【メガテン三次】転生したら、サンカクヘッドだった件 作:白鮭
「朝か」
「うん、エミちゃん起きないね」
「もう少しすれば起きるだろ」
「うん……」
カーテンの隙間から漏れる光から夜が明けたのを察して、天蓋付きのベッドに眠るエミの姿をデジタル召喚している桃香と共に見る。
体調の変化を感じさせないように気持ちよさそうに眠っているが、万が一があると困るからと無理に頼み込んで監視していたが、結局何事もなかった。
あの後、天鳥舟召喚でいきなり西洋風の大豪邸の庭先に飛ばされた俺たちだったが、すぐにエミを渡したのと説明のためにいくつか魔法を見せたお陰で、客の立場として烏丸家への滞在の許可が出ていた。
「ここは……」
「おはよう、気分はどうだ?」
「よかった、起きた! おはよう、エミちゃん」
「朱美、桃香さん? おはようございます。……わたし、あれ?」
エミが気絶した次の日、俺とホログラフィックモニターに映し出された桃香とでまんじりとせずに朝を迎え、目を覚ましたエミに恐る恐る声をかける。
「体は平気か?」
「……気分は良いし、体も軽いな。生まれ変わったような気がする」
「そうか、エミは本当に生まれ変わったんだ」
俺の言っている事が唐突過ぎて首をかしげてるエミに、今まで座っていたアンティークの木の椅子から立ち上がると、美術品のようなサイドテーブルに置いていた水差しとセットで置かれた、これだけは部屋の雰囲気に不釣り合いな空のステンレスタンブラーを取り出してエミに差し出す。
「喉が渇いだんじゃないか? 水でも飲め」
「? ああ、ありがt……」
不思議そうな顔をしながらエミは素直にタンブラーを受け取るが、受け取ったタンブラーを握ったまま変形させてしまう。
「え?」
「……覚醒おめでとう。それとすまん、血を飲ませる事が何かの儀式として成立したらしい。今のエミの状態を見せる」
そう言ってアームターミナルでDAS*1を起動して、桃香が映っているモニターとは別の物をエミの前に出して現在のデーターを表示させる。
「ピクシー?」
「起源がそうなのか、ドイツの母方の血筋に妖精の血が混じっていたのが発現したのか、正直な所は俺にも分からない。普通ならアウトサイダーかデビルシフター*2に覚醒すると思うんだが、それが何で悪魔になったんだか」
「何かデメリットはあるのか?」
「俺たちは肉体的には不死に近いが、その生に精神が耐えられるかが分からないのと、外見年齢が変わる事が無いのが主なデメリットだな。それと比較として俺のデーターも見せるが……黙ってて悪かった」
そう言いながら俺のDASデーターをエミのモニターに送ると、エミは押し黙った。
「……ミシャグジさまの劣化分霊は良くないけど、それは良い。だけど何をやったらLv20で全門反射、電撃吸収なんてチートになるんだ!? 私と差がありすぎだろ!」
「それは能力値リセットで一部の副能力と、スキルと装備アイテム持ち越しで二週目が始まったって言う認識が俺の転生者としての始まりだからだ。……と思う。
相性についてはスプリガンベスト*3とその他の防具、それと覚醒編の魔神バアル*4の相性を引き継いだ結果だな」
そんな俺の話を聞いたエミは考え込みながら、俺の方に凹んだタンブラーを差し出して来るので水を注いでやると、水を飲んで飲んで一息ついてから話し始める。
「私にも出来る事なのか?」
「装備と合体用の悪魔が揃えばLv24で剣・ガン反射、魔法全般反射*5になれて、Lv37でそれにバッドステータス無効*6が付く。それ以上は現状の仕様だと現実味が無いな*7」
「悪魔合体施設はあるのか? 邪教の館も業魔殿もあるって話は聞かないが」
「この家にいる分には、その辺りの心配は無さそうなんだが。まあ、俺には取った覚えの無い特技が四つある。それが【悪魔合体】、【造魔作成】、【三身合体】、【剣合体】だ。
エミが悪魔人として生きて行く為に必要な特技は揃っていて、俺が責任を持って使うから安心してくれ。……満足したか?」
「ああ。二週目の話とか、転生の時に私と何が違ったのかが気になるがそこは追々だな。
着替えるから出て行ってくれ、下に降りて朝食を食べよう」
そうエミに促されて部屋を出たが、3分もしない内に服が破れて着替えられないと泣きが入り、慌てて桃香を召喚する羽目になった。
「おはようございます、おばあ様」
「おはよう、エミに中島さんに桃香さん。昨日はエミの面倒を見てくれてありがとうね」
「いえ。相談してから実行すればよかったんですが、独断の結果がこうなってしまい申し訳ありません」
「仕方ないわよ。エミは焦っていたし、貴方のような本物の悪魔召喚士に出会った運命も魔術の内だもの。ただ、悪魔合体もしてないのに、究極の外法の結晶である悪魔人に孫がなれるとは思わなかったけど。
『情報生命体』の悪魔に精神力で打ち勝って、人の精神を宿した悪魔になれるのは千人か万人に一人。*8やっぱり、転生者ってソウルからして違うのかしらね。
……ねぇ、中島さん? 私はこれでも人並みに孫が可愛いの。これからもエミをよろしくね」
「はは……」
「おばあ様! こうなったのも私の選択の結果で、朱美も桃香さんも散々止めろって忠告してくれました! 二人共悪くありません!!」
「はいはい、おばあちゃんが悪かったわよ。では、皆さんいただきましょう」
そう言って傍らにいる年若いメイドに合図をすると、ワゴンに乗せられた朝食が運ばれてくる。
今日の朝食は洋食のようだがナイフとフォークが力加減のせいで上手く食べられないエミは、メイドさんに食べさせて貰っているようで、その様子を見ている現在の当主の烏丸アーデルハイトはニコニコと笑いながら見ていた。
しかし本人はおばあちゃんなどと言っているが、外見年齢で言えばエミの年の離れた従姉妹にしか見えない。
エミはクォーターで髪の色ブラウンになっているが、目の前の三十代前半くらいに見えるエミによく似た金髪緑眼の美女が、八十歳を超えているとか質の悪い冗談としか思えなかった。
こんなのと一緒に暮らしていれば、いつまでも覚醒出来ないエミが焦るのも仕方がないし、おまけに本人の魔導士としての腕が確かなのも作品を見れば分かる。
「お下げしてよろしいでしょうか」
「ああ、ありがとう」
そう言ってお皿を下げていく人に見える存在は、日に当たった事の無いような真っ白い肌を持った銀髪青眼の年若いメイド姿の完全造魔だ。
この家に天鳥舟で移動した時にデジタル召喚で繋がっていた桃香に警告されたのだが、よくもまあこんな超人じみた人が日本に渡って来て生き残ったものである。
朝食が終わった後に食後のお茶が出されるが、その時にアーデルハイトさんに今後の事を聞かれる。
「それで、中島さんはこの後どうするのかしら?」
「許可が出るならエミを精霊合体して、レベルを俺と同等の数値まで上げてから戦闘経験を積んで貰います。幸いサラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームだったら幾らでも入手する手段がありますし」
「私も見られるなら許可します。必要なものは?」
「広くて平らな地面ですね」
「二人共、勝手に私のこれからを決めないで欲しいんだが」
「じゃあ、止めるか?」
「やるけど……」
「そう言う訳で、桃香は当分の間エミの面倒を見てくれ」
「うん。よろしくね、エミちゃん」
「よろしく、何か納得いかない……」
「納得いかないのは俺の方だよ。アーデルハイトさん、ヴィクトルレベルの悪魔研究者じゃねえか。何で孫が知らないんだよ」
「それは私が教えなかったし、隠していたからよ。
子供の教育に失敗して、霊能を持ってる者が偉いなんて歪んだ考えを持っていたから、孫のエミが洗脳される前に連れ戻して、そのまま人として生きればいいって思ってたの。
子供たちは東京で自分の望むままに生きればいい。それが本人たちの幸せの内なのでしょうから……でも、転生者で潜在的な才能は一番高いと思っていたエミの才能を引き出せる人を、自分で見つけてくるとは思わなかったわ」
そう言って笑顔を見せるアーデルハイトさんの内心は分からないが、少なくともこの広い屋敷を維持しつつエミを不自由なく育てている以上は、俺にそれ以上言える事は無い。
そのあとゆっくりとお茶の時間を取りながら、エミの小さい頃の話や俺の生まれや魔法関連の話をしつつ、エミがリラックス出来たのを見計らってアーデルハイトさんの研究室へと案内される事となった。
コンピューター技能から算出した、威力以下のLvの悪魔のデーターを確認できるソフトウェア。
厳密に言えばアウトサイダーは自分の起源に遡る能力で、デビルシフターは悪魔カードから悪魔を召喚して自分に乗り移らせる能力なのだが、技能としての両者に違いは無い。
おまけにダヌー系に対する会話ボーナス+10%と、信頼度(コミュ)が初期値で10上昇する。