あれから二日が経つ。
あの変な猫は今も俺の部屋に居着いている。
この二日間、奴を観察して生態を調査した。
まず第一に、間違いなく猫である。
にゃーんと鳴くし、耳もある、もふもふで
言葉にすると意味不明だが、奴は「猫」として存在している。
第二に、なんでも食べるっぽい。
言葉を翻すようだが、食性は猫の其れではない。
昨日なんて、俺のおやつにしようとしてた板チョコを全部平らげた。
チョコを口に付けたネコの太々しい顔が忘れられん。
その後、ケロッとしてたのでチョコレートは毒では無いと判明した。
死ぬんじゃないかとヒヤヒヤした。心配させやがって。
最後に、これが本題だ。奴の変形について。
メタモルフォーゼと言うんだったか、ポ○モンにそんな名前のキャラクターが居たような気がする。
どうやら、この猫は毎日変形するらしい。
例のボール猫の翌日の事、
溶けた
猫が溶けた
形容するなら、はぐ○メタルだろうか。
スライム状の液体の中に、猫の顔が浮かんでいた。
冷やして成形出来ないかとか試したが形は戻らなかった。
次の日には別の形になるのが法則なのか?
ひょっとして初めて会った日の黒猫型は相当レアなのではと思った。
今日もまた、コイツは姿を変えている。
今日はーーー
○○○
「「にゃーん」」
猫が増えた。分裂した。
今朝起きたら2匹になっていた。
「「「にゃーん」」」
たった今3匹になった。
コピー印刷でもしたかのように瓜二つの個体がぬるっと増えていく。
増えた猫も幻ではなく、触れる事が出来た。
全部もふもふだ。最高。猫好きの楽園はここにあった。
『ちょっとーお兄ぃー?聞いてんの?』
「ああ、悪い悪いタマキ。なんだっけ」
猫又は実家の妹と電話で話していた。
妹の
思春期を迎えて口調はとげとげしくなったが、頻繁に電話でやり取りをするくらいには仲は良好である。
『こないだ酔っ払って電話掛けてきたじゃん。覚えてないの?』
「…あー、そんな事したっけ?俺、何か言ってた?」
『道に迷ったから助けてくれー、みたいな事をぐだぐだ言ってたからすぐに電話切っちゃったよ』
「薄情者」
『酔っ払い』
一拍置いて、電話越しに笑い合う。
『まー、元気なら良いや。怪我も無いんだよね。変わった事とかは?』
「変わった事は…。あー」
『歯切れ悪くない?』
ちらりと猫を一瞥してから、どう返事をしたものか悩んだ。
猫又は、未だに誰かにこの不思議な猫の事を話さずにいた。
信じてもらえそうにないから、ではなく、
この猫との距離感を変えてしまいたくない、という思いだった。
見つめていると、猫がもう1匹増えた。
「「「「にゃーん」」」」
『…ねぇ!なんかネコの鳴き声聞こえたけど!まさかお兄ぃ私に秘密にしてネコ飼ってんの!?私もペットとか飼いたいのにー!』
環ががなり立てた。
両親はペットを飼う事に否定的で実家では飼えないから、鬱憤が溜まっているのかも知れない。
『お兄ぃばっかりずるいー!』
「まあ、落ち着け。今さっき分裂したからタマキの分もあるぞ」
『お兄ぃのネコはアメーバか何かなの?!』
「否定できない」
「「「「「にゃーん」」」」」
だってまた増えてるし。
『絶対次の休みそっち行くから!ネコちゃん触らせてよね!』
「覚悟しとけよお前」
『どう言う事!?怖いんだけど!』
うちの猫は一味違うぞ。
環を適当に宥めすかして電話を切った。
数時間後、ベッドで丸くなる数十匹の猫を前にして俺は床で寝る事を決意した。可愛いから許す。