繋がってしまった世界の整合性は取れるのか   作:干山 静玖

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「――イタリア政府から入国の申し入れがあった?」

 

 

 

 喫茶店員安室透兼通称『黒の組織』幹部:バーボンこと、警察庁警備局警備企画課所属の潜入捜査官:降谷零は、久々に本庁へ登庁した際に上司である黒田管理官から告げられた内容に多少面を食らった。黒田管理官曰く、イタリア政府の要人が来日する際に、『少々』国を騒がせることになるため『あらかじめの了承と黙認』を願うという連絡が来たらしい。

 

 思わず眉間のしわが増えてしまったが、管理官はそれを黙認し「どの程度暴れようというのかは分からんが、要人警護の際に『発砲許可』と『銃刀法違反』に対する黙認を願うとのことだった」と更に重々しく告げる。

 

 

 

「そのイタリア政府からという要人の素性は?」

 

「イタリアの大貴族現当主で、Crostacei(クロスターチー)というグループの現社長だそうだ」

 

「はあ?!…ゴホン!あー、失礼致しました。…そんな超大物人物が、わが国で何を目的に来日予定なんです?」

 

「それがな。『母国への企業進出を記念してのレセプションパーティーの開催』が目的だそうだ」

 

「――ぼこく?…あの、イタリアの大貴族の現当主なんですよね?なのに日本が母国?心の母国、という訳でもないのでしょう?」

 

 

 

 両親のどちらかが日本人な日系人で日本育ちなのかと問えば、両親ともに日本人として戸籍があり、父方の親族へ養子に入ったためにイタリアの大貴族の当主に納まったそうだ。あのヨーロッパという国で、純粋な(と言ってもいいのか分からないが、かなり血は薄いそうだし純粋でいいだろう)日本人が、貴族でしかも頭に『大』とつくような家へ養子に入ったあげく、そこの後継になるだなんてどれほどの苦労があったのか…。

 

 しかも年齢を聞くと、高校卒業してすぐくらいの年若い青年だそうだ。その年齢で貴族の義務と数多の大企業を纏める、これまた大企業のトップになるだなんて心を痛めずにはいられない。

 

 イタリアでは、表も裏も密接に関係しており、表裏は曖昧に見えてがっちりとした線引きがされているらしい。表と密接に関係していると評しているのは、『白マフィア』と呼ばれる()()()の売買を認めないマフィアであり、そんな博打を打たなくても存在できるほど強大か、その強大な力で守ってもらう為に傘下に入ったかの二択なマフィアだという。逆に裏でしっかりはびこる大きくなるためには文字通りなんだってやる『黒マフィア』は、その根が中間層(スラム)へ浸食するように生きているのだという。

 

 ただ、表へ食い荒らすような真似を表立ってやると、マフィア界の秩序を保つ組織から制裁があるのだとか。おとぎ話と片付けてしまえば、痛い目を見る為気を付けるようにと管理官から忠告された降谷は、なぜ俺へ忠告を?と言いたげな目を管理官へ向けた。

 

 

 

「表の人間が裏を知りすぎるな。ほんの少し見聞きしただけで、マフィア界に引きずり込まれて二度と出れなくなるぞ。これは忠告ではない。警告だ。

 

 今回の入国者が入国しても、向こうがその線引きを超えようとしたと判断したなら、向こうが処罰される。だが、こちらが関りに行った場合跳ね除けられるだけで済めばいいが…即座にこの世から去ることになるだろうな」

 

「…。それほど、慎重にならねばならない、と?」

 

「いやそうではない。一切探るな、と言っている。意味が分かるか?見聞きするな。常に『三猿』を心得よ」

 

「見ざる、聞かざる、言わざる…これを貫け、と。承知致しました。探ろうとも致しません」

 

「頼んだ。だがまあ探るなら自己責任で頼むぞ。だが自業自得で優秀な警察官を失うのは痛すぎる、とは言っておくからな」

 

 

 

 そうして管理官から退出を命じられた降谷は会議室を出る。

 

 常に目を閉じ続ける必要も、耳を抑えておく必要もないし、口に出す必要もない。ただ、相手がこちらへ要請を持ってきた場合には、目を伏せ、耳を塞ぎ、口を閉じておく必要があるのだろう。

 

 

 

「(願わくば、俺の日本でそんな要請がくる事態が起きなければいい…)」

 

 

 

 口に出せばなぜだか叶わない予感がした言葉は、胸の内で呟くにとどめた降谷は、溜まった書類を片付けにデスクへ向かい、報告書を纏めていくという作業に入った――。

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