言無用と書いてある以上目立つ行動は避けたかった為に人の姿のまま階段を駆け上がった。
「来たか」
屋上へ着き、数歩進むと先に椅子に腰掛けていた月城がこちらへと振り向いた。
「珍しいじゃねぇか、アンタから声を掛けてくるなんて」
「ああ、だがこの事は貴様にも話しておくべきだと思ってな…立ち話もなんだ。ここに座れ」
そう言うと自分の横を指さす月城、一護はそうだなとだけいい月城の隣へ座った。日が傾きかけている空を見ながら2人だけの空間が生まれる
「これは既に茅森と話した事なのだが、イージスタワーはセラフの研究所だということが分かった」
「ああ…」
あらかた予想は着いていた、あれだけの厳重な建物…そしてその内部が今も生きているように見えたのは一護だけではなかったようだ。
「今まで我々は様々な謎を抱えてきた、もしかすれば少しでもそれが解ける鍵があそこにはあるのかもしれない」
「そうか、お前はここ…なげぇもんな」
様々な謎、このセラフ基地には凄まじい量の謎がある。一護自身も不審に思うことは多々あった。
「これは貴様も聞いてるであろうが、あの基地には東城つかさが関わりがあるようだな?」
「ああ、何せアイツ曰く母親が働いてた場所みてぇだ。記憶操作を受けてるとかなんとかでその鍵もそこにあるみてぇだがな…」
「そして我と茅森は決めたのだ、あのイージスタワーへと出向き軍の謎を知ると」
「そんなことどうやって…」
危うく大きな声で言いそうになった一護を月城が言葉を遮り静める。
「今回の作戦のフェーズ6、掃討戦の際に抜け出し…イージスタワーへと向かう」
「っ…!?」
「これは既に茅森と決めた事だ、止めようとするな」
「いや…止める気はねぇけどよ…。なんで俺にも言ってくれねぇんだあいつは…」
両手を握りしめる一護に、月城が静かに声を上げた
「アイツは躊躇っていた、お前の力を借りる事を」
「…俺の、力?」
「貴様は強い、恐らくこの我よりも…今まではキャンサーを倒すという名目の元力を合わせてきた、だが今回は茅森達の問題になる…そのような私情に貴様を頼る訳には行かないと…アイツは言っていた」
一護を見ず、月城は言葉を吐く。
「じゃあアンタはなんで俺に…?」
茅森が巻き込みたくないと言うのなら、何故それを裏切る様なことをするのかと…一護が月城に問いかける。
「そして我と茅森は今もイージスタワーの情報を集めているのだ」
だが返答は無く、そのまま話が進もうとしていた
「質問に答え――――」
まるで飛びかかるかのような勢いで言葉を吐こうとする一護に、月城が視線をこちらへと向け言葉を発した。
「…分からぬか?――実際問題これは貴様の力を借りねば進める問題では無いのだ」
「…っ」
「茅森の気持ちを踏み躙るような結果になろうとも、そのせいで誰かが欠けてしまうのはあまりにも耐え難い――それに今の31Aは任務に支障がある状況とも聞いている」
「そんなに出回ってんのか?その情報はよ…」
「ああ、この基地は狭いからな…それにあの二人は仲がいいと評判だ。それにココ最近ライブがないのもそれを確証付けるものになっている」
「はぁ…」
31Aのバンドはそこまで勢いがあるのかと内心思ってしまった。そういえば少し前にドームからもファンレターが届いてるとかなんとか言ってた気がしたのを思い出した。
「少し話が逸れたな…、先も話した通りに貴様の力が必要となるだろう。茅森曰くイージスタワーは今も生きている、恐らく外部も内部も凄まじいセキュリティがあるだろう」
「それを突破する為には俺の力が必要ってことかよ」
「その通りだ、情報なら和泉ユキが…力押しなら黒崎一護、貴様が適任なのだ」
「そりゃいいけどよ、フェーズ6つったらかなり消耗してると思うぜ…ただでさえ相手は未知数なんだ。俺も31Aもお前もタダで戻れるとは考えちゃいない」
「そこは我らセラフ部隊を信じろ、黒崎一護」
「それもそうか、なんてったってアンタはセラフ部隊最強なんだもんな」
そう言った一護、だが月城は反対に顔を伏せた。そして少し小さな声で…
「我は最強などでは無い…ただの臆病者だ」
「…アンタ」
その一言にどれ程の重みがあったのか、瞬時に全てを拾いきる事は出来なかったもののその意味を理解出来た。
「さて、話も済んだとだ――出てきたらどうだ?茅森」
「そろそろ出てこいよ、茅森」
何故か同タイミングで屋上の入口付近に潜んでいた月歌を呼ぶ。少しして頭がひょこっとだけ出てきて
「あちゃ…バレた」
と舌を出して月歌が現れたのだった。
――――――――――――
「一護には頼りたくなかったんだけどなぁ…」
自販機のコーヒーを手で持ちながら、茅森がボヤく。横に座る一護も月城も自販機の飲み物を持ちながら上を見ていた
「お前の心配りはありがてぇけど、知った以上は俺もかかわらせてもらうぜ」
「ほらー、一護ならこう言うと思ったよ。確かに一護は強いけど今回はあたし達の問題だし頼りずらかったんだよなー」
「茅森、あれから我はイージスタワーについて調べてきたのだ」
2人の話を一旦遮り、月城が懐から紙を幾らか取り出してきた。
「こんなに…!?」「すげぇな…」
どれもこれもイージスタワーについて書かれており、しかも驚くべきことに全てが手書きだったのだ
「司令部の目を掻い潜るのは少し苦労したがひとまずは書いておいた。だが…」
「ん?」
「これは全て誰もが調べられる程度の内容だと言うことだ」
「…っ!」
そう言われた一護は慌ててもう一度全て書類に目を通す。たしかにイージスタワーについて書いてあるが何を実験していたか…内部はどうなっているのかなどといった情報は一切無かった。
「同じ軍なら中の情報も見れるはず、アンタはそう言いたいのか?」
「ああ、全ては明かされずとも我々が有利になるならば公開されているはずだ」
「てことは…、私達でも知っちゃいけないことがあるってことなのかな…」
「そう見るのが妥当だろう」
(…)
一護自身、彼女達には軍が隠し事をしてると気付いたならそれを知る権利はあると考えているが…それと同時に不安もあった
『本当に戦うべき敵の話だ』
初代死神代行”銀城空吾”が一護のもつ代行証…通称”死神代行戦闘許可証”、死神代行が現世での活動を行えるように浮竹十四郎から渡されたものだったが
――――その効力が無いことに直ぐに気づいた。
『代行証の役目は”監視と制御”だ』
そしてその本当の役割を銀城の口から明かされた時、一護自身も動揺した。違和感がなかった訳では無かったが戦った仲間が自分を騙す訳が無いと頭の隅に追いやっていた。
だが銀城の言葉を聞き、一護は自らが貫く信念をさらに確固たるものへと進化させた
浮竹十四郎自身も監視と制御だけならもっと良い手段なんていくらでも思いついたはずだ。だがそれをわざと形に残る代行証にして一護に渡した。
『きっと浮竹さんは、わざと気付かせてくれたんだ…そして選ばせてくれた』
『何をだ?』
黒崎一護は力を求めていた、ある日ルキアが自分自身に戦う力を与えてくれた。
力を失った自分に尸魂界の皆が戦う力を再び与え死神代行へとしてくれた
だから信じた
そして選んだ
――――――皆を護って闘うと
「…どうしたの一護?」
もし仮に凄まじい結末を招き…
事実を知った上で、彼女達に選ぶ権利はあるのだろうか。それでも戦い続ける道か…戦う以外の選択肢なのか…それとも…
『余計な詮索をするなら――――』
レッドクリムゾンとの闘いが終わったあと、疲弊した31A、31Bの代わりに白哉と2人で派遣されたあの富士山の哨戒任務の際に放たれた司令官の言葉…
あれは…、あの空気は全て事実だ。余計な詮索をすれば消すと、セラフなどといった未知の武器を開発する軍には恐らく記憶すら消す技術など容易い事なのかもしれないと思ってしまった…
それとも戦いに紛れて知りすぎたメンバーを殺害する…
「いや…なんでもねぇ」
考えれば考える程良くない方向へと進んでしまう一護、だが月歌の言葉で元の世界へと戻る。首を傾げる月歌にこちらを真剣に見つめている月城…月歌はともかく月城に見られていると何となくだが心を読まれているような気がしたので目をそらす。
「なんだ?黒崎一護…」
「なんでもねぇよ、それよりほら…これから俺たちどうすんだよ」
「諦める、なんてことはするつもりは無い。あたしはなんとしてでもつかさっちの記憶を取り戻させてあげたいんだ。その為にはイージスタワーが不可欠なんだよ…!」
「茅森…」
「そうか…貴様は仲間を大事にしているのだな」
「仲間だよ、大切なね……もちろんもなにゃんもあたしにとっては大切な仲間さ…ユッキーも…」
大切な仲間の中に自然と和泉の名前が出てきて、本人もそれに気づいたのか少し口ごもった。口ではあんな感じの言い合いをしていても…やはり心では…と内心思う
「茅森、お前そんなにアイツが大事ならとっとと頭下げりゃいいだろうがよ…」
「一護には分からないよ!年頃の女の子の難しい事情は…!!」
「妹みてぇな事言うなよ…!」
「え、一護妹いたの…!?」
頭を抱えた一護に、月歌が身を乗り出して一護へと聞き返す。後ろにいた月城も意外だ…と顔に書いてあるような表情をする
「え、、あぁ…話してなかったっけ?」
「初めて聞いた…!!――じゃあきっと心配されてるね」
「あぁ…、とっとと帰んねぇとアイツら怖ぇからな…」
2人の顔を思い出しくすっと笑う一護に、月歌が少しばかり間を置いて返事をする
「へー…でも一護の妹ならきっと強いよ。だから大丈夫」
「そうか…、貴様は元々ここの住人ではないのだな?」
「あぁ、俺も白哉も元々はこの世界じゃねぇんだ――ただ1つ分かってるのは俺も白哉も、空座町に現れたデケェ怪物に連れ去られた事」
そして今回の200m越えのフラットハンドというキャンサー…、それが2人を攫った敵なのかもしれない。もしそれを討伐することが出来たのなら
――元の世界へと帰れるかもしれない。奴らが言葉を通用するなら力で屈服させ元の世界へと戻る方法を教えてもらう。
(早くしねぇと、石田達も心配させちまうからな…)
それにココ最近胸の内がザワザワする事も多々ある。そして一護自身の霊圧も奥底で燻っている…まるで何かに感化されるように…
「そっか、いつか一護も帰らないと行けないんだもんね」
「あぁ、、だからその時までよろしく頼むな」
「ならばその事についても少し探りを入れてみよう、お前が少しでも早く戻れるようにな…。それに仲間がいるなら大切にした方がいい…後悔しないようにな」
「月城…アンタ」
その言葉に含まれた意味、そしてその重み。かつての蒼井に言われた時もその重みは図り知ることは出来なかったが、月城最中の言葉のその重みは…蒼井よりも深く重かった。
「ああ、大切にするよ…俺にとって大事な仲間なんだ」
「その心意気良し、健闘を祈る」
目を伏せそう言った月城、心做しかその顔は笑みにも見えたが――――――――――
一護にそれを知ることは出来なかった。
「月歌のばかやろー…」
そしてその話を聞いていた1人の少女も、そう小さく呟き屋上を早足で去っていった。
次のお話は、ヒユさん主体で書いていこうかなと考えてます!
こう、割り振りのバランスって難しいんですよね…、なんでいい感じにタイミングを合わせる為にヘブバン世界側がそれなりにグダることもあるんすよね…