ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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19話 インフルエンサーの宴

 

 

「久しぶりやね、リンドウ」

「うら♪」

 

 あまりに唐突な出来事に言葉が出ない。そんなボクを前に、かつてのライバルと彼女の相棒ポケモン(モルペコ)は笑った。

 

「散歩してたら騒ぎがあって、何かと思ったらまさかやけんね。あたしもビックリした」

「こ、こっちだってビックリだよ。今はジムリーダーでしょ?それがどうして……」

 

 ジムチャレンジの時期……なら来れるわけないか。そうでなくとも、ジムリーダーって忙しい印象があるけど。

 ボクが尋ねると、マリィは何か言いにくそうに口をもごもごさせる。

 

「訳あり、というか……恥ずかしくてあんま言いたくないんだけど」

 

 マリィは口では答えず、スマホロトムをずいと差し出す。

 

 急に大人しくなっちゃって。マリィが見せてきたのは、動画投稿サイトの画面だった。

 なになに……。そこに写ってるのは同じくガラルのジムリーダーキバナさん。と、二色の髪した不可思議な格好の女の子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………うん?

 

「え、どういうこと!?」

 

 キバナさんいるの?パルデアに?なんで?

 

「まぁ、そういう反応になるよね……。パルデアの動画投稿者と、キバナさんがコラボしてるんよ」

「そんな急な……」

 

 マリィに説明されても理解が難しい。

 けど、なんとなく流れは分かった。キバナさんはSNSに写真や動画を多く投稿している。ジムリーダーという肩書きや見た目の良さも相まって、ガラルトップのインフルエンサーだ。

 

 そして、そのキバナさんがパルデアのインフルエンサーとコラボする……と。なんて豪華な。

 

「ん?じゃあマリィは?」

「その……動画に華が欲しいと言われて」

「出たの?」

「……うん」

 

 あ、これキバナさんに丸め込まれたな。

 

 マリィは恥ずかしそうに目を逸らす。自分から参加するとは言わなさそうだもんね。

 ってことは、キバナさんとパルデア二人旅?よくネズさんの許可が下りたね。

 

「あぁもう恥ずかしか!やっぱり忘れて!」

「いや、せっかくだし見るよ。なんなら今から」

「リンドウ!」

 

 冗談だよ、冗談。

 後で見るけど。

 

「にしても、キバナさんとコラボだなんて凄い配信者だね。有名人?」

「え」

 

 え、なんか『お前マジかよ』みたいな顔されたんだけど。

 

「リンドウ、ナンジャモのドンナモンジャTVって知らんの?」

「なにその噛みそうな名前は」

「パルデアで超有名な配信者。しかもあたしと同じジムリーダー」

「そうなの!?」

 

 知らなかった。

 冷静に見てみると、チャンネルの登録者数がとんでもない。何十万人って、パルデア以外の地方にもファンがいそうだ。そらキバナさんともコラボ出来ますわ。

 

 キバナさんとの動画はポケモンとピクニックしてるとか、お試しでテラスタル使ってるとか。意外と内容は普通。

 ちなみに、一番伸びてるのはハラバリーとモルペコがじゃれてる動画だった。

 

「今からハッコウシティに行くんだけど、リンドウも来ない?キバナさんもおるよ」

「へぇ、それならご一緒しようかな」

 

 どのみち、ボクたちの行き先も一緒だ。断らない理由もない。先に返事したけど、きっとアオイも来たがるだろうし―――

 

「あ……えと。わ、私は遠慮します。せっかく久し振りのお友達と会ったのに、邪魔になりそうだし」

 

 珍しい。

 

「そう?気にせんでいいんよ?」

「いえ、本当に大丈夫なので!で、では先生、またアカデミーで〜!」

「あ、うん……。じゃあね」

 

 行っちゃった。なんか悪いことしちゃったな。

 

 

 

 

「……リンドウ、あの子って教え子よね?」

「そうだよ。バトルの筋も良くてさ」

「へぇ……。手は出したらダメやからね」

 

 なんてことを言うんだこの人は。

 誤解を招くからやめなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 ハッコウシティは、パルデアでもかなり栄えている。ドデカい看板にギラギラのネオン。派手な街には派手なジムリーダーってわけか。

 そんな派手な街でも一際目立つ、生けるランドマーク。文字通り、頭抜けて背の高いキバナさんを見つけるのは容易だった。

 

「おっ、リンドウか!」

「お久し振りです、キバナさん」

「かーっ、しばらく見ねぇうちにデカくなったなお前!」

 

 いち早くボクを見つけると、キバナさんはボクの頭を抱えてガシガシと雑に撫でる。

 痛い痛い。痛いしメガネもズレる。

 

「なになにー?キバナ氏の知り合い?」

 

 ひょっこりと顔を出したのは、さっき動画にも映っていた人物。この人がジムリーダーのナンジャモさんか。

 

「おうよ、マリィの同期のリンドウだ。当時のトーナメント覇者だぜ」

「ど、どうも……」

「ほぇ〜!あっ、キミがオモダカ氏の言ってたリンドウ氏?話には聞いてるよ〜。ボクはナンジャモ!おはコンハロチャオ〜!」

 

 おはコン……なんて?

 結構グイグイ来る人だな。営業とかじゃなくて、普段もこんな性格なのかな。

 ……ていうか、オモダカさんはこの人にまで何を喋ってるんだ。やめて。

 

「マリィ氏が連れてきたの?」

「うん……。さっき偶然会って」

「ほーう、そりゃいいタイミングで来たな。リンドウもこっち来いよ」

 

 キバナさんはスマホロトム片手に道を行く。今日も動画撮影をするのかな。それならボクは必要ないはずだけど。若干気になりながらも、ナンジャモさんとキバナさんについていく。

 

 来たのは、街中心部にあるバトルコート。ハッコウジムのバトルもここでやるらしく、公式戦に適した作りになっている。

 

「どうしたんですか、いきなり。バトルでもしようってんですか?」

「おう、察しがいいな。本当はオレ様とマリィがナンジャモと一試合ずつ……ってのがシナリオだったんだが。二人組のタッグバトルに予定変更だ」

 

 ほー、タッグバトルね……。

 ナンジャモさんとキバナさんで組むのかな。そしてそれを動画化すると。双方のファンも満足するビッグサプライズだろうね。

 

 

 

 え、タッグバトル?

 

「……まさか、対戦相手って」

「そ。お前ら二人だ」

 

 キバナさんの視線の先にはマリィ。……とボク。当然だ。ここにトレーナーは四人しかいない。

 

「ボクとキバナ氏のタッグに、久々に再会した同級生コンビ!この組み合わせはいいぞぉ〜。大バズり間違いなし!これでまた登録者数がシビルドン上りに〜……ニッシッシ」

「てな裏事情もあるわけでよ」

「思いっきり表に丸出しでしたけど」

 

 ……やるしかないかぁ。いつの間にか大勢のギャラリーがいるし、ナンジャモさんは勝手に配信始めやがりましたし。肖像権、守ろう。

 あと、コメントでボクのこと誰?って言うのやめて。一人だけネームバリュー皆無なのは知ってるから、それでも傷つくから。

 

「な、なんかゴメンねリンドウ。こんなことになるなんて……」

「マリィのせいじゃないし、こうなったら後には引けないよ。まぁ、動画の引き立て役になるつもりはないけど」

 

 ナンジャモさんの配信である以上、視聴者の大半が望むのは彼女の勝利。だけど生憎、その期待に応えるつもりはない。

 それはきっと、マリィも同じはずだ。

 

「もちろん!やるからには絶対勝つけんね!」

 

 相手は二人ともジムリーダー。手加減の必要は一切ないよね。ボクのボールからは、早く俺を出せという圧を感じる。わかったわかった、最初からキミを使うつもりだから。

 

「ほう、やる気満々じゃねぇか。いいぜ、存分に楽しませてくれよな!」

「ルールは手持ち一匹を出すタッグバトル!テラスタルを使うのはチームで一回だけ、でどう?」

 

 異論はない。

 ボクもキバナさんも頷く。

 

「テラスタルはリンドウに任せるよ」

「オッケー、援護お願いね」

「んじゃもー、早速バトっちゃいますか!題して『ガラルとパルデアのインフルエンサーが!ガチでタッグを組んでみた!』ってことで!」

 

ジムリーダーの ナンジャモとキバナが

勝負を しかけてきた!

 

「いっといで、ハラバリー!」

「荒れ狂え!ジュラルドン!」

 

 動画のタイトルかな。やたら冗長なセリフを後にナンジャモさんが、続けてキバナさんもポケモンを繰り出した。

 ……よし。

 

「おいで、ウーラオス!」

「いくよオーロンゲ!」

 

 そして、こっちはこの二匹。パワーファイターコンビと遠距離アタッカーコンビという、見事に対の構図が出来上がった。

 キバナさんがジュラルドンなのは幸いだった。こういう場面、出すのは相棒ポケモンと相場が決まっている。姑息だけど手持ち読みさせてもらったよ。

 

「ほう、れんげきの型……。みずタイプの方か」

「お?みずタイプなんて使っていいのかなー?ボクのハラバリーがビリビリさせちゃうぞー?」

 

 煽られる煽られる。

 さすが配信者、口撃もお手のものか。

 

 ハッコウシティのジムリーダーがでんき使いなのは知っていた。でも、エーフィだと今度はジュラルドンが辛くなる。ダブルバトルである以上、あっちが出てこっちが引っ込むって状況になるのは致し方ない。

 じめんタイプがいれば完璧だったけどね。ないものを嘆いても仕方ない。

 

 それに、この地方ではタイプ相性なんて一手でどうにでもなるんだ。

 

「まさか。ナンジャモさん、パルデアのジムリーダーなのにご存知ないんですか?」

「なぬー?そう言うならこれを受けてみよ!パラボラチャージ!」

 

 ちょっとだけボクも口撃。

 ……やめとこ。炎上しそう。

 冗談はそこそこに、ボクはテラスタルオーブを起動した。

 

「ウーラオス避けないでよ!テラスタル!」

「ウラッス!?」

 

 驚いて静止する間に、ボクはオーブを彼に投げつける。頭に光るは握り拳の結晶。中身はかくとうテラスタルだ。

 

「げげ!?いきなり!?」

 

 迫り来る電撃を、ウーラオスは拳で弾く。みずタイプが消え、でんきに不利を取らなくなった証拠だ。これで五分に戦える。

 

「ふ、ふーん。リンドウ氏も動画映えってのがわかってんじゃん」

「言っときますけど、空気読んで負けるなんて器用なこと出来ないですからね」

「言うねぇ〜。ま、それでもボクたちが勝つんだけどね!」

 

 初手テラスタルと舌戦。ナンジャモさんに釣られて、ボクも少し気が大きくなってる気がする。

 突如始まったエキシビションのタッグバトルは、のっけからフルスロットルで始まった。

 

 




キバナとナンジャモってコラボとかしてそう。そんであのビジュアルだから、ナンジャモのファンから逆恨みされてキバナ炎上しそうだよね〜ってことを考えてたら思いついた展開。
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