ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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30話 猛き焔

 

 

 

 みずタイプは優秀だ。弱点が二つと少なく、技の通りも良いと攻守において隙がない。それも相まって、ボクのパーティーはみずタイプが苦手だ。

 ハイダイさんとのバトルも、相性抜群のニャローテがいて、なんとか勝利をもぎ取れた。彼に頼りきりだったんだ。

 

 マリルリとナカヌチャンは技の威力を抑えられ、カルボウはそれに加えて弱点も突かれてしまう。

 

 そんなボクのパーティー事情。今さら嘆いてたところでどうしようもない。

 要するに、誰を出しても苦しいんだけど……。

 

「頼んだよ、カルボウ!」

 

 一番可能性があるのはこの子かな。

 その姿を知らずとも、ほのおタイプであることは一目でわかる。その選択にギャラリーがどよめき、マスタードさんは微かに眉を動かし、対峙するアオイはより警戒心を強めた。

 

「……どうせ何かあるんでしょう?」

「さぁ?みずタイプは辛いね」

「じゃあ、そのまま全抜きさせてもらいますよ!アクアジェット!」

ニトロチャージ!」

 

 ウェルカモの水にも負けない炎の出力。カルボウは、アクアジェットと互角にぶつかり合う。カラフジムではお休みだったけど、カルボウも成長している。これでも接近戦に磨きをかけたんだ。

 相性が悪い?そんなもの、もはやこのバトルでは関係ない。また覆せばいい。

 

アクアジェット!」

「止めるよ、ナイトヘッド!」

 

 カルボウの目が怪しく光り、ウェルカモの姿を捉えた。するとアクアジェットがカルボウの正面から逸れ、攻撃が外れる。

 

「……ウェルカモ!?」

 

 すぐにカルボウに向き直るが、ウェルカモは苦しそうに頭を抱えた。

 幻を見せ、相手に一定のダメージを与えるナイトヘッド。爆発力はないけど、コツコツとダメージを積み重ねるにはもってこいの技だ。とりわけ、相性不利な相手には有効なダメージ源になる。

 

「耐えて、ウェルカモ!」

「攻めるなら今!ナイトヘッドをかけたまま接近して!」

「くっ……ウェルカモ、目を瞑ってエアカッター!真っ正面に撃って!」

 

 動き出すカルボウに対して、アオイは大胆な指示を出した。だけど、ウェルカモはそれに疑う素振りを見せず、目を閉じたままエアカッターを放つ。

 ……クソ、気づくのが早いよアオイ。

 

 ナイトヘッドの弱点は、相手の目を見ないと失敗すること。つまり、あっちが目を閉じてしまえば簡単に封じられる。

 でも、カルボウの動きも早い。いくらアオイの指示があるとはいえ、無造作に放つエアカッターに当たるほど甘くはないよ!

 

「大丈夫!あの子は絶対接近してくる!私のタイミングに合わせて!」

 

 カルボウとウェルカモの距離が迫る。

 遠距離攻撃で牽制しつつ、アオイは攻撃のチャンスを確実に狙ってるはずだ。カルボウのナイトヘッドが解けるタイミングを。

 その瞬間、アクアジェットをぶつけにくる。そこに合わせて見せる。

 

「そうはさせないよ!カルボウ、完全燃焼!」

「ルボゥ!!」

 

 ボクの声を合図に、カルボウの瞳に炎が宿った。普通のオレンジ色のそれではない、青紫の焔だ。

 走りながら体全体に青紫の焔を纏わせる。ニトロチャージで加速した勢いに任せ、猛スピードでウェルカモとの距離を潰す。

 

「今!ウェルカモ、アクアジェット!」

「そのまま突っ込んで!右ストレート!」

 

 逃げない。

 カルボウは焔を両手に纏わせ、足を止めてパンチ。彼の拳とアクアジェットが真正面からぶつかり合い、小さな爆発が起こった。

 

 ウェルカモの纏っていた水の柱が、一撃で弾かれていた。効果抜群の攻撃を喰らったカルボウは当然苦しそうだけど、それと同じくらいウェルカモも顔を歪める。その体には、カルボウ同様の青紫の焔が纏わりついていた。

 

「な、なにこれ……!?」

「そこを狙うんだ!ニトロチャージ!」

「ぐ……、アクアジェット!」

 

 再びぶつかり合う炎と水。

 だけど、押し切ったのは炎だった。ウェルカモの纏った水を蒸発させ、そのままタックル。衝撃の瞬間に爆発が起こり、耐えかねたウェルカモはそのままダウンした。

 

「ウェ、ウェルカモ!……そんな」

 

 ……勝てた。よく巻き返した。

 カルボウのあの焔は、対象に攻撃を加えることで爆発を引き起こす。そのおかげで、相性不利でもダメージを加算させられた。

 

 焔の正体?

 企業秘密だけど……強いて言うなら、ウェルカモが特殊のみず技を持ってなくて助かったかな。物理技主体だから勝てた。

 

『うおお!また相性覆したぞ!?』

『すげえよ、なんだあのちっこいポケモン!』

 

 もう波乱の連続だ。

 あと二体……。疲れるね。アオイが戦法に気づく前に、彼女が混乱しているうちになんとか逃げ切りたい。

 

「じゃあ……。お願いキルリア!」

 

 アオイの三番手はキルリア。今までの彼女の手持ちにはいなかったポケモンだ。もう五匹目の仲間を捕まえていたのか。

 

 さて、状況を整理しよう。キルリアは遠隔攻撃を得意とするポケモン。対してカルボウは、言わずもがな接近戦が得意なポケモンだ。

 となると、こっちが追う展開になるのは必定。ひとまず、ニトロチャージでスピードをさらにあげようか……。

 

「先手必勝!しねんのずつき!」

 

 は?

 え、いや、ちょっと待っ……。

 

「キルゥ!!」

 

 ヤバい。

 ボクの指示が出遅れたせいで、カルボウは一気に距離を詰められてキルリアの頭突きを喰らってしまった。

 

 今でも頭の整理ができていないけど、まずは目の前の現実を受け止めろ。どういうわけか、このキルリアは物理型みたい。

 

「見てるだけなら倒しちゃいますよ!もう一度しねんのずつき!」

「接近戦なら大歓迎!旋回してニトロチャージだ!」

 

 キルリアの頭突きを避けて、背後に回り込んでタックル。ニトロチャージで素早さを上げてしまえば、接近戦は優位に立ち回れる。

 

 カルボウは闘牛(ケンタロス)のように足で地を掻き、倒れているキルリアに再度突っ込む。

 それに物理型ということは、他の意味でもメリットを生み出す。そう、あの焔の出番だ。

 

「カルボウ、もっかい行くよ!燃えたぎれ!」

 

 突っ込むカルボウは再び青紫の焔を纏う。殴りつけた箇所から焔が移り、連鎖反応で起きた爆発がキルリアを襲った。

 

「またあの炎……!迎え撃つよ、かみなりパンチ

「上から叩き潰せ!」

 

 倒れながらも苦し紛れに拳を出すキルリア。自分の体重を乗せて拳を下ろすカルボウ。

 どちらが優勢かは火を見るより明らか。そしてあの焔がキルリアの体に移った今、絶対に力ではカルボウに勝てない。

 

 キルリアの拳を弾き飛ばし、カルボウのパンチが突き刺さる。青紫の焔が集約された拳が、キルリアに乗り移った焔に触れて爆発。防御方面に薄いキルリアは、その一撃で昏倒した。

 

『……勝者、カルボウ!』

 

「あと、一匹……。もう後が……」

 

 アオイの顔に悲壮感が漂い始める。

 ……少し気の毒に見えるけど、真剣勝負だからね。容赦はしない。

 

「頑張ってリングマ!」

「……へぇ、進化したんだ」

 

 バッジを五つ持ってれば、おかしくない頃合いか。ヒメグマ時代に一度だけバトルしたけど、あの時はスピードも絡めていたっけか。進化してパワーはさらに増したはず。

 

 それにボクの記憶が正しければ、特性はどちらも状態異常に滅法強い。

 はやあしと……こんじょう。

 

「とにかく攻めるしかないの!きりさく!」

「カルボウ、お疲れ様。ナカヌチャン行って!」

 

 ボクは即座にカルボウを引っ込めて、ナカヌチャンを展開。すぐにリングマの爪が襲いかかるが、彼女は何食わぬ顔で攻撃を耐えた。

 流石ははがねタイプだね。

 

 入れ替えた理由は色々あるけど……。大きな理由としては、カルボウの戦法がリングマの特性とすこぶる相性悪いってこと。

 それに、二匹倒せば十分すぎる収穫だろう。マリルリとナカヌチャンで押せるはずだ。

 

「武器が厄介だよ!メタルクローでハンマーを弾き飛ばして!」

ぶんまわす!」

 

 ナカヌチャンは、身の丈ほどのハンマーを豪快に振り回して迎撃。彼女のパワーも凄まじいけど、やっぱり力は劣るか。ハンマーが爪に弾かれる。

 正攻法はなし。ならば……。

 

「もう一回!メタル……」

「ハンマーを投げつけて走れ!」

「ヌチャ!」

 

 リングマが振りかぶったところに、ナカヌチャンはハンマーを投擲。奇襲に驚く様相を見せるが、それでもハンマーは当たらずに軽く押し除けられる。

 でも投げたハンマーに対処したということは、その分だけナカヌチャンへの対応は難しくなるってこと。ハンマーは囮にすぎない。

 

 投げたハンマーが目隠しになって、リングマが一瞬ナカヌチャンを見失ったのが仇となった。

 易々とナカヌチャンは接近。嬉々として目を光らせ、その小さな爪を向ける。

 

「本家はがねタイプがお手本を見せてあげるよ。メタルクロー!」

「リングマ、こっちも迎え撃って!」

 

 振りが大きい!

 リングマの腕が届くより先に、ナカヌチャンのメタルクローが顔にヒット。

 硬質化した腕が顔付近を通れば誰だって怖い。リングマは顔を顰めた。

 

 その隙にナカヌチャンはぶん投げたハンマーを拾って、リングマの元から離脱。ハンマーだけが届く距離を位置取る。

 リーチはこちらの方が有利。武器を使うというのは、同じ接近戦をするうえでとてつもないアドバンテージになる。

 

「よく狙って!きりさく攻撃!」

「躱してたたきつける!コンパクトに狙うんだ!」

 

 大振りのリングマに対して、ナカヌチャンはハンマーを小さく細かく振るう。

 

 弧を描くように外を回るリングマに対して、最短距離でハンマーを走らせるナカヌチャン。

 どちらの攻撃が当たりやすいかは明白。ハンマーだけがリングマにヒットし、その度に殴った箇所から爆発が巻き起こる。ハンマーに付けている、ほのおポケモンの素材のおかげだ。

 

 あのリングマ、トリを務めるポケモンにしては正直に言ってお粗末な攻め。多分進化したてで、急に大きくなった体に振り回されてるんだと思う。力はあるから、追うんじゃなくて迎え撃つスタイルの方が理に適ってるはず。

 だけど、指示するアオイにも余裕がない。指摘して矯正することもできない。ヒメグマと同じ戦い方ではこの先通用しないのに。

 

「グマァ……!」

「リ、リングマ!くっ……、あなをほる!」

 

 たまらずリングマは地中に避難。さて、はがねタイプのナカヌチャンなら喰らいたくないけど。

 ヒメグマの時より潜航スピードが遅い。体が大きくなってるんだから当然だ。だから、こちらも対処のしようがある。

 

「ナカヌチャン、ハンマーを支えに跳んで!」

 

 棒高跳びの要領でナカヌチャンはジャンプ。上空でハンマーを高く掲げる。

 

「で、出てきてリングマ!倒して!」

「縦回転にぶんまわす!」

 

 せっかくの弱点をついた攻撃も、相手に迎撃態勢を取られてからでは意味をなさない。

 

 ナカヌチャンは空中で縦回転。遠心力で威力を増した強烈なハンマー攻撃は、リングマの腕を弾き飛ばし、顔面を捉え、それでも止まることなく容赦ない連撃を浴びせる。

 それにハンマーの炎属性が合わされば、爆発力は比例的に増す。力でねじ伏せられ、地面に突っ伏したリングマは、もう起き上がることはなかった。

 

 




カルボウ回でした。
青紫の焔はとある技です。タイトルからピーンと来た人もいる……かも?
炎が爆発するってのはかのモンスターから来てます。分からん人はそういうもんだと思ってください(雑)
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