ポケットモンスター Re:Champion Road   作:1.96

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9話 ヒスイ人の知恵

 

 

 

 野外活動、記念すべき一回目の授業。

 お題はズバリ『ポケモンの捕獲』について。

 そんなわけで、ボクたちは西1番エリアにやってきた。

 

「じゃ、野生のポケモンを捕まえていこうか」

「いえーい!どんどんパフパフ~」

「わーい!よろしくお願いしまーす!」

 

 って言っても、ボクの授業は単位もなければ必修授業でもない。新設の科目だから、試験的に授業するだけ。当然テストもないし、生徒は自由参加。

 宝探しが始まったばかりってのもあって、参加者はたったの二人。それもネモとアオイという、見知ったメンバーだった。

 まぁ、この方が気楽だからいっか。

 

「まさかネモまで来るとは思わなかったよ」

「いやー、先生が面白そうなことやるって聞いたら気になって!私もボール投げるの苦手だし!」

 

 こないだアオイから聞いたけど、ネモは本当にポケモンを捕まえるのが苦手らしい。チャンピオンクラスでも苦手なんてことはあるんだなぁ。

 それならやりがいがあるというもの。今日はぜひとも、二人にポケモンの捕まえ方をマスターしてもらおう。

 

「早速始めようか。二人はポケモンを捕まえる時ってどうしてる?」

「戦る!」

「合ってるけどその言い方は止めようか」

 

 言い方が物騒なんだよなぁ。

 それはさておき、ネモの答えは正しい。バトルで弱らせて捕まえるのは、トレーナーの常識。

 その回答にアオイも続く。

 

「バトルで弱らせる。あとは、状態異常も効果的ってジニア先生が言ってました」

「正解。でも、それで上手くいかないんだよね?」

「うっ……。だってボールでポケモン狙うの難しいし、急いで投げなきゃって焦っちゃうし……」

 

 彼女らが言うのは、トレーナーとしての定石。

 だけど、この授業に限ればそんなものは必要ない。座学では学べない、実戦向けの知識を教えるのが目的なんだから。

 

「逆に言えば、じっくり狙えればいいんだ」

「そんな簡単にいくんですか?」

 

 習うより慣れろ。これがモットー。

 

 ボクはかがんで茂みに身を隠す。狙うのは……あのグルトンでいいかな。

 気づかれないようにゆっくりと近づき、背後からボールを投げる。すると、グルトンはあっさりボールの中に収まってしまった。

 

「すごーい!!バトルもしないでポケモン捕まえちゃった!?」

「あのカルボウを捕まえた時とおんなじ!?」

 

 カルボウを捕まえた日に気づいたこと。それは、ポケモンの警戒心が薄れているならバトルの必要はない。

 そして、それはヒスイ地方という今よりも遥か昔の時代で行われてきた。

 

「これなら、バトルは必要ないでしょ?自分のタイミングで投げればいいし、投げるのが苦手ならもっと近づけばいいわけだからね」

 

 お試しに捕まえたグルトンをリリースして、説明を続ける。

 おお~っと歓声を上げるアオイ。

 対して、ネモは思案顔。

 

「はい、先生!!」

「どうしたの、ネモ」

「草むらがないと、この方法は使えません!」

「いい質問だね。その通りだよ」

 

 見晴らしのいい場所。たとえば、砂地や雪原ではこの方法は難しい。ポケモンに見つかれば、逃げ出すか襲ってくるかで、捕まえるどころじゃなくなってしまう。

 そこで、ヒスイ人の知恵その二。

 

「これ、二人とも何かわかるよね?」

「オレンのみ、ですよね」

「そう。そしてこれを……」

 

 茂みに姿を隠したまま、今度は別個体のグルトンに投げる。

 すると、グルトンはそっちに向かって一目散。オレンのみを黙々と食べ始めた。

 

「お~、食べるのに夢中になってる」

「これなら草むらがなくても近づけるし、多少の足音がしても警戒されない」

「背後を狙うだけよりずっと効果的ですね!」

 

 障害物が何もない更地は無理だけど……。岩とか木とか、なんでもいいから身を隠してきのみを投げればポケモンの警戒心はグッと落ちる。

 

「昔はポケモンバトルが普及してなかったから、こうした知恵を使って捕まえてたんだ。当時はモンスターボールも手作りだったらしいよ」

「それって、今も作れるんですか?」

「ボクも試してみたんだけど、加工は難しかったかな。相当な職人じゃないと」

「なんだぁ、残念」

 

 かつてのヒスイ人はぼんぐりたまいしを使って、モンスターボールを手作りしていたという。今の時代でもそれができたら、生徒も興味を持ってくれるかと思ったけど、実際にやるのはまあ難儀だった。

 素材の違いなのかな?わからないけど、とにかく手作りモンスターボールは現代では叶わない。おとなしくフレンドリィショップを使うしかなさそう。

 

 一応、現代でもボールを手作りできる『ガンテツ』って人がいるけど、彼は人間国宝と呼ばれる伝統職人。その技術がいかに貴重で高難度なものであるかがわかる。

 

「じゃあ、早速だけど二人も実践してみようか。好きなポケモンを――――」

「せんせーい!!イワンコ捕まえましたー!!」

 

 早いねずいぶん。

 ネモはモンスターボール片手にぶんぶんと振り回して、嬉しそうにしている。

 

「さ、さすがだなぁ。ネモは」

「自分のペースでいいからね?」

 

 ネモは色々と規格外だ。

 これが天才肌ってやつか。

 

 そこからも、彼女たちの奮闘は続く。アオイは慎重になりすぎてボールの投げるタイミングを逃したり、ポケモンに近づきすぎて逃げられてしまったりと中々に苦労気味。

 対するネモはというと、意外と筋が良いのか手際よくポケモンを捕まえていった。ボールを投げるのが苦手なだけで、それ以外の要領はいい。

 後半から、楽しそうな表情でポケモンの後頭部にボールをぶつけてるような気がしたけど、きっと気のせいだ。大丈夫、彼女がポケモンを大事に思っているのは知っている。

 

 一方のアオイも、なんとかして一匹捕まえることが出来たようで。これでひとまず、授業としては終了。想定よりもずっと早い。

 

「やったー!!自力で捕まえられたー!!」

「おめでとう。マメバッタは臆病で、バトルしようとすると逃げちゃうからね」

「この子可愛くていいなぁって思ってたんですよー!ゲットできて良かったぁ」

 

 早速この活動が活きたみたい。

 

「いい子捕まえたねアオイ!じゃあ、私のイワンコとバトルしようよ!」

「いいね、やろうやろう!!」

 

 ネモとアオイは早速盛り上がっている。若い子は元気だなぁ。

 バトルを止めるつもりはないけど、最後にひとつ伝えることがある。

 

「あ、ちょっとストップ。ひとつだけ注意事項があるけどいいかな?二人は、今回の捕獲方法を試してみてどうだった?」

「えーと……。バトルしなくていいし、こっちの方が早くていいなあって」

「でも、野生のポケモンにあんなに近づくのは、ちょっと危ないかも……」

 

 どんな方法にも良い点と悪い点はある。

 ネモは良い点を、アオイは悪い点をあげてくれた。

 

「そうだね。楽かもしれないけど、その分ちょっぴり危険になる。この方法で捕まえてたヒスイ地方では、ポケモンは怖いものって認識されてたぐらいだからね」

 

 バトルでの手加減が難しい場合、弱いポケモンを狙う場合は今回の方法がいい。逆に生身で近づくのが危険なポケモンは、バトルで弱らせた方が確実だし安全。

 それを二人にはわかってほしかった。大丈夫だとは思うけど、今からバンギラスを生身で捕まえに行くとか言い出さないように。

 

「ポケモンは怖い、かぁ。そんな風に考えたことはなかったかも」

「普段は人に慣れてるポケモンばかり見てるけど、野生のポケモンはそうとは限らないからね。怪我の危険だってある。だから、今回の方法を使う時も必ず手持ちのポケモンは用意しておくこと。これが、ボクとの約束ね」

「わかりました、先生!」

 

 うん、いい返事。手段を間違えなければ有用な捕獲法だし、これで二人の課外授業がもっと豊かになるといいな。

 思いつきで始めたことではあったけど、意味はありそうだ。これからも少ない人数でのんびりとやっていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、その後のバトルはマメバッタを使ったアオイが勝ったとか。相性不利なのになんで。

 これまた余談だけど、後日なぜか授業の参加希望者が増えた。これまたなんで。

 

 




ゲーム内では出来ないけど、こういったヒスイの要素もちょこちょこ交えていこうと思います。
この要素、SVでも普通にほしかった。
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