ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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31話 強くあるべき理由

 

 

 

 道場の朝は早い。自由参加と称している朝練に、ほぼ全員が参加するからだ。門下生は日が昇り始める頃に起床し、己の体と心を鍛える。

 だからというのもあって、ボクは道場の中で起きるのが一番遅い。

 

「おはようございまふ……」

 

 朝八時。世間的には早くも遅くもないけど、この時間帯に寝起きのボクは浮いている。でも長年のことだからか、門下生も気にはしてない。

 ……まだ頭が働かない。早いところ顔を洗って、目を覚さなきゃ。

 

 本音はまだ寝てたい。けど、カルボウやナカヌチャンみたいなヤンチャちびっ子組に構ってくれとせがまれるし、時間が過ぎるとエーフィに布団剥ぎ取られるし。

 結局起きるしかないんだ。

 

「おはよう、リンドウちん。相変わらず朝は弱いままだね〜」

「職業柄マシにはなったんですけどね……」

 

 今思うと、朝早い教員とは相性最悪だね。

 人間慣れの生き物で、仕事に遅刻しない程度には早く起きれるようにはなったけど。

 

「……アオイは?」

「アオイちんなら、さっきトレーニングに出て行ったよ〜。いやぁ、感心感心」

「これで三日連続ですか」

 

 ボクとアオイのバトルから三日。引き続き道場での修行に励んでいる彼女だけど、以降ずっとトレーニングに打ち込んでいる。誰よりも早くトレーニングを始めて、誰よりも遅く終える。そんな感じ。

 熱心なのは悪いことじゃない。けど、オーバーワークは厳禁だ。悪い方に転ばなきゃいいけど……。

 

「にしても容赦なかったね~。リンドウちん、かなり本気だったでしょ?腕もあげたみたいだし」

「恐縮です。でも、勝つために必死でしたよ。負けたら示しがつかないですし」

 

 結果は四対一。結果だけ見たらボクの圧勝に見えるかもしれない。

 でも、アオイは強くなっていた。先発の読みは当てられたし、戦術の幅は広くなっている。相性有利だったニャローテは、実際彼女の作戦によってひっくり返されて倒された。打倒ボクで、作戦をあれこれ考えたんだろうなってのはなんとなく伝わった。

 

 ボクの勝因は、カルボウの初見殺しが通用したからにすぎない。彼が使った青紫の焔、技の中身はおにび。相手を火傷させる火の玉を飛ばす技だ。

 あの子は、それを体に纏わりつかせて戦える。当然本来の使い方のように飛ばすこともできるから、案外使い勝手がいいんだ。一度火傷させてしまえば、物理ポケモンは機能停止になっちゃうしね。アオイの手持ちと噛み合わせが良かった。

 

 あとはアオイの焦り。特に追い詰められてからは、リングマにまともな指示が出せてなかった。倒したナカヌチャンには悪いけど、本来あんなストレート勝ちできるポケモンじゃないだろうし。結局、テラスタルも使わなかったしね。

 鬼火に気づいて、リングマに早く交代していれば。特に特性がこんじょうだったら、負けてたのはボクの方だ。

 

「示しって?」

「一応、あの子の教員ですし。自惚れかもしれないけど、案外慕われてるんですよ」

「仲良さそうだもんね~」

 

 アオイはボクにとって他の生徒とは違う。授業以外で一緒にいる時間も多い。バトルの話もよくするし、実際にこうしてバトルもする。生徒に本気を出せるのは、アオイと規格外のネモぐらいのものだ。

 そして、彼女もボクを慕ってくれている。それはなんとなく伝わる。でもなけりゃ、ガラルまでわざわざ来ないよ。

 

 それはボクにとって、喜びでありプレッシャーでもある。

 

「だからこそ、ボクは強くあり続けなきゃいけないんです。あの子が成長するために乗り越える、壁として立ちはだからなきゃいけないんで」

 

 パルデアに行って、明確に生まれた意識。誰かのために強くあること。

 もちろん自分のためでもあるけど……。でも目標が分かりやすい分、モチベーションも上がりやすい。誰かに指導するということは、自分を見つめ直して研鑽するいい機会だ。パルデアという環境は、ボクにその機会を与えてくれた。

 

 そして、この人はそれを知りながらパルデアに送り込んだんだ。

 

「うんうん。いい顔になったね~。やっぱり、パルデア地方に送り込んだのは正解だったみたいでなによりだよ~」

「前もって情報も無しに、いきなり飛ばすのはこりごりですけどね」

 

 当初、教員をすることすら教えてくれなかったからね。あれは酷かった。

 でも、この環境を与えてくれたことには感謝だ。

 

「で、これからどうするのん?」

「アオイが一人前になるまではパルデアにいるつもりです。その間は、道場のお手伝いはできませんが……」

「ワシちゃんならだいじょーぶ。まだまだ元気だよん!」

 

 いい歳だろうに、元気な人だ。頼もしい。

 一年か二年かわからないが、きっとやり遂げて見せる。次にガラルに帰るときは、もっと大きく成長した姿で驚かせてあげたいね。

 

 心残りがあるとすれば。

 

「……あとは、あの子も連れ戻したいですね」

 

 腰に下げた十のボール。ひとつは空だ。

 ボクのガラル最後の仲間。彼ともう一度旅がしたい。

 

「目撃情報とか、ないんですか?」

「うーん。最近は見てないね~」

「そうですか……」

 

 こっちに戻ってきたって聞いたけど、今のところ影もない。キバナさんのガセだった?まさか。

 自由な子だからなあ。もう別の場所かもしれない。どこで何してるんだか……。

 

「にしても、アオイちん今日はトレーニング長いねえ。いつもは朝ごはんまでには戻るのに」

「言われてみれば……」

 

 確かに、ボクが起きる頃にはいつも戻ってきていたんだけど。今日は一段と帰りが遅い。

 

 迷子とかは考えにくいけど……。

 調子に乗ってトレーニングに没頭しすぎてるのかな。少し注意した方がいいかもね。

 

「ちょっと探してきます」

「ほい〜。気をつけてねん」

 

 アーマーガアを出し、空から探してもらう。ボクたちは下から。寝起きの運動にはちょっとヘビーかもしれないね。

 ……まったく、世話の焼ける生徒だ。

 

 




HOME連携したはいいけど、テラピース足りなさすぎて全然育成が追いつかないSV事情。
あとゴリランダーのグラススライダーと10まんばりきを返してください。あのゴリラが何したって言うんですか……。
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