ポケットモンスター Re:Champion Road 作:1.96
○
「久しぶりやね、リンドウ」
「うら♪」
あまりに唐突な出来事に言葉が出ない。そんなボクを前に、かつてのライバルと彼女の
「散歩してたら騒ぎがあって、何かと思ったらまさかやけんね。あたしもビックリした」
「こ、こっちだってビックリだよ。今はジムリーダーでしょ?それがどうして……」
ジムチャレンジの時期……なら来れるわけないか。そうでなくとも、ジムリーダーって忙しい印象があるけど。
ボクが尋ねると、マリィは何か言いにくそうに口をもごもごさせる。
「訳あり、というか……恥ずかしくてあんま言いたくないんだけど」
マリィは口では答えず、スマホロトムをずいと差し出す。
急に大人しくなっちゃって。マリィが見せてきたのは、動画投稿サイトの画面だった。
なになに……。そこに写ってるのは同じくガラルのジムリーダーキバナさん。と、二色の髪した不可思議な格好の女の子。
………………うん?
「え、どういうこと!?」
キバナさんいるの?パルデアに?なんで?
「まぁ、そういう反応になるよね……。パルデアの動画投稿者と、キバナさんがコラボしてるんよ」
「そんな急な……」
マリィに説明されても理解が難しい。
けど、なんとなく流れは分かった。キバナさんはSNSに写真や動画を多く投稿している。ジムリーダーという肩書きや見た目の良さも相まって、ガラルトップのインフルエンサーだ。
そして、そのキバナさんがパルデアのインフルエンサーとコラボする……と。なんて豪華な。
「ん?じゃあマリィは?」
「その……動画に華が欲しいと言われて」
「出たの?」
「……うん」
あ、これキバナさんに丸め込まれたな。
マリィは恥ずかしそうに目を逸らす。自分から参加するとは言わなさそうだもんね。
ってことは、キバナさんとパルデア二人旅?よくネズさんの許可が下りたね。
「あぁもう恥ずかしか!やっぱり忘れて!」
「いや、せっかくだし見るよ。なんなら今から」
「リンドウ!」
冗談だよ、冗談。
後で見るけど。
「にしても、キバナさんとコラボだなんて凄い配信者だね。有名人?」
「え」
え、なんか『お前マジかよ』みたいな顔されたんだけど。
「リンドウ、ナンジャモのドンナモンジャTVって知らんの?」
「なにその噛みそうな名前は」
「パルデアで超有名な配信者。しかもあたしと同じジムリーダー」
「そうなの!?」
知らなかった。
冷静に見てみると、チャンネルの登録者数がとんでもない。何十万人って、パルデア以外の地方にもファンがいそうだ。そらキバナさんともコラボ出来ますわ。
キバナさんとの動画はポケモンとピクニックしてるとか、お試しでテラスタル使ってるとか。意外と内容は普通。
ちなみに、一番伸びてるのはハラバリーとモルペコがじゃれてる動画だった。
「今からハッコウシティに行くんだけど、リンドウも来ない?キバナさんもおるよ」
「へぇ、それならご一緒しようかな」
どのみち、ボクたちの行き先も一緒だ。断らない理由もない。先に返事したけど、きっとアオイも来たがるだろうし―――
「あ……えと。わ、私は遠慮します。せっかく久し振りのお友達と会ったのに、邪魔になりそうだし」
珍しい。
「そう?気にせんでいいんよ?」
「いえ、本当に大丈夫なので!で、では先生、またアカデミーで〜!」
「あ、うん……。じゃあね」
行っちゃった。なんか悪いことしちゃったな。
「……リンドウ、あの子って教え子よね?」
「そうだよ。バトルの筋も良くてさ」
「へぇ……。手は出したらダメやからね」
なんてことを言うんだこの人は。
誤解を招くからやめなさい。
◇ ◇ ◇
ハッコウシティは、パルデアでもかなり栄えている。ドデカい看板にギラギラのネオン。派手な街には派手なジムリーダーってわけか。
そんな派手な街でも一際目立つ、生けるランドマーク。文字通り、頭抜けて背の高いキバナさんを見つけるのは容易だった。
「おっ、リンドウか!」
「お久し振りです、キバナさん」
「かーっ、しばらく見ねぇうちにデカくなったなお前!」
いち早くボクを見つけると、キバナさんはボクの頭を抱えてガシガシと雑に撫でる。
痛い痛い。痛いしメガネもズレる。
「なになにー?キバナ氏の知り合い?」
ひょっこりと顔を出したのは、さっき動画にも映っていた人物。この人がジムリーダーのナンジャモさんか。
「おうよ、マリィの同期のリンドウだ。当時のトーナメント覇者だぜ」
「ど、どうも……」
「ほぇ〜!あっ、キミがオモダカ氏の言ってたリンドウ氏?話には聞いてるよ〜。ボクはナンジャモ!おはコンハロチャオ〜!」
おはコン……なんて?
結構グイグイ来る人だな。営業とかじゃなくて、普段もこんな性格なのかな。
……ていうか、オモダカさんはこの人にまで何を喋ってるんだ。やめて。
「マリィ氏が連れてきたの?」
「うん……。さっき偶然会って」
「ほーう、そりゃいいタイミングで来たな。リンドウもこっち来いよ」
キバナさんはスマホロトム片手に道を行く。今日も動画撮影をするのかな。それならボクは必要ないはずだけど。若干気になりながらも、ナンジャモさんとキバナさんについていく。
来たのは、街中心部にあるバトルコート。ハッコウジムのバトルもここでやるらしく、公式戦に適した作りになっている。
「どうしたんですか、いきなり。バトルでもしようってんですか?」
「おう、察しがいいな。本当はオレ様とマリィがナンジャモと一試合ずつ……ってのがシナリオだったんだが。二人組のタッグバトルに予定変更だ」
ほー、タッグバトルね……。
ナンジャモさんとキバナさんで組むのかな。そしてそれを動画化すると。双方のファンも満足するビッグサプライズだろうね。
え、タッグバトル?
「……まさか、対戦相手って」
「そ。お前ら二人だ」
キバナさんの視線の先にはマリィ。……とボク。当然だ。ここにトレーナーは四人しかいない。
「ボクとキバナ氏のタッグに、久々に再会した同級生コンビ!この組み合わせはいいぞぉ〜。大バズり間違いなし!これでまた登録者数がシビルドン上りに〜……ニッシッシ」
「てな裏事情もあるわけでよ」
「思いっきり表に丸出しでしたけど」
……やるしかないかぁ。いつの間にか大勢のギャラリーがいるし、ナンジャモさんは勝手に配信始めやがりましたし。肖像権、守ろう。
あと、コメントでボクのこと誰?って言うのやめて。一人だけネームバリュー皆無なのは知ってるから、それでも傷つくから。
「な、なんかゴメンねリンドウ。こんなことになるなんて……」
「マリィのせいじゃないし、こうなったら後には引けないよ。まぁ、動画の引き立て役になるつもりはないけど」
ナンジャモさんの配信である以上、視聴者の大半が望むのは彼女の勝利。だけど生憎、その期待に応えるつもりはない。
それはきっと、マリィも同じはずだ。
「もちろん!やるからには絶対勝つけんね!」
相手は二人ともジムリーダー。手加減の必要は一切ないよね。ボクのボールからは、早く俺を出せという圧を感じる。わかったわかった、最初からキミを使うつもりだから。
「ほう、やる気満々じゃねぇか。いいぜ、存分に楽しませてくれよな!」
「ルールは手持ち一匹を出すタッグバトル!テラスタルを使うのはチームで一回だけ、でどう?」
異論はない。
ボクもキバナさんも頷く。
「テラスタルはリンドウに任せるよ」
「オッケー、援護お願いね」
「んじゃもー、早速バトっちゃいますか!題して『ガラルとパルデアのインフルエンサーが!ガチでタッグを組んでみた!』ってことで!」
ジムリーダーの ナンジャモとキバナが
勝負を しかけてきた!
「いっといで、ハラバリー!」
「荒れ狂え!ジュラルドン!」
動画のタイトルかな。やたら冗長なセリフを後にナンジャモさんが、続けてキバナさんもポケモンを繰り出した。
……よし。
「おいで、ウーラオス!」
「いくよオーロンゲ!」
そして、こっちはこの二匹。パワーファイターコンビと遠距離アタッカーコンビという、見事に対の構図が出来上がった。
キバナさんがジュラルドンなのは幸いだった。こういう場面、出すのは相棒ポケモンと相場が決まっている。姑息だけど手持ち読みさせてもらったよ。
「ほう、れんげきの型……。みずタイプの方か」
「お?みずタイプなんて使っていいのかなー?ボクのハラバリーがビリビリさせちゃうぞー?」
煽られる煽られる。
さすが配信者、口撃もお手のものか。
ハッコウシティのジムリーダーがでんき使いなのは知っていた。でも、エーフィだと今度はジュラルドンが辛くなる。ダブルバトルである以上、あっちが出てこっちが引っ込むって状況になるのは致し方ない。
じめんタイプがいれば完璧だったけどね。ないものを嘆いても仕方ない。
それに、この地方ではタイプ相性なんて一手でどうにでもなるんだ。
「まさか。ナンジャモさん、パルデアのジムリーダーなのにご存知ないんですか?」
「なぬー?そう言うならこれを受けてみよ!パラボラチャージ!」
ちょっとだけボクも口撃。
……やめとこ。炎上しそう。
冗談はそこそこに、ボクはテラスタルオーブを起動した。
「ウーラオス避けないでよ!テラスタル!」
「ウラッス!?」
驚いて静止する間に、ボクはオーブを彼に投げつける。頭に光るは握り拳の結晶。中身はかくとうテラスタルだ。
「げげ!?いきなり!?」
迫り来る電撃を、ウーラオスは拳で弾く。みずタイプが消え、でんきに不利を取らなくなった証拠だ。これで五分に戦える。
「ふ、ふーん。リンドウ氏も動画映えってのがわかってんじゃん」
「言っときますけど、空気読んで負けるなんて器用なこと出来ないですからね」
「言うねぇ〜。ま、それでもボクたちが勝つんだけどね!」
初手テラスタルと舌戦。ナンジャモさんに釣られて、ボクも少し気が大きくなってる気がする。
突如始まったエキシビションのタッグバトルは、のっけからフルスロットルで始まった。
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キバナとナンジャモってコラボとかしてそう。そんであのビジュアルだから、ナンジャモのファンから逆恨みされてキバナ炎上しそうだよね〜ってことを考えてたら思いついた展開。