ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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13話 山模様、晴れときどき岩

 

 

 

 クラベル校長からの連絡を受けたボクたちは、急いで西1番エリアに向かった。

 例の巨大化したポケモンは、アオイ曰くヌシポケモン。今回のそれは、大空のヌシと呼ばれるらしい。その二つ名を素直に捉えるなら、ひこうタイプのポケモンなのかな。

 

「あっ、せんせーい!」

「みんな!怪我はない?」

 

 岩山の麓に、生徒たちが立ち往生していた。とりあえず、大きな怪我をした子はいなさそうで安心。最悪のケースだけはないようだ。

 となれば、あとは原因の排除だけど。

 

「あのポケモンが、高いところから岩を落としてきて……」

「悪戯ってレベルじゃ済まないね、あれは……」

 

 生徒が指差した方を見ると、白い鳥ポケモンがお腹の袋から岩をゴロゴロと転がしているのが見えた。あの煽っているようなニヤケ顔、楽しんでやってるな。

 スマホロトムに読み込ませると、オトシドリというらしい。降りてくる気配はないし、こっちが近づくしかないんだけど……。

 

「先生、岩がっ!?」

「マズい……!エーフィ、サイコキネシスで受け止めて!」

 

 岩の来ない場所に避難してても、こうして流れ弾が飛んできかねない。ポケモンが巨大化した影響か、岩のサイズもかなり大きめだ。エーフィですら受け止めるのが限界か……!

 

「みんな離れて!ニャローテはタネばくだん、マリルはバブルこうせん!」

 

 エーフィの受け止めた岩を二匹の攻撃で砕く。こんなのが何個も何個も転がってくるんだ。近づくのも楽じゃない。

 空中から近づける子がいたら、オトシドリの気を引けるんだけど。ボクの手持ちに鳥ポケモンはいない。やっぱ陸路か。

 

「ねぇ、先生。コライドンに乗って近づけないかな?」

「あの緋色の子?」

「うん。力もあるし、スピードも凄いからなんとかなると思うんです」

 

 アオイが提案する。多少の危険は伴うけど……それでも一番安全か。徒歩で踏破するよりはよっぽどマシだ。

 

「わかった、操縦は頼んだよ。エーフィは残って、生徒たちを守ってあげて!」

「エフィ」

 

 エーフィをその場に残し、ボクたちはコライドンに跨って坂道を駆け上る。転がる岩にも臆さず、コライドンはガンガン突き進んでいった。

 なるほど、アオイの言う通りずっと速い。同じライドポケモンでも、モトトカゲとはえらい違いだ。これなら安全に近づけ……。

 

「アオイ、前!」

「わわっ!?コライドン、横にダッシュで抜けてって!」

 

 そう簡単にはいかないか。オトシドリも近づけまいと、岩を落とす頻度を上げていく。

 迫り来る岩を、コライドンは右に左に掻い潜っていく。アオイも結構無茶な操縦をしているけど、それに応えるこの子のタフさよ。

 

「くっ、正面……」

「任せて!ニャローテ、タネばくだん!」

「ウェルカモもお願い!アクアジェット!」

 

 二匹の攻撃でなんとか粉砕。さらに突き進む。大岩の連続を潜り抜け、ようやく近づいてきた。

 

「ストオオオオクッ!!」

 

 妙な鳴き声を上げながら、オトシドリは高度を落としていく。嘴に加えていた袋を離し、そのお腹から更に岩を転がしてくる。

 

「ヒメグマ、あなをほるで進んで!」

 

 アオイはヒメグマを繰り出し、彼を地中に潜らせた。これなら転がる岩も無視して近づける。

 ボクもサポートしよう。狙うのは、次にオトシドリが袋を離す瞬間!

 

「マリル、あの袋を狙って!バブルこうせん!」

 

 マリルのバブルこうせんは、オトシドリの袋を弾く。おかげで転がす方向が定まらなかったのか、岩は明後日の方向に飛んでいった。今が近づくチャンスだ。

 

「出てきてヒメグマ!そのままメタルクロー!ウェルカモはアクアジェット!」

 

 オトシドリの元まで移動したヒメグマが地中から飛び出し、ウェルカモが突撃する。

 今が好機と見た。マリルは尻尾をバネにして高く跳躍。オトシドリの上方へ移動した。

 

「ニャローテ、つばめがえし!マリルはそのままとびはねるで攻撃!」

 

 四匹の攻撃がぶつかり、とうとうオトシドリは地に叩き落とされた。力なく倒れ、戦う気力まで失われたようにみえる。

 

「ストオオク……」

「やった……?」

「いえ、まだです」

 

 アオイがそう言うと、オトシドリは起き上がって後退。ボクたちも後を追いかけると、洞窟の手前で何かを食べていた。

 食べ物で体力回復でもしてる……?

 まさか、あんな雑草ぐらいで?

 

 すると、食べ終えたオトシドリはオーラを纏い、今まで与えたダメージがまるでなかったように元気になった。

 

 

「ストオオオオオクッ!!!!」

 

 

「いや、デカっ!?さっきよりデカぁ!?」

「ヌシポケモンはひでんスパイスってのを守ってるんです!それで、それを食べると……」

 

 巨大化&パワーアップってこと!?ダイマックス現象もびっくりの突然変異だよ、こんなの。

 オトシドリは体力も戻ったのか、こちらに敵意剥き出しだ。翼を広げ、飛翔の構えをとる。

 

「マズい!みんな伏せて!!」

 

 瞬間、猛スピードでオトシドリが突っ込んできた。ボクたちトレーナーを巻き込むのもお構いなしで、この一帯ごと翼で薙ぎ払う。

 

「ニャローテ!マリル!」

 

 巻き込まれたニャローテ、マリルはともに大ダメージだ。特に、ニャローテは一撃でひんしに追い込まれてしまった。アオイの方をチラリと見るとウェルカモが昏倒、ヒメグマは辛うじて耐えたけど戦うのは難しいだろう。

 ……もしかして、今の技がつばさでうつ?この馬鹿げた範囲と火力を兼ね備えた技が?

 反則にも程があるでしょ。

 

「先生、上!!」

「まさか岩を落とす気?マリル!!」

 

 倒れて動けないマリルのところを、オトシドリは容赦なく追撃をかけようとした。高所を位置取り、岩を落とす構えをとる。

 多分彼女は動けない。ボクは、なりふり構わず走りだした。お願い、間に合って……!!

 

「コジオ、うちおとすだ!!」

 

 ボクがマリルを抱きかかえると同時に、上空で鈍い音がした。何かに粉砕された岩は小さな粒となり、地に降り注ぐ。

 

「危ないだろ、先生!しっかり周り見ねぇと」

「ありがとう……って、ペパー!?」

 

 駆け付けてくれたのは、コジオを連れたペパーだった。ボクがアオイやマリルと出会った、あのテラレイドバトルの日以来だ。

 

「もう、遅いよペパー」

「悪い。でも、アオイたちがアイツの気を引いてくれたおかげで、ここまで辿り着けた」

「手伝ってくれるの?」

「ああ。俺にはスパイスが必要だからな。……危険だからって、止めてくれるなよ」

 

 ペパーの表情は重苦しい。アオイも何かを訴えかける表情でこちらを見てきた。特別な事情があるのは間違いなさそう。

 教師としては止めるのが正しいのかもしれない。でも、なんとなくそれは違う気がした。

 

 彼らは、むやみに危険な行動をしようってんじゃない。そのリスクに見合う対価を得ようとしているだけだ。もしそれが、ペパーにとっての『宝探し』ならば……。

 

 ボクにできるのは止めることじゃない。この子たちがせめて危険な目に遭わないよう、サポートするだけだ。

 

「止めないよ。それなりの理由があるんでしょ?」

「……あぁ!ありがとう、先生!」

「んじゃ、やりますか!あの悪い子ちゃんにお仕置きしなきゃね!」

 

 意気込んだアオイは、ひんしのウェルカモと寸前のヒメグマを戻して、マメバッタを繰り出す。

 未だ上空にいるオトシドリは、再度岩を降らせてくる。あれを好き勝手されちゃあ、こちらが一方的に不利だ。

 

「マメバッタ、岩を飛び移りながら移動して!にどげり!!」

 

 ボクとペパーが攻撃範囲から逃れる間に、マメバッタは落ちてくる岩に乗りながらどんどん浮上していく。小さいながらも優れた跳躍力だ。

 あっという間に、空高く飛んでいたオトシドリにまで到達。か細い脚ながら、強烈な蹴りを顔面に叩き込んだ。

 

「高度が下がったぞ!」

「あれなら届く!カルボウ、ひのこ!」

 

 ボクのカルボウが炎を撒き散らし、さらにダメージを与えた。マメバッタはオトシドリの巨体を盾にすることでひのこを防ぎ、無事に着地する。

 さぁ、さらなるダメージでまた高度が落ちた。今がチャンスだ。

 

うちおとす!!」

 

 そして、コジオの飛ばした岩は羽にヒット。体を浮かせる力を失ったオトシドリは、たまらず地面に墜落する。

 

「ナイス、ペパー!!畳みかけるよマメバッタ!とびつく攻撃!!」

「待ってアオイ……!」

 

 少し尚早じゃないか?

 逸るアオイを止めたけど一歩遅く、とびかかったマメバッタはオトシドリの嘴ではたき落とされてしまった。

 

 さすがは強化されたヌシポケモン……。あの程度じゃまだ倒せないみたい。

 叩き落とされたマメバッタめがけて、オトシドリは岩を落としにかかる。

 

「マメバッタを守れ!てっぺきだ!」

「ボクたちは援護するよ!カルボウ、テラスタル!そして、もう一度ひのこ!」

 

 コジオがマメバッタの前に躍り出て、攻撃を受け止める。

 攻撃がコジオたちに向いている隙に、こっちも反撃だ。カルボウは強力な火の粉を浴びせる。

 

「ストオオオク!!」

「なっ!?アイツ、飛ぶぞ!!」

 

 オトシドリが飛翔。翼を広げて突撃してくる。

 アレはてっぺきじゃ受けとめきれない!

 

「カルボウ、伏せて!」

「しんどいちゃんだなぁ!コジオ、まもる!」

 

 カルボウは地面にひっつく形で伏せて攻撃を回避。そして、コジオはバリアを張ってオトシドリを受け止める。

 だけど、パワーの差は歴然。やがてバリアは突き破られ、後ろのマメバッタごと吹き飛ばされてしまった。

 

「くっ……。すまねぇ、アオイ。コジオはなんとか耐えたが……」

「大丈夫だよ、ペパー。あの子は耐える」

 

 ペパーと、正直ボクもマメバッタを諦めていた。だけど、マメバッタは主たるアオイの声に応えるように起き上がった。

 明らかに限界は超えたダメージだろうにどうして……。いや、こらえるを使って耐えた?

 

「ちょっぴり気弱かもだけど、本当はゆうかんだもんね。マメバッタ、もうひと踏ん張りだよ!テラスタル!」

「カルボウ、マメバッタが攻撃を当てやすいようにサポートするよ!ほのおのうずで捉えて!!」

 

 カルボウの技で動きを封じられたオトシドリ。コジオのうちおとすの効果で、高く飛ぶこともできない。もう逃げ場はないはずだ。ふらついた足取りながら、マメバッタが突貫する。

 

ほのおのうず解除!決めて、アオイ!」

「いっけー!!とびつく攻撃!!」

 

 勢いそのままマメバッタは突撃。むしのしらせとテラスタルの乗った強力な攻撃は、ヌシのオトシドリの膨大な体力をも一撃で削り取る。

 辛勝。手強かったし危険な目にも遭ったけど、何とかボクたちはヌシを鎮めるのに成功した。

 

 




アオイ&ペパーは陰でガケガニ倒してます。さすがにヌシも全部やると話数がヤバいことになるので……。
スターダストもひとつぐらいは書く予定ですが、基本的には裏でやってもらいます。
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