ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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※挿入話になります。


21話 生配信の裏側で

 

 

 

 私がアカデミーに戻ってから感じたのは、いつもよりもどこか浮ついた空気だった。皆が皆スマホロトムを見て、ワイワイと騒いでいる。

 それは食堂でも同じ―――いや、食堂の方がよりはっきりしていたと思う。私だけが浮いていて、違う時空にいるみたいで。その空気感がなんだか苦手で、私は端の方の席に座った。

 

「あ、アオイ。やっほー!!」

「ネモ」

「今日はジム巡りじゃなかったの?」

「……あー。早く終わったから帰ってきたの」

 

 さっき先生と分かれたことは、なぜか話す気になれなかった。プライベートだし、わざわざ話す必要はない……よね?

 ネモは周りの浮ついた空気もどこ吹く風で、私の正面に腰掛ける。普段通りの彼女で何だか安心。

 

「それよりさ、なんか今日皆の様子変じゃない?浮ついてるというか、騒がしいというか」

「そう?ハッ、もしかして皆バトルしたくてウズウズしてるんじゃ・・・」

「違うと思うなぁ」

 

 相変わらずだなぁ。

 

「冗談冗談。なんかね、ナンジャモのコラボ配信があるんだって。いまハッコウシティで生放送中」

「あー、それかぁ」

 

 ナンジャモのドンナモンジャTVは、パルデアでは結構有名。リスナーってほどではないけど、私も時間がある時に見るくらい。……たまーに炎上しかけるけど。それもまた一つの魅力とかなんとか。

 そういえば、先生のお友達が動画に出るって言ってたなぁ。ちょっと見た目怖いけど可愛い人。

 

 あの時の私、なんで逃げるようにアカデミーに帰ってきちゃったんだろう。

 

 『皆の者ー!おはこんハロチャオ!今日はガラルのインフルエンサー、キバナ氏とのタッグバトル生配信だぞー!』

 

 せっかくだからと、結局私たちも見ることに。ネモの隣に移動して、二人で一台のスマホロトムに目を向ける。

 そして、そのコラボ相手が画面に映ると、この異様な雰囲気の正体がわかった。

 

『出ました顔面偏差値600族』

『キバナー!』

『いつ見てもカッコい〜!』

『これでバトルも強いのズルすぎる』

 

 コラボ相手を称賛するコメントの数々。

 そして、食堂でも女の子の黄色い声援が飛び交う。皆この二人のコラボが見たかったんだ。

 

「わぁ、ガラルのジムリーダーだって。しかも、すっごく強そう……」

「実際、ジムリーダーの中だと一番強いらしいよ」

 

 ネモはそんなことなさそうで逆に安心した。

 まぁ私も、そんなキャーキャー言うことはないかなぁって感じだけど……。

 

 それはさておいて、ジムリーダー同士のバトルなら見てて損はないかな。

 タッグバトルっていうぐらいだから、あと二人トレーナーがいるはず―――。

 

『さて、気になるお相手は〜?キバナ氏と同じくガラルのジムリーダー、あく使いのマリィ氏!そして、マリィ氏のライバルで今はアカデミーの先生、リンドウ氏だー!』

 

 え。

 

「わー!凄いよアオイ!先生が生配信に出てる!」

 

 画面に映ったのは、居心地悪そうに苦笑いをしている先生。と、その隣でこれまた恥ずかしそうに頬を赤らめている女の人―――東1番道路で会った、先生の同期だった。

 あの後ハッコウシティに行って、そのまま生配信という流れだったのかな。いや、多分二人の様子からして巻き込まれたんだと思う。少なくとも、先生は自分から目立つタイプじゃないよね。

 

 ……って、誰に何の弁明してるんだろ、私。

 別に、先生があの人と進んで動画出たからって何もないじゃん。

 

「え、これアカデミーの先生じゃない!?」

「一年生の担当だっけ?強いの?」

「いやー、本気のナンジャモには勝てないっしょ」

 

 他の生徒も先生に気づいたのか、次々に反応を見せている。けど、お世辞にもその内容は褒めているものじゃない。

 あーあ、皆分かってないなぁ。先生は本気出したジムリーダーにも勝ってるんだって。そもそも、ガラルも制覇してるっての。

 

『誰?』

『急にゲストがしょぼくなったな』

『ナンジャモ八百長か?』

『見た目からして弱そう』

 

 ……皆分かってないなぁ。

 コメントの容赦ない声。コメントも本気で貶してるわけではないし、先生はジムリーダーみたいな肩書きもないからポッと出の印象なのは分かる。誰?ってなるのもおかしくはない。

 

「わぁ、コメント辛辣〜」

「確かに全然強そうに見えないけどねー」

 

 でも、それとムカッとしたのは別問題。先生のこと何も知らないくせに勝手なことばっかり言って。

 私は気づいたら、そんな発言をした子達のところに行っていた。

 

「な、なに?」

「先生は強いよ。見てればわかるから」

「そ、そうなんだ……」

 

 放っておけばいいのは分かってるけど、それでも言わずにはいられなかった。どうやら、私は自分で思ってたより頑固者みたい。

 

「ビックリした。あの子誰?」

「あれじゃない?話題の転校生」

「どしたんだろ、いきなり」

「さぁ……。あの先生のこと好きだったりして」

 

 あーもー、ムカムカっ。

 全部聞こえてるし。勝手な決めつけまでしちゃって。なんでも恋愛に繋げるとか頭ラブカスなの?

 

 ちょっと仲良いだけだし。私が一方的に憧れてるだけだし。それとこれとは全然関係ないし。

 ……うー、モヤっとする。試合に集中しよう。

 

「……アオイ大丈夫?怖い顔してるよ?」

「大丈夫。そんなことより応援するよ、ネモ」

「え?」

「先生が負けるわけないもん!全力で応援しよ!」

「……よし!いいよ!」

 

 多分、視聴者の九割―――いや九割五分はナンジャモを応援するだろう。だから、せめて教え子の私たちがエールを届けてあげなくちゃ。

 それから、私たちはもう全力で応援した。ここが食堂なのも忘れて、技が当たればポケモンを倒した時ぐらいに騒ぎまくった。

 

 食堂の生徒から変な目で見られたし、あとでクラベル校長に怒られたけど後悔はしていないです。

 結果、先生が二タテして勝ったからいいもん。

 

 




アオイちゃんは思春期真っ盛り
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