ポケットモンスター Re:Champion Road 作:1.96
◯
「エ、エクスレッグ!?」
アオイとの四番勝負。ボクは先鋒にニャローテを選択し、アオイはエクスレッグを繰り出した。マメバッタの進化系、むしタイプのポケモンだ。
……クソっ、出し負けた。
「先生ならそうするよね!いっけー、とびかかる攻撃!」
「先発読みなんて可愛くないね。タネばくだんで押し戻して!」
エクスレッグが折り畳んでいた脚を伸ばして、思いっきり跳躍しながら襲いかかる。
大空のヌシ戦でマメバッタを見たけど、あの時と跳躍力は何も変わってない。むしろ、図体が大きくなった事を考慮すると増してるぐらいだ。
ニャローテは後ろに引き、エクスレッグの着地点を予測してタネばくだんを放つ。
彼の反応の早さのおかげで、とびかかるの直撃は避けられた。エクスレッグも一旦距離を置く。
攻撃を喰らうことは考えたくない。とびかかるを二発耐えるのは無理だろうし、先発で出し負けた代償は大きい。
ポケモン勝負の勝敗は、三割が初手で決まる。
……ってのはボクの単なる持論だ。でも、的外れとは思わない。
理由は単純。数的有利を取られる可能性が跳ね上がるから。一度相手側にいった流れを押し返すのは容易じゃない。
だから、初手は信頼のおけるポケモン……ボクの場合は対応力の高いニャローテを選ぶ。
最も、今回はそれを読まれたようだけど。ジム戦でも頼り切りだったのがマズかったか。
「詰めて、にどげり!」
「くっ、つばめがえし!」
ニャローテの爪とエクスレッグの脚がぶつかり合う。火力では少し押し負けるか・・・。
本当は入れ替えたい。けど、それすらもさせてくれなさそうだ。
ボクの手持ちは、ニャローテ以外エクスレッグに強い。中でもナカヌチャンは攻撃をほとんど抑えられるんだけど、アオイもそれを警戒してかむし技を撃ってこない。
にどげりだとナカヌチャンもカルボウも普通にダメージ貰っちゃうし、入れ替えのタイミングは難しい。見たところエクスレッグの馬力は相当なものだし、極力攻撃を受けたくない。
マリルリを出すって手もあるけど、今やエース格のあの子は大事にしたいのが本音。やはり、ここはニャローテに踏ん張ってもらわなきゃ。
「タネばくだん!」
「上へ!」
エクスレッグが後脚を伸ばして跳躍。タネばくだんをかわして、上空高くに跳び上がった。
やっぱりあのジャンプ力は厄介だな。攻撃にも防御にも転じることができる。
「そのままじごくづき!」
エクスレッグは上空で構え、なんと回転しながら突っ込んできた。落下の勢いそのままに、このまま蹴り飛ばそうってか。
じごくづきは、喉元を狙って相手の音技を封じる副次的効果もある。ニャローテに音技はないけど、喉――ひいては首は生き物の急所だ。
「ガードして!」
迎え撃てる技はない。タネばくだんを撃った隙で回避も難しい。
だけど、エクスレッグの強烈な蹴りは、ニャローテの細腕を軽々と弾き飛ばした。
「ニャローテ!」
「ロニャ・・・」
「攻めるよ。とびかかる!」
「つばめがえしで迎え撃って!」
体勢を崩しながらも、ニャローテは迎撃。でも、それでも力の差で押されてしまう。つばめがえしの二発目を当てようとしても、エクスレッグはヒット&アウェイで距離を置くのでこれが当たらない。
果敢に攻めてくるなら、まだ隙ができそうなのに……。裏を返せば、まだ攻め込まれてないってことだけど。
「もう一度とびかかる!!」
……そうか。跳躍する必要がある以上、至近距離では使えない。アオイ側も、攻めたくても攻められなかったってことか。
ニャローテの飛び道具は威力半減のタネばくだんだから、無理に接近戦をするより堅実と。
「よく引き付けてから躱すんだ!」
避けるだけなら造作もない。しっかり引き付けたおかげで、最大限エクスレッグに密着できた。
そしてエクスレッグが距離を取ろうとするのであれば……。
「足元をツタで殴れ!」
そこを崩せばいい。
跳躍するときだけ伸ばす後脚は、普段体を支えるための脚ではない。一度衝撃を与えれば脆く、簡単に隙を作りだした。
そして、この状態のエクスレッグに出せる技はないはず!
「今だ!つばめがえし!」
ニャローテ渾身の一撃は、エクスレッグに致命傷を与えた。防御はかなり薄いポケモンだ。かなり効いたはず。
いや、まだ立っている。
それどころか、何かを狙っている……!
「死なばもろとも!カウンター!!」
「ふいうち!!」
警戒して正解だった。
エクスレッグ決死のカウンターは、ニャローテに届くことはなかった。伸ばしたツタに阻まれ、そのままダウンする。
『勝者、ニャローテ!』
とりあえずは一匹。最後に相打ちを狙っていたとは、油断も隙も無い。
「くぅ……、ニャローテだけは先に仕留めたかったのに。じゃあ、次はこの子!」
続いてアオイが出したのはウェルカモ。見るからに相性不利な相手だ。てことは、ワタッコはいないのかな。この場面で出てこないんだから。
そうなると、相性不利のエクスレッグを凌げたのは大きい。ニャローテが活躍できそうだからね。
「ニャローテ、連続だけど行ける?」
「ロニャァ!」
よし、元気のいい声。
相性抜群を前に引くことはあり得ない。そもそも、控えている三匹ともみずタイプは得意としていないからね。
ここはニャローテに頑張ってもらおう。
「相性抜群だからって、油断はダメですよ!ウェルカモ、アクロバット!」
「こっちも!タネばくだん!」
とはいえ、不利なタイプを技で補っているのは予想の範囲内。ウェルカモがひこう技を持つのは、別段珍しいことじゃない。
とはいえ、動きは速いね。ニャローテばりの動きで、タネばくだんを次々と躱していく。分類バレリーナポケモンだっけ。どうりで、動きに妙なリズムが刻まれてるわけだ。
「近づけましたよ!いっけー!」
「ニャローテ、ツタを!」
でも、それでもニャローテの方が速い。
素早くツタを構えて、突っ込んでくるウェルカモに一太刀浴びせる。いくらアクロバットでニャローテを翻弄しても、正面で防ぐだけなら可能だ。
「なら……こうそくスピン!」
正攻法では無理と踏んだのか、アオイはすぐに技を切り返してきた。高速回転でニャローテに迫る。
接近してくるのをツタで弾き返しても、めげずにウェルカモは再度アタックを仕掛ける。まるでコマだ。
これだけならいいんだけど、厄介なのはどんどんスピードが増しているということ。スピードで上回られたら一転して不利になってしまう。それだけは避けたい。
「止めるよニャローテ!つばめがえし!」
「アクアジェット!」
高速で突っ込んでくるウェルカモに、ニャローテが合わせる。
ボクの指示の方が早かった分、ニャローテの爪が先に届いた。彼もダメージを受けたが、向こうはもっと手痛かったはずだ。
「くっ……、引いて!」
「追うよ、ニャローテ!」
引いたらアクロバットがくる。あの技もある程度の距離が必要な以上、接近した方が安全……。
そう思っていたボクは、少し安直だったかもしれない。確かにウェルカモの使った技は三つだから、もうひとつ何かを隠してたって不思議ではない。だから、一定の警戒はするべきだった。
でもその最後のひとつが……。
「逃がしませんよ!エアカッター!」
特殊の、それも二つ目のひこう技なんて予想できるわけがない。
「ニャローテ、避けて!」
ボクもニャローテも、飛び道具なんて全く頭になかった。真正面から向かってくる姿は、相手からしたら格好の的。
それでもニャローテの素早さならと思ったけど、エアカッターみたいな範囲の広い技は正面からじゃ対処しきれなかった。
「ニャグ……!?」
「ウェルカモ、アクロバット!」
エアカッターで怯まされたニャローテに、狙い澄ましたウェルカモの攻撃が襲いかかる。エクスレッグ戦からの蓄積されたダメージも相まって、元々打たれ弱い彼に耐える術はなかった。
『勝者、ウェルカモ!』
……苦しい。まさか、ニャローテがみずタイプに倒されるなんて。いや、むしろアオイを褒めるべきだ。まんまと彼女の狙い通りになってしまった。
「エアカッター、狙ってたの?」
「コルサさんのくさわけウソッキーも対策できましたから。あっ、速いくさタイプにはこれだなって」
そういうことか。ジム戦を勝ち抜いてきたのは偶然じゃない。経験を確実に糧にしてる。
ポケモンの数は五分。一瞬も気が抜けない。
互いに苦手な相性を覆す波乱の展開。ボクは、苦手なみずタイプのポケモンを残す苦しいスタートとなってしまった。
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むし/あくという地獄みたいなタイプなのに、ちゃんと強いエクスレッグさん。
見た目からしてもニチアサヒーローっぽいから上空からキックさせたかったんだけど、なぜかメガトンキック覚えなかった。泣く泣くじごくづきを採用したどうでもいい裏話。