ポケットモンスター Re:Champion Road 作:1.96
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ハイダイさんとのジム戦。こちらは三匹残っていて、向こうはケケンカニ一匹のみ。それなのになんだ、この苦しい状況は。
それは、ケケンカニというポケモンのタイプにある。こおり/かくとうタイプは殴るのは優秀でも、攻撃を受けるという面では不安の多いタイプだ。なにせ弱点が多い。
でも、それをカバーするのがテラスタル。どうせみずでしょ知ってるよ。しかも、弱点のくさはこおり技で抜群をつけるときた。
「ガンガン行こうかい!れいとうパンチ!」
それでも鍵はニャローテだ。テラスタルもしてるし、スピードは大幅に分がある。
この場面だとテラスタルはしないだろうし、ここはこの攻撃を凌いで、一旦ボールに戻し―――
『ニャローテ戦闘不能!ケケンカニの勝ち!』
……え?
審判の言葉に、一瞬耳を疑った。でも、ニャローテが倒れているのは事実だ。
れいとうパンチを食らった?ニャローテなら避けられる一撃だったはずなのに。おいかぜはとっくに止んでいる。
「いいことを教えてやろうかい。ウミトリオの特性はぬめぬめ!触れると素早さが下がるんだい」
そんなカラクリだったのか。倒れてなお後続のサポートをするとは……。
って、関心してる場合じゃない。
「くっ……、お願いナカヌチャン!たたきつける攻撃!」
「受け止めろい!」
やっぱりパワーで押し切るのは無理か。簡単に止められてしまった。
はがね技、フェアリー技は使わない。今にもテラスタルを切られそうなのに弱点を突けば最後、みずタイプに変えられたら通る技が無くなってしまう。
悟られるな。ナカヌチャンのハンマーの特殊な性質を。あれはほのおポケモンの素材で作られた特注。きっとケケンカニにも効果はある。
一回でも多く攻撃するんだ。次のポケモンに繋ぐために。
「ぶんまわす攻撃!!」
縦に振り下ろすのをやめ、横回転に切り替える。ケケンカニはそのぶっとい腕でガードするけど、やはり弱点のほのお属性。小さく爆発が起こるにつれてガードが崩れていき、隙だらけの状態となった。
腕が跳ね上げられ、正面がガラ空きになる。
「ウオーっ!?力負けした!?」
「今だ、たたきつける!」
「こうなれば、ぶっこみ大変身!姿を変えて、クラブハンマー!」
大きな炸裂音。地を割るほどのパワーは、ナカヌチャンの攻撃ごと叩き潰して、そのまま昏倒させた。
やっぱり、みずテラスタルだったか。それにしても、隙を作ったはずなのに力でひっくり返されるなんて。
「……ありがとう、ナカヌチャン。無駄にはしないからね。あとは頼んだよ、マリル!」
深手とはいかずとも、それなりにハンマー攻撃は意味があったはず。いや、意味があるものにさせる。
ボクの最後のポケモンはマリル。カルボウを出せるわけないし必然的な選択だ。タイプ上、ケケンカニの攻撃がほとんど通らないのは大きい。
それに、彼女だって力自慢だ。
「攻めるよ!とびはねる!」
「れいとうパンチ!」
自身の体重を乗せた一撃も、ケケンカニを打ち破るには至らない。れいとうパンチで簡単に迎え撃たれ、吹き飛ばされる。
「着地際狙おうかい!じならし!」
「リルっ……!?」
くっ、震動がここまで……。
ケケンカニが拳を振り落とし、地面を揺らす。ボクにまで届くんだから、至近距離のマリルが受ければ立つのも困難だ。
じならしはその震動で動きを止め、すばやさを落とす技。マリルが動けない隙に、ケケンカニが射程圏内にまで近づいて拳を振りかざす。
「マリル、前見て!」
「クラブハンマー!!」
ダメだ。
気づいて受け止めにいったけど、力の差がとてつもなく大きい。簡単に押しつぶされてしまった。やはり真っ向勝負は無理か……!
考えろ。あの子の力を引き出すんだ。正面衝突で勝てないなら、策を講じるまで。
幸いスピードは上だし、ケケンカニはマリルへの有効打を持っていない。何とか耐え凌いで、スピードで撹乱させられたら……。
「リルゥーーー!!!!」
そんな方針を固めた矢先、マリルがそれを吹き飛ばすかのような雄たけびを上げた。
「マリル?」
ボクが声をかけても気に留めちゃくれない。自力でケケンカニを押しのけ、お腹をドンドコとリズミカルに叩き続ける。
自分を鼓舞しているのか?
いや、違う。ドラミングの音はどんどん力強くなり、それに比例して彼女自身の力強さも増しているようで……。
あの技は、まさか。
「マズい!一気に決めるんだい、ケケンカニ!」
「すぐ気づいたか……。とびはねる!」
ケケンカニの接近よりも早く、マリルは尻尾をバネにして跳躍。さっきよりも高く、見えなくなるぐらいまで高く跳ねたかと思うと、高速回転しながら地面に落ちてきた。
「耐えろい、れいとうパンチ!」
尻尾で叩きつけた一撃は、ケケンカニのガードを突き破って地面をカチ割るほどの火力を叩き出した。小柄なマリルに押しつぶされ、ケケンカニの拳が地面にめり込む。
さっきまでとは、明らかにマリルの火力が違う。自分よりひと回りもふた回りも大きいケケンカニを凌ぐ力。それを有した今の彼女に、もはや怖いものはない。
その答えは、さっきのドラミング。はらだいこという技だ。自身の火力を最大限まで高めるという脳筋極まりないもの。そんなぶっ飛んだ技にデメリットがないわけがなく、体力をおよそ半分ほど消耗してしまう。まさか、この場面で覚えるとは。
決めるなら短期決戦しかないか。まったく、力に真っ向から力で対抗するなんて無謀な。
……でも、彼女らしいね。
グーしか出せない、パワーのケケンカニ。マリルもグーしか出せないような子だ。そんな彼女がジャンケンで勝つには、なんとかパーを出させるんじゃない。
相手より強いグーで粉砕すればいいんだ。
「パワーなら負けん!クラブハンマー!」
「アクアジェット!」
マリルは水の柱を纏って突進。効果いまひとつだろうがお構いなしで、ケケンカニの拳を弾き飛ばす。
「そのまま旋回!突撃!」
恐ろしいのは、アクアジェットが決して火力の高い技ではないこと。元は小回りとスピードを武器にして戦う技だ。それが、ケケンカニの攻撃をも吹き飛ばすパワーを持つなんて。
拳をカチ上げられ、剥き出しの腹にマリルが突進する。無表情だったケケンカニの表情が、苦悶に染まった。両手で腹を抑え、声にならない呻きを上げる。
「マリル、ジャンプ!」
ガードが完全に下がった。
これを逃す手はない!
「フルパワーでじゃれつく攻撃!」
半減のアクアジェットですら悶絶したのが、高威力のじゃれつくを喰らえばどうなるか。そんなことは火を見るよりも明らかだった。
ケケンカニの巨体は音を立てて倒れ、それと同時にマリルがガッツポーズを上げた。
『ケケンカニ戦闘不能!マリルの勝ち!よって勝者、リンドウ選手!』
審判のコールが入り、ボクの勝ちが確定した瞬間だった。
なんとか勝った……。もうダメかと思ったよ。
耐え凌ぐ戦い方をしていたら、結局火力及ばずで粘り負けていたかもしれないね。結果として、マリルの力押しな戦い方が正解だった。もっとこの子たちを分かってあげないといけないね。
「リル、リルっ!」
「よく頑張ったね!おいで―――ウゴっほ!?」
喜びの抱擁なんて可愛いものではなく、勢いよく飛び込んできたマリルがボクのお腹に深く突き刺さる。
折れた……?いや、大丈夫。あばらは繋がっています。力持ちなんだから、スキンシップにも注意させないといけないなこりゃ……。
にしても大きく逞しく育ったねえ。前よりタックルも強くなったし、耳もこんなに伸びて……
……あれ?
「ルリ?」
「うん?」
「ウオッ、ウオーッ!見事なもんだい!立派に最終進化まで育ったな!」
いや進化しとる!?
マリルリになっとるー!?
え、この一瞬で進化したの?ボクのお腹にタックルしてる間に?マリルさん、最後の進化の瞬間それでいいの?
「リルリルゥ〜」
「ガッハッハ!これはめでたい!約束通り、きらきらミツを分けるんだい」
……本人が幸せそうだからいっか。
というわけで、当初の目的であるきらきらミツを半分。それと、マリルの進化祝いとしてハイダイさんの経営するレストランで料理を振る舞ってもらうという大盤振る舞いを味わった。
進化したぶん大喰らいになったのか、マリルリがウーラオスと競って大食い対決を行い始めたのは、また別のお話。
ニャローテ 四勝一敗
ナカヌチャン 一敗
マリルリ 二勝一敗
四つ目のジム、カラフジム攻略!
◇ ◇ ◇
「フー、食べたねえ」
「フィー」
ハイダイさんのレストランを出て。ボクとエーフィは、夜のカラフシティを歩いていた。そらとぶタクシーが来るまでの腹ごなし。
マリナードタウンに買い物に来ただけなのに、こんなことになるなんて。ジム戦もできて美味しい料理も食べられていい休暇になった。
「エフ〜」
「何か自慢げだけど、もう外であんな駄々をこねないでね?」
ボクの考えを読み取ったのか、何故かエーフィが誇らしげにしている。『私のおかげよ』とでも言いたいのだろうか。
確かに元はと言えば、この子がハイダイさんの前で駄々をこねたのが発端だけども。
感謝するべきか?
いや、するのはマリルリやニャローテ、ナカヌチャンであって。この子、ジム戦に出てないし。
「フィ!」
「痛いってば。わかったよ、少し体動かす?」
この子が本気でバトルしたの、もう久しいもんなぁ。こうしてたまに連れ歩きはするけど、やっぱりバトル出来ないのはストレスだよね。
ちょっとだけ砂漠に寄る。夜はかなり冷える場所だから、そう長居はできないけど……。あの広い場所を走り回るだけでも、彼女のストレス解消にはなるだろう。
「あんまり行き過ぎたらダメだからねー」
ボクはポケモンセンターの近くで彼女を見守る。今後はどうしようかなぁ。
ジム戦はなるべくパルデアの子を使うのは変わらない。彼らはやっぱり経験不足だしね。
でも、ニャローテを筆頭に実力もついてきたし、ガラルの子たちも併用出来るだろうか。
残るジムは四つ。六つ目ぐらいからなら、エーフィたちを出してあげても―――
「×××××××!!!!」
……何の音だ?
静寂の砂漠に轟いたのは、得体の知れぬ鳴き声。そしてそれに呼応するように、地鳴りが起こり始めた。なんだこの砂漠、昼間は何事もなかったのに。
「エーフィ、帰ろっか」
砂漠を駆け回っていた彼女は、すぐに戻ってきた。異変を感じ取ったのか、身を震わせ周囲を警戒している。やっぱり雰囲気が異様だ。
幸いにして、そらとぶタクシーはすぐに来てくれた。アカデミーに戻ってすぐ、このことをクラベル校長に報告したけど、次の日からはパッタリと咆哮も震動も止んだそうな。
手がかりも見つからず、結局この件についてはうやむやになってしまった。
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実はゲームだとケケンカニは氷技持ってないので、ニャオハを選んだ人にはめちゃくちゃヌルいです。
まぁイージーウィンしても面白くないのでね。
これでジム戦も折り返し。意外と早かったなーという印象です。
ハイダイさんの口調しんどかったんですけど、最大の難関であるラップおばさんが控えてるのでね……。パルデア組の口調複雑すぎ問題。
あ、サブタイトルは5秒で考えました。