死神の幻想   作:エヌラス

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私は禁書目録に続いて盾の勇者の成り上がりもハマってしまった…


99.作戦前日__後半

 

 

「じゃあな、明日はお互い頑張ろうぜ――蒼井」

 

「はい!」

 

葬儀場から歩き近くのナービィ広場で蒼井と別れた一護。蒼井の歩いていった先には水無瀬姉妹などが居たためこれから彼女達だけで何かをするのだろう。

 

(蒼井を頼むぜ、お前ら……)

 

かつての31Bを知っている一護からすれば、今の彼女達はそれぞれを支え歩み寄っていくことが出来るだろうと思えるくらいには成長していた。特に軍でも噂になっているのは水無瀬姉妹だった。いちごとすももの2人は31Bの中でも結構頑張ってる方らしい。蒼井との連携も完璧なんだとか

 

「さて、俺はどうすっかなって……」

 

そう言ってナービィ広場の方を向いた時だった。ふと見覚えのある姿が広場の真ん中に横たわっており、その周りをナービィが囲んでぽよぽよしている。

 

(んだあれ……見てるだけで眠たくなりそうな光景だな、それにあれは助けた方がいいのか?)

 

心の中で自問自答をする一護、どう見ても助けるべきだと思ってはいるのだがあそこからは霊圧みたいに凄まじいリラックスオーラが湧き出ており下手に手を差し伸べるべきなのか躊躇った。

 

「だがナービィに食われてでもしてみろ、目覚めが悪ぃ」

 

そう言いながら横たわる彼女の元へと歩み寄る。見覚えのあるシルエットの肩を掴んだ瞬間……その少女は一護の方へと顔を向けた

 

「四ツ葉じゃねぇか…!」

 

「その声……久しぶりに聞くなぁ」

 

少し驚く一護に対し、四ツ葉はいつも通りにゆったりとしていた。

 

「なんでこんなとこで、それに姉貴とかはどうしたんだよ……」

 

「今は皆色々やってんだ、あたいもこうやって英気を養ってる真っ最中ー」

 

「お、おう……」

 

「明日はすっげー動きそうだからな、こうやっとくと貯めれるんだぜ。一護もどうだ〜?」

 

そう言うと彼女は自分のスペースを少しだけズラし、一護の分も空けてくる。

 

「……」

 

「ほれ、ほれほれ……今日はいい天気だから寝転びがいがあるぞ〜」

 

「…………」

 

負けた、彼女から出るこの謎のオーラに一護は負けた。喋り方と良い声音といい仕草と言い、逆らいずらい雰囲気を四ツ葉は持っていた。

 

(だが、言ってる通りだ。悪くねぇ……)

 

寝転がってみると、まるで別世界に来たような感覚に落ちる。青い空も、心地よい空気も、ナービィの跳ねる音も。全てが自分を包み込むように動いている……そんな感覚に襲われる。

 

「だろー?ここはあたいのお気に入りスポットなんだぜ」

 

「いい所じゃねぇか」

 

ゴロゴロと転がりながら真横にピタッとくっついた四ツ葉。一護も悪くないなと思いそう言う……だが

 

「なんでくっつくんだよ……」

 

「茅森から聞いたぜ、一護には妹がいたんだって」

 

「……アイツから聞いたのか?」

 

意外なところから情報が漏れたなと思いつつ一護は返事をする。別に隠さなければならない事では無いがそれで下手に興味を持たれても困る。別世界から来ましただなんて言っても信じてくれないだろう。

 

まぁ死神の力や斬魄刀という時点で既に怪しい人オーラは凄まじいのだが、そこは誰も突っ込まない。この世界の技術の高さ故に疑われてないのならセラフありがとう、セラフ感謝である。

 

「だからあたいが妹っぽくしてんだよー、頭撫でてくれてもいいぜ」

 

「なんでそうなんだよ……」

 

さっきよりもくっつき、頭をずいっと差し出してくる。確かに妹はいるがこうやって芝生で寝転ぶことなんて無かった。

 

大体喧嘩が終わった後にチャドと大の字になって寝転んで笑い合うくらいしかしたことない。だが……

 

(遊子ならやりかねねぇな……)

 

元の世界の妹を想い、少しばかり懐かしい感覚に襲われる。そしてふと……四ツ葉の頭に腕が伸びた時だった。

 

 

「……っ!?」「っ!?」

 

四ツ葉自慢のお団子ヘアーと一護の手の微妙な隙間に、一冊の本が突き刺さったのだ。

 

ただの紙の塊のはずだが、凄まじい回転と速度で、しかも刺さった瞬間ジャキン!!とまるで刃物でも詰まってるような音がした。

 

「四ツ葉、大丈夫!?」

 

「今ので大丈夫じゃなくなりそうだったぞ……」

 

本をぶん投げた本人にしては明るい声でこちらへと走り寄る影、まずは四ツ葉を見下ろして心配の声を掛けた。

 

「そして貴方は…………って一護さん!?」

 

一瞬――ほんの一瞬だったが一護に向けられた目はまるでそこら辺の虫を見るかのような冷たい目だった。心の芯から冷えかけたその時……一護だと気づいたようで一気にいつもの柔らかな視線へと戻る。

 

「お、おう…一千子。久しぶりだな」

 

コイツ妹を護る為ならこんな目つきをするのかと内心冷や汗をかきながら一護が手を上げる。

 

「一護さんなら良かった。また何か変な虫でも付いたのかなってお姉ちゃん心配で……」

 

黒崎一護の元へ近づきつつ、突き刺さった本を手に取る。外観を一瞥してついていた汚れなどを手でポンポンと落としながら歩く少女――――31Eの部隊長の大島一千子だ。さっきまでの殺気に似たものは消えているものの向けられた方はたまったもんじゃない。

 

「もう用事は終わったのかー?」

 

どうしよう、どう声をかけたらいいのだろうと思い悩む一護の横で引っ付いたままの四ツ葉が手をぶらぶらとしながら一千子へと声を掛けていた。

 

「ええ、だから迎えに来たのよ。四ツ葉。二以奈も三野里も五十鈴も六宇亜も待ってるわ」

 

まるでショッピングモールでの買い物を終わらせた父親のような言葉を向けながら一千子が四ツ葉の手を掴む。

 

「引っ張るなよ〜…」

 

「こーら、一護さんに迷惑掛けちゃいけないでしょ?」

 

「いや、気にすんな。俺もコイツに誘われて寝転んでたんだ」

 

「そうだったんですね、しかもこんなにくっついて……!ふぬぬ…っ!!」

 

「おー」

 

「っ…!?マジか…っ!?」

 

一護に引っ付いたままの四ツ葉を引っ張る一千子。最初は当たり前だがビクともしなかったはずなのだが……何故か少しずつ一護ごと引き摺られ始めていた。

 

(姉貴パワー恐るべしだなったく……)

 

そう思うと腕にしがみついた四ツ葉を引き剥がそうと一護も四ツ葉を掴む。

 

「ふっ……!!なんでこんなくっついてんだ…!?」

 

だが一護の腕にしがみついていた四ツ葉はいくら引き剥がそうとしてもビクともしなかった。

 

「あたいの吸着力を舐めるんじゃねーぞ…っていてててて……」

 

痛がりながも何故かその場から動こうとしない四ツ葉。流石にこれ以上は千切れると思い一千子も一護も引っ張るのを辞めた。

 

「困った子ね…」

 

「明日は忙しいんだし、今日はのんびりしてよーぜ…」

 

腰に手を当ててはぁ……と溜息を着く一千子の傍らで四ツ葉はあいも変わらずこの雰囲気。

 

「たまにゃいいんじゃねぇか一千子。作戦前日だってのにそんなに本持ってても疲れちまうぞ」

 

「一護さんまで……やっぱり四ツ葉が何か言ったんですね……?」

 

「いや、俺もさっき寝転んだばっかなんだ。でもたまには悪くねぇなって……ほら、こっちこいよ」

 

「え……!?」

 

そう言うと、四ツ葉がやったように一護も自分の横を空けてほれほれと手を振る。その反応に一千子があたふたとし始めていた。

 

「ん……?どした?顔真っ赤じゃねぇか」

 

(一姉……まさか)

 

「えっ……あっ、、じゃあ……お言葉に甘えて、失礼します…?」

 

何やらもじもじとしながら一護の真横へと寝転ぶ一千子。暫くは体勢を整えていたのかやけに落ち着きがなかったが

 

「ほんとだ……心地良い」

 

暫くすると定位置を見つけたのか全身で日の光を浴びていた。顔から読み取れるくらいにはほわほわとしており、それを見る一護もまた優しい目付きだったのだ。まるで自分の妹を見るかのような…

 

「だろ?」

 

「そこはあたいが言う言葉なんだけどな〜…」

 

「ハハッ、悪ぃな」

 

そうして暫く黙って3人共空を見上げる、傍から見れば何やってんだ状況ではあるが慣れているもしくはその雰囲気を邪魔してはならないと理解しているのか誰も視線をこちらへやろうとはしてこなかった。仮に視線を向けられても気にならないくらい……今はリラックス出来ていたのだが…

 

 

「一護さん」

 

「どうした一千子」

 

暫くすると一千子が一護へと話しかける。四ツ葉は既に一護の左腕を抱き枕にしてスヤスヤと聞いてるこっちも眠くなりそうな寝息を立てていた。

 

人の腕を抱き枕にするんじゃねぇと振り解きたい気持ちもあったがそれをしてしまえば今すぐにでも地獄に落ちそうな罪悪感に襲われて辞めた。

 

「今回のオペレーション・ベガ。一護さんや31Aの皆さんが1番大変な作戦だと思います」

 

「ああ……」

 

「私達31Eも、全力で支援するので遠慮なく戦って下さい。私も、妹達も、あの時よりもっともっと強くなってるので……!」

 

「そうか、そりゃ頼もしいな。頼りにしてるぜ、31E」

 

「……っ!――はい!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、四ツ葉も一千子もなんで人の腕抱き枕にして寝るんだよっ!?」

 

そのまましばらくして、一千子も眠りについてしまった。口では元気と言っているがやはり緊張や疲れがあるのだろうなと、このままそっとしといてやろうと思い離れようとする。

 

「……ん」

 

だが四ツ葉の腕を慎重に慎重に離し終えた瞬間、今度は一千子が一護の右腕をがっちりと掴んだ。四ツ葉とは違い柔らかい感触が一護の腕を襲い下手に動けなくなる。

 

「まっ…待て…」

 

そして再び四ツ葉に左腕を抱き枕にされ完璧に包囲。動けなくなり今に至る。

 

(クソっ……助けを呼ぼうにも大声出すのは気が引けるし動けねぇし、霊体になるにしても今ポケットの奥で取り出せねぇし……予定がないとはいえ流石にこの状態マズイ……!社会的に殺されかねねぇぞ…!!)

 

「あっ……!」

 

「あっ」

 

身動きは取れぬものの、全身の穴という穴から冷や汗を流す一護。だがその静寂を打ち破った声が聞こえた。

 

「おいおい、一千子も四ツ葉も何やってんだ……」

 

大方予想は着いていたが、二以奈と三野里、五十鈴と六宇亜だった。

 

「オメェら、助けてくれ……」

 

漸く助け舟が来てくれたと安堵する一護。だが次の瞬間――パシャ、という音が聞こえた。

 

「にひひ」

 

「おい五十鈴テメェ…っ!?」

 

見れば五十鈴が電子軍事手帳を取り出し写真を撮っていた。顔と笑い方的に絶対ろくな目に合わないと察する

 

「姉さんがこんな穏やかな寝顔をしてる…!?」

 

「二以奈…!?何言ってんだ?」

 

「まぁ相手は一護さんだしねー!」

 

「三野里!んな事言ってねぇで……」

 

「ねー!!」

 

「六宇亜っ!?」

 

身動きが取れないのをいいことに好き勝手に言う姉妹達、解放されたらどうしてくれようかと眉間に皺を寄せる一護。

 

「でも本当にありがとうございます、一護さん」

 

「…え?」

 

不意に二以奈が、先程茶化してきた空気とは変わって、本当に心の底から安心したような声音を出す。

 

「最近の姉さんは、少し気負いすぎてるように見えていましたから。こうして熟睡できる事が嬉しくて」

 

「……そうだったのか」

 

「それはそれとして、目覚めたら一千子姉さんなんて言うかな」

 

「後で覚えとけよ五十鈴……」

 

再び悪そうな笑い顔をする五十鈴に一護が低く唸る。その時だった

 

「おーい一護!やっと見つけた!」

 

「その声……茅森か!?」

 

「おい月歌、どう見ても取り込み中だぞ黒崎」

 

(和泉もいんのか…、茅森、やったじゃねぇかよ…!)

 

場違いな喜びを内心噛み締めつつ、声がする方向へと向く。視線の先には予想通り茅森月歌と和泉ユキの2人がいた。

 

「悪ぃ、なんか用か?」

 

「お楽しみ中ごめん、でも大事な話があるんだ」

 

「お楽しみじゃねぇよ…」

 

何か重大な誤解がされていると思いながらも、一先ず開放される理由になったことに安堵する。

 

「うん……」「ん……」

 

「悪ぃな四ツ葉、一千子」

 

「よいしょっと……」

 

流石に茅森と和泉が来て察したのか、二以奈達が四ツ葉と一千子を腕から引き剥がし、一護は晴れて自由の身になる。

 

「ありがとな」

 

「ええ、こちらこそ……またお願いしますね」

 

「…………あぁ、またな」

 

四ツ葉を抱いて眠る一千子を横目に、一護が五十鈴達に言葉を出す。

 

彼女達にもまた、これからの話をできない。一護は再び罪悪感に襲われつつもその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、話があるんだ」

 

「大事な話だぞー」

 

31Aの部屋に集まったのは月歌、和泉、逢川、朝倉、東城、國見、そして…黒崎一護だった。

 

このメンバーにわざわざこの部屋を選んだ理由はその場にいる全員が瞬時に理解した。だが…

 

「なんや、前みたいにひっついて。仲直りしたんか」

 

開口一番めぐみがそう言い、月歌が和泉の肩に頬ずりする。

 

「うん、しちゃった。しちゃいました」

 

「やめろ、お前が言うといやらしく聞こえるだろ」

 

(……ただでさえ女子部屋にぶち込まれて気まずいってのに、なんか更に気まずくねぇか俺)

 

目の前で仲のいい女性の、なんだかデリケートな部分を見せられている気がして目を逸らす一護。そんな一護を察してくれたのか。よかった節もそこそこに東城達が話を戻してくれた。

 

「ユッキーがイージスタワーのセキュリティを突破する方法を見つけてくれたんだ」

 

「「……!?」」

 

その言葉に全員が驚く。無論、それは一護も例外ではなかった。

 

「真打ち登場ってやつですね!」

 

「しかし、あたしら全員の力を持ってしても成功確率は55%なんだって」

 

「……」

 

成功確率は五分五分。かなり怪しくなってくる

 

「だからそれを踏まえてもう一度よく考えて欲しいんだ。イージスタワーに行くかどうかを」

 

「わたしが居なくても、その計画は成立する?」

 

一番最初に口を開いたのは東城つかさだった。ある意味今回の作戦の1番の人間の彼女がそう聞くと、和泉は首を横に振った。

 

「ならわたしは行くわ、行かない訳にはいかない」

 

そう言うと月歌は頷いた。

 

「ワシも気持ちは変わっておらぬ――――行く」

 

「すげー切り替えの速さだな…」

 

次に行くと意志を示したのはカレンと可憐だった。かつてない入れ替わりの速度に和泉も一護も驚く。

 

「うちも行くに決まっとるで、うちのサイキッカーが覚醒したらどんなもんになるんか楽しみや!」

 

逢川も行くと意志を示す、もっとも彼女は自らの力の覚醒にワクワクしてるようだが……

 

「私も、居た方がいいですか?」

 

「もちろん」

 

タマが少しだけ気弱そうに手を挙げつつ月歌に聞く。月歌はすぐさま頷いた。

 

「ならいきます!」

 

「チョロいな……」

 

「……一護は?」

 

「俺も行くに決まってんだろ、確率が1パーセントもありゃ試す価値は充分にある」

 

「決まりだな――じゃ、最後にユッキーは?」

 

「もうあたしだけか……」

 

「うん」

 

「そうだな……」

 

そう言うと全員の顔を一瞥する和泉。 全員が息を飲み込む。

 

「仕方ねーな……行ってやるよ、お前らだけじゃ心配だ」

 

「ユッキー!」

 

和泉が行くと言った次の瞬間には、月歌が和泉へと抱きついていた。

 

「やめろ……!抱きついてくるな…っ!」

 

「ふふ…」「本当に元通り」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんでだ、当日は司令官みたいにフェーズに分けて作戦を立てよう。その方がやりやすいだろ」

 

暫くし、このメンバーに月城が加わって31Aの部屋で作戦会議が始まった。

 

「イージスタワーに向かうならフェーズ6の掃討戦のタイミングしかない」

 

「フェーズ……6か」

 

「どうした黒崎」

 

「いや、なんでもねぇ……続けてくれ」

 

一護の反応に和泉が視線を向ける。だが一護は気にするなと言って再び話は戻る。

 

「そうか……今回の作戦行動範囲はかなり広い。高低差もあるから他部隊の視界は考えなくてもいい。問題は月城とどう合流するかだが…」

 

「我ならばその間、白河から別行動の許可を得ることは可能だろう」

 

流石の信頼関係である、その場にいる全員がそう思った。

 

そしてその後も作戦立案は滑らかに進んで行った。制限時間など和泉は知識をフルに活用して作戦を立てていく。やっと…自分たちの知っている31Aが戻ってきたんだなと改めて感じさせられる空気だった。

 

「最終的、諏訪湖周辺のキャンサーは被弾覚悟だ。だが一護……お前の月牙天衝なら 」

 

「道を開く位はできる……か」

 

「ああ、できる限りデフレクタは温存しておきたい。イージスタワー内部やその周辺にキャンサーがいないってのが1番楽なんだが恐らくほぼほぼそうはならないだろう」

 

「……」

 

「それにイージスタワーへの侵入の時、侵入路のクラック作業であたしは手一杯になる。その間もみんなに守ってもらう必要があるからな……」

 

「任せな!ユッキーには指一本触れさせないさ!」

 

「一部の敵は誘導して近付けさせない方法もあるな」

 

まるで騎士のようなセリフを発する月歌とは反対に、着実な可能性のある言葉を放つ月城。相変わらずゆるゆるである

 

「成功と仮定して最大30分、残りは41分だ」

 

和泉の仮説では制限時間は余裕を持って110分。その間に移動しイージスタワーを解放。そして内部を調べてそのまま復帰。スケジュール帳に書くながらもう端から端までびっちりと詰まりそうな間隔だった。

 

「フェーズ9はタワー内の調査になるな」

 

「ああ、その通りだ黒崎。正直内部がどうなってるかは分からないが、大きくわけて3つが想定できる」

 

1つは内部に一切キャンサーが存在しないというパターンだった。そうすればイージスタワーの防御結界がキャンサー達から守ってくれ調査に専念できる。

 

2つ目はイージスタワーの防御が完璧では無い場合。そうなれば敵はキャンサーだけではなく、朽ちた建物との戦いにもなる。そうなれば、目的の資料に辿り着けるかどうかも怪しくなってしまう

 

和泉曰く3つめはこの仮定の中で最悪のパターンだと言っていた。それは内部がキャンサーまみれだったという場合。 それには流石の月歌もゾッとするようなこと言うなよと苦言を呈していた。

 

「とりあえず、どの状況になってるか分からない以上……警戒しつつの調査になる」

 

「でも、内部が分からない以上どこを探せばいいかなんて……」

 

「そこはできる限り情報を分析して絞り込んでおいた。調査対象は最低12箇所」

 

「流石ユッキー…」

 

「じゃあ攻撃役と調査役で別れて探索するのは?」

 

「効率はいいが朝倉、危険だぞ……」

 

「ユキさんとめぐみさんの武器は室内では使いにくいし、一護さんも卍解すればだけど……」

 

そう言いながらこちらを見る可憐。一護も別にいいぜと言おうとした時だった。和泉がそれを否定した。

 

「黒崎は出来る限り温存しておきたい、何かあればどうしても頼る事になるだろうからな……ずっと卍解、それに何度も月牙天衝って話になるとキツイもんだろ?」

 

「分からねぇ、そんな長期戦になったことがねぇからな」

 

「さりげなく強いアピールしてきやがったな…。なら調査はあたしと逢川、東城の3人だな」

 

「もなにゃんはどうする?」

 

「最後尾で警戒を担当する、一護さんとやってもらおうかな」

 

そう言いながら朝倉が2人を見る、一護も月城も頷くが――――和泉が1度頭を振った

 

「……やっぱり危険すぎる、1回これは保留にしよう。内部を見てからまた決めることにしようぜ」

 

「わかった」

 

その言葉に全員が頷く。仮定を組み立てても所詮それは都合良く組まれたもの、実際その場に出くわせば作戦通りに行くとは限らない。

 

「部屋数にもよるが余裕を持てるのはせいぜい5分程度…その間に東城の”覚醒”の方法を見つける、もしくは時間切れになって素早く作戦地域に戻る。フェーズ10はこれだ」

 

「……」

 

その言葉に全員が息を飲む。作戦自体がかなり難易度が高くかといって誰かを頼る訳にはいかない。

 

「ちなみにだが作戦区域西端、旧茅野駅までは7km。10分はかかる」

 

移動の手間も考えれば何度も言うが相当キツイものになる。だがその場にいる全員が既に覚悟を決めた者達、異論を唱える者は誰もいなかった。その代わりに月城が手を上げて声を出した。

 

「……そもそも覚醒、というのは司令官達に気付かれていないのか?」

 

「気付いてる、東城を見る目が変わってるのを確認してる」

 

「本気で抜け目がねぇな、俺のチカラの事も解析してるとか言ってたしよ…」

 

「一護さんのチカラは解析しても謎は明らかに出来なさそうだけどね」

 

「ああ、そうであって欲しいな」

 

東城の何気ない言葉に一護は頷いた――本気で、そう願う。

 

「……ひとまずこれでイージスタワーまではハッキリしたんだ。それだけでも1歩前進だな」

 

「ああ、これで我の仲間の生死も判明するかもしれぬ」

 

「お母さんの死の真相もわかるかもしれない……」

 

月城、東城が纏うオーラが少しばかり変わる。それほど今回のこの作戦にかける思いの強さを一護はひしひしと感じていた。

 

「他にも色々明かされてない謎が眠ってそうだしな」

 

「ああ……皆、明日は頼む」

 

和泉の目配せに月歌が頷き、そして全員に目配せする。それにはもちろん一護も含まれており、本人もそれに気づいて小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ――はぁ〜!」

 

「……」

 

自慢のマントを翻し、小笠原がその場へと寝転ぶ。相対していた白哉も相手から戦闘の意思が抜けるのを確認すると静かに斬魄刀を下ろした。

 

「やっぱり……、貴方は強いですね。白哉さん」

 

小さな身体で精一杯呼吸しながら小笠原は言葉を吐く。白哉はそれに首を横に振る。

 

「私はまだまだ未熟だ。その未熟さ故に兄に励まされた」

 

「……気付いてますか?今のあなたにはさっきのような雑念は無いって」

 

「…ああ」

 

そう言いながら空を見上げる、先ほどまでモノクロのような景色も今では鮮明に色付いて見える。彼女と刀を打ち合わせる度に、白哉の扉を叩きつけていた。

 

最初は不快だったはずの感触も、それが敵意から来るものでは無いと分からされてしまえばどうしても受け入れようとしてしまう。

朽木白哉もまた、自分が思っているほど冷酷無情な死神では無かったのだ

 

「――おっと、白哉さんにお客さんが近づいてくる予感……」

 

ふと、まるで第六感が動いたかのように腕を振る小笠原。白哉も立ち上がり目を伏せた

 

「次やる時はその千本桜、私に全力でぶつけて下さいよ。最強剣士として、全て叩き折ってみせますから!」

去り際に言われたその言葉、彼女はすでにその場から消えていたのだが

 

「次交える時は全力だ」

 

と、白哉は誰も居なくなった




節目となる100でまさかの…??
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