それはそれはそれはルミナスメイズの森通いの成果が出てきて、少しづつだが森のポケモンたちが懐いてくれるようになった頃のこと。
その日の森は騒がしさと静けさが同居して、ただならぬ雰囲気を纏っていた。森そのものは騒がしいのだが、その癖ポケモンたちが一匹も姿を現さなかったのだ。
一体何事かと頭を傾げていると、俺の視界が妖しい人影を捉えた。俺は反射的に付き添いに来てくれたジムトレーナーのウメちゃんの頭を抑えつけて、木や草むらの中に身体を隠した。
「もぉ~、一体何「静かに!あれを見て。」…パラレル団?」
文句を口にしかけたウメちゃんを静止して、怪しい人影を指さす。
妖しい人影は近頃ガラルを騒がせる犯罪集団パラレル団の団服を着ていた。
よく見れば1人だけではなく、何人ものパラレル団がポケモンを連れて森を探索している。
…………仕方が無い、か。俺は諦めて溜息を吐き、ウメちゃんへと向き直った。
ストロベリーブロンドの三つ編みを肩に垂らした、童顔・低身長のロリ巨乳体型だが15歳。
今世の俺よりも10歳も年上なのである。いや、俺が幼すぎるだけで15ならこんなものか?
「…ルリちゃん、テレポート覚えてたよね?」
「そ、そっか、ヤシさんに報告すればあんな奴等…っ!!」
「うん、だからウメちゃんはテレポートで先にラテラルタウンに帰って?」
ジムリーダーのヤシさんはガラルでも有数のプロトレーナー。頼るなら、ヤシさんしか居ない。
「だ、ダメだよ!あの人たちすっごく悪い人たちなんだよ?残ったら殺されちゃうよ!」
「だから、俺が残るんだよ。パラレル団からルミナスメイズの森を守るために。」
パラレル団の目的が何かは分からない。だが、ここでのポケモンたちを見捨てる訳にはいかない。
そんなことをした最後、ルミナスメイズの森のポケモンたちは俺のことを永遠に信用してはくれないだろうし、何よりも俺が罪悪感で森に来れなくなってしまう。
「心配ないよ、ルミナスメイズの森はもう自分の家の庭みたいなものさ。この非常時だ、ポケモンたちも時間稼ぎに協力してくれる。小柄だから隠れるのに一人の方が都合がいい。」
「で、でも…ヘレくんはまだ小さな子だし………」
尚も渋り、一緒に行こうと俺の腕を引いてくるウメちゃん。だが、その誘惑には乗れない。
「ウメちゃん、俺は子どもだけど男だ。お姫様を守るナイト役を奪わないでよ……ね?」
ウメちゃんはやり場の無い怒りに顔を赤く染めながらも、テレポートで帰ってくれた。
ウメちゃんがテレポートでラテラルタウンへ戻ったのを確認すると、俺は直ぐに動き出した。
パラレル団たちの目的を探るべく、森のポケモンを探して、草むらや木やキノコに隠れてスニーキングミッションを開始する。パラレル団たちの近くを目指すのだ。
心を殺せ、音は他の雑音に紛れてごまかせ、俺は元カントーの民……つまり忍者だ。と、自己暗示をしつつ、ゆっくりと、しかし確実にパラレル団たちへと近づいていく。
「…がせ」
パラレル団の声が聞こえ初めると、俺はピタリと動きを止めて耳をすませた。
「もっとよく探せ!この森に居るのは分かっているんだ!ポニータの角はよく売れる!」
俺は叫びたい気持ちを必死に抑え、手で口元を塞いだ。
ガラル地方のポニータの角には癒しの力がある。それを目当てとした乱獲だろう。
残念ながら、こういうルール無用の密猟者はいつの時代、何処の世界にも居るものだ。
だが、俺が森のポケモンたちを見かけないように、連中もポニータを見つけらっれずにいるらしい。したっぱらしいパラレル団たちが「見つからねー」と口々にぼやいている。
このままヤシさんが来るまで、ポニータを探し続けていてくれれば俺も森も安全だ。
「…致し方ない。商品価値が下がるのでやりたくなかったが…森ごと焼き尽くすとしよう。」
指示を出していたパラレル団員はそういうと、腰のモンスターボールを手に取った。
このままでは非常に不味い!森が燃えたら多くのポケモンたちが路頭に迷ってしまう!!
「クイタラン、かえん…」
もう、考えている時間すら無い。俺は反射的に木陰から飛び出す。
「ほ「たいあたり!!」う゛ぁぁぁー-っ!!」
俺の渾身のたいあたりが、パラレル団の背中にヒットした。
指示出しをしていたパラレル団がモンスターボールを取り落とすが、周りには他のパラレル団たちが大量にいる。なので、俺は指示だしパラレル団にしがみついた。
「殺すぞクソガキ!!」
「やれるものなら、やってみろ!!テメェも道連れだ!!」
俺は指示だしパラレル団にしがみついている。
このまま俺を攻撃すれば、指示だしパラレル団にもダメージがいく。人質作戦だ。
「…チッ!!」
「クソガキがパラレル団の邪魔してただで済むと思ってんのか!?」
「ありえねー、オトギさん油断しすぎっしょ。」
狙い通り、他のパラレル団たちも攻撃を躊躇っている。俺がしがみついてるオトギというパラレル団は連中にとっても重要人物らしい。指示だししてたし幹部なのだろう。
パラレル団たちは俺の方へと集中しているが、それが連中にとっての隙になる。
「オォォォォォォォーーーっ!!」
ルミナスメイズの森のヌシ。森の守護者オーロット率いるむれがあらわれた。
妖しく輝く迷宮の森に君臨する霊樹の王、両腕に青葉茂らせた樹の怪物は死の力を従えて、森の民を率いて外敵を打ち払う。魂の安らぎが欲しいのならば、決して自然を汚すべからず。
「ここは光の迷宮、霊樹王オーロットの領土だ。命が惜しいなら早々に立ち去るがいい!!」
「なにが霊樹王だっ!!所詮はただの一ポケモンだろうが!!蹴散らしてやれ!!」
俺の警告とオトギの啖呵が引き金となり、ルミナスメイズの森とパラレル団の戦いが始まった。
ヤバチャが、ポニータが、ボクレーが、そしてオーロットが一斉にパラレル団へ襲い掛かる。
対するパラレル団もマッスグマやフォクスライといった思い思いのポケモンを繰り出し対抗する。
それはまるで、戦争の時代に逆戻りしたかのような凄まじい戦いだった。
「ええい、たかが野生ポケモン相手に何を手間取っている!!?早く蹴散らせ!!」
オトギはそう叫びながら、器用に腰のモンスターボールを掴んだ。これは不味い。
「痛っ!!このクソガキが・・・ッ!!ズルズキン!このガキをグロウパンチで引き剥がせ!」
そうはさせるかとオトギの腹を思いっ切り噛んだが、非力な子どもの力では食い千切るような真似も出来ず、オトギにモンスターボールを投げることを許してしまった。
「ズッ!!」
ズルズキンのグロウパンチによって俺の身体は吹き飛ばされて木に激突・・・することは無かった。
ズルズキンのグロウパンチよりも早く俺の身体が浮き上がり、身体が勝手に緊急成功したからだ。
「全く、無茶をするヤツだ。・・・・・・だが、よくやったな。後は私たちに任せなさい。」
そこに居たのは、ブリムオンを従えたヤシさんと未来のチャンピオンのダンテだった・・・・・・つづく。
本作には、ダンテ前作主人公説に則りオリジナル悪の組織が居ます。
その顛末については・・・原作にパラレル団が居ないことからお察し下さい。