ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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29話 相性不利を乗り越えて

 

 

 

「エ、エクスレッグ!?」

 

 アオイとの四番勝負。ボクは先鋒にニャローテを選択し、アオイはエクスレッグを繰り出した。マメバッタの進化系、むしタイプのポケモンだ。

 ……クソっ、出し負けた。

 

「先生ならそうするよね!いっけー、とびかかる攻撃!」

「先発読みなんて可愛くないね。タネばくだんで押し戻して!」

 

 エクスレッグが折り畳んでいた脚を伸ばして、思いっきり跳躍しながら襲いかかる。

 大空のヌシ戦でマメバッタを見たけど、あの時と跳躍力は何も変わってない。むしろ、図体が大きくなった事を考慮すると増してるぐらいだ。

 

 ニャローテは後ろに引き、エクスレッグの着地点を予測してタネばくだんを放つ。

 彼の反応の早さのおかげで、とびかかるの直撃は避けられた。エクスレッグも一旦距離を置く。

 攻撃を喰らうことは考えたくない。とびかかるを二発耐えるのは無理だろうし、先発で出し負けた代償は大きい。

 

 ポケモン勝負の勝敗は、三割が初手で決まる。

 ……ってのはボクの単なる持論だ。でも、的外れとは思わない。

 

 理由は単純。数的有利を取られる可能性が跳ね上がるから。一度相手側にいった流れを押し返すのは容易じゃない。

 だから、初手は信頼のおけるポケモン……ボクの場合は対応力の高いニャローテを選ぶ。

 最も、今回はそれを読まれたようだけど。ジム戦でも頼り切りだったのがマズかったか。

 

「詰めて、にどげり!」

「くっ、つばめがえし!」

 

 ニャローテの爪とエクスレッグの脚がぶつかり合う。火力では少し押し負けるか・・・。

 

 本当は入れ替えたい。けど、それすらもさせてくれなさそうだ。

 ボクの手持ちは、ニャローテ以外エクスレッグに強い。中でもナカヌチャンは攻撃をほとんど抑えられるんだけど、アオイもそれを警戒してかむし技を撃ってこない。

 

 にどげりだとナカヌチャンもカルボウも普通にダメージ貰っちゃうし、入れ替えのタイミングは難しい。見たところエクスレッグの馬力は相当なものだし、極力攻撃を受けたくない。

 マリルリを出すって手もあるけど、今やエース格のあの子は大事にしたいのが本音。やはり、ここはニャローテに踏ん張ってもらわなきゃ。

 

タネばくだん!」

「上へ!」

 

 エクスレッグが後脚を伸ばして跳躍。タネばくだんをかわして、上空高くに跳び上がった。

 やっぱりあのジャンプ力は厄介だな。攻撃にも防御にも転じることができる。

 

「そのままじごくづき!」

 

 エクスレッグは上空で構え、なんと回転しながら突っ込んできた。落下の勢いそのままに、このまま蹴り飛ばそうってか。

 じごくづきは、喉元を狙って相手の音技を封じる副次的効果もある。ニャローテに音技はないけど、喉――ひいては首は生き物の急所だ。

 

「ガードして!」

 

 迎え撃てる技はない。タネばくだんを撃った隙で回避も難しい。

 だけど、エクスレッグの強烈な蹴りは、ニャローテの細腕を軽々と弾き飛ばした。

 

「ニャローテ!」

「ロニャ・・・」

「攻めるよ。とびかかる!」

つばめがえしで迎え撃って!」

 

 体勢を崩しながらも、ニャローテは迎撃。でも、それでも力の差で押されてしまう。つばめがえしの二発目を当てようとしても、エクスレッグはヒット&アウェイで距離を置くのでこれが当たらない。

 果敢に攻めてくるなら、まだ隙ができそうなのに……。裏を返せば、まだ攻め込まれてないってことだけど。

 

「もう一度とびかかる!!」

 

 ……そうか。跳躍する必要がある以上、至近距離では使えない。アオイ側も、攻めたくても攻められなかったってことか。

 ニャローテの飛び道具は威力半減のタネばくだんだから、無理に接近戦をするより堅実と。

 

「よく引き付けてから躱すんだ!」

 

 避けるだけなら造作もない。しっかり引き付けたおかげで、最大限エクスレッグに密着できた。

 そしてエクスレッグが距離を取ろうとするのであれば……。

 

「足元をツタで殴れ!」

 

 そこを崩せばいい。

 跳躍するときだけ伸ばす後脚は、普段体を支えるための脚ではない。一度衝撃を与えれば脆く、簡単に隙を作りだした。

 そして、この状態のエクスレッグに出せる技はないはず!

 

「今だ!つばめがえし!」

 

 ニャローテ渾身の一撃は、エクスレッグに致命傷を与えた。防御はかなり薄いポケモンだ。かなり効いたはず。

 いや、まだ立っている。

 それどころか、何かを狙っている……!

 

「死なばもろとも!カウンター!!」

ふいうち!!」

 

 警戒して正解だった。

 エクスレッグ決死のカウンターは、ニャローテに届くことはなかった。伸ばしたツタに阻まれ、そのままダウンする。

 

『勝者、ニャローテ!』

 

 とりあえずは一匹。最後に相打ちを狙っていたとは、油断も隙も無い。

 

「くぅ……、ニャローテだけは先に仕留めたかったのに。じゃあ、次はこの子!」

 

 続いてアオイが出したのはウェルカモ。見るからに相性不利な相手だ。てことは、ワタッコはいないのかな。この場面で出てこないんだから。

 そうなると、相性不利のエクスレッグを凌げたのは大きい。ニャローテが活躍できそうだからね。

 

「ニャローテ、連続だけど行ける?」

「ロニャァ!」

 

 よし、元気のいい声。

 相性抜群を前に引くことはあり得ない。そもそも、控えている三匹ともみずタイプは得意としていないからね。

 ここはニャローテに頑張ってもらおう。

 

「相性抜群だからって、油断はダメですよ!ウェルカモ、アクロバット!」

「こっちも!タネばくだん!」

 

 とはいえ、不利なタイプを技で補っているのは予想の範囲内。ウェルカモがひこう技を持つのは、別段珍しいことじゃない。

 とはいえ、動きは速いね。ニャローテばりの動きで、タネばくだんを次々と躱していく。分類バレリーナポケモンだっけ。どうりで、動きに妙なリズムが刻まれてるわけだ。

 

「近づけましたよ!いっけー!」

「ニャローテ、ツタを!」

 

 でも、それでもニャローテの方が速い。

 素早くツタを構えて、突っ込んでくるウェルカモに一太刀浴びせる。いくらアクロバットでニャローテを翻弄しても、正面で防ぐだけなら可能だ。

 

「なら……こうそくスピン!」

 

 正攻法では無理と踏んだのか、アオイはすぐに技を切り返してきた。高速回転でニャローテに迫る。

 接近してくるのをツタで弾き返しても、めげずにウェルカモは再度アタックを仕掛ける。まるでコマだ。

 

 これだけならいいんだけど、厄介なのはどんどんスピードが増しているということ。スピードで上回られたら一転して不利になってしまう。それだけは避けたい。

 

「止めるよニャローテ!つばめがえし!」

アクアジェット!」

 

 高速で突っ込んでくるウェルカモに、ニャローテが合わせる。

 ボクの指示の方が早かった分、ニャローテの爪が先に届いた。彼もダメージを受けたが、向こうはもっと手痛かったはずだ。

 

「くっ……、引いて!」

「追うよ、ニャローテ!」

 

 引いたらアクロバットがくる。あの技もある程度の距離が必要な以上、接近した方が安全……。

 

 そう思っていたボクは、少し安直だったかもしれない。確かにウェルカモの使った技は三つだから、もうひとつ何かを隠してたって不思議ではない。だから、一定の警戒はするべきだった。

 でもその最後のひとつが……。

 

「逃がしませんよ!エアカッター!」

 

 特殊の、それも二つ目のひこう技なんて予想できるわけがない。

 

「ニャローテ、避けて!」

 

 ボクもニャローテも、飛び道具なんて全く頭になかった。真正面から向かってくる姿は、相手からしたら格好の的。

 それでもニャローテの素早さならと思ったけど、エアカッターみたいな範囲の広い技は正面からじゃ対処しきれなかった。

 

「ニャグ……!?」

「ウェルカモ、アクロバット!」

 

 エアカッターで怯まされたニャローテに、狙い澄ましたウェルカモの攻撃が襲いかかる。エクスレッグ戦からの蓄積されたダメージも相まって、元々打たれ弱い彼に耐える術はなかった。

 

『勝者、ウェルカモ!』

 

 ……苦しい。まさか、ニャローテがみずタイプに倒されるなんて。いや、むしろアオイを褒めるべきだ。まんまと彼女の狙い通りになってしまった。

 

「エアカッター、狙ってたの?」

「コルサさんのくさわけウソッキーも対策できましたから。あっ、速いくさタイプにはこれだなって」

 

 そういうことか。ジム戦を勝ち抜いてきたのは偶然じゃない。経験を確実に糧にしてる。

 ポケモンの数は五分。一瞬も気が抜けない。

 互いに苦手な相性を覆す波乱の展開。ボクは、苦手なみずタイプのポケモンを残す苦しいスタートとなってしまった。

 

 




むし/あくという地獄みたいなタイプなのに、ちゃんと強いエクスレッグさん。
見た目からしてもニチアサヒーローっぽいから上空からキックさせたかったんだけど、なぜかメガトンキック覚えなかった。泣く泣くじごくづきを採用したどうでもいい裏話。
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