レセプションパーティーも終わり、それぞれがパーティーで得た情報は後に報告書又は報告を聞く機会が設けてあるため、綱吉たちは会場のあったボンゴレが所有するホテル内の客室かそれぞれの拠点へ戻った。
それぞれの拠点へ戻ったのは勿論雲雀と骸、そして自分の実家の護衛と、沢田家に残していた護衛のランボの様子を見るために了平が帰って行った。だが、クロームは骸について行かず綱吉たちのいるVIPフロアへいた。骸が「こちらのことは僕がやりますから、クロームは残っていて下さい。術師が一人はいた方が良い」と言ったためであった。元々クロームもそのつもりだったのか、骸には「そのつもりです」と首肯していた。そのせいでなのか少し骸の機嫌が悪くなったのか、わざわざ綱吉に軽い嫌味を言って去っていったのはご愛敬だろうか。
「ではボンゴレ。あまりクロームを頼りにしすぎないようにしてくださいね?守護者といえど、クロームはうちの子です」
「うん。骸も同じくらい頼ってるから大丈夫。骸は部下じゃないけど、ちゃんと俺の守護者だと思ってるから」
綱吉の返しがあまりに不愉快と思ったのか、顔だけでなくのけぞらせた身体で全力の『不愉快です』と言わんばかりの骸の姿に思わず綱吉は笑いが零れた。
勿論獄寺はイラっとしていたし、山本はいつものようにまたやってんのな~と言わんばかりの笑みを浮かべていた。
「・・・・・・。あまりにこちらを信用しすぎでは?僕はマフィアなんぞに好きにされるのはごめんです。裏切りも辞さないこと、ちゃんとわかってるんですか?」
「大丈夫。もし裏切る時はちゃんと直接俺のところに来て、ちゃんと骸の好きに操ってくれるんでしょう?だからそんな心配はしてないよ」
「貴方・・・日に日に図太くなってません?」
「そうかなあ・・・?まあそうかも。骸が捻くれ過ぎてることくらいちゃんと分かってるし、最終的に全部の責任取るのは俺だしね。あの烏に関しちゃ好きにしていいよって言ったの俺だし。好きなだけ玩具にしたらいいよ」
その言葉に一瞬眉をひそめた骸だったが、次の瞬間にた・・・っとした嫌な予感のする笑みを浮かべて「それでは僕の好きにさせて頂きます。せいぜい後処理に慌てふためくといいですよ」と言い残し、こちらが何かを言う前にさっさと姿を消してしまった。
綱吉は獄寺の「またアイツは!」という言葉から始まったネチネチとした文句と、綱吉に対しての説教を「まあまあ」なんて言って流してくれた山本に怒りの矛先は移動し、その間に自分の側に寄って来たクロームから話を聞く。
「骸さま・・・相変わらず素直じゃないから」
「うん、わかってるよ。ちゃんと俺の事考えてクロームこっちに残してくれてたし、さっきの烏共とのやり取りの時に俺たちの周りに幻術かけてくれてたのって骸の方でしょう?クロームはそれぞれの武器にだけかけてたみたいだけど」
「そう。・・・ボスが分かってくれてるの、嬉しい」
ほんの少し口角の上がるだけと言われるかもしれないが、それでも綺麗に笑うクロームの笑顔を見れて綱吉はますます笑みを深めた。
クロームは骸より幻術士としての腕は劣ると自他ともに認めてはいるが、それでもトップクラスの幻術士であることは間違いない。むしろ骸が出来過ぎている部分もある。
それに女性視点の幻術というものがあるため、どうしても骸が負けてしまう部分はあるという根本的な視点の違いというものを、幻術から感じてしまうことも最近では増えて来た綱吉だった。
そのためか、自身が敵対してきた術士が男女のどちらであるのか、というのが大体勘に頼らず分かるようになってきていた。
世界トップレベルの幻術を使う者しか周りにいないからか、どうしても敵の幻術にかかると違和感や粗が見えてきてしまい、そのせいで余計に性差のある視点もあり、最近では敵対してくる組織の術士の幻術を見破る際に秘かに性別を当てるというゲームをしていることは綱吉の秘密である。
まあそもそもとして他者に幻術をかけれるだけの術士が少ないという問題もあり、かつボンゴレボスを名乗る綱吉に敵対する組織も少ないという問題もあるため、あまり多種多様な術にかかったことのない綱吉がする遊びなのだから、どうしても超直感によるものもあるということはこの際置いておく。
そんなこんなで和やかに過ごした後今日の報告へと入っていき、それぞれの集めた情報の共有が始まった。
「組織の情報はあんまだったけど、どうやら鈴木財閥はこちらへかなり興味があるみたいだったな。未婚の令嬢とはいえ次女のお相手は決まっているわけだし、こちらへ縁戚関係を持ってこようとする気は端からないみたいだったし、とりあえずの取引先としては上々じゃね?って感じだったのな」
「かのご令嬢の相手が、強いて言うなら学歴的に問題があるだけで、それ以外は財団の跡取り娘の相手かつ愛娘の相手にとっては不足があまり無い状態だからかな?
特にかのご令嬢は恋多き女性みたいだし、もしかしたら一時の感情かもしれないとも思っているのだったら、こちらへそんな内容を仄めかす様子もあっただろうけどそれもなさそうなら、確かにこっちにとってはいい取引先になりそうだね。相手を勧められないだけでかなり好印象だしね」
「むしろその婚約者殿の箔着け相手に、ウチが選ばれそうな感じだったかなと思うぜ?うちの娘の婚約者がこのような方であるので、現役中は難しいでしょうがもしそちらで護衛兼職員等として雇うならどうでしょう?みたいな」
「わお。護衛としても役に立ちます的な?」
「おう、立ちます的な」
表向きは確かにただの経営者かつ貴族の端くれだけども、まさか日本で腕っぷしの強い人間を紹介されそうになるとは思わなかった綱吉だった。
そういう表向きの会社で護衛らしい護衛を、表社会の人間で雇う必要はあったのだけれど、でもまさかそれが鈴木財閥から紹介されそうになるとは思わなかったのだ。
しかもそのご令嬢の婚約者を筆頭に、護衛として優れた人材を派遣又は紹介することも可能です、と告げられたそうだ。
「隼人。アリだよね?」
「ええ、これ以上ない機会ですね。例のご令嬢の婚約者は紹介だけしてもらうだけしてもらって、とりあえずの護衛は必要ですし。そもそも鈴木財閥とそこに繋がりがある警備会社等など、表とのコネクションを得るには最適な繋がりですし・・・。
ただ懸念すべき事項としては、かの財閥と近くなるということは、よりこの融合後の世界にというか探偵世界に近寄ることですから、元に戻る際にどのような影響が出てしまうのかわからなくなってくる可能性が上がってしまう事ですね」
「ソコなんだよなぁ・・・。でも物凄くありがたいしいい話ではあるんだよなぁ。この鈴木財閥っていう財閥は、今時珍しい真っ白な財閥だしそもそもトップ層が人格者ばっかりで、小国かつ辺鄙な島国であっても一番大きな財閥だけあって財力が物凄いし、世界中からの色んなコネクションを持ってる財閥だしね。そんなところとのコネクションだしなぁ・・・。
――うん、その話は受けようかな」
綱吉の直感も嫌な予感はせず、問題なさそうだと判断した。
綱吉の言葉を受けて、山本は「じゃあこのまま話進めるぜ」と返してさっさとスマホで連絡を取り始めた。
獄寺は綱吉の右腕として常に側で綱吉と同じ情報を得ていたため、その中でも特に気になった部分を綱吉にまとめて情報整理として話していく。
その際に話題として時折上がるのが、やはり探偵世界ならではなのだろうか、有名な事件に関わった人間がちらほらおり、あの方はかの○○事件の被害者遺族で~やら、かの××事件の加害者のご友人でいらして~、などがちょくちょく聞こえて来ていた。
相手の足を引っ張り、自分を優位に見せようとすることの一環なのだろうが、それにしても事件の関係者がかなりいたのだ。その筆頭は鈴木財閥だったが、アレはもはやしょうがないまであったと報告書を通して知っている綱吉たちは気にしなかった。
そのせいで鈴木財閥を敵視しているあまりいい噂を聞かない他の財閥の関係者や、裏の人間からは鈴木財閥下げキャンペーンを開催されてしまったのだ。
「にしても本当に事件関係の話はもはや誰がどれ状態で、とてもじゃないけど覚えきれないよ・・・」
「俺ですらもはや辟易してしまったんです、仕方ありません。そもそも融合前は知らなかった人間たちの、知らなかったはずの知識が勝手に増えていくこの世界の仕組みが凄く気持ち悪いです」
「やっぱり?なんか突然、かの有名なあの事件の~なんて言われて、『・・・あああれか』ってなった後に、『いや知るわけねえじゃん俺!』ってなる瞬間が嫌だよね・・・。ほんとこの指輪は余計な問題ばっかり俺たちに押し付けてくる・・・」
「まあまあ、そんなことおっしゃらず!ですが、そのせいで余計に疲れた気がします・・・」
「「「わかる・・・」」」
獄寺の言葉に対して思わず漏れてしまったため息が、広々として室内で異口同音にこだましたのだった・・・。