1ヶ月後
アスカとタゴツはそれぞれ地面に伏せながらライフルを構え、アスカはスコープの真ん中に1匹のオドシシを捉えた。
「よし、ゆっくり呼吸しろ。そして、息を吐く間に引き金をゆっくり引け」
「はぁー」
ダン!!!
アスカは持っていたライフルを発砲し、オドシシは倒れた。
「ナイスショット」
タゴツは山の中の小屋で生活しており、狩猟で狩った獲物や薪を売って生活費を稼いでいた。
タゴツの提案でアスカはタゴツの下に身を寄せる事となり、アスカはタゴツの手伝いをしながら生活していた。
「ふぅ……ん?」
小屋に戻ったアスカは売り物用の薪を割っていると、小屋に近づく高級車に気付いた。
車が停まると、運転席からスーツ姿の男が降りて来て、後部座席のドアを開けた。
後部座席からも、高価なスーツを着用した身なりの良い男が降りて来た。
(ハイキングでは無さそうだ。……高価な服に腕時計も高価な物。企業の重役か。それにドアを開けた男、辺りへの警戒を怠っていない、ガードマンと言ったところか)
アスカは小屋に近づいて来る男達の身なりと動きから職業をざっと推測した。
「アスカ、そろそろ買い出し……また来たか」
小屋から出て来たタゴツは、スーツの男達を見るなり、げんなりした。
「やぁ、父さん」
「アツキ」
高価なスーツを着た男はタゴツを見るなり父さんと呼び、タゴツはアツキと呼んだ。
(父さん?この人が前言ってたタゴツの息子か?)
アスカが男をタゴツの息子と認知した直後、もう1台の高級車と真っ赤なスポーツカーが小屋の前に停まり、高級車からは先ほどの息子同様、スーツを着た男、スポーツカーからは派手な格好をしたチャラそうな男が降りて来た。
「父さん」「よお親父」
「サクマ、ジュンヤ。お前達もか」
男達は先に来た男同様タゴツの息子だった。
しかし、タゴツは鬱陶しい物を見た顔をしていた。
タゴツは小屋に息子達を招き入れ、椅子に座った。
「で?目的はわかってるが一応聞いておこう」
「その前に、あの娘は?」
アツキは本題に入る前に、小屋の外で薪の出荷準備を続けているアスカの事について聞いた。
「アスカだ。今訳あって家で預かってる」
「まさか、隠し子?」
「そんな訳ないだろ」
「そうか、じゃあ血縁関係は無いんだね?」
「あぁ」
「へぇ〜けっこうカワイイ娘じゃん」
「あの娘はお前には手に負えないぞ」
「まぁ、あの娘の事はひとまず置いて本題に入ろう。父さん、遺産の事なんだけど」
「やっぱりその事か……言ったはずだ。遺産はお前達に均等に分配し、残りは寄付すると」
「親父、寄付なんてしても横領されるのがオチだぜ?」
「そうなるくらいな、カワイイ息子達に多く遺すのが親の務めじゃねぇの?」
「………俺は確かに財閥を創ったし、あっちこっちに会社も創った。……だがある時に仕事で別の国に行ったんだ。そしたらそこに何が居たと思う?……銃を持った子供だよ。その子は家が貧しくて学校にも行けない子で、足し算を覚える前にAK-47の撃ち方を先に教えこまれ。買い物よりも殺しを先に経験していた。その時俺は思ったんだよ……俺はとんでもない世間知らずだったんだなと。……この辺だってそうだ。親に虐待されたり、育児放棄されたり、不幸な目にあってる子供達が沢山いる。あのアスカだって。あの娘、最初に出会った時何してと思う?……スリだよ。街中でサイフを盗もうとしてたんだ。…だが、誰があの娘達みたいな子供を育てた?俺達大人だ。大人が子供が盗みを働くような生活をさせたり、子供を兵士にしたんだ。中にはこれからは若い世代がどうにかすると言ってる奴も居るが、まずは年老いた世代が若い世代に見えでも良いから、手本となる行動を示さないと行けないと思ったんだよ。確かに、お前達の言う通り寄付金を横領する奴もそりゃ居るさ。でも、形だけでもやらないよりは良いだろうと思ったんだ。……だから、言った通り、遺産はお前達3人に均等に分配する。それでも足りないなら、自分で稼げ」
アツキ達は小屋を出て、車で帰って行った。
「待たせたな、さぁ、買い出しに行こう」
「………帰して良かったの?息子でしょ?」
「あぁ」
「チッ!あのクソオヤジ!人が下手に出てりゃ衝け上がりやがって!」
アツキは車の中でタゴツから遺産の増額が出来なかった事でかなり苛ついていた。
「何とか金を多く手に入れる方法を考えねぇと。………そうか、今なら遺言は無いだろから今あいつが死ねば」
何か策を思い付いたのかアツキは不敵な笑みを浮かべた。
(何か良からぬ事考えてんな。……ま、良いけど)
運転席のバックミラーで後部座席の様子を見ていたボディーガードのウォンをアツキの様子に気付いてはいたが特に咎めはしなかった。
アスカがタゴツの息子達と初めて会ってから3週間ごろ、あれからサクマとジュンヤは何度かタゴツに遺産の増額を求めては空振りに終わるを繰り返していた。
(またか)
その間にアスカはジュンヤが時折嫌らしい視線で見ている事に気付いた。
そして、2人も来なくなった。
「アスカ、買い出しに行くぞ」
アスカはタゴツの運転するピックアップトラックに乗って街まで買い出しに来た。
アスカとタゴツは別行動を取って買い出しをしていた。
(後は……)
ガッ
「!」
アスカは突然背後から口を塞がれ裏通りに連れ込まれた。
「っし!ゲットした!」
(こいつ確か、タゴツの息子)
アスカを路地裏に連れ去ったのはタゴツの息子の1人であるジュンヤとその連れと思われるアスカの口を塞ぎ、羽交い締めにしている若い男と、もう一人の若い男の計3人だった。
「アスカちゃんだっけ?いや〜あの小屋で君を一目見た時から目点けてたんだよね〜」
ジュンヤはアスカの胸を鷲掴みにした。
「お?君けっこうあるね。ハイパーボールぐらい?」
「「「ははは!」」」
「……」
「ッチ、反応無しかよ」
ジュンヤは胸を掴まれているにアスカが顔色1つ変えないのが気に食わなかった。
「まぁ、良いや。こうすればちょっとは良い反応するかな?」
もう一人の男がアスカのデニムのに巻いてあるベルトを緩めようと手に掛けた。
「!」
「っ!」
アスカは男の顔が下半身に近づいたのを見計らい、まずベルトを外そうとした男の顎に膝蹴りを入れ、その勢いのまま羽交い締めにしている男の足の甲を踏み付けた。
「イテ!」
羽交い締めにした男が悶絶した事で拘束が解けたアスカは男の鼻先に裏拳を打った。
「ぃぃ…」
裏拳を鼻先にかまされた男は激痛で鼻を押さえながらしゃがみ込んだ。
「この女!」
残ったジュンヤがアスカに飛び掛かろうとしたが、アスカは掴み掛かられる前にジュンヤをビルの壁に叩きつけ、頭を肘打ちで壁に叩きつけた。
「っ……」
頭を叩きけられたジュンヤは脳震盪で失神した。
「貴方達!何してるの!?」
表通りの方から女性の声が聴こえ、声のした方へ頭を向けるとジュンサーが立っていた。
警察署
アスカはジュンサーによって警察に補導された。
ジュンヤとその連れは強姦未遂の現行犯逮捕された。
「あの娘は被害者ですので正当防衛が認められるでしょう。ですか息子さんの方はお咎め無しでは済みません」
「わかりました」
タゴツはジュンサーからの通知に反論せず受け入れた。
「ところで、彼女もお子さんですか?」
「いえ、あの娘は預かっている娘でして、血の繋がりはありません」
「そうですか。………あの、あの娘は何者なんですか?」
「と言うと?」
「幾ら相手が格闘のかの字も知らないとは言え、10代の女の子が大の男3人を一方的に、しかも素手で倒すなんて……」
「あの娘は2ヶ月前に保護したんです」
「身元を示す物は?」
「ありませんでした。トレーナーカードも何も」
「ではご家族への連絡先も?」
「本人は家族は居ないと言ってました」
「身元不明と言う事ですか?」
「はい」
アスカとタゴツは警察から解放され、警察署から出た。
「済まなかったな、家のバカ息子が」
タゴツは警察署を出るなり、アスカに謝罪した。
「何であんたが謝るの?別にタゴツがやった訳じゃ?」
「父親だからな。自分の子供が悪さしたら、育てた親の責任でもある」
「そう言う物か……ヘクシュ!」
アスカはクシャミをした。
「寒いか?……ぁ、あれがあったな」
タゴツはピックアップトラックの後部座席を物色した。
「これ着とけ」
タゴツはアスカの肩にオリーブグリーンのミリタリージャケットを掛けた。
「昔着てた奴だ。ちょっとデカいか?」
「いや、大丈夫」
「そうか。それやるよ」
「良いの?」
「あぁ。さぁ帰ろう」
アスカとタゴツはピックアップトラックに乗り込み、小屋への帰路に着いた。
「ジュンヤの野郎、上手くアホやらかしたな」
「あぁ、お掛けで取り分が増えた」
「後は、遺言が書かれる前に親父を始末するだけだ」
「そう言えば、殺し屋は雇ったのか?」
「あぁ、安く済む奴を雇った」
「大丈夫か?」
「取り敢えず殺してくれれば誰でもいいさ」