ボンゴレ十代目とその守護者が動き始めてから早くも2週間が過ぎた。マフィア界の掟・
バミューダも、突然世界同士が繋がったため
「下手に文章に残したら、記憶の受け入れに時間がかかる奴も居たし、かといって口頭で済ませていれば、いつの間にか伝えようと思っていたことを忘れてしまうなんて面倒なことになるんだ……。本当にどうやって全体に話を伝え続けられるかわからなくて、試行錯誤するしかなかったよ…」
「お疲れ様。こっちも似たような感じなんだよ…。守護者とそれ以外との情報伝達に、今まで以上に気を使わなきゃいけないし、特にヴェルデは最後に情報を俺たちから聞いてから、1時間で何を聞いたか忘れるし。おかげでその記憶について書かれた書類を、下手したら数分ごとに自分で読み返して、把握し直さなきゃいけないし…って感じで、本当に世界線を解いて元の世界同士に戻すなんて研究が難しくなってるんだよねぇ…」
「というか今回の世界線の融合だなんて、
「ほんとにごめんね、バミューダ…。あいつらも、悪気も無かったしこんなことになるとは思ってなかったみたいでさ」
地下にあるとはいえ、真っ白な部屋に少しの観葉植物と、紅茶の入ったカップとポットにソーサー、それからケーキやマカロンをはじめとしたお茶請けと、一組のテーブルと椅子以外何もないし誰もいない殺風景な部屋。これがこの牢獄における『応接室』として、ボンゴレ十代目その人の為に新たに作られた部屋だ。
この部屋を整えたのは勿論バミューダだが、嬉々としてシンプルかつ広すぎない空間を作り上げたのは置いておこう。
今のところの情報を共有し、すり合わせを行った後で、どの程度異世界…と今は言えなくなってしまった、二つの世界線が交わってできた『現在の世界』。この世界においてどのように動くのか、であるが……――。
「
今は少しまだ混乱が残っているけど、あと2・3日でも経てばそれも落ち着く。そうすれば『僕らが新たに知覚した』マフィアを摘発する予定だよ。その際に……そうだな、やはり情報が錯綜してしまう可能性はあるだろうな。その際に、誰かがその情報を盗み聞いて対策を講じても、僕らは感知できないだろうね」
「そっか。そうだよね。――わかった、その期待を裏切らないように頑張るよ。手が足りなかったら言ってね。可能な限り手助けするよ」
「…フン、これ以上どうやって君に恩を返したらいいか分からなくなるじゃないか。でもまあ、悪質なグレーの捕縛はともかく、黒だと僕らが判断したならそれは黒だ。
「あはは、頼もしいなぁ!流石はバミューダだね。―――さて、あんまり長居をすると、後から大変だろうから今日はこれで帰るよ」
「いいよ、それじゃあ送ってく。執務室でいいかい?」
「お願いするよ」
ボンゴレの所有する城にある執務室までワープしてもらい、バミューダと別れた後、綱吉は即座に彼の右腕に連絡を取る。
「―――ただいま。
しばらくは
『承知いたしました。
それからフロント企業の代表として、各守護者が社交界にてそれぞれ名乗り出ましたのでご確認ください。あとはそれぞれを取り纏める者として、十代目が公的に挨拶するだけです。
日本とイタリアでしたら、イタリアのモノを早めに設定しておりますので、日程調節はお任せください』
「ありがとう隼人。流石俺の右腕だね」
『~~~もったいないお言葉!!ありがとうございます!!十代目!』
通話を切ってすぐに送られてきたメールと、書面で記された内容に一気に目を通していく。
フロント企業としては、武と了平さんがスポーツ用品メーカーかつスポンサーとして、骸は外資系企業として世界中を巡り情報を集め、クロームが補佐としてイタリアで会社を纏めている。
それらを纏めた俺は一応骸たちの会社の親会社として、隼人はその右腕として元の世界でも活躍していたため、情報収集先が増えたことによる残業が勿論必須になってしまったがそれはそれだ。ランボは学生だがイタリアの中学を飛び級で卒業するために猛勉強、恭弥さんはいわずもがな風紀財団としてボンゴレとはほぼ無関係な顔をして生活している。
今のところ、この世界での世論では、『昔から続いていた企業が、最近になって勢いづいてきたから日の目を浴びてぐんぐん成長している』程度になっている。僅か2週間前からしか存在していないはずなのに、気味が悪いと吐き捨てたのは現在世界を飛び回っている方の霧だ。他の守護者を含め全員がそれに大なり小なり納得し、沈黙を保っていたがそれもそうだろう。
とりあえずイタリア社交界で、政府と警察内部に潜り込めるよう右腕が張り切ったおかげか、表裏問わずの世界で『ボンゴレ』の名前が浸透したのは言うまでもない。
そして世界が交わってから1月半が経った頃、世界の異様な空気が明らかになった―――。
始まりは一本の電話。風紀財団からボンゴレへ直通する回線が使用された。緊急回線として以外でその回線が使われた事はなく、不干渉を取り決めた両組織の中でも、
その電話に出た綱吉は、画面向こうの景色に一瞬違和感を抱いたが、すぐにそれをスルーした。それほどまでに電話をかけてきた相手が異常なまでに無表情かつ、なんの感情も伺えなかったからだ。
「もしもし、恭弥s、ウゥン…恭弥、一体どうした」
『ねえ小動物。君さ、そっちは今暑いかい?」
「え?ええ、初夏ですし、それなりに暑くなってきてますよ」
『そうだよね、うん、初夏だもんね。でさ、小動物。…先週は近年稀な大寒波が日本を襲ったんだよね』
「ああ言ってましたねぇ、それで東都でも豪雪で電車が……ちょっと待ってください。え?何ですって!!?!」
気が付いてしまったねぇ?なんて、薄っすらと笑みを浮かべたその人に、完全に血の気が引いたこちらの部屋の人間たち。
先週は冬で大寒波が襲い、今週は初夏で雨季との闘いでその少ない水を得るために、節水を心がけ始める季節だ。
異様としか思えない。異常気象だとも言えるが、誰もこの世界での季節の変動に疑問すら持たず、ましてや植物なら尚更その違和感を顕著に表すはずなのに、青々としたオリーブの葉が眼下の街並みに生い茂っていたのはこの目で確かめている。
「世界規模で、季節が異常変動しているのに、誰もそれに気が付けない…?」
『しかもだ、小動物。永遠に学生の学年も進まなければ、永遠に同じ年を繰り返しているのに、産業は発展していくし情勢は日々変化し、同じ時間は二度と来ない。
―――世界的な
「な、な、な…‥なんじゃそりゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!?!
そ、そうか!!それでユニは未来が、確定で起こる未来が十通りは見えて、白蘭はパラレルワールドが急増している、だなんて言ってるのか!!
…わ、分かるわけないだろそんなことおおお!!?」
またしても絶叫が部屋に響くが、一応防音気味になっているとはいえ、襲撃の際には気が付けるようにはなっているため、城の持ち主が絶叫したことはすぐに城内の全員に知れ渡り、彼らのボスの一大事!!とばかりに部下たちの回線に緊急連絡が走ったのは、言うまでもないことであった。
そして流石に今度は守護者以外には緘口令を布いて、少しでもこの異常事態における混乱を減らした。それでも隼人や骸は状況を受け止めるのに、相当精神力を削ったのか(特に世界を飛び回るほど忙しい骸は一瞬意識が飛んだようだった)、顔色もさらに悪くなっていた。武や了平などは『尚更考えなければ問題ない』と言い切って、あまり気にしないようにしたらしい。綱吉も見習うべきかな、などとご意見番に尋ねて「勝手にしろ」と苦虫を噛み潰したように吐き捨てられ、なんなら何発か発砲された。
毎日が新しい発見で満ち溢れている…!と喜んでいるマッドサイエンティスト達も、この事態には「不可解かつ難解だ。原因は何なのか、世界が交わったからか、そうでないのか調べたい」と言ってきた。まあ、元の世界に戻った時に、二つの世界での常識がどの程度変化してしまうのか、書面でも残していればまた新しい発見があるだろう、だなんて言ってこちらが反対しようが何をしようが実行する気しかなかったために、承諾せざるを得なかった。
――そうして世界が交わった後からおよそ3か月後、裏社会を騒がせている
場所はイタリアの社交界と、風紀財団の2か所をほぼ同時に。もちろん風紀財団とマフィア・ボンゴレファミリーは表向き一切の関与もしていないことになっていたため、相当な情報通かこちらの陣営に内通者でも出たのかと双方の幹部がピリつく事態となった。