このまま司令官実装しませんか?(無茶振り)
「……」
視界に移る人物も最低限となる夜のナービィ広場、そこの場所に朽木白哉は立っていた。なにか特別なことがある訳では無いがここにいると無性に落ち着くのだ。
「こんばんは!」
「…兄は」
突如後ろから話しかけられ、その方向へと振り向く。いくら気を抜いていたとはいえある程度の警戒は怠っては居ないつもりだった。だが目の前の少女___茅森月歌はそれを優に超えてこちらへと歩み寄っていた。
〜ナービィ広場・ベンチ〜
「こうやって2人で話すのって、もしかして初めて?」
ベンチに腰掛けた月歌が、足をぶらぶらとさせながら白哉へと声をかける
「そうだな、兄とはあまり関わることがなかった」
「どう?30Gは、ユイナ先輩が頑張ってるってあたしに言ってるけど…居心地はいい?」
「…悪くは無い、仲間に背を預けるというのもたまには良いと、そう思う」
その言葉に内心月歌が微笑む。
(ユイナ先輩、しっかりやってんじゃん)
「それで、兄は私に何か用でもあるのか?」
「あちゃー…やっぱバレてた?」
自分なりに必死に誤魔化していたつもりの月歌が少しばかりたじろいだ。そんな彼女を目を細めた白哉がボソリと呟く。
「……兄は隠すのはあまり得意ではないらしい」
「まいったな、これも以心伝心??」
「……」
それに返事はしなかった、暫く会話が途切れるが「よしっ…」と心のやる気を灯したのだろう茅森月歌が白哉へと質問をなげかけた。
「この際ハッキリ聞かせてもらうけど、一護となんかあった?」
その言葉にピクリと白哉が動いたのを、月歌は見逃さなかった。
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「……アンタはまともに現れるってことを知らねぇのかよ」
同じ夜。基地内の別の場所で1人歩いていた黒崎一護は、自らをつけて歩く人物へと声をかけた。霊圧とは違う何かを捉えて何となく気配を察知していた。
こうして人気がない葬儀場に歩いてきたのもそれが理由だ。
「……先輩に対してその口の聞き方は良くないんじゃないかい?」
暫く様子を伺っていたのだろうが、一護の視線に観念したのか少し離れた場所から姿を現した。
「人の事ジロジロつけておいて、先輩風吹かれても扱いに困るんだけどな」
軽口に軽口で返す一護。だが今日はいつもとは違う雰囲気を纏う蔵に少しばかり違和感を抱いていた。
「相変わらずあたいは信頼されてないのかねぇ…」
「セラフ部隊としては信頼してるけどよ、今迄が今迄だからな…」
デカイ衝突は無いものの、小さな小競り合いを起こしていた2人の距離感は凄まじく広がっているといっても過言ではなかった。
「少し、顔を貸してくれはしないかい?」
「……ああ」
そう言った彼女を、今の一護は何故か拒否することは出来なかった。
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「それじゃ2人は…!?」
「そうだ」
突如告げられた事実に、月歌はベンチから転がり落ちそうなほどに驚いていた。その反応を当然のように察知していた白哉は目もくれず目を伏せている。
「色々整理したいんだけど、二人の世界にもキャンサーが出たってことでしょ?それで一護も戦って気が付けばここにいた…そんな荒唐無稽な」
「今度我々が敵対するキャンサー”フラットハンド”と言ったか…、奴には恐らく特殊な力がある」
「まぁ、司令官もそんな感じのこと言ってたね…あたしはあんまり覚えてないけど…」
「…冷静なのだな」
「意外?___でもあたしはまだ理解できてないだけかも…いざ言われると意外と頭の中で整理出来ないんだなぁって」
「…特に兄らと黒崎一護は関わりが深いと見受けている」
「うん、一護はあたしにとっても、31Aにとってもすごく大切な仲間だもん」
「…」
「いつかは来るって覚悟はしてた、でも…早いね」
「早い…か」
「うん、数ヶ月なんてあっという間だったから……」
「作戦当日、私も黒崎一護に同行するつもりだ。奴に近付き底を出させるにはそれが一番動きやすい」
「分かった_____上手くいくといいね」
「……感謝する」
そう言った次の瞬間には、白哉は月歌の目の前から消えていた。相変わらず不明の能力だなと思いつつ暫く夜空を眺める。
「そっか…」
吐息のように漏らしたその声は、誰の耳に届くことは無かった。
_______
「ここは…」
暫く、会話もそこそこに一護が連れられたのは…基地内にひっそりとある田んぼだった。
綺麗な水は夜空の光を反射しており、眩しいほど綺麗だった。
「ほら、あそこにゃ稲がはってあるんだよ」
そうして視線を向けた先には、まだ小さいが確かに稲が少しばかりはってあった。
「…ここ、アンタのか?」
「あぁ、そりゃもう隠れてねぇ」
「んな厳重な基地内でよくやるな…」
呆れるように声を出す一護、だが蔵はそんな言葉を気にすることも無く目の前の稲を…子供を見つめる母のような視線で眺めながら口を開いた。
「でも可愛いだろう?こんなに健気に育ってさ…あ、皆にはナイショだよ」
「なんでそれを俺なんかに教えんだ…?」
「別に、葬儀場なんかで話をするよりかはよっぽどマシだと思うけどね」
「ありゃあアンタがつけてたから仕方なくやったんだよ」
「そうかい、あたしゃまんまと嵌められた訳さね」
「…それで、何でこんなとこでひっそりやってんだよ」
何となく、今の自分に求められている言葉を分かったような…そんな気がした一護が言葉を出す。
「趣味さ」
「随分とあっさりしてやがんな、なんだ…?あのトロピカルってやつの原料か?」
まるでマフィアの麻薬栽培所を発見したような顔をした一護が後ずさる。あれは茅森から聞いた情報ではかなりヤバいキマるものだと…
「いいや、ただ何かを作る、育てるってのはいいんだよ。色んなことが見えてくるし…分かってくるんだよ」
「……」
「少し、昔の話を聞いてくれるかい?」
その言葉に、一護はただただ…頷くことしか出来なかった。
そうでもしないと、目の前の彼女は今にも消えてしまいそうだったからだ