ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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8話 捕獲のすゝめ

 

 

 

「では、手を合わせて」

「いただきまーす!」

 

 澄み渡るような青空。見晴らしの良い景色。広がる大自然の中で、ボクとアオイは昼食をとろうとしていた。

 

 ガラルのキャンプみたいに、こっちではピクニックが流行ってるらしい。

 バトルを終えたところでボクもアオイもお腹を空かせ、こうして遅めの昼食をとっている……ってのが経緯。手持ちのポケモンも、全員が外に出ている。

 

「んー!先生のサンドイッチ美味しい〜!!」

「簡単なものだけどね。でも、喜んでもらえて良かった」

「バトルも強くて料理もできるなんてズルいですよ先生。私なんて、包丁握ったこともないのに」

「何事も慣れだよ」

 

 ガラルを旅して回ったから、最低限の料理スキルは自然と身についた。

 向こうではカレーしか作ってなかったけど、こっちで流行っているのはサンドイッチ。カレー用の鉄鍋を背負って旅する必要はなくて安心した。

 

「うー。にしても、勝ちたかった。やっぱりタイプ相性かなぁ」

「テラスタル切らない方が良かったんじゃない?」

「メタルクローで攻め続けるのは警戒されると思ったんです。実際、もう一押しだったし……。やっぱり今の子達だとくさタイプがキツいなぁ」

 

 アオイは物思いに耽る。

 クワッスにハネッコ、じめんテラスタルのヒメグマだと、確かにくさタイプは辛いね。

 

 にしても、彼女はすでに六匹揃える前提でパーティーを考えてるっぽい。初心者は普通に育てるだけでもかなり大変なのに、タイプのバランスまで考えて。

 バトルをしてても感じたけど、やっぱりこの子のセンスは非凡だ。

 

「ほのおタイプはどう?この先にガーディとかいるみたいだけど」

「うっ、野生かぁ……」

「何か問題でも?」

「私、ボール投げるの下手っぴで。さっきのヒメグマもテラレイドで弱らせることまでは簡単だったんですけど、捕まえるのに苦労して」

「なるほど、それでその怪我……」

 

 意外な弱点だ。テラレイドバトルなら、やっつけた後にボールを投げれば確実に捕まえられそうなものだけど。あれで苦手というなら、野生はなおさらダメか。

 捕獲というのは、案外ハードルが高いのかも。ボールを投げ続けるのも体力を使うし、ボール代だって馬鹿にならない。

 

 そういえば、ホップもボール投げるの苦手だったなぁ。ボクはというと……。

 思えば、マトモにボール投げて捕まえた記憶ないな。ニャオハやマリルみたいに、仲良くなって捕まえたケースがほとんどだ。

 

「他の子はどうやって捕まえたの?」

「えーと、クワッスは貰ったでしょ。コライドンはサンドイッチあげたらついて来てくれて、ハネッコはね、歩いてたら頭の上にふわ~っと」

 

 ずーっと気になっていた、緋色のポケモンが『ギャオス!』と元気に吠える。ライドポケモンみたいだけど、モトトカゲよりもずっと大きくて何より強そう。よくサンドイッチで手懐けたな。

 

「要するに、一般的な方法で捕まえたことがないんだね」

「……その通りです。ネモも苦手って言ってたなぁ」

 

 ふむ、ポケモンを捕まえるのが苦手な子多いんだなあ。トレーナーとして必須の技術だけに、なんとかしてあげたい。

 

「なんか、ついついバトルして倒しちゃうって」

「それはもはや、苦手とかそういう域の話じゃないよね」

 

 彼女は別だな。

 

 それはさておき、アカデミーでそういう授業はやってない。弱らせたら捕まえやすくなるとか、そういう知識は生物の授業で教えてくれるけど。実践するとなると話は別で。

 意外とそういう授業は需要があるかな。そろそろ野外活動の授業があるし、ネタにできるかも。

 でも、ボールを投げるのが苦手でもポケモンを捕まえられる方法って……。

 

「うーん……」

「あっ、先生!!」

「どうしたの―――」

 

 アオイの声で我に返ると、彼女は驚いた表情。彼女の視線を追うと、ボクのサンドイッチが乗っていたお皿が空になっていた。

 

「カル、カル!」

「……美味しい?」

「ルボゥ!!」

 

 ボクの足元でサンドイッチを貪るのは、見るからにほのおタイプの騎士みたいなポケモン。

 えぇと図鑑、図鑑……カルボウっていうんだ。

 

 

 じゃなくて!ボクのお昼ごはん!!!

 

「うう、美味しそうに食べちゃって……」

「……先生、私の半分食べる?」

「ありがとう。でも、気持ちだけ受け取っておく……」

 

 これだけ美味しそうに食べてると、カルボウを怒る気力もなくなってしまった。ボクのお昼がぁ……。

 サンドイッチを全て平らげてしまったカルボウは、満足したのかその辺を元気に走り回っている。野生の子だろうに、なんて警戒心がないんだ。ご飯を食べて満足したからかな。

 

 

 

 …………いや、待てよ。

 

「どうしたの、先生」

 

 いつの間にかニャオハと駆け回っているカルボウに、ボクはボールを持ってゆっくりと近づく。

 

 昔、本で読んだことがある。遥か昔のヒスイという地方では、ポケモンバトルをせずにポケモンを捕まえていた記録があった。

 ポケモンバトルが主流じゃない時代だったから、人間が生身でも捕まえられるように当時の人は色々工夫していたみたい。

 

「こっちを見てない時を狙って……」

 

 草むらに紛れば、案外近づいても気づかれないものだ。かがんで背後まで近づき、持ってるボールをカルボウに投げつけた。

 体力の削れていない状態。仲良くなっているわけでもない。普通なら捕まえるのは難しいけど、カルボウの入ったボールは数回揺れると、あっさり止まってしまった。

 

「すごーい!!捕まった!?」

「うん、いけそうだね」

 

 実践するまでは眉唾ものだったけど、どうやら情報は本当みたいだ。これは使える。

 

「ありがとうアオイ!ボク、ちょっと用を思い出したからアカデミーに戻るね!宝探し頑張って!!」

「え?ちょ、先生!?」

 

 そうと決まれば、早速指導計画の作成だ。

 これなら、生徒たちの役にも立つかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして準備期間を経て数日後。

 

「今から皆には、ポケモンバトル無しでポケモンを捕まえてもらいます」

 

 

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