ポケットモンスター Re:Champion Road 作:1.96
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「それでは、宝探し開始。いってらっしゃい!」
クラベル校長の一声で、生徒たちが一斉に校舎の外へと駆け出す。今ここに、オレンジアカデミー名物の課外授業『宝探し』が開催された。
「凄い盛り上がりだなぁ」
生徒たちの熱狂具合は、ガラルのジムチャレンジにも負けてないかも。
あっという間に生徒はいなくなり、残ったのは見送りしていた先生だけ。こうなるアカデミーはちょっと新鮮。
「この課外授業はアカデミーの名物だからね。もう昨日の授業から、生徒の足が浮きまくり!エンジョイしすぎて、勉強に身が入らない子も出てきたりさ」
「セイジ先生。そうですね、確かに皆心ここにあらずというか」
「しばらくは授業も減るし寂しいね~」
そういえばそうだった。
課外授業中はそっちに集中させるため、期間内の授業は少なく設定されている。そもそも課外授業始まったばかりの今だと、みんな授業ほったらかしそうだし。クラベル校長の判断は妥当かも。
「……保健室は忙しくなるんだろうねぇ」
ミモザ先生から漏れた声は……うん。
頑張ってください。
◇ ◇ ◇
というわけで、自由時間をもらってボクもテーブルシティを飛び出す。最初のジムに続く西門はメチャクチャ人が多かったので東門から。
西門より少ないとはいえ、こっちもこっちで多いなあ。生徒同士でバトルしたり、次の町目指してモトトカゲを走らせたり。
む、こっちにもキャンプはあるのか。カレーを作るわけではないみたいだけど。
「あっ、リンドウせんせーい!!」
とりあえず道なりに進んでいると、結晶のあった場所からアオイがひょっこりと顔を出した。
真っ先にやることがテラレイドバトルとは……。それは個人の自由として、アオイの体には擦り傷掠り傷ができていた。
「どうしたの、傷作って」
「えへへー、ちょっと捕まえるのに手こずっちゃって」
「……一人で挑んでないよね?」
「失敬な。私にだって友達くらいいますよ」
アオイはぷんすかと頬を膨らませる。だって、一人でも無茶しそうだもん。
それはさておき、ミモザ先生の心配の種がこうして目の前に現れるとは。課外授業中は、確実に怪我人は増えるだろう。その全てを防ぐのは無理だし、生徒に対して過保護にしてたら冒険の意味がないんだろうけど……。
「とにかく、怪我には気をつけてね。保健室の先生は1人しかいないんだから」
「はぁい」
本当にわかってるのかな。
「先生はどうして外に?」
「宝探しがどんなものか見ようかなって。みんな思い思いに行動してるんだねー」
オモダカさんに押しつけ……じゃなくて任された仕事もあるし。あれからしばらく考えたけど、やっぱり何をすればいいのかわからないけどね。
一時血迷って、学校内で道場開こうとか考えた時は末期だった。違う、そうじゃない。
「アオイは、この宝探しで何をしたい?」
「私ですか?うーん、そうだなあ……」
クラベル校長曰く、『宝探し』で探すものは人それぞれだと。その宝は形あるとも限らない。だけど、そこで得た宝は今後のトレーナー人生を支えるものになるとか。
とはいえ、いきなり外に放り出されても何もわからないよね。アオイは悩み、考える。
「とにかく、強くなりたいです。先生、時間ありますか?バトルに付き合ってください」
「そうきたか。いいよ、一対一でやろう」
アオイの返事は実にシンプル。それでいて抽象的。難しい目標だと思う。でもボクとのバトルがそれに役立つなら、ボクは喜んで力を貸そう。
周りに被害が出ないよう、ボクたちは広い場所で互いに距離をとる。
「じゃ、お手柔らかに。おいで、ニャオハ!」
「デビュー戦いくよっ、ヒメグマ!」
元気よく飛び出たニャオハは、今日もやる気いっぱいだ。バトルする、と聞いてボールの中で凄まじくアピールしてたからね。
対するアオイのポケモンは……ガラルにはいなかった子だ。ノーマルタイプなら相性は五分かな。しかし、もう三匹目の仲間とは恐れ入った。
「先手必勝!みだれひっか―――」
「ふいうち!!」
ヒメグマが詰めてくるよりもさらに早く、ニャオハは懐に潜り込んで猫パンチ。相手の出鼻を挫く。
一の爪を怯ませて防いでも、すぐに二の爪が来る。それを、ニャオハは退いて空振りさせた。
この素早さこそがニャオハの武器。相手より先に攻撃を当て、向こうが攻撃する時には引く。ヒット&アウェイが信条のポケモンだ。
「続けてでんこうせっか!」
そうしてまた入る。
派手さはなくとも堅実に。塵も積もればダストダス―――
「グマァ……」
「ニャッ!?」
攻撃がヒットすると思った瞬間、ニャオハの動きがいきなり止まった。
ヒメグマの目が弱々しく潤んでいる。
「ニャオハ、見ちゃダメ!」
「かかったね、メタルクロー!!」
隙だらけのところに、硬質化した爪がニャオハを襲う。
しかし、うそなきをあんな使い方するとは。攻撃技が主体のヒメグマとは一見相性は良くないけど、技も使いようだ。上手く反撃された。
「いやらしいことするね」
「先制技を二つも使う先生には言われたくないですぅ」
可愛い顔して結構言うね。
「今度こそこっちから!メタルクローのまま連続引っ掻き!」
可愛い顔してえげつないことするね!?
「ニャオハ、喰らわないように引いて!」
幸いにもヒメグマは鈍足だ。ニャオハのスピードなら十分逃げ切れる。
そう思っていたのも束の間。
「そのままあなをほる!」
地上でのスピードでは勝てないと判断すると、アオイはすぐに指示を変えた。
ヒメグマは物凄い速度で地中に身を隠す。
厄介だね……。
でも、ボクの指示は変わらない。地中からの攻撃をかわし、その後に反撃するプランで行こう。
とりあえず、ヒメグマが潜った場所からニャオハを遠ざけなきゃ。潜って間もない今ならまだ距離があるし大丈夫――
「出てきて!」
「グマァ!」
――じゃない!?
まだ離れてると思ったヒメグマが、ニャオハの足元から飛び出てきてその爪を振り抜く。
ここまで地中での動きが素早いなんて。メタルクローで土を掻いてるからこそのスピードってこと!?
……いやいや、納得できるかい。ドリュウズじゃないんだから。
ニャオハはフラつきながらも起き上がる。スピード自慢だけど耐久は難あり。マズいな、次の攻撃はもう耐えられそうにない。
「まだやれそう?」
「ニャォ!」
アオイへの認識を改めないといけないみたい。ナメたつもりはなかったけど、彼女が若いのもあって多少甘く見てた。
この子は強い。ネモを二度も負かすだけのことはある。
「攻め込むよ!もう一度あなをほる!今度は回転しながら高速で!」
アオイがヒメグマに求めたのはスピード。回転しながら再び地中に戻ると、ヒメグマが通った後の地面が隆起しだした。
さっきより早いけど、今度は地上でもあの子の居場所がわかる。高速で弧を描き、ニャオハを囲むように動いていた。
「逃がさないつもりだね……。ニャオハ、下を向いて構えて!」
彼女の狙いはわかった。あの進行速度だと、でんこうせっかでも逃れられない。
だったら、上に逃げるまで!
「ニャオハ、テラスタルいくよ!このは!」
「こっちもテラスタル!あなをほる攻撃!」
くさテラスタルで威力の上がったこのはを、地面に撃ちつける。巻き起こった突風は、ニャオハの小さな体を勢いよく宙に浮かした。
それと同時に、地中でテラスタルしたヒメグマが飛び出す。弧を描くように地面を進んだことで、その円内の地面を隆起させ弾き飛ばした。この破壊力、間違いなくじめんテラスタルだ。
宙に浮いたことでヒメグマの攻撃自体は避けられた。けど、巻き起こった小さな礫がニャオハを突き上げる。今の彼には、それでも手痛いダメージだ……!
「効いてる!メタルクロー!!」
「来るよ、準備して!」
もう難しい指示は出せない。耐えなければこのバトルは負け。それだけの話。
でも、ボクに散々噛み付く負けん気のあるキミなら、これぐらい訳ないよね。
ニャオハはボクの声に反応して、空中で無理やり体勢を立て直した。その瞳はいつもの真っ赤じゃなくて、茂る草木のごとく緑で―――
「全て吹き飛ばせ!このは!!」
「ハニャァァァオ!!!」
さっきよりももっと特大の突風が、大量の木の葉を巻き込んでヒメグマを弾き飛ばした。
効果抜群による二倍ダメージ、タイプ一致のテラスタルで二倍、そしてさらに特性しんりょくで上乗せ。どちらが勝ったかについては……言うまでもない。
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ま た ジ ョ ウ ト か
いや、ヒメグマは外せないんです許して。
バトルですが使う技が4つであることと、SVで覚える技であること以外は割と無法でやらせてもらいます。ので、頻繁に入れ替えるしたまご技も使うしわざマシンも使います。レベル技は多少意識しますが……。