「いただきました」
「!」
スモークグレネードで視界を遮りアスカの背後に回ったマークは特殊警棒をアスカに振り下ろした。
「ー!」
ドン!!
「な!?」
特殊警棒がアスカに直撃する寸前で、アスカの床が抜け落ち、アスカはそのまま下の階に落下し直撃を回避した。
「床が抜け落ちた!?」
マークは驚きながらもアスカを追撃するため、穴から下の階に飛び降りた。しかし、アスカは既に移動した後だった。
「アデクさん!?」
一方、カイトとエリーは自分達の目の前にアデクが現れた事に驚愕した。
「イッシュ地方のチャンピオンが何でここに!?」
「儂は元じゃ。いやなに、チャンピオンを退いてからはちょっと放浪の旅をの、そしたら君達が喧嘩をしていて、何やら深刻そうな感じがしたから声をかけたんじゃ」
アデクは自分がカイト達に声をかけた理由を説明した。
「そうだったんですね。すみません。お騒がせしました」
「いや、気にせんでくれ……何か悩み事か?」
「あ……まぁ……」
「……」
「……話くらいなら聞くぞ?」
「え?」
「人に話すだけでも気持ちが楽にはなる。何しがない年寄りの暇つぶしに付き合っているとでも思ってくれ」
「……その」
一方、マークは廃ビルの中でアスカを探していた。
「一体何処に……?」(そういえば何故床が?偶然?見た感じでは廃ビルとは言えそこまで脆いとも思えない。とすると何か工作をした?いや、爆薬を起爆させたようには見えなかった)
マークは先程の床が抜け落ちた原因を推測しながらアスカを探した。
ドン!!
「!?」
歩いていると今度はマークの床が抜け落ち、マークは下の階に落ちた。
「一体何が……!?っ!」
マークが天井の穴を見上げるとアスカが上からベアボウで狙っていて、マークは矢が発射される寸前でその場から離れた。
「やはりアスカが…!でも一体何を…」
「ーッ!ーッ!」
「ブイ!」
「!」
アスカが口笛を吹く動作をした直後、粉塵の中からイーブイが現れ、マークに襲いかかった。
「イーブイ!?まさか、さっきの穴…“あなをほる“か!」
マークはアスカと自分の床が抜け落ちたのはイーブイの“あなをほる“だと。
「でも一体どうやって指示を!?アスカはポケモンにある程度の自己判断をさせているとは聞いていましたが、ここまで動けるとは……そう言えば…!」
マークは最初にアスカの床が抜ける落ちる直前にアスカが口を動かしているのを思い出した。
「まさか、口笛で!」
マークはアスカが口笛で人間には聴こえないが、ポケモンには聴こえる周波数で口笛を吹き、イーブイに指示を出していると見抜いた。
「くっ!ソウブレイズ!」
マークがソウブレイズを呼ぶと、ソウブレイズが"ゴーストダイブ"で移動して来た。
「足場を崩せ!」
マークはソウブレイズに指示を出すと、アスカの床を切り崩した。
「っ!」
足場を崩されたアスカは、下の階に落下した。
「イーブイ!」
「ソウブレイズ!足止めしろ!」
アスカはイーブイに救援をもとめたが、ソウブレイズがイーブイを攻撃し始め、イーブイはアスカの援護が出来なくなった。
「驚きました。まさか音波だけで命令する術を身に着けていたとは。ですが方法さえ分かれば手の打ちようはあります。さて、そろそろ終わりにしましょう」
「成る程、友達が余命幾ばくも無いと……それは辛いな」
カイトとエリーはアスカの事を、一応トレーナー兵士である事は伏せた上で、余命が後2年である事を話した。
「それで?君達はその友達を助けたいが、方法がないと?」
「はい……何か良い方法は無いでしょうか?」
「ふむ。難しい話じゃな」
流石のアデクもこの話の妙案は直ぐには浮かばなかった。
「………少し、キツイ事を言っても良いか?」
「はい」
「……残念じゃが、その友達の命を救うのは難しいじゃろう。命には必ず終わりが来る。人間でもポケモンでも。こればかりはどうしようも無い」
アデクが出した結論もエリーと同様だった。
「そんな……」
「じゃが、最良の人生にする事は、君達にも出来るのではないか?」
「最良の……人生?」
「そう。何も命を救う事だけが助ける事ではない。絶望したまませず、その子が今までの人生を生きて来て良かったと思える物にする。それも助ける事だと儂は思う」
「「……」」
「だから、その子に最高の思い出を創って上げてはどうかのう?それに、諦めなければ、その子を助ける方法が見つかるかもしれん」
「「……」」
アデクの提案を聞いたカイトとエリーは意を決した顔になった。
「やろう」
「えぇ」
「アデクさん。相談に乗ってありがとうございます」
「お掛けで良い方向になりました」
「いや、儂は大した事はしておらん」
「よし!早速アスカに会いに行くか!」
「うん!」
「アデクさんお世話になりました」
「では、失礼します」
「うん!2人共、良い旅をの」
アデクはカイトとエリーを見送った。
「行きたまえ、未来ある少年少女達よ」
アデクは2人を背を見ながらそう呟いた。