ポケットモンスター Re:Champion Road 作:1.96
36話 昼休みの一幕
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後期間のスタート。
一週間の里帰りも束の間、また忙しい生活の毎日が始まろうとしている。
この時期になると、課外授業の宝探しにも変化が出てくる。最初は真新しさからほぼ全員が積極的に外に出ていた生徒たちが、次第にアカデミーに居残るようになるらしい。
それは『飽き』だったり、『挫折』だったり。前期間で宝探しの成果が見込めず、そのまま諦めてしまう子もいるようだ。ある種、宝探しというカリキュラムの課題点だと、クラベル校長は言っていた。
ボクも何か出来ないかと考えてはみるけど、簡単に答えは出ない。途中で諦めたとしても、生徒たちが何か一つでいいから成果を感じられればいいんだけど。
「考えるのは、お昼食べてからにしようか」
数にして十一のサンドイッチを皿に分けて、テーブルの上に広げる。ボクと十匹のポケモンの分だ。
ガラルからこっちに戻る時にエースバーン、マホイップ、フライゴンと残りの子も連れてきた。その分、諸々の世話も大変にはなってるんだけど……。
まぁ、みんな可愛いから良し。
グラウンドで遊んでいたみんなを呼び寄せる。
「はーい、みんなお昼だよー」
ご覧のように、合計十匹の大所帯。全員を出そうものなら部屋の中はいっぱいになるし、この頃のボクはお昼をグラウンドで取るようになっていた。
真っ先に集まるのは、パルデアのちびっこ達。遅れて、フライゴンを除くガラル組。って、ウーラオスがいない……あの子はまーた筋トレしてて気付いてないし。呼んでこよう。
そして、エーフィはボクの膝を占領しないで。食べさせるのを待ってもダメ。自分で食べなさい。ほら、どいたどいた。
「ウーラオス、ご飯だよ〜」
相変わらず、この子はトレーニングが好きだ。スクワットしたり腕立てしたり、懸垂したり。常に体を動かしてないと落ち着かないみたい。
で、わざわざボクがサンドイッチを持っていくんんだけど……。
「いい加減、筋トレしながら食べるの止めない?」
「ウラッス」
嫌だって。
片手でダンベル上げながら、もう片方の手でサンドイッチ食べるって横着通り越して器用だよ。まぁ、言っても聞きゃしないんだけどさ。
でも、そんなことしてたら真似する子が出てくるんだよね。って言ってたら、ほーらマリルリがサンドイッチ片手に寄ってきた。
ポケモンたちも最初はガラル組、パルデア組で分かれてたけど、次第にその垣根を超えて交流するようになってきた。十匹もポケモンがいると、ある程度相性の良いポケモンが決まってくる。
ウーラオスとマリルリはその最たる例。うん、まぁ理由は説明せずとも分かるんだけど。
「せんせー、やっほー!」
「ネモ、こんにちは」
授業以外で顔を合わせるのは、ずいぶんと久し振りだ。こんなところに来るなんて珍しい。
「どうしたの?」
「いや〜、ポケモンいっぱいですねぇ」
なんか露骨にはぐらかされたような。
まぁ、いいけど。
「まぁね。ガラル時代に旅で捕まえた子たちも連れてきたんだ。合わせて十匹かな」
「よく見ると、パルデアだと珍しい子もいる〜!」
見たことのないポケモンに目を輝かせるネモ。エースバーンやウーラオス、マホイップはこっちじゃ見ないもんね。
「まぁ、ゆっくりしていってよ。お昼食べた後だし、バトルはできないけど」
「うっ……、先回りして断られた」
そんな興奮してモンスターボール構えてたら分かるっての。君とやるとなると、こっちも気合入れなきゃいけないんだから。
お昼休みくらいボクもノビノビ過ごしたい。というわけで、今日のところはポケモンたちの紹介で我慢してもらう。みんなも、思い思いに過ごしてることだしね。
ウーラオスとマリルリは……。サンドイッチを食べ終えて、早速体を動かし始めた。多分、そのうち組み手でも始めると思う。
「みずタイプ同士、気が合うのかなぁ」
「はは……、そうかもね」
タイプ抜きに、二匹とも頭が筋肉でできてるだけだと思うけど黙っておこう。
で、この脳筋コンビに勝るとも劣らないぐらい食後に動き回ってるのがこっちの四匹。
金属と金属が擦れ合う、かん高い音がグラウンドに響く。
「え、なになに!?喧嘩!?」
「あー……。いいよ、気にしなくて」
そこにはハンマーを力いっぱい振り回すナカヌチャンと、それを鋼鉄の体で弾くアーマーガアがいた。端から見れば、確かに喧嘩と見紛うかもしれない。だって、ナカヌチャンの方は殺気がこもっているもの。
だけど、これも見慣れた光景。最初こそエーフィに止めてもらってたけど、もうあんまり気にならなくなった。ちなみに彼女は木陰でぼんやりと眺めている。
双方仲が悪いというか、ナカヌチャンが突っかかっているというか。毎度襲い掛かっては、弾かれたり吹き飛ばされたりで適当にあしらわれる。
「クワアーア」
それだけで終わればいいものを、こうやって挑発するから彼女もムキになるんだろうが。まぁ、どっちもどっちだ。
進化後のデカヌチャンはアーマーガアをハンマーの素材にするというが、そんな未来はしばらく来なさそう。というか、なんでアーマーガアだけに突っかかるんだろう。本能なのかな。
それに引き換え。
「君たちは仲良いねぇ」
「バーニ!」
球蹴りしてるエースバーンとニャローテ。こっちはごく普通に遊んでるだけだ。先の二組が変なだけで、本来これが普通なんだけど。
元々足技が得意なだけあって、エースバーンは器用だ。ニャローテもボールを奪おうと奮闘するけど、さっきから上手くいかない。
「ニャローテが完全にスピード負けしてる……」
「エースバーンも速いからねぇ」
「強いんですか?」
「そりゃ、ガラル組の切り込み隊長だから」
「へぇ……」
「はい、懐からボール出さない」
戦闘モードに入るとバーサーカーみたいな顔するの止めなさい。あとでアオイに付き合ってもらえばいいでしょうに。
自由に遊ばせたげてよね。はい次、次。
エーフィが休んでいる木陰で昼寝をしているカルボウ。そんな彼の頭を膝に乗せるマホイップ。
さっきまでと違ってゆったりとした空間。カルボウも元気な時はニャローテたちと遊んでるけど、最近はマホイップとのんびりしてることが多い。一番幼いし、甘えられる存在ができて嬉しいのかもね。
「七、八……」
「どしたの?」
全員紹介し終えたところで、ネモがさっきからボクのポケモンを指折り数えてる。
「さっき十匹いるって言ってたのに、一匹足りないなぁって」
「ああ。そのことか」
ネモの疑問は最もだ。だって、ここにいるのは九匹しかいないからね。
あと一匹はというと、基本的には共に行動していない。あの子はいつだって自由だ。
って言ったら帰ってきた。フライゴンは空からアカデミーに侵入し、ゆっくりと下り立つ。
「おっきーい!何この子!」
「お帰り。ご飯置いてるよ」
肩に少し乗った雪を振り払い、フライゴンはサンドイッチを貪り始める。
今日はナッペ山にでも行ってきたかな。苦手なこおりタイプ相手に戦ってきたとみた。
晴れてボクの元に戻ってきたフライゴンだけど、普段は各地を巡って野生相手に武者修行を続ける日々。ガラルにいた頃からそうだから、今さら気にしてない。寝食の時はこうして帰ってくるしね。
「つ、強そう……」
流石に少したじろぐも、ネモはまたもやボールを取り出す。
この子を前にしても戦おうとするのはある意味凄いけども……。ネモの全力とフライゴンがぶつかったら、校舎が壊れるんじゃないかな。
相手にしないかと思いきや、フライゴンもジッとネモを見つめる。
……ボクより案外乗り気っぽい。ネモの実力を見抜いたのかな。自分がバトル挑まれるなんて、そうないもんなぁ。
「お?やる気だね!?じゃあ、とびっきりの子を……」
「ストップストップストップ!!もう昼休み終わるし、こんな場所でバトルなんて出来ないから!」
「え~」
ネモ、そして意外にもフライゴンも不満気。
この戦闘狂コンビは……。
「はぁ……、じゃあ今度外に出た時ね。二人とも、それでいい?」
「やった!じゃあ、楽しみにしてますねー!」
嵐のように去ってしまった。安易にバトルの約束しちゃったよ。ブランクあるし、新技のげきりんの感触確かめるにはいいんだろうけど。
フライゴンも納得したのか、フンと鼻を鳴らすとまた飛び立っていく。多分また武者修行かな。程々にしとくんだよ。
そうこうしていると、昼休みが終わりに近づく。
なんか疲れた気もするけど、これでも一日のいい箸休め時間だ。惜しいけどポケモンたちを呼び戻して、テーブルセットを片付けにかかる。
大体、こういう時に手伝ってくれるのはエースバーンやニャローテだ。いつもありがとうね。
……さ、午後も頑張りますか。
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まずは長らく投稿がご無沙汰になって、申し訳ありませんでした。
フライゴンの出会いがピークだったせいか、自分の予想以上に筆が進まず……。
この空白期間の間に、小説に色がつきました。応援してくださっている皆様に感謝を。
今回は箸休めみたいな回です。
ポケモンの数も多いので、紹介回みたいなものですね。