OVER×OVER ~H×H原作の最新DMMO始めました~ 作:砂漠谷
念貨を集めて数日。1000∅ほど集まっただろうか。ようやく最低限度の実用に足る数だけ集まった頃だ。市場から少し外れた場所で、かなりのオーラが込められた奇妙でやや恐ろしい、謎の二足歩行の生物の彫像が数十個並べられた露店を見つけた。
モモンガは驚きを隠しながら露店の主である中年の男性に話しかける。
「すまない、この商品はいくらかな?」
『ふむ、この商品の良さが分かるのか?よほど感性が鋭い御仁か、それとも特殊な技能を持った御仁だろうか』
モモンガはハンター証を提示して伝える。日本語が通じないため、NPCだと判断した。中年のNPCの頭には黒髪の中に白髪が数束ほど見え、くたびれたおっさん、といった雰囲気を醸し出している。
「後者だ。これらの物品、どんな効果がある?」
『効果なんて、とんでもない。これはただの観賞用のスタチューだ。ちょっとした演出機能はあるが、な。儂の失敗作だよ。もうプロハンターも引退して、街はずれの教会で神父をやりつつこうやって休息日には趣味で作った像を売っている訳さ』
「趣味にしては良くできている。友人にプロのデザイナー、芸術家がいるが、それと比べても素人目には遜色ない」
『褒めすぎだろう? これでも失敗作なのだよ。成功作は神に捧げている。成功作とは言っても、オーラを籠めて無理やり神秘性を強化した作品だがね。それでも成功は成功だ』
「あまり自分を卑下するな。それで、いくらかな?」
『ああ、失礼した。これは……』
値段交渉をするが、モモンガが褒めちぎっていい気分になった割には強気の値段設定であり、まけてくれることは無かった。そこで、事情の一部を明かすことにする。
「これは私の念具現化物でな。手に握って、何の用途にいくら消費、と言うと、その分だけ顕在オーラを増やすことが出来る。これを作るために像からオーラを吸い取りたいんだ」
と、念貨を相手に見せる。
『像からオーラを……(しかし……神の……)うむ。分かった。その硬貨と交換で、像を売ろう。1000∅で1000万ジェニー分の像を売ってやろう』
8つの像を購入し、両手に抱えて部屋に戻る。
(指輪……?確か、演出機能があると言っていたな。もしかしてそれか?)
モモンガの
そしてもう一つは、"発"や"特殊効果のある念"が宿った非生物、非具現化物を中に入れた時に、同じくそれを粉砕してその特殊効果を指輪にすること。指輪も消費制であり、オーラを籠めた後、使用の意志を念じるか宣言して使用する。
「8つもあって、全て同じ色、同じ形状……同じ効果の指輪だな。指輪の名前は……
指輪の裏側を見て名前を確認する。モモンガは指輪を右手の人差し指に込めてオーラを500ほど込めて宣言する。
「”
その瞬間、指輪が消滅すると同時に、自分の体に500のオーラが満ちわたっていく。
「……何も変わった感じは無いな。他者がいて初めて成り立つ能力か?」
モモンガは外に出て、道行くNPCらに近寄ってみる。
『貴族様?し、失礼しました』
すると、NPCはモモンガに深く礼をして遠ざかった。
「うん……自分の偉大さや高貴さを強化した、ということか……?」
(いやコレって操作系誘導型じゃないのかなぁ。好意を感じさせる訳じゃないから、強化系なのか……? 何が引退した、だよ。ガッツリ現役じゃねぇか。だがオーラの念貨への変換は伝えたが、念能力の指輪への変換も伝えていない。敵対関係にある訳でもないし、このまま念貨で彫像を買って、偶像で彫像を作って……というループで念貨とジェニーを稼ごう)
そんな思いで、さらにモモンガは何度か念貨で彫像を買い、念貨に変換する。念貨の貯蔵は20000∅に達した。念貨への変換は、オーラが物質に込められてから一週間以上経っているものでないとできないということが分かった。
それが分かった時に、キングゥがログインした。
机の上で小山を作る、紫水晶のような硬貨を見て驚く。
「何よこの宝石……じゃなイ? これがモモンの念能力ネ!」
「ええ、名前は師匠と一緒に考えた
「念貨、ネ。アンタにしては良いネーミングじゃなイ?デ、アンタがログインしてない間に私はちょくちょくログインしてたけド、ここ数日どうだっタ?」
「実は【かくかくしかじか】なんですが……」
モモンガはここ数日であったことをキングゥに説明する。
「ン……神字使いの神父カ……いいじゃなイ、本格的に専売契約を結んじゃいまショ!」
「せ、専売契約、ですか?」
「うン、その神父の商品を他のところに持ってかれるト、その分こっちは買えなくなル。よそに持ってく方が高く売れると気づかれる前ニ、こっちで囲っちゃうのヨ!」
「だいぶ悪辣な気が……」
少々引くモモンガに構わず、キングゥは続ける。
「NPCだかラ、別に良いでショ? プレイヤー相手ならもうちょっと遠慮が必要かもネ!」
「そりゃまあそうですけど。それにしてもこのゲームのNPC、だいぶ高級なAIを使ってるようで、違和感や矛盾が話してても全く出ないですね」
「うン、私も詳しくはわからないんだけド、人工フラクトライト?ってのを使ってるらしいのヨ。専用の量子コンピューターみたいなものらしいワ」
「ふーん、そうなんですか。次の休息日にでも契約を持ちかけましょうか。それまでこの2万∅をどうにかしてジェニーに換金したいんですが……」
「ア、それはネ? 天空闘技場のフロアマスターにプレイヤーもいるみたいだかラ、彼らに売っちゃいましょウ。彼らなら億は持ってるはずヨ」
「億、ですか……」
その後、キングゥは軽くハントクエストをこなしていくと言って出て行ったため、モモンガは一人で天空闘技場のフロアマスターに会うことになった。
試合ではなく取引ということで受付はアポを渋ったが、賄賂を十万ジェニーほど渡せばすぐに通してくれた。
試合直後を狙って、237階のフロアマスターの控室に向かう。
控室のドアをノックする。
「よう、来たか」
控室のドアがあちらから開かれ、モモンガは半ば無理やりフロアマスターらしき男に手を引かれ、部屋の中に連れ込まれる。
部屋は随分豪華だ。高価な調度品が多く置かれた、近世風の広い部屋だった。
「お前さんがオーラの回復アイテムをくれるって奴か?」
男はモモンガには届かないが長身で、筋肉も当然ながらかなりついている。角刈りの金髪碧眼で、空手着を着崩していた。
「少し語弊があったかもしれません。オーラの回復アイテムというより増強アイテムですね。増やすのは潜在オーラではなく顕在オーラなので」
「顕在オーラを増やす、だと?眉唾だな。そんなもんが無限に作れたら、ゲームバランスが崩壊しちまう。……まず自分で試してもらえるか?」
「ええ……まずこれが私の通常の"練"です」
モモンガは"練"を相手に見せる。
「ふぅん、初心者にしては上手い、程度だな」
「そしてこれが、念貨を使用した"練"です。『念貨を"練"に1000∅消費』」
モモンガは、自らの"練"に上乗せして、袋に入れた念貨を消費して"練"を用いた。
「これは……確かに"練"が、顕在オーラが倍増している、な。これはどれくらい持つ?」
「そうですね。私は元々秒間7オーラほど消費します。しかし顕在オーラが急激に倍増したことにより消費オーラも倍増して、秒間14オーラ。徐々に減って70秒ほどで元のオーラ量に戻ります」
「へぇ……その念貨とやら、どのくらい売れる?」
「1万∅。およそ一万オーラ分は売ることが出来ます。1∅を一万ジェニーで取引……両替するつもりです」
「高……くはないな。戦闘力というリアルマネーでも僅かしか増やせないものを、ゲーム内通貨さえあればいくらでも増やせるんだから」
「こちらも発行限度はありますが。それに戦闘力はオーラ量だけでは決まらない、と師は言いました」
「確かにそうだが……その念貨、"発"にも使えるんだろ?」
「本人の技量次第では」
「良し。この金庫に一億ジェニー入ってる。念貨一万∅を置いて金庫ごと持っていけ。鍵は開けておくからそっちで再設定してくれ。ああ、クレーム付けるかもしれないから、一応これが連絡コードだ」
連絡コードをお互いに登録し、一応のフレンド登録をする。交渉成立である。一億ジェニーを手に入れたモモンガは、防犯のため宿のランクを二つほど上げた。
”
モモンガの使用するオリジナル念能力
特質系・具現化系
「生物ではない・具現化物ではない」、オーラが宿っている物体を匣に投入し、粉々に粉砕し、そこからオーラを取り出して、念貨へと鋳造する。この念貨は具現化物("発"によって変質・物質化したオーラ)ではなく、オーラをそのまま硬貨の形に固形化したものであり、モモンガやその他の使用者が"絶"になっても消失せず、使用できる。非念能力者でも、纏と練のみなら念貨を使用することで可能になる。
同様に、発と同じ効果が宿っている非生物・非具現化物の物質を指輪に変える。指輪にオーラを流し込むことで指輪が消費され、念が使用できる。
物質に念獣の類が憑依している場合、その物質を匣に投入すれば念獣の指輪(同じく消費制)が手に入る。これは「具現化物は破壊できない」の例外である。
死後強まる念を指輪にした場合は―――
元ネタは当然ユグドラシルのエクスチェンジボックス(通称シュレッダー)。モモンガにとって、パンドラズアクターとはシュレッダーの象徴だったため、このルビを振った。漢字の名前はキングゥが付けた。