ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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33話 砂漠の暴君

 

 

 

「アオイ、怪我はない?」

「え、あ、はい……」

 

 少し放心してる。怖い思いをしたんだろう、彼女の頬には涙の痕があった。

 さて、状況整理。帰りの遅かったアオイを見つけたのは、空から探してたアーマーガアだった。それを知らせる彼の様子が明らかに変だったから、駆けつけてみるとご覧の様子。

 

 リングマとウェルカモが倒れ、アオイと残ったポケモンが緑の竜―――フライゴンに追い詰められるという状態だ。間一髪で間に合って良かった。

 

「急いで皆をボールに戻してあげて。アーマーガア、アオイを道場まで届けてくれる?」

「ガアァ」

 

 でも、もう問題ない。見た感じリングマやウェルカモも重傷ではなさそうだし、これでもあのフライゴンは手を抜いていたのがわかる。今も、ボクとアオイのやり取りを怪訝そうに見るだけだ。

 

「えっ、せ、先生は!?」

「残るよ、ここに。このポケモンを放置するわけにはいかないでしょ?」

「ダメです!あのポケモンすっごい強くて、先生の強さは知ってるけど……。でも……!」

 

 アオイが必死な表情で訴えかける。

 でも大丈夫。強いのは承知の上だ。

 

「心配しないで。マスタードさんには、少し遅れるとだけ言っといてもらえるかな」

「せ、先生……!」

「アーマーガア、頼んだよ」

 

 まだ何か言いたそうなアオイだったけど、アーマーガアが有無を言わせずに背に乗せて飛び立っていく。ボクの意図を汲んでくれたようで良かった。

 

 

 ……さて。

 話したいことは山ほどある。

 

「……久しぶりだね、フライゴン。ちょうどさっき、キミの話をしてたところなんだ」

「フラィ……」

「分かってるよ。キミから仕掛けるようなことはしない。つい手が出ちゃったんでしょ?」

 

 せいれいポケモンのフライゴン。

 何を隠そう、この子がボクのガラル時代六匹目の……当時最も頼りにしていた最強のポケモンだ。

 

 あくまでボクの予想だけど……。多分、仕掛けたのはアオイたちの方だ。リングマとウェルカモだけが倒されてたから、攻撃をしたのはその二匹かな。

 

 なぜなら、この子は格下を相手にしないから。この子の性格はよく知っている。クールで無愛想だけど、自分の強さに誇りを持っているポケモン。

 だからこそ、わざわざアオイのポケモンに自分から手を出すようなことはしない。彼女が弱いんじゃない。この子が規格外なだけだ。

 

 その強さは、ダンデさんのリザードンとほぼ互角だったといえば強さが分かるだろうか。ボクには勿体無いぐらいのポケモン。

 ダンデさんに敗北した後、彼はボクの元を去った。当時のボクには引き止めることが出来なかったし、その権利もないと思っていたけど……。

 

「ボクね、今トレーナーとして復帰してるんだ」

 

 ボクは、パルデアで捕まえた四匹をボールから出す。ニャローテにマリルリ、カルボウ、そしてナカヌチャン。自慢の子たちだ。まだまだ発展途上だけど、みんな光るものを持っている。

 

「今は別の地方にいるけど、そこで腕を磨いて、いつかはもう一度ダンデさんに挑みたい」

 

 フライゴンが目を丸くする。彼は、ボクがトレーナーを引退したのを知っていたからだろう。

 だけど、ボクだって立ち止まってた頃のままじゃないんだ。

 

「そのためには、キミの力が必要なんだ。……戻ってきてほしい。ボクと一緒に、もう一度やり直してくれないかな?」

 

 なんでこんなタイミングで出会えたのか。

 そんな小さな話はどうでもいい。今この場で再開したのは運命だ。このチャンスは絶対に逃さない。

 

 フライゴンの表情は険しいままだ。隻眼として残った赤いゴーグルの奥で、鋭い眼光をボクたちに対してぶつける。

 だけど、そんな脅しにビビるほどヤワな子たちじゃあない。

 

 ツタを突きつけるニャローテ。

 やる気十分、お腹を叩くマリルリ。

 頭の炎をメラメラと燃やすカルボウ。

 今にもハンマーを振り回しそうなナカヌチャン。

 

 どう?新しく出会った仲間たちも、捨てたもんじゃないでしょ。

 

「……フルォ」

 

 フライゴンは、無謀にも自分に歯向かおうとする小さき者たちに対して、鼻を鳴らす。ある程度は認めてくれたみたいだ。

 じゃあ、あと必要なのはボク自身の変化。パルデアに行ってどう変わったのか、それをこの子に示す必要がある。

 

「……よし、皆戻って。ここからは、先輩たちが魅せてくれるから」

 

 パルデア組をボールに戻す。ここからはかつての仲間たち……エーフィ含めたガラル組に任せる。

 ボクがフライゴンに相応しいトレーナーかどうか、この子達の力を借りて判断してもらうんだ。

 

「もう一度キミを捕まえる。だから、相手してもらうよ!」

「ラーゴォ!!」

 

 いいだろう、かかってこい。

 彼が、そう言っているように聞こえた。

 

「エースバーン、かえんボール!」

「バーニィ!!」

 

 小石を蹴り上げ、炎を纏わせてからキック。エースバーン専用の強烈な一撃だけど、フライゴンには当たらない。火球は虚しく地面で爆ぜて、辺り一面に砂煙を起こした。

 

 ……ううん、あんな攻撃が当たるなんてこれっぽちも期待してない。

 エースバーンだって分かってるはずだ。だから、かえんボールを打ち出してすぐに駆け出す。

 

アクロバットで右側から接近!砂煙が晴れる前に急ぐんだ!」

 

 かえんボールはブラフ。本命はこっち。砂煙を起こして、フライゴンの視界を奪うのが目的だった。

 こうそくいどうにアクロバットを組み合わせ、エースバーンは空中を蹴って移動する。

 

 攻める方向も徹底だ。フライゴンは隻眼。潰れている右目……すなわち右方向は見えにくい。狙うならそこから。

 フライゴンの右側をエースバーンが位置取った。決まった、と彼は蹴りを繰り出す。

 

「ニバ……ッ!?」

 

 だけど、フライゴンは振り向きもせずに右拳で応戦。その拳は雷を纏っていて、エースバーンは地面に叩きつけられた。

 かみなりパンチか……やるね。視界を奪っても、隙をついても効果は薄そうだ。

 

 だけど、エースバーンの攻撃はまだ続いてる。

 地面に叩き落とされてなお、エースバーンは素早く体を起こして接近した。

 

「倍返しだよ!カウンター!」

 

 今度こそ、エースバーンは力を溜めた右足でフライゴンを蹴り飛ばす。かろうじて反応できたか右腕でガードされるけど、メシィという鈍い音が無音の砂漠に残った。

 

「フ、ルォ……」

 

 顔が歪む。だけどフライゴンは、残った左腕でエースバーンを掴んで放り投げる。追撃だけは阻止したということになった。

 

 エースバーンはフラつきながらも立ち上がる。けど、限界は近そうだ。かみなりパンチ一発でこうなるんだから、全く恐ろしい。

 無理はさせずにボールに戻す。

 次はこの子だ。

 

「ウーラオス、すいりゅうれんだ!」

 

 勢いよく飛び出したウーラオスによる、華麗な三連撃。エースバーンがカウンターを当てた右腕に、ウーラオスも同じように拳を入れる。

 

 ふかしのこぶしの前では、あらゆるガードが意味を成さない。フライゴンのガードも、この時ばかりはほとんど形のものとなる。

 そうでなくとも、彼の拳は効くはず。右腕のガードを貫通して衝撃が伝わり、フライゴンの体が歪む。体勢が崩されている証拠だ。

 

「攻め時―――いや、ウーラオス引いて!」

「ラゴォ!!」

 

 ボクの声は少し遅かった。

 

 フライゴンの尻尾がウーラオスの脇腹を捉え、そのまま彼を薙ぎ倒す。

 アイアンテールだ。体のバランスを崩されてもなお、あんなに早く尻尾が出てくるとは……。

 

 みずタイプの彼には効果いまひとつだから、ダメージ自体は少ない。

 だけどウーラオスが立ち上がった瞬間、地面が盛大に爆ぜた。

 

「だいちのちから……!?」

 

 足元で大地のエネルギーが爆発し、ボクのところまで砂煙が舞う。

 前が見えない。いや、それ以前にもろに喰らったウーラオスは無事なの……!?

 

 同じことをやり返された。きっとフライゴンは接近してかみなりパンチを決めにくる。

 だったら……パルデアで覚えた新技!

 

「砂煙を払って!アイススピナー!」

 

 足に氷を纏って回転。フィールドをも消し飛ばす回転の勢いで、強烈な蹴りを繰り出す技だ。

 こおりタイプの技だから、当たれば大ダメージは間違いないけど果たして……。

 

 砂煙が晴れた。

 フライゴンは立っている。ウーラオスは、砂の上を転がっていた。

 

「くっ……、向こうの攻撃が先に当たったか」

 

 だけど、フライゴンも決して余裕の表情じゃない。浅かったかもしれないけど、アイススピナーは当たったんだ。

 でも、ウーラオスがこれ以上戦うのは難しそう。意識はあるけど体が動いてない。サブウエポンとはいえ、効果抜群のかみなりパンチを喰らったんだ。

 

 ……これで二匹か。しかも、彼らはガラル組の中でも戦闘能力に長けた二匹。こっちもダメージを与えたといえ、あまりに呆気ない。

 次のポケモンは……

 

「アーマーガア!!」

「クワア!」

 

 ちょうどアオイを届け終わったか、上空からアーマーガアが姿を見せた。翼を畳み、回転しながらフライゴンに向かって突っ込んでいく。

 

ドリルくちばし!!」

 

 アーマーガアの鋭利な嘴は、フライゴンの頬を掠めた。この初撃、なんとか当てたかったけど流石に反応が早い。

 

 ここでフライゴンも飛翔。空中戦に突入する。

 

 彼は飛行能力にも長けている。本家本元のひこうタイプであるアーマーガアよりも、だ。

 あっという間にアーマーガアの高度まで飛び、そして追いつく。

 

「守りを固めよう!てっぺき!!」

 

 アーマーガアが身を固めたところに、フライゴンの拳が突き刺さる。けど、はがねタイプでなおかつ防御を固めたアーマーガアは堅い。

 フライゴンに殴られながらもスピードは落ちてない。アーマーガアは、少しフライゴンから距離を取って、翼を大きく広げる。

 

 そのまま突っ込ませ―――いや、フライゴンの拳に雷が走る。このまま迎え撃つ気か。

 

「もう一度てっぺき!!」

 

 一度広げた翼を閉じて、アーマーガアは自分の身を隠すようにガード。さらに守りを固めた。

 そのうえから、お構いなしにかみなりパンチを叩き込むフライゴン。

 確かに効果抜群の攻撃だ。とはいえ、二度もてっぺきを積めば流石に耐えられる。

 

 それでも押し返されるのがフライゴンの恐ろしいところ。完璧には封じ込めない。

 でも、それを勢いに変える。フライゴンの拳に押し返され、空中でバランスを崩しかけるも、アーマーガアは翼を折り畳んで突進を仕掛けた。

 

ブレイブバード!!」

 

 鋼鉄の体が激突する。さしものフライゴンでも、体を張って両腕で抑え込まなければ止められない勢い。

 

 一時拮抗。

 だけど空中においては、踏ん張れない分だけ押し相撲はアーマーガアに分があった。フライゴンのガードを突き破り、そのまま押し切って墜落させる。

 

 アーマーガアも手痛い反動を受ける。だけど、フライゴンはそれ以上に痛い。砂上に倒れたまま起き上がってこない。

 倒れたか?一応モンスターボールを構えるけど、多分その必要はないだろうなと考え直す。

 

 この程度で捕まえられるような子なら苦労しないし、ボクも身構えない。

 この子は格別なんだ。

 

「……くるよ、アーマーガア」

 

 アーマーガアは頷いた。表情は強張っている。

 同じ旅をしてきた彼なら知っているはずだ。むしろここからがフライゴンの強さの本領。

 

「フラアアアアアァィ!!!!」

 

 天に向かってフライゴンが吠える。

 自分が本当に追い込まれた時にしか発動しないその姿。燃え滾るような殺意の籠った瞳は、片目である今もなお三年前となんら変わりなかった。

 

 




というわけで、正体はフライゴンでした。
フェアリー/じめんの古代パラドックス、チノセイレイはまだですか?

あ、当たり前ですがメチャクチャに強く書いてます。

ポケモンの技についての解釈

  • 4つしか覚えない/使えない
  • 4つ以上覚えるけどバトルで使えるのは4つ
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