繋がってしまった世界の整合性は取れるのか   作:干山 静玖

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 レセプションパーティーも佳境に入り、各々が情報交換に応じている際に綱吉に「もう限界」と一言言い終え、雲雀が会場を後にした。もはや顔色が最悪に近しいほど真っ白で唇も青ざめているほどだったため、むしろよく今まで我慢出来ていたなと綱吉が感動していたが、面白くなさそうなのは獄寺だった。

 

 

「あいつめ・・・!もうちょっとくらい我慢しやがれってんだ。幾つになったってんだよ」

 

「まあまあいいじゃねえの。むしろもっと早くに帰るのかと思ってたぜ?」

 

「そうだね。それにh・・・恭弥ってば『帰る』じゃなくて『限界』って言ったんだし、きっとこのホテル内の部屋に居るって」

 

 

 綱吉の言葉でむっと更に眉間に皴をよせた獄寺だったが、それ以上雲雀を責めることはせず、綱吉と同じく雲雀を庇った山本にぐちぐちと文句を言い始めた。それをカラっと笑って躱しながらも、周りにおちゃらけていると思われない程度でからかう山本に獄寺のボルテージが徐々に上がっていく。

 

 それでもこのレセプションパーティーを成功させたいという思いだけで踏みとどまることが出来ているのは、2人ともが大人になった証拠だなぁなんて感慨深い表情で二人のやりとりを横目に、綱吉は近寄って来た直感に従い内心の警戒を高めた。近寄って来た浅黒い肌の金髪の男と銀髪ロン毛、それからずんぐりとした男にすっと目を合わせて口角を上げてみせた。その姿はきっと誰が見ても綱吉の方が強者だと言わんばかりの、挑戦的でありつつも圧を感じずにはいられないほどの威嚇となった。

 

 3人はその笑顔を見てから、会話をするには不自然な距離ではないが、それでも距離を詰めることなどできないと感じたのかその場で立ち止まった。それに対して綱吉はほんの少し目元を細めながらも、歓迎の言葉を紡ぐ。守るのは恩師からの教え。自分を強者として振る舞う社交界の渡り方。

 

 

「――やあ初めまして。本日のパーティーは楽しんで頂けていますか?」

 

「初めまして。私は黒澤陣と申します。烏丸製薬の社長代理です。金髪の者が営業の、隣のコレは私の秘書のような者です」

 

「お会いできて光栄です。私は安室透と申します」

 

「私は魚塚三郎です。どうぞよろしくお願いいたします」

 

 

 それ以降は安室と魚塚が主導で話を振って来たが、内心綱吉はため息を吐きたい気持ちでいっぱいだった。

 

 仮にも社長代理を名乗るのなら、あんなに他社の社長に対して「面白い」と思っているとありありと分かるほど、好戦的な笑みも雰囲気もなんならちょっと漏れ出ている殺気も出さずにいればいいものをと思わずにはいられない綱吉だった。アレでは裏社会の人間です、と叫んでいるにも等しいだろうとさえ思った。だからこそ、ボンゴレが超一流の裏社会の組織なら、せいぜい三流組織だとも言えるのだろうけど…などと考えながら、漏れそうになるため息を噛み殺す。

 

 綱吉の何とも言えない残念な気持ちを正確に感じ取っていた親友たちは、3人に警戒されないように気配の一切を消して3人をいつでも斬れる位置、そしていつでも綱吉を連れて戦線離脱できる位置を取る。他の守護者も少し離れた位置から、常に綱吉たちの動向を感じて少しずつ警戒を強めていった。

 

 そんな守護者たちの動向を確認し、綱吉はとっととこの面倒な茶番を終わらせるか、と心の中で一息ついてからサラッと3人に問いかけた。

 

 

「それにしても烏丸製薬ですか・・・。確か色々な新薬の開発を進めていたのでしたね。――細胞を活性化させプログラム細胞死を誘導させる、確か・・・出来損ないの名探偵(APTX4869)でしたか?」

 

 

 その瞬間、その場の空気が凍った。

 

 黒澤と名乗った社長代理は殺気を隠しもせず、魚塚は動揺からか「そ、その名をどこで・・・」と掠れた声で呟き、安室はスッと笑みを浮かべたまま目を細めた。

 

 そんなものはまるでそよ風程度にしか思わなかった綱吉はさらに声を潜めたままいう。

 

 

「――さあ、ね?」

 

 

 そして一呼吸おいてから、ふふ、っと少年が笑うような邪気の無い輝かんばかりの笑顔を浮かべて告げた。

 

 

「先にウチに手を出したのはそっちですし?せいぜい長生きできるといいですね。・・・・・・まあ、無理でしょうけど」

 

「――おい「アニキ!ここじゃ不味いです!」・・・ッチ!」

 

「ふふ、本当に残念です。お宅とはいい関係を築くことができたらいいと思っていたのですが」

 

「ん~、先に手を出したのはそちらですし、絶対に無理でしたね。まあ・・・あなた個人なら、1度だけ、時間を取って差し上げてもいいですけど、ねぇ?安室さん」

 

 

 綱吉としては絶対にとつけたくなるほど、この組織は鬱陶しかったのだ。

 

 対して痛くもない攻撃とはいえ、例えるなら室内に蚊が飛び回っていたら鬱陶しいしそれだけで痒みを感じてしまうようなものだ。痛くはない。実際に刺されても、ゴツイ生地の上からだから血を吸われるわけがない。だが痒いような気がしてくる。

 

 そのくらい鬱陶しかった。

 

 それだけならまだなんとか我慢できた。だがしかし、奴らは日本の財団法人で、後ろ暗いことなど何もしていない(とは言えないけど表向きは特に何もしていない)雲雀の風紀財団にも手を出して、構成員を拉致するだけならまだなんとか我慢してもらえるだけの交渉はできたかもしれないというのに、情報を抜こうと殺人(未遂に抑えることはできた)までするような杜撰な情報収集をしようとしたため雲雀が怒髪冠を衝いた。

 

 ただでさえ低い雲雀の沸点を軽々超えて、さらに仲間の事となると沸点が低くなる綱吉も怒らせるようなことしかしないのならば、殺虫剤な(警察)組織を使って片付けてやろうという善意と殺意のマリアージュだ。というか人間と蚊なのだから、普通に簡単にプチっとできる。そもそもこの融合してしまった世界と融合前の世界がいつ離れられるか分からないし、混乱は少ないのは殺虫剤(警察)を使った方だ。

 

 綱吉は手で会場の出口を指し示しながらも、穏やかに続けた。

 

 

「さあお帰りはあちらですよ。今日はお楽しみ頂けたようで何よりです。

 

 その口で『後悔するぞ』とでも仰るおつもりでしたら、それはこちらの台詞だと申し上げておきましょう。そもそもあなた方の組織とウチの組織では全ての規模が段違いです。こちらに喧嘩を売ったのは彼方がたの方だと再三言っていますでしょう?そしてそんなことをうちにしておいて、まだこれ以上ぐちゃぐちゃ言うのなら、死を持って償って頂きます。――ふざけたマネをして許されるだなんて思うな。三下が

 

 

 超直感で相手の言葉を先回りにして答え続け、最終的には殺気を4割増しにして声を低くして脅したが、それだけで3人は今までの威勢が嘘のように固まった。魚塚などは狼狽えるより先に青くなってしまったし、黒澤も血の気が引いている様子だった。安室はなんとかひきつった笑みを浮かべてはいるものの、じっとりと冷や汗をかいているであろうことは見て取れた。

 

 そして安室が口を開く前に、「おおっとそこまでだぜ?」なんて場違いにも明るい声が聞こえた。

 

 

 

「だめだよ、武。それ以上食い込ませたら」

 

「・・・ここじゃしねーよ?許可がないしな!」

 

「おい野球馬鹿。まだ抜刀許可は出されてねぇだろ。何勝手にエモノ抜いてやがんだ」

 

「んな固いこというなよな~。そういうお前だって、何懐から出してんだって話なのな!」

 

 

 自分たちにしか見えていないとはいえ、山本は刀を抜いて安室に突きつけていたし、獄寺はダイナマイトを構えていた。鋭くも美しい刀の切っ先が黒澤の喉元に押し当てられ、息をするだけならまだしも、唾を飲み込んだ瞬間にのどぼとけが裂けるであろうことはその殺気からありありと想像できた。

 

 だからこそ綱吉は再度、「だめだよ」と言った。

 

 

「さあ、お三方。お帰りはあちらですよ。今ならウチの部下は止めてあげますから。今死ぬか、逃げるか選べ

 

「ッチ」

 

 

 その舌うちは誰がしたのだろうか。あえて探るようなことは超直感が働くために考えないが、守護者の誰かがしたのだろうことは明らかだった。

 

 そのまま逃げるように帰って行った彼らを見て、うっそりと笑いながらぽつり、と綱吉は呟く。

 

 

「止めるのは()()()()、だもんね。恭弥は部下じゃないし、骸もそう。・・・好きにしたらいいよ」




投稿頻度終わってますね、すみません・・・。

なんかまだ見て下さってる方いるので、続きをほんのちょっと書いてみました。

ひっそりと続けて行ってもいいかなあ・・・?
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