死神の幻想   作:エヌラス

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ヘブバン…ストーリー更新まだかなぁ…



83.フェーズ4__一護の余裕

 

 

「今日からフェーズ4の訓練に入るわね――――」

 

オペレーション・ベガまで残り僅か4日。慎重に作戦の事前練習を進めていく31Aは今日も朝からアリーナへと出向いていた。

 

「このフェーズでは、待機した他部隊と共にフラットハンドを目的まで誘い込みなさい。あなた達を含め三方向から一斉に仕掛けるわ」

 

「タイミングを合わせる必要があるってこと?」

 

珍しく司令官の言葉に知的に返事をする月歌。手塚司令官は1度帽子に手を触れて話す。

 

「そうね、でも敵の攻撃を待機してる部隊に向けるため牽制も必要になるわ。あなた達は作戦の肝――期待してるわ」

 

そう言い終わると、エミュレータ空間が変わっていく。

 

「それでは訓練を開始します、行ってらっしゃいませ」

 

その言葉と共に背景が一変し、もはや見慣れつつある景色になる。それと同時に不思議と身が引き締まり一護も息を吐いて呼吸を整えた

 

(…東城の野郎は平気そうだな、だが和泉と茅森のふたりは前よりも怪訝になってねぇか…?)

 

31Aを見回しながら一護が内心そう思う。現に――

 

「フラットハンドとの距離感は気をつけろよ?」

 

 

「…わかってるよ」

 

と、まるで喧嘩した後の子供のような態度をとる月歌に和泉がため息を吐き目を逸らす。タマやめぐみはもはや慣れつつあるようで最初のような気まずささえ消えそうになっていた

 

(このままじゃ31Aはヤベェ、呑気に仲直りなんて考えてらんねぇのに――蒼井の奴はどこに行ったってんだよ…)

 

怪訝が当たり前になってしまうと後々の31Aに必ず障害となる、とはいえ共に解決しようと言った蒼井も最近はなかなか予定が合わず会えない状況が続いていた。

 

白哉が言う元の世界に帰ることと言い、山積みになっていく一護の中の課題にそろそろ潰されかけていた。如何せんこういうことを大量に抱え込んで悩むのは黒崎一護自身得意なことでは無い。

 

(だがアイツらなら大丈夫のはずだ、今迄の絆が本当なら…)

 

まだ完璧に道が違えた訳では無い限り、必ずどこかで2人を繋ぐものがある。なんなら外部が手を出して解決しようということすら無粋なのかもしれない

 

(こういうのをお節介っていうんだろうな…)

 

「一護さん!始まりますよ!」

 

考え込んでいたのを見抜かれたのか、こちらへと歩み寄ったタマが声をかけた。

 

「ああ」

 

だが特段ボーッとしていた訳では無い一護はすぐさま返事を返しひとまず目の前の訓練へと意識を向ける。

 

 

「配置完了、フェーズ4を開始します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「進行ルートにキャンサー!アタシとカレンちゃんでデフレクタを削って一護がとどめを刺す即効で行くぞ!」

 

「よかろう!」「ああ!!」

 

フラットハンドを誘導する最中、やはり邪魔となるのがキャンサー。今回もご丁寧に進路上に配置された数体のキャンサーがこちらを視認し襲いかかる。

 

「はぁっ!!」「ひひゃあっ!!!」

 

視認するな否や、月歌とカレンが突っ込み奇襲をかけデフレクタを根こそぎ削り取る。

 

「カレンちゃん後退!――――、一護!!」

 

 

「”月牙天衝”ォッ!!!」

 

 

月歌とカレンが後ろへと下がると同時に前へと瞬歩を使い移動した一護が、目の前のキャンサー目掛け月牙天衝を放ち一掃する。

 

「ウチにもこんな一掃できる力がありゃいいのに…!!」

 

「私もです!!」

 

同じ近接を持っためぐみとタマが悔しそうな表情をする。

 

「オメェらにはオメェらで切り札ってやつだ、それまでの温存は大事だぜ」

 

一護がそう言うと同時に司令官から通信が入った

 

『フラットハンドがまだ到達してないわ、奥側の横岳の麓まで移動して引き付けて頂戴』

 

「「了解!」」

 

キャンサーを倒したことに一喜一憂してる暇などなく、直ぐに司令官からのダメ出しが入り誤差を修正していく

 

 

 

 

 

 

 

『次は行き過ぎね』

 

「えー!無駄足かよ…」

 

『美濃戸中山の手前まで移動してバランスを取りなさい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月歌!近付きすぎや!!」

 

「くっそ…!!急ぎで片付けるぞ!」

 

フラットハンドとのバランスを見誤った月歌が、想定よりも近づく。だが離れようにもタイミング悪くキャンサーが数体狭い道に立っていた。

 

「――――――卍解ッ!!」

 

「一護…!?」

 

最後列で走っていた一護が卍解し、月歌達を一気に追い抜きキャンサーに近づく。

 

「今はテメェらに構ってる暇はねぇんだ…っ!」

 

始解とは比べ物にならないスピードで近づいた一護がそのまま天鎖斬月を振るい月牙を飛ばしキャンサーを払い除ける。

 

「おおー…」

 

と関心する月歌とは反対に和泉が少し問題がありそうな顔をしながら口を開いた。

 

「実戦でもそれやるつもりかよ…!」

 

「ひとまずはあいつの誘導だろ、フラットハンドさえ倒せばあとは掃討作戦が何とかしてくれると思ったんだけどよ…」

 

「確かにそうかもしれないけど、あんまりキャンサーを残してもいい事ないぞ…」

 

和泉がそういい、一護が頭を抱えた。突発的に思いついた行動だったがやはりあまりしない方がいいかもしれないと思わされた。

 

(あれ以来虚の力も使えねぇ)

 

そもそもこの死神の姿で虚の力が残っていたのも驚きだったが、あの姿をきっかけにまるで残り火が消えたかのように仮面すら出せなくなった。

 

(唯一の俺のキャンサー特攻も使えねぇし、歯痒いなったく…)

 

『フラットハンド、目標地点まで誘導完了しました』

 

歯がゆさに身悶えする一護を他所に、通信機からはフェーズ4訓練は完了という旨を伝えられる

 

『お疲れ様、フェーズ4は以上よ。』

 

「終わったー!!」

 

司令官の言葉を皮切りに、月歌がそう叫んでその場に座り込む。部隊長である月歌は戦闘以外の面でも様々なことを考えているのだろう、疲労面は肉体的にも精神的にも来ているはずだ。

 

司令官も流石にこの状態の31Aに更なる訓練は課さないだろうと一護も卍解を解き斬月を背中へとしまい込む。

 

同時にエミュレータ空間が様変わりし、元の空間へと戻る。だが一護はすぐさま異変に気がついた

 

(なんだ…?あっちこっちに瓦礫みてぇなのがあるな)

 

いつもなら何も無い殺風景な場所のはずだったが、空間はいつもの殺風景な場所。だがオブジェクトのようなものがあちらこちらへと配置されていた。

 

『小休憩を挟んだ後、まだもう少し訓練があるわよ』

「そういえば朝、電子軍事手帳に来てたな」

 

「うん、なんだろうって私も思ってた」

 

「ええっ!?あたし見てない!!」

 

手塚司令官からの言葉に、茅森月歌を覗く全員が思い出したかのように言葉を出す。

 

(なんで部隊長が知らねーんだよ…)

 

先程の聡明さはどこへ行ったのだと思いながらも一護も再び気を引きしめ、手塚司令官から渡された小型のセンサーカメラを適当な箇所へ付ける。

 

何となくだがもう始まりそうな気がしていたからだ

 

「それで、訓練って何するんだ?――まさかフラットハンドとの実戦って言わないだろうな?」

 

和泉が電子軍事手帳越しに司令官へと問いかける。

 

『いいえ、相も変わらずフラットハンドの行動パターンは読めてないわ。だから憶測であなた達に変な癖をつけたくはないの』

 

「じゃあ一体なんの…」

 

月歌が頭に?を浮かべながら司令官へと問い掛ける。

 

『貴方達31Aには空間把握能力と反応速度、今からそのふたつを鍛えてもらうわ…私がもう大丈夫と判断するまでね』

 

「でもどうやって…」

 

今迄月歌達が戦ってきたキャンサーの中には、その条件を満たす奴などいない。可憐が頭を悩ませる中、横に立っていた東城がふと足を動かし一護の方へと視線を向けた。

 

(アイツ…またあの冷たい目、まさか…)

 

東城と目が合った瞬間、すぐさま一護はいつもと違う様子に察しがつく。

 

「空間把握能力を試される程の速度と、恐らく回避も必要となる広範囲な火力。そんなものを持ってるのは…貴方だけ――そうでしょう?黒崎一護さん?」

 

「まさか…、そういうことかよ」

 

ようやく合点がいったのか、東城の次に和泉がこちらを見る。一護はその言葉に頷き少しばかり距離をとった

 

「そんな…、訓練とはいえ一護に刃なんて向けられる訳が…!」

 

 

 

 

 

 

「そういうことなら話が速い!!!!」

 

 

 

 

 

 

未だ状況が掴めずに立っているメンバーを他所に、誰よりも早くセラフを召喚したカレンが一護へとセラフを振るう。

 

「っ…!!――元気いっぱいじゃねぇか…!!」

 

「ようやくお主と本気でやり合えるわ、空間把握とやらは知らんがやり合えるなら結構ッ!!」

 

斬月で受け止め拮抗するが、すぐさま一護がカレンの体勢を崩し後ろへと回り込む。峰打ちで意識を飛ばせばひとまずそれでクリアかと思い斬月を振るう――――

 

「甘いなァッ!!!」

 

「っ…!?」

 

だがカレンが背後へとセラフを回し、一護の斬月を受け止める。どういう身体能力してるのかと困惑する一護を他所に、斬月を見たカレンが不服そうな声を漏らした。

 

「なんだこれは…峰打ちではないか…!」

 

「ふざけんな、お前らを斬れる訳がねぇだろうが…っ!!――第一こりゃ一応訓練だぞ…!?」

 

「舐めてもらっては困るなァッ!!――――そうだろ諜報員!!」

 

「――そうね」

 

「っ…!?」

 

カレンが笑みを浮かべ、東城を呼ぶ。気がつけば東城つかさは一護の後ろへと立ち、自身のセラフを向けていた。

 

「くそっ…!!」

 

直後、四方八方へと散らばったつかさのセラフの銃弾。まるで炎を宿しているかのように輝いたあと一斉に一護へと向かった

 

「ひひっ!!このワシが逃がすと思うか!?」

 

「冗談じゃねぇ!!あんな弾喰らったらいくらデフレクタがあれど無事じゃねぇんだぞ!?」

 

斬月でカレンのセラフを押し返そうとするが、鎌形のセラフを上手いこと斬月へと絡みつかせ離さない。

 

「種割れしてハイマッドフルバーストでもしない限り、この数は流石の一護でも捌ききれないでしょ?」

 

「るせぇ…ごちゃごちゃ言うんじゃねぇよ!!」

 

銃弾の向こうで冷たい笑みを浮かべ一護を挑発する東城、悪態をつく一護だがこのままでは回避できないのは目に見えていた。

 

「お前なら躱せんだろ!!」

 

「何だとォ!?」

 

だが目の前のカレンに言葉を投げた瞬間、突如一護が斬月から手を離し、カレンの目の前から消える。拮抗していたはずの武器から力が抜け体勢を崩すカレン、だが即座に体勢を立て直し目標を見失いあちらこちらへと散乱する東城の銃弾を躱す。

 

 

「ハッ!ごめんね、強くってさってか!」

 

「そうじゃないと困るわよ」

 

東城の後ろへと回り込んだ一護が、今度は逆に東城を煽る。一瞬眉がピクっと動いた東城が振り向きざまにセラフを振るい銃弾をあちらこちらへと飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんであの二人はあんなノリノリやねん…」

 

突如一護との戦闘訓練が始まった31Aだが、未だ東城とカレン以外は立っているだけだった。

 

「特にカレンちゃんさんはかってないほどに浮き足立ってる…!!」

 

「というかありゃ一護もスイッチはいってない…?」

 

『早くしないと、鍛えられるものも鍛えられないわよ』

 

未だ訓練を始めない月歌、めぐみ、タマ、ユキに痺れを切らしたのか司令官が電子軍事手帳越しに言葉を放つ

 

「…らしいけど、どうする月歌」

 

「…わかった、皆これは訓練だ!間違っても一護を倒しちゃダメだからね!」

 

「あいつならなんとか躱しそうだけどな…」

 

「和泉さんの言いたいこと…私も分かります…!!」

 

ひとまずセラフを持ち全員が展開する。その先ではカレンと東城、そして一護が戦闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こいつら…こんなに連携取れるのかよ…!!)

 

目の前のカレンを捌ききったと思いきや、東城の銃弾が眼前に迫る。

 

「月牙天衝ッ!!」

 

目の前の銃弾を全て月牙天衝で薙ぎ払ったと思いきや、爆風の中をカレンが突っ切り再び一護と刃を交える。

 

舐めてはいない――そういえば嘘になるのかもしれない。正直彼女達の力は良くて31A全員で黒崎一護と互角――そう思っていた。

 

だが今の現状、卍解せず未だ全てを出し尽くして居ないとはいえたったのふたりでここまで自分を追い詰めていく、その事に一護は驚きと複雑な感情が入り乱れていた。だが――――

 

 

 

(今はそんなこと言ってらんねぇ…しかもカレンの野郎…コイツは本当に”殺人鬼”なんだ)

 

目の前で鎌のセラフを振るうカレン、その刃を受け止める度斬魄刀から流れてくるもの。

 

――強者との殺し合いを楽しみ

 

生命の奪い合いに快楽を感じている。

 

(これが本当に可憐のもうひとつの人格だって言うのかよ…!!)

 

普段は何とも思ってはいなかった、だがいざその刃を向けられた時初めて、一護は可憐とカレンの異質さに気付かされることとなった。

 

(まるでグリムジョーみてぇじゃねぇか…!!)

 

かつて自らと刃を交えた男の影がカレンに重なり、一護が力を込める。

「ほう…少しはやる気になったか…!?」

 

「あんまり調子にのんじゃねぇぞ…!!」

 

力を込めた瞬間にカレンに悟られ、凄惨な笑みが更に深まったように感じる。

 

「ほう…だが――――――諜報員ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ばーん」

 

 

 

「っ…!?」

 

突如トランスポートを使ったカレンが、一護の目の前から消える。そして声量は言うほど大きくない、だがその言葉が一護の耳に届いた次の瞬間――――――

 

 

いつの間にか辺りを取り囲んでいた夥しい数のエネルギー弾が一斉に一護へと放たれた。

 

 

「なっ…!?」

 

「つかささん!流石にやりすぎなのでは…!?」

 

ようやく2人の元へと近付いた31Aのメンバーが驚愕する。離れた場所からでも分かるほどの全方位からの攻撃。

 

「あれ程で死ぬくらいなら私もこんなことする訳ないでしょう?」

 

「でもつかさっち…!」

 

「あ、一護さん…!!」

 

爆風が晴れていき一護がようやく視認できるようになる。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……ハァ……っ!!」

 

右手で斬魄刀を握り、左手で額を押さえている一護。ふと足元に目をやると赤い液体がぽたぽたと滴り落ちていた。

 

(クソ…、今の何だよ…!!あんな弾いつの間に辺りにばら撒きやがった…!)

 

額から流れ出る血を拭いながら再び31Aの前へと立つ一護。その一護を見た東城が再び冷たい声を発した。

 

 

 

 

 

「ひとまずはその余裕そうな、私達を見下すのを辞める…位はできたかしら」

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