OVER×OVER ~H×H原作の最新DMMO始めました~ 作:砂漠谷
いつのまにか貨物室で二人きりになっていたモモンガは、キングゥの後を追うように船から出る。近世的な木造の桟橋に足を付け、船を振り返ると、大砲の積まれた帆走フリゲートだった。
船長が下りてきて、0次試験合格者に呼びかける。
「これからぁ、1次試験を始めるぅ! 儂に、ついてこい!」
と言いながら唐突に走り始める。困惑しながら走ってついていくモモンガ。
他のグループと合流して少しずつ集団が膨れ上がっていく。
モモンガは走りながらキングゥに尋ねる。
「あの、ゲーム内でランニングさせられてるんですけど、これ何の目的が……」
「これが1次試験、ランニングヨ。とりあえず、騙されたと思ってしばらく走ってみてネ。フォームに集中しテ」
キングゥとの雑談を時折挟みつつ、出来るだけ疲れにくい走り方を心がける。
30分ほど経った頃、ビートルXに通知が来た。
「ん?『マクロの登録が完了しました』? なんだコレ」
「これは単純な行動を低級な人工知能に学習させることデ、簡単な行動の組み合わせならログアウト中でも自動で人工知能がアバターを動かしてやってくれるというシステムヨ」
「つまりこれを設定したらログアウトしてもアバターは動き続けるんですか!?」
「ソ! ただし戦闘とか複雑なのは出来ないかラ、AIが危険を察知したりしてマクロが途中終了した時にはすぐにログインできるように準備しときなさいネ」
まるでナビゲーターのように指導するキングゥ。
「わかりました、試してみます」
ビートルXを走りながら10分ほど操作してマクロを組み、その後、モモンガとキングゥはログアウトした。
その後二回ほどログインして障害物や危険生物を回避したが、それ以外は特に何事もなく、現実世界の一時間半ほどで1次試験を通過することができた。プレイヤーは殆ど通過出来ており、プレイヤーだけだと30名ほど。非プレイヤーも含めると100名ほど1次試験を通過した。
到着したのは木造コンテナがぽつんと一つだけ置いてある荒野、ここで1次試験の終了を船長から告げられた。
「うーし、1次試験突破。原作では結構色々あったのにナァ」
「キングゥさん、何度か原作という言葉を耳にするんですが、これって何が元ネタなんですか?」
「ええっ!? 知らないノ!? これこそ21世紀の最高峰異能バトル漫画、HUNTER×HUNTERだヨ!?」
驚愕の表情を迫真に表現するキングゥ。それをモモンガは軽く流す。
「そんなに驚かなくても……前世紀の作品なんて知らなくてもおかしくないですよ」
「うーん、でも図書館でワンピースくらい読んだことなイ?」
「私アーコロジー外の人間なんで、図書館とか行ったことないですね」
「あ……ごめん。そっか、そうだよね。でもこれから良くなるから!HOPEFULLY社が構造をぶっ壊して教育や創作の場をみんなに取り戻してあげるから!」
(あげるから? くれるからではなく? まあいいか)
その言葉にわずかに違和感を覚えるが、現実では一小市民でしかないモモンガはスルーした。
「で、2次試験って何があるんですか?」
『その言葉には私が答えましょう。2次試験のテーマは……銃の組み立てです』
船長の後ろから、近世風の軍服を着た几帳面そうな男性がやってきた。船長が後ろに下がるとその男性は前に出て演説のように説明する。
『私はガンハンターのバルカン。沈没船ハンターのウィーブルさんと入れ替わり、2次試験を担当するものです。銃の組み立て、軍学校に行っていた人にとっては少し簡単かもしれませんが、軍学校卒の人間はそう多くはないでしょう。ここで試されるのは、判別力と手先の器用さ!どのパーツがどのパーツとどのように組み合わさるかを予想して判別する能力と、それを実際に組み立てる器用さが試されます。これらはハンターにとって不可欠な技能の一つです」
一呼吸入れると、バルカンは木造コンテナの入り口を手で無理やりこじ開けた。中の木や鉄でできた部品が流れ出てくる。
『すべてのパーツはこのゴミ山の中にあります。この中のものを使って作った銃を私のところに持ってきてください。銃のパーツを他者から
キングゥとモモンガは顔を見合わせる。
「銃の組み立てっテ……現代人にそんなこと出来る訳ないのよネ。課金しようかしラ」
しかしモモンガは怪訝な顔をする。
「いや、私は普通にできますよ?小学校でやるじゃないですか。昔は結構得意だったんですよ」
「え、アーコロジー外の小学校、そんなことするノ? 知らなかったワ。じゃあ頼まれてくれるかしラ?」
「え、組み立てろって言われたじゃないですか。人に頼っていいんですか?」
「いいのヨ。試験官は『無理やり』ってわざわざ強調して言ってたでショ? あれは合意の上の譲渡はセーフということヨ。それに組み立てはあくまでテーマ。評価は下がるけど、テーマから逸れても条件を満たせばいいノ」
「なるほど、参考になります。じゃあパーツを探すのはキングゥさんにお任せするということで良いですか?」
ゴミ山を見上げてキングゥは呟いた。
「これヲ?……ごめン、手伝っテ……」
2次試験に挑む二人組。他のグループも真似しているのか、仲間を作っているグループと作れない人々に分かれていた。
「私、目は良いのよネ。というかオーラの思念操作は前のアカウントで覚えたかラ、"凝"は出来るシ。マ、スキルシステムの補助がないから前垢ほど上手には出来ないけド」
「オーラ、ってのは超能力のことですか?」
「そうネ、そのエネルギー元ってところかしラ。ま、私はヒソカ枠ってとこネ」
(誰だろう……)
キングゥの"凝"で探し当てたアイテムを、モモンガが小卒としての技能で組み立てる。銃のパーツにはオーラは宿っていなかったが、それでも"凝"は純粋に視力を高める効果もある。それとモモンガの的確な指定によって、キングゥメインの効率的な探索を進めることができた。
この二人のコンビネーションで、15分ほどで二人分のマスケット銃を組み立てた。
『では、銃がちゃんと機能するか、私が撃ちますので少し下がってください』
バルカンが二人の銃を受け取ると、適当なところに的を立てて、火薬と弾丸を銃身に詰め、構えて撃つ。二人の銃は正常に作用したようだ。
『よろしい。二人とも合格です。その銃は最新式なので、記念に取っていて下さい。何かの役に立つかもしれません』
と、捩れた奇妙な筆を懐から取り出し、何かをさらさらと銃身に書き込んでから銃を二人に返す。
「お、神字入り武器ゲットだネ。序盤の生活費にはなるかモ。それにしてもこのマスケットが最新式だなんテ、このサーバーはずいぶん遅れてるんだネ」
「ルーンって奴ですか?ま、ユグ……前やってたゲームにはルーンはありませんでしたけど」
「そんなとこヨ。あんな一瞬で神字を書き込めるとは、それ専用の念能力を持っているかあの筆の特殊能力かどっちかだネ」
そんなことを話しながら1次試験で消耗した体力を回復しつつ時間を潰していると、残り15分が経過し終了になった。24組、50名(2グループは3人組)まで減った。
「なぁ、頼むよ。銃はもうほぼ完成してあと照準を付けるだけなんだ」
『そのような訳にはいきません。何を習得していようが試験はクリアしなければプロハンターにはなれません』
モモンガとキングゥではない、合流したプレイヤーの一人が言い出した。それに反論するバルカン。
文句を言うプレイヤーは、急にバルカンに銃を突きつけた。当然弾は入っていない。
「今月キツいんだよ、食費削ってまで課金したくねぇ。試験官とバトって認められれば合格にしてくれ」
「おお、なかなかやるじゃなイ。蛮勇は時に美徳だワ。これはただの蛮勇だけど。だって……」
『何か勘違いしてませんか?試験は受からせるためにあるものじゃなくて落とすためにあるもの。今のあなたの姿は明らかに、"落ちる側"に見えますよ』
”
プレイヤーは持っていた銃でいきなり自分の頭を殴り、昏倒した。
「だって、相手は一流の念使いだもの。ちなみに昏倒や気絶、睡眠状態だと、意識を別空間に転移されるか普通にログアウトするかどっちか選べるワ」
「なるほど。ログアウトしてもアバターは残るんですね」
「世界観に沿わないからネ。長時間ログアウトしている間は、修行と休憩と食事と排泄と睡眠を順々にさせれば楽々放置ゲーになるワ。ま、理想のマクロが完成するまで数か月はかかるでしょうけド」
他のプレイヤーが何やらざわついている。
(まさか序盤で念能力が見られるなんて)(操作系か?)(操作条件が無い?針やスタンプなどを使ったようには見えなかったな)
『では、3次試験は馬車の中で説明します。みなさんこちらにお乗りください』
バルカンが、試験終了前に到着していた馬車の扉を開き、案内する。
|One shot One kill≪一発だけなら誤射かもしれない≫
操作系能力。
“円”の中にいる相手の、銃を持っている腕を0.5秒動かす。一度動かした腕はこの能力で二度と動かせない。
ちなみにバルカンの円の半径は50m