OVER×OVER ~H×H原作の最新DMMO始めました~   作:砂漠谷

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5万字ほど書き溜めているので、一日ずつ投稿するつもりです。予約投稿は初めてなので、ミスがあるかもしれません。


船、過去、出会い

 幾何学模様の空間が徐々にぼんやりとしていき、消え失せる。直後に視界が暗転。気が付けば、ハンモックに揺られながら木造の部屋の中にいた。

 

(ここは……設備と揺れから察するに船、か?ここは寝室らしいな。ほかにもハンモックに寝転がってる人が三十数名……あ、一人起きた。)

 

 モモンガはハンモックから降り、部屋から出て甲板に出る。

 

 甲板では船員らしき人が帆を張ったり清掃をしたりしていた。波は穏やかだ。

 休憩に入ろうとしている船員にモモンガは話しかけた。

 

「あの~、すみません。この船ってどこに向かっているんですか?」

 

「あ#$、ラ+*トよ」

 

(ん? 何語!?)

 

 船員は、明らかに日本語ではない何らかの言葉で返答してきた。それから幾つかのやり取りをする。相手はモモンガ側の言葉を聞き取れているようだが、モモンガ側は全く聞き取れていない。

 一分ほど押し問答をしているうちに、初期キャラメイク担当のナビゲーターから受け取った通信機を思い出す。確かビートルXに『翻訳機能』もあったと言われたはずだ、と。

 

 モモンガはポケットを探り、ビートルXを取り出して起動する。船員の話し声がビートルXのマイクに入るとイヤホンとマイクのコードが伸び、それを耳につけてみると合成音声とは思えない滑らかな声質の翻訳音声が流れてきた。

 タイムラグは文法の都合上わずかにあるようだが、日常会話では支障は出ない程度だ。早速船員に再度質問をする。

 

「すみません。もう大丈夫です。この船ってどこ行きですか?」

 

『ああ、この船はラカレフト島行きさ! オチマ連邦の西端諸島の中心部といえばわかるかい?』

 

「えっと、少し待ってください。一般常識から世界地図を開いてっと、ラカレフト島……ここか、そして現在地はここ、と。ありがとうございます。到着まで何時間ほどですか?」

 

『一時間ほどで着くぜ!もうすぐ船長による面接が始まるからそれまで待っておきな!』

 

 空いた時間でビートルXを色々と弄り、操作方法を把握していくモモンガ。そうしていると甲板に他のハンター試験受験者が徐々に出始め、10分もしたら寝室で寝ていたほぼ全員が出そろった。ビートルXを弄る、イヤホンを耳につけているなどの挙動から見るに、プレイヤーはこの中に3人程度だろう。そう判断したモモンガは、プレイヤーら3人――NPCらから少し距離を置いている――に近い場所を確保する。自分から声をかけることはせず、船長を待つ。

 

 操舵室から出てきた船長は、筋骨隆々でサングラスをした壮年の男性だった。

 

『よう。儂が船長兼0次試験試験官だ。おめぇらハンターになりたいんだってな。だが、ハンターとは、『何かをハントする』者のことだ。何をハントするんだ?そんなことも答えられずにハンターになりたいなんてほざく奴は失格。適当に答える奴も失格。モチベーションはあっても心構えやハント対象への基礎知識が無い奴は失格だ。よし、前から順に並べ』

 

 他のプレイヤーらと一緒に後ろの方にいたモモンガは最後尾近くになった。

 モモンガがこのゲームに来た目的は、かつてのギルドメンバーと会うため。それだけだ。だったら、ギルメンハンター?友達ハンター?いや、なんか違う、とモモンガは悩み、頭を抱える。

 チュートリアルで失格になるかもしれない。その時、プレイヤーら全員のビートルXが振動した。

 彼らがビートルXの画面を見ると、運営からの通知が目に入る。概要はこうだ。

 

【課金アイテムによってこれらの試験をパスでき、システム的キャラクターメイクとチュートリアルだけ受けられる】

【すべての試験をパスするには合計で二万五千円ほど必要】

【チュートリアル終了までの課金額が低ければ低いほど、運営から豪華なプレゼント】

【無料でヒントだけもらいたい場合はビートルXのtips機能をオンにしておこう】

 

(なるほど、基本無料で課金要素も事前には把握してなかったからどう金を徴収するのかわからなかったが、こうやるのか……早くギルメンに会いたいが、スタートダッシュとして運営からのプレゼントは欲しい。無課金でかつ素早く。頑張ろう)

 

 tips機能をオンにする。すると早速ヒントが届いた。

 

【ハンターはコレクターではない。ハントすることそのものに重きを置くのがハンターだ】

 

 今すぐに使えるようなヒントではなかったが、モモンガにとってはヒントになった。

 

(コレクターじゃない。つまり集めること自体は目的じゃない。目的より過程……ユグドラシルの中では俺は死の支配者(オーバロード)で、一人で墓守をしてた……何故?もちろん、仲間たちと作った遺産を守りたかったからだ。だけどそれだけじゃない。仲間との冒険の思い出に浸り、仲間のアカウント削除()を悲しむため……そうだ、ギルメンが垢を消す時、誰もが『ありがとう、楽しかった』という意味合いの言葉を俺に言ってくれた。それが嬉しくって、ナザリックを守り続けてたんだ)

 

 束の間に、前列がなくなり、船長が目の前にいた。

 

『さて、お前さんはどんなものをハントする?』

 

 モモンガは即答する。

 

「遺言。私は……俺は遺言ハンターになる」

 

 それを聞いた船長が目を見開く。表情もしっかりと再現されている。

 

『ほう……今まで最も心に残った遺言は?』

 

「『アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ』だ」

 

『その言葉に嘘はなさそうだな。これ以上の問答は不要か。よし、合格だ。これで最後か?では不合格者は別の船に移動してもらう』

 

 その言葉に、プレイヤーの男一人が文句を言った。

 

「はぁ?ゲームの癖にプレイさせねぇとかどうなってんだよ!ふざけんな!基本無料って詐欺じゃねぇか!」

 

『何をプレイ?何が詐欺だと?よく聞き取れんが、ともかく儂らを侮辱していることだけはわかった。つまみ出せ!』

 

(なるほど、世界観的にまずい部分は翻訳機能が遮断するのか)

 

 9割以上の乗員が不合格になり、残ったのはNPCが二人、プレイヤーがモモンガを含めて三人、計五人になった。

 

『もうすぐ着くぞ、下船の準備をしておけ。貨物室に合格者用の荷物があるからな』

 

 と言われたので、5人は取りに行く。貨物室の棚に置かれているバックパックを取ろうとして、モモンガとプレイヤーの少女の手が重なった。

 

「あっ、すみません」

 

「キャア、こっちもごめんネ!なんだか少女漫画みたいな出会いネ!」

 

「しょ、少女漫画?すみません、漫画文化には疎くて……」

 

「そういうテンプレが21世紀少女漫画にはあるのヨ!イケオジアバターだシ、むしろこっちもご褒美だワ!」

 

 奇妙な語尾の上げ方をする、ゴスロリで背の低い少女だ。緑の瞳に黒のロールヘアを持っている。

 

「アバターですからね。そりゃあ恰好よく作りますよ。できれば骸骨の恐ろしい見た目にしたかったんですが、人間以外は作れないようで」

 

「あラ?もしかしテ、異形種の元ユグドラシルプレイヤーだったりすル?そういえば船長との面接でアインズうんちゃらかんちゃらって言ってたわネ」

 

「うんちゃら……ええ、実はそうなんですよ。引退したギルメンがこっちに来てるらしくって」

 

「アインズ・ウール・ゴウン所属の骸骨プレイヤー、何となく察せるけど黙っておくわネ。あのギルド、結構昔はヤンチャしてたみたいだシ、恨みもそれなりに買ってるでショ?あなたもあまりひけらかさない方がいいわヨ」

 

「そうでしたね……ありがとうございます。仲間と会えるということで舞い上がっていたみたいです」

 

「マ、黙っていれば分かる人もいないわヨ。ところデ、お仲間さんだけド、たぶん同一サーバー内にはいないわヨ?」

 

 その情報に一瞬動きが止まり、冷や汗をかくモモンガ。

 

「え、そうなんですか? というかこのゲーム複数サーバー制なんですか?」

「エエ、そうヨ。総プレイ人数が30万人、大体1サーバーあたり3000人が上限だかラ、100サーバーってとこかしラ。ほかにも普通のDMMOと違うところは色々あるわヨ。デスペナはキャラデリ、時間は12倍速、システムコンソールはビートルXに内包、とカ。感覚や表情があるのはもう知ってると思うけド、ハラスメント規制も基本的に最低限ヨ。性交やそれに類する行為はできないけド、戦闘中のπタッチやキスくらいなら出来るわネ。ア、私はされたことないわヨ?」

 

「そ、そうですか……ちなみに、このゲームは何か月くらい?」

 

知識量から、ゲーム経験者だと察したモモンガは少女に語り掛ける。

 

「サービス開始からすぐに初めて6か月。一日4時間を12倍速だかラ、ゲーム内時間で一年くらいネ。前のキャラが殺されテ(キャラデリされて)、あたらしく作り直したところヨ、あのクソ、いつかぶっ殺してやる……ああ、プレイヤー名を言ってなかったわネ。キングゥ=オールグリーン。グゥで良いわヨ」

「グゥさん、ですか。私はモモンガです。宜しくお願いします」

 

「コンゴトモヨロシク、ネ! ビートルXでフレンド登録して、と。もうそろそろ港に着きそうネ、いきまショ!」

 

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