翌朝
夜が明けてアスカは目を覚まして朝食を取ろうと食堂に向かった。
「あら、おはよう」
「おはようございます」
食堂に向う途中でジョーイと合ったアスカは挨拶をした。
「あのナックラーなんだけど、目を覚ましたわ。健康状態にも問題はないわ」
「そうですか」
「ただ……」
「?」
アスカはジョーイにナックラーの居る部屋の前まで連れて行かれ、窓からナックラーを見た。
ナックラーはラッキーからポケモンフーズを渡されたが、ナックラーは怯えて食べようとしなかった。
「あの子ずっと怯えていて、何も口にしようとしないの」
「無理もない。産まれて直ぐ殺されかけたんだから」
「えぇ、もう完全に周りの存在を敵としか見てないみたい」
「……ナク?」
ナックラーは窓の外に居るアスカに気づくと、アスカの方をじっと見た。
「?……あの子。ねぇちょっと部屋に入ってもらえる?」
「は?はい」
ジョーイは何かに気付いたのか、アスカに部屋に入るよう要望し承諾したアスカは部屋に入り、ナックラーの下に近づいた。
「ナク!ナク!」
ナックラーはまるで母親を見つけた子供の様にアスカの腕に擦り寄った。
「やっぱり、この子貴女には心を開いてるみたいね」
「……」
アスカはラッキーの用意したポケモンフーズを一掴み取ると、ナックラーの前に持って来た。
「食べる?」
ナックラーはアスカが持って来たポケモンフーズを食べ始め、アスカはナックラーの頭を撫でた。
「大丈夫。ここに敵は居ない」
アスカは優しくナックラーに言い聞かせた。
3時間後
アスカはポケモンセンターを早々に出る予定だったが、ナックラーが片時も離れようとしない為行くに行けなかった。
(どうしよう……全然離れない)
「そのナックラー君の?」
ナックラーと一緒に椅子に座って居ると、横から黄色のマウンテンパーカーを羽織ったトレーナーの少女が声を掛けて来た。
「いや、違うけど……」
「そうなの?凄い懐いてるからてっきり手持ちだと思ったんだけど」
トレーナーがナックラーを除き込むと、ナックラーはアスカの影に隠れた。
「あれ?嫌われてる?」
「トレーナーに虐待されたようでね、人間不信になってるんだ」
「え……そう……なんだ……」
ナックラーの逸話を聞いたトレーナーはショックを受けた顔をした。
「どうしたの?」
「いや…酷い事する人も居るんだなって」
「何でそれであんたがショックを受けるの?」
「だって、悲しいじゃない?」
トレーナーはアスカからナックラーが虐待されていた事を聞き、悲しんだがアスカには何故そこまでトレーナーが悲しむのか理解が出来なかった。
実際、彼女からしてみればナックラーの虐待は完全に無関係であり、悲観する理由が見当たらないからだ。
「何で?自分がされた訳じゃないのに…」
「……ポケモントレーナーって世間的に扱いが酷いって知ってる?」
「……まぁ話しには。トレーナーとして成功しなかった場合、そのトレーナー脱落者への受け皿となる制度が出来てなくて、将来かなり苦労する人間は多いっていうね」
「うん、それに年配の人からすれば、私達みたいなトレーナーはいつまでも遊び呆けてるってイメージみたいで」
「確かにね。実際私も道端でいきなり知らない人からトレーナーだと思われて殴りかかられた事あったな」
「そんな……大丈夫だったの?」
「反撃して一撃で失神させた」
「け、結構過激なんだ……まぁ、兎に角ポケモンを虐待する人が居るって知られたらトレーナー全体の評判が悪くなるし。それに……ポケモンも人間を信用してくれなくのが、とても悲しくて」
「………」
「あ、ごめんね。急に話しかけて」
「いや……」
「……そのナックラー、貴女から離れようとしないね」
「懐かれて」
「だったら、貴女がそのナックラー連れて行けば?」
「え?」
トレーナーからナックラーを手持ちする事を提案されたアスカはナックラーを見ると、ナックラーは連れて行かれる事を希望している顔をしていた。
「………結構危険だぞ?もしかしたらわたしが死んで居なくなる可能性だってある。いつまで甘やかすつもりもないし、最低限自衛出来るようにはなってもらうけど……構わない?」
ナック!
アスカからの忠告を聞いたナックラーは強く頷いた。
「じゃ、行こうか」
アスカはハイパーボールを取り出すとナックラーの前に出した。
ナックラーは自分からボールの開閉ボタンを押すと、ハイパーボールに入った。
「………これからよろしく」