猫を拾った
こう書くと正しくないか
あれは、尾いてきた、が正しい
友人達と呑んだ帰りの事だった
調子に乗って酒を飲み過ぎた俺は帰り道で道に迷い
気付いたら、猫に土下座していた
自分でも何言ってるのか分からんが
俺は確かに道路真ん中にちょこんと座る黒猫に対して土下座をしていたのだ
その後、ふらつきながらも何とかアパートに辿り着いた俺の背後には、いつの間にか猫が尾いてきていて
そのまま俺の部屋に居座った
こういう経緯だ
酔っ払っていた所為で大部分が謎に包まれているがこんな感じである
件の猫は、いやに大人しい
今も、とりあえず日記を書いている俺の事を背後からじっと見つめている
ちょっと可愛い
もふもふしたい
しかしこいつ、捨て猫なのだろうか?
野良の成猫にしては毛並みが異様に整っているが、首輪は無い
家猫なら普通は自分の家に帰るだろうから、多分飼い猫では無いはず
猫が足元にすりよってきた
可愛い
やけに人懐こい。撫でても逃げない
もふもふしてる
可愛い
やばい、猫が可愛くて語彙が死ぬ
可愛かったので少しだけ鰹節をあげた
食べてから、にゃーん、と鳴いた
喜んでいるようだ
そろそろ眠たくなってきた
猫のことは気になるが、一先ず寝る事にする
おやすみ
猫が変形した
○○○
「ふぁ」
待ち受けの画面に11時30分と表示される
「寝過ぎたな」
休日とは言え惰眠を貪った後のなんとも言えぬ後悔がのしかかり少しだけ憂鬱になった。
「どうやって帰ったかも覚えてないな」
酔いが回ってとても楽しい気分だったのは覚えているが、寝るまでの間、自分は何をしていたんだったか。
何か大事な事を忘れているような…
その時、自分の腹の上で何かが動いた。
「にゃーん」
「にゃぁ……、あ、そうだ、ネコ!……え」
猫の鳴き声で急速に目が冴えた。
思い出した。猫を連れて帰ってきたんだった。
腹の上のソイツを手探りで掴んで顔の前まで持ってきた。
だが、それは猫の形をしていなかった。
「にゃーん」
「いや……え?ボール?」
「にゃーん」
「やっぱりネコ」
ボールが居た。
確かに猫の鳴き声はする。
触るともふもふしているし、ほんのり暖かい。
だがボールだ。
サッカーボールサイズの球体がそこにあった。
「いやなんだコイツ!?」
にゃーん、ともう一度猫?が鳴き声を上げた所で猫又は手に持っていたそれを思わず宙に放り投げた。
「にゃーん」
「うわ戻ってきた」
投げたボール猫は一度壁に当たって跳ね返り床をぼんぼんと跳ねながら手元に帰ってきた。
手元のそれを矯めつ眇めつ眺めてみる。
球体だ。猫耳はあり、顔もある。
しかし、手足も尻尾も無い丸っこいナニカ。
「なあにこれえ?」
「にゃーん」
撫で回すとそれは嬉しそうに鳴いた。
同時に、ごろごろと腹の音が鳴り響く。
「…飯、食うか」
「にゃーん」
キッチンに歩いて行くとボール猫はころころと自分の後を追ってくる。
「冷凍物で良いか。お前は……何食うんだコイツ」
「にゃーん」
取り敢えず鰹節を与えておく。
口元に幾らかの鰹節を近付けると瞬く間に吸い込まれた。
うん、食べ方がもう猫じゃない。
謎の生き物を拾った。
猫のようで、少し違う。
今まで生き物を飼った事なんて無いし、不安もあるが、
「何とかなると良いなぁネコちゃん」
「にゃーん」
可愛いから、ヨシ。
「今日からお前はウチの子だ」
猫は嬉しそうに、にゃーんと鳴いた。
「ところでボールからどうやって戻るの?一生そのまま?」
「にゃーん?」
あっ、分からないですか、そうですか。