アスカがタゴツと暮らし始めてから3ヶ月。
マンションの一室で男がスマホで電話していた。
『おい!何でまだ殺してないんだ!』
「話しでは小屋に居るのはおっさん1人のはずだ。女が居るなんて聞いてないぞ」
『それがどうした?』
「リスクマネージメントだ。その女に顔を見られて、通報されたりする可能性がある」
『だったらその女も殺せば良いだろ!?』
「簡単に言うけどなぁ、こっちは捕まったら問答無用で極刑だ。あんただって、芋蔓式にムショ送りだぞ?」
『言い訳は良い!後2日待ってやる!それまでに始末しろ!最悪親父だけでも良い!』
「はいはい、わかりました」
男は電話を切ると、テーブルに置いてあった消音器が装着された拳銃を手に取った。
「じゃアスカ、留守番頼んだ」
「わかった」
小屋では留守をアスカに任せて、タゴツは仕留めた獲物を下ろしに出掛て行った。
そして、その後をドローンが追跡して行った。
「ぁ」
アスカはテーブルの上にタゴツの荷物が置いてあるのに気付いた。
(忘れたのか……持って行くか)
アスカはタゴツに届けよと小屋を出て、近道の為に山の斜面を降りて行った。
1時間後
タゴツは街で卸売りをしていた。
「はいよ。いつもあんがとな」
商談が成立し、タゴツは売掛金を受け取ると、ピックアップトラックに乗り込んだ。
「……?」
タゴツは外に人の気配を感じ、窓の外を見ると1人の男が立っていた。
「………?」
荷物を持って来たアスカは停めてあったタゴツのピックアップトラックを見つけたが、トラックの横に居た男が懐から拳銃を取り出すのを目撃した。
男は消音器が装着された拳銃で運転席に何発か撃ち込んだ。
「おい!!」
銃撃を目撃し、さらにガラスに血が吹付けられたのに気付いたアスカはタゴツが撃たれたと直感し、男に向かって大声で叫び、アスカに気付いた男は走って逃げ出した。
アスカはベアボウを取り出し、矢を男に向けて放った。
「ぐぁ!」
矢は男の左肩に刺さり、男は悲鳴を上げたが劇痛を堪えて逃走した。
アスカはハイパーボールを投げると、タゴツの方へ向かった。
「タゴツ!しっかりして!」
運転席のタゴツの容態を見ると、出血がかなり酷く重傷だった。
『こちら緊急コールセンターです。どうなされました?』
「銃で撃たれた!患者は50代男性!出血が酷い!」
アスカはタゴツのスマホで救急車を要請した。
だが、周りの人間は誰一人手を貸さずに皆見て見ぬ振りをしたり、中にはSNSに上げる為に写真や動画を撮って居る人間も多数居た。
病院
タゴツは救急車で病院に搬送され、緊急オペを受ける事となり、アスカは廊下で待っていた。
オペ中のランプが消灯し、オペ室から執刀医が出てきた。
「………最善は尽くしましたが………無念です」
執刀医は遠回しにタゴツが死んだ事を伝えた。
「………」
アスカは何も言わず、涙を流す事も無く執刀医に最敬礼をした。
オペ室から全身に布を掛けられたタゴツの死体がストレッチャーで霊安室に運ばれて行った。
それと入れ違いで部下の警官を引き連れたジュンサーが歩いて来た。
「警察です。……この度は残念でしたね」
「犯人は男。身長は約170後半。中肉中背。わたしは面識なし」
アスカはジュンサー達に目撃した犯人の特徴と面識がない事を伝えた。
「え?」
「犯人の特徴」
「あぁ、特徴ね。……」(何この娘?何とも思ってないの?)
ジュンサーは身近な人が死んだのに、取り乱した様子を一切見せないアスカを気味悪がった。
「親族へは?」
「え?あぁ、息子さんへはしたけど、対応出来ないって」
「そりゃそうだ」
「え?」
「いえ、何でもないです。あの、もう良いですか?ちょっと所要があるので」
アスカはそう言うと病院を出た。
外は既に日が傾き夕方となっていた。
「………こっちか」
自分の影を見たアスカは影が伸びた先である西へ向かって歩いて行った。