【メガテン三次】転生したら、サンカクヘッドだった件 作:白鮭
話が終わった後は宝物屋に逆戻りして、商品を見せてもらう。
とは言っても出て来たのは、合法的に買える軍用や警察関係が使う防弾・防刃チョッキやヘルメットの類で、大きさと重さを含めてエミにはまるで合っていなかった。
「武器も見せてください。剣や刀、後は銃とか」
「芯に鉛が入った木刀とか特殊鋼で作った模造刀ならあるが、殺傷力がある銃なんて置いてないし、いったいそれを誰が使うつもりなんだ?」
当然、店長の目線はエミの方を向いていた。そうだよな、防具がダメなのに武器なんてもっと無理だ。
「エミ用に考えてたんだけど、やっぱり武器防具は無理か。じゃあ魔法関係だとどうなりますか? 多少高くても大丈夫ですが」
「待ってろ、今持ってくる」
そう言って持ってきたのは各種アクセサリーと古ぼけた衣服や鎧、その他にしても一見して何に使うか分からない、非霊能者が見ればガラクタの山だが、俺たち専門家からすれば宝の山を店長は運んで来た。
「施餓鬼米に各種ストーン類、魔石といくつか宝玉もあるのか。……この辺は費用対効果が悪くて、できれば使いたくないですけどね」
「ストーン類は最低でも1個25万はするから、よほど稼げない限りはお守りだな。それにしてもいつの間にお嬢様と仲良くなったんだ? 今度受けてもらう仕事の依頼主の孫娘だぞ」
「その辺は知らなかったし偶然ですよ。話をしてみて個人的に協力する事にした、新しく出来た友達ですし」
「……そう言うなら良いんだけどな」
今一つ納得できていなさそうな店長の目の前で、雑多にある品物から濃い紫色のアメジストの指輪*1を見つけて、エミを手招きで呼び寄せてから手に握らせる。
「どうだ? この中だと特に魔力が濃い部類のアイテムだし、知識が無くても持つだけで覚醒出来る奴が出てくる代物なんだけど」
「……分からない。変わった所はないみたいだ」
「魔力を秘めたアイテムとの接触では覚醒しないし、俺をメンターとしての導師との出会いもダメか。*2他にお手軽に覚醒する手段だと……」
店長に近寄り、声を潜めて言う。
「覚醒用のドラッグって扱ってます?」
「有るけど売らねえよ! 何考えてんだ!?」
「ですよね、これもダメ。……後は――」
悪魔が見える愚者になるまで実戦は控えるとなると、選べる手段はそう多くはない。
その為にも、後の事は他の人物も交えて相談する必要があった。
「エミが持ってる指輪と、このリングをマッカ払いで」
「まいど、チェーンはサービスしとくよ」
「ありがとうございます。じゃあまた後で」
「あ、ありがとうございます」
そう言って店を出て俺の車まで移動して、助手席に座るとエミが照れ隠しも含めているのか、少し詰まりながらお礼と文句を言ってきた。
「色々と説明が欲しかった。後、指輪買ってくれてくれてありがとう」
「ああ、大事にしてくれ。物としてはかなり使えるから。
アメジストのリングの方は、CHARMの確立を下げる魔よけの効果がある品物*3で、もう一つの方のプラチナに見える素材で出来てる飾り気の少ないリング*4は、悪魔を倒した後のアイテムドロップ率が上がるアクセサリーだ。
両方とも強い魔力を持っているから、これで覚醒すればいいんだけど」
出来るだけの事をするといった以上、それなりの事はする。
俺からのプレゼントを貰って嬉しそうにしている美少女のエミは目の保養だが、中身を考えるとチョロ過ぎて心配になる。
が、昔クリスマスの時にお高いブランド物のバッグを当事の彼女に貢いでも、貰って当然と言う態度なのに餌を貰えなかった事を思い出して、あんな態度よりよっぽど良いとしみじみと思い出す。
「エミは素直で可愛いな」
「な!? いきなり何を言う!」
「いや、前世を思い出してちょっと……。ひきこもりにも歴史があったんだよ」
そう言いつつアームターミナルを起動して、ホログラフィックモニターを二人で見られる位置に出した後、デジタル召喚*5で桃香を呼び出す。
「手詰まりなんだが、何か方法はあるか?」
「そりゃあ、あるけどさ……エミちゃん固まってるよ?」
俺とモニター画面越しの桃香でエミを見ると口をパクパク開けながら、モニターを凝視していたが、桃香もそれを見ながら少しぎこちなくなっているのが不自然に見える。
初対面の相手に人見知りする性格でもなかったと思うが。
「……アームターミナル、もしかして本物の悪魔召喚プログラム?」
「本物の悪魔召喚プログラムって言うのが、中島朱美かSTEVEN謹製って意味だったら残念ながら違う。でも、本物の悪魔召喚プログラムなんて言葉が出るって言う事は、偽物か廉価品が有るって事か?」
「ああ、最近スマホで使える悪魔召喚アプリって言うのが出回り始めているらしい。
召喚数は1体で悪魔のLvも本人のレベルを超える事が出来ないから、召喚出来る悪魔は本人のLv次第。
おまけに使い続けると衰弱死するリスクがあるらしいが、何かの拍子に覚醒した人間がネットから拾って来て、それを使って暴れるのが問題になっているそうだ」
未覚醒の一般人の能力値は覚醒編で全能力値10、メガテンXでは1だったはず。
そこにLvが低いとは言え、見えない存在の悪魔が乱入したら人間など一たまりもない。
アギやジオなんかの初級魔法どころか、通常攻撃ですら人体をバラバラに出来るのが悪魔だ。そう考えると、意外と治安維持の問題で根願寺とか言う組織は大きいのかもしれないと考えていると、桃香が済まなそうに話しかけて来た。
「その辺の話もいいけどさ、覚醒方法教えてもいいかな」
「ああ、悪い桃香」
「うん、あのさ。イニシエーションとして唾液をリッター単位で飲ませるか、血を飲ませるか、精液を飲ませるか……。一応その上に房中術があるけど私は反対。
この手の儀式はサバトと同じで属性がダークの奴がやる事だし、そもそもエミちゃん何歳?」
「……JKだ」
いない事も無いと思うが、その圧倒的ロリボディのどこを見れば女子高生なのかと俺と桃香とで無言で見詰めると、諦めたのか蚊の鳴くような声で囁き始めた。
「JCに……来年なります」
「転生者だと外見年齢と精神年齢が違い過ぎて、その辺の判断が付きづらくなるな。
精液なんて論外だし、唾液もリッター単位で用意出来ない。なあ、諦めt……」
「房中術なら問題ないんでしょ!? SEXしよう!」
「歳考えろって、服を脱ぎ始めるなよ!? ……仕方ねえ、最後の手段を取るか」
「サマナー、もっと説得しなよ。エミちゃんも止めときなって」
出来れば覚醒させたいであって、必ず覚醒させるとまでは思えない。
今の俺の存在自体が悪魔人かそれに限りなく近い存在だと分かっているから、こういう儀式じみた事は避けたかったのだが覚悟が決まり切った表情で、覚醒出来なきゃここで死ぬと言わんばかりの勢いで迫ってくるエミを見てしぶしぶ協力する。
「俺の血を飲むなんて、どうなっても知らねえぞ」
「そうだよ。サマナーは覚醒と修行とで割と人間から逸脱してるんだから、自分の意志で血なんて取り込んだらマズイよ」
「覚醒出来るなら何でもしてやる。これは洒落や冗談じゃなくて、本気だ」
「……婚約者とやらはどんだけ嫌われてるんだか」
エミの様子に溜め息ををつきながら、狭い車内で使える転生神装備を呼び出す。
全体的に黒い謎の金属で構成されていて刃の部分が少し反っている、短剣ほどの長さと籠状のガードの付いたマンゴーシュ。
それに刃や柄、ガード等の主要部分が赤い光に覆われている特徴は、俺の使う転生神装備に共通するが、この武器は見た目の通り圧倒的に防御に使う事を想定されていた。
主な使い方としては飛び道具に対する防御なのだが、ヒノカグツチやメギドファイアーと比べると攻撃力で劣っているだけで武器としては上澄みの内の一つなのだが、どうして将門の太刀がこんな風に変質したのかは謎だ。
多分、ウェポンマスタリー技能で力任せに叩き込む事しかしていなかったのが原因だと思うが、それで困ったことも無いので普通に使っている。
そんな見た目詐欺の将門の太刀の刃を握って滑らせると、掌から血が出て来たのを見て武器を戻すが、さっきまで騒いでいたエミ実際に血を見た事で息を呑んで緊張していた。
その様子を見て修行は積んでいたのかも知れないが、修羅場に立った事が無いのが分かる。
それが身内への優しさなのか、諦められていたからかは分からない。
ただ彼女を見ていると、選べる立ち位置にいるのは素直に羨ましいと思う。
「止めとくか? 覚醒したら後戻りが出来ないから、悪魔の事なんか忘れた方が良い」
「そうだよ。自分から悪魔と関わるなんて、よくない事だよ」
血を見て躊躇するエミを見て、俺と桃香は止めるように忠告したが、結局エミは俺の掌に舌を這わせた。
まあ、血を取り込んだ瞬間に気絶したのは割と想定外だったが。
「どうするの? 人に見られたらロリ誘拐犯で性犯罪者だけど」
「魔法でどうにかするに決まってるだろ、
そう言いながら神通力を使い、車ごと魔法を使ってテレポートする。
本人が気絶してるから仕方が無いとは言え、こうして俺はエミの家に着いてからの説明をどうするかで頭を悩ませる事となった。