ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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アオイ視点です


12話 見つけた目標

 

 

 

 私がパルデアに引っ越してきたのは、お母さんのお仕事の都合だった。

 アカデミーに入ったのは学校に行かなきゃいけないからで、ポケモンも貰えるから貰った。

 

 そしてネモとバトルして、勝って、褒められちゃって。私にはトレーナーとして見込みがあるって、ネモはそう言ってくれた。

 私自身バトルが楽しいと思った。それならと、トレーナーを目指すことにしたの。

 

 それからは流れるまま。ネモに誘われてジム巡り、ペパーに誘われてスパイス集め、カシオペアって人にスター団を潰す手伝いを頼まれて。

 全部引き受けたよ、片っ端から。

 だって、楽しそうだったもん。

 ペパーには『なんでもイエスちゃんかよ』って言われたけど、本当にそうかもしれない。私は、物事を深く考えないでその場のノリと勢いでやっちゃうところがある。

 

『アオイは、どんなトレーナーになりたいの?』

 

 だから、先生の質問にはハッキリと答えられなくて。強いて言えば、ネモと本気でバトルするために強くならなきゃってぐらいだった。

 そんなことを聞かれたその日、私は初めてバトルに負けた。ネモに聞けば、先生はガラルのチャンピオンに匹敵する強さらしい。タイプ相性不利だったし、そりゃあ勝てないわけだよって思ったんだ。

 でもね。

 

『すげーな、あのトレーナー!むしジムなのにニャオハで勝っちまったよ!』

『しかもテラスタル無しだぜ!?どんな鍛え方したんだよ!』

 

 先生とカエデさんのバトルは、タイプ相性とかそんな理屈を全部吹き飛ばした。

 ニャオハのレベルがどうとかはどうでも良くって、私が驚いたのはあの子と先生の信頼関係。

 

 素人目で見ても絶望的な状況を、ポケモンもトレーナーも諦めない。困難に対して、めげない心で立ち向かっていく。そんな姿を、ありきたりだけど『カッコいい』と思ったんだ。

 

 この日、私は本当の意味で『ポケモントレーナー』という存在を知った。

 私も先生やネモみたいな凄いトレーナーになりたいと、今までぼんやりとしていた私の目標が、くっきりと形になって表れたんだ。

 

 

 

 

 

 

「ウェルカモ、つばさでうつ攻撃!」

 

 そして今、私のジムデビュー戦。戦いは順調そのものに進んでいた。

 

「う〜ん。弱点をつかれると厳しいですね〜。ヒメグマ、あまいかおり〜」

アクアジェットで突っ切って!水の中なら匂いも気にならないはず!」

 

 隙を作ろうとするヒメグマに対して、ウェルカモを力任せに突っ込ませる。

 思った通り、ウェルカモはヒメグマのあまいかおりに惑わされなかった。上手く接近に成功する。

 

 手持ちは、私もカエデさんも残り一匹。でも、私の方が断然有利な状況だった。

 ハネッコでまずタマンチュラを突破。ヒメグマには倒されちゃったけど、ハネッコのしびれごなで麻痺にできたから、動きを鈍らせることができた。

 

 だから……

 

つばさでうつでトドメ!」

 

 万全のウェルカモで、テラスタルを使わずに倒すことができたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

「快勝だったね!おめでとう、アオイ!」

 

 セルクルタウンでのジム戦を終えて、私は先生と祝勝会という名のお茶会をしていた。

 このジムではカエデさんに勝つとケーキが貰えるみたいで、私も先生も試合に勝った分のケーキを食べていた。

 先生は食べきれないからと、半分をサワロ先生に渡していたけど。……あの時のサワロ先生、嬉しそうだったなぁ。

 

「なんとか……。ありがとうございます。先生が先に戦ってくれたから、リラックスできました」

「ボクは特に何も。あの戦いっぷり見たら、必要ないんじゃないかってぐらいだったし……。うん、とにかくおめでとう!」

 

 先生は、まるで自分のことのように喜んでくれる。自分が勝った時よりも嬉しそう。子どもみたいに笑う先生に、私も顔が綻ぶ。

 普段は生徒と先生の関係だから忘れがちだけど、リンドウ先生って私と年齢三つくらいしか変わらないんだよね……。

 

 でも、バトルの腕は段違い。先生がちょうど私と同じ歳の時、先生はガラルのジムチャレンジを突破してるんだ。

 だから、私もそれに並びたい。なんとしても、この課外授業でジムバッジを八つ集める。一つ目でつまづいている暇なんてないよ。

 

「……あんまり嬉しくなさそうだね?」

「えっ!?そっ、そんなことないですよ!バトルが終わって、まだ現実感がないというか……」

「そっか。まぁ初めてだもんね」

 

 図星をつかれた発言に私は大慌てで弁明するけど、先生はそれ以上追及してはこなかった。鋭いのか鋭くないのか……。

 全く嬉しくないわけじゃないけど、あんまり嬉しくないのは本音。それはある意味、先生とカエデさんのバトルを直前に見たから気づいたことだった。

 

 私は、カエデさんに余裕をもって勝った。その前に戦った先生と比べても、私の方が圧倒したように見えたと思う。

 でも、見る人が見ればわかる。カエデさんは、私に対して手加減をしていた。どくびしを絡めた戦法も、タマンチュラの高速たいあたりも、ヒメグマのカウンターもなし。淡々とバトルをして、勝ったって感じ。

 

 そりゃあ先生はガラルのトーナメント覇者で、私は新米トレーナー。比べるのが間違ってるし、最初のジムだから手加減するように言われてるのかもしれない。

 仕方ないことだけど、ちょっと悔しいなあ。

 なんて。

 

「アオイ、この後はどうするの?」

「一回テーブルシティに戻って、東門から出ようと思います。次のジムもありますし。先生は?」

「ボクもテーブルシティに帰るかなぁ。アカデミーに戻って残務処理しなきゃ」

 

 先生は忙しそうだ。普段のお仕事との掛け持ちだからなぁ。本当は全部のジム戦を見学したいところだけど、我儘は言えないよね。

 

「そっかぁ。頑張ってくださいね、次の授業も楽しみにしてます。あれから、希望者すっごく増えたらしいですから」

「みたいだね……。うぅ、プレッシャー」

 

 途端に弱腰になる先生。バトルの時はあんなに堂々としていたのに、フィールドから離れるとまるで別人みたい。

 先生が机に突っ伏してうなだれていると、スマホロトムがけたたましい音を立てた。

 

「……っと、校長から電話だ。はい、今セルクルタウンにいて……えっ!?」

 

 先生の顔が驚きに変わっていく。

 

「わかりました。すぐに向かいます!!」

 

 先生は電話を切ると、大慌てで身支度を始めた。

 

「どうしたんですか?」

「西1番エリアで、巨大化したポケモンが暴れてるって。生徒たちが立ち往生してるから、助けにいかなきゃ」

 

 西1番エリアは、セルクルタウンの西側だったよね。風車が立ち並んでて、傾斜が急な山道。

 

 ん?待って、あそこって確か……。スマホロトムを開くと、やっぱり思った通りだった。その巨大化したポケモン、私は知っている。

 お皿に残っていたケーキを大口開けて放り込む。せっかく貰ったケーキなのに、味わって食べられなくてごめんなさいカエデさん。

 

「アオイ?」

「わだしもいぎまふ!!」

「飲み込んでから話そうか」

 

 ごめんなさい。

 

「っく。私も連れてってください」

「……遊びに行くんじゃないんだよ」

「分かってます。でも、足を引っ張るつもりはありませんし、きっとそこにくる友達を助けなきゃいけないので」

 

 少し厳しい目をする先生。でも、私だって軽い気持ちで行くわけじゃないよ。

 それに、先生のバトルをもう少し見ていたい。やっと見つけた目標なんだから、学べるところは全部学びたいし。

 

「……わかった。アオイのバトルの腕は疑っちゃないしね」

「やった!」

「でも、危険だと判断したらすぐに引いてもらうよ。生徒を守るのが先生の務めだからね」

 

 先生の許しも得た。そうとなれば、張り切っちゃうんだから!

 ようやく見つけた私の目標。しつこくしつこく、追い回してやります。

 

 いつか、全力でバトルができるようになるその日まで!

 

 




今までアオイのキャラが中身がなくて宙ぶらりんな感じだったので、ここらでバシッと固めるためにもメイン回にしました。今さらですが、立ち位置としては第二主人公です。
もちろん、ネモを蔑ろにするつもりは毛頭ありません。あくまで、彼女のライバルはネモです。

余談ですが、ジムリーダーはトレーナーによってジム戦での強さを分けてる……という認識です。リンドウくんはガラルのジム制覇&オモダカさんの差金で難易度MAX仕様です。


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