OVER×OVER ~H×H原作の最新DMMO始めました~ 作:砂漠谷
食事が終わって、箸を使った食事のマクロも完成した。食事と排泄とランニングと睡眠のマクロを組み合わせて"日常生活"のマクロを組んでログアウトする。
キングゥは少し作り置きをすると言っていたため、マクロの途中でアバターが飢える心配はないだろう。
鈴木悟は、リアルでもサプリとカロリーバーで栄養補給を済ませ、自室の小さなベッドに横たわりながら、キングゥの料理の味を思い出していた。
「まともな手料理かぁ、何年ぶりだろう。年甲斐もなく泣いてしまったな……」
幸せな心地に包まれながら、夢に落ちていく。
起きた。今日は一応休日だ、会社から出勤の命令が来ない限りは。
「っとぉ。今何時間経った……6時間!? リアル時間で1時間、ゲーム内時間で12時間オーバーしてしまった」
急いで朝の諸々を済ませログインする。
ログインすると、アバターは食事をしている最中だった。ゆっくりと味わいたい欲求を抑え、急いでかき込んでログハウスの外に出る。
そこには巨大な怪鳥の背に乗った4次試験官がおり、その周りに19人の3次試験通過者がいた。試験官は鷹匠のような服装をした壮年男性だ。
『ということでェ、何か質問はあるかァ? おう、寝坊助起きたか。詳しくは周りの奴らに聞いてくれェ。では他の鳥を呼んでくる』
と、怪鳥が羽ばたいて空に浮き、その強風に目を細めながらもモモンガはキングゥに近づく。
「キングゥさん!? 今回の試験は何ですか!?」
「空中バトルロワイヤル! スカイダイビングしながら受験票を取り合うノ! パラシュートだけ背負っテ! あのデカい怪鳥に掴まれて、高空から落とされて戦闘するヨ。一体なんでこんな無茶苦茶ナ」
怪鳥の強風がなくなると声量を調節しつつ、キングゥは説明する。
「なるほど。ちょっと厳しいというか、無理そうですね。でもパスすると4000円掛かりますし……」
「ア、パスじゃなくてモ、有利になれるアイテムを課金で購入することもできるわヨ」
その助言を受け、ビートルXで課金要素を調べてみる。すると、いくつかのアイテムが出てきた。
「えっと、ジェットパック3000円、ムササビスーツ1000円……これは」
「ププッ! モモンガが着るムササビスーツなんていいじゃなイ、買っちゃいなさいヨ!」
自分でもナイスジョークだと思いながら、モモンガは初課金をする。口座から1000円が振り落とされ、課金される。すぐにビートルXの尻からカードが排出される。
「えっと、このカードを、『ゲイン!』……って言うんでしたっけ、おぉ」
モモンガがキーワードを唱えると、ボンという音と煙と共に、カードが畳まれたスーツに変化した。
そのスーツにログハウスのシャワー室で着替え、外に出るとすでに巨大怪鳥が集まっていた。
怪鳥に受験票を見せると掴んで試験会場に連れて行ってくれるらしく、モモンガもそうした。
遥か下には海辺が見える空中で怪鳥は停止し、試験官は言う。
『再度言うがァ、お前らは、空中で受験票を取り合ってもらうゥ。取った受験票も含めて必ず胸につけておくことォ。三回ダイビングを繰り返すうちに三つ獲得すればクリア、自分のは取られても取られなくても良いィ。では、始めるぞォ!』
カウントダウンが始まり、慌ててモモンガは受験票を胸に付ける。
『ゼロォ!』
掴まれたかぎ爪が離され、地面に落下していく。モモンガはスキルをフル活用し、なんとかムササビスーツの使用法を理解しようとする。しかし。
(『格闘Ⅰ』も『人体理解Ⅰ』も反応しない!スキルランクⅠでは空中立体機動はサポート外ということか!頼れるのは〈思考速度〉だけ!)
時間の流れをゆっくりと感じ、風に粘度を感じつつも、風に乗ろうとじたばた手掻き足掻く。地面との距離が半分になったところでなんとか姿勢を安定させることができた。そして今度は移動だ。重心をやや傾けて場所を移動させようとしたところで、他の受験者が襲い掛かってきた。
『寄越せ!』
そのNPCは空中機動がどうやら得意らしく、体を広げて風にうまく乗っていた。スレンダーな体型の女性で、マントを掴んで滑空翼替わりにしている。
胸にある受験票に手を伸ばされ、それを妨害しようとするが、致命的なことに気が付く。
胸を手で防御するとムササビ服の皮膜が縮まり、風に乗れなくなることだ、ということだ。
そのまま受験票を奪われ、海面に衝突して一回目の試験が終わった。
(クソ、ムササビスーツは失敗だったかもしれない……ジェットパックを買うか?しかしそうすれば合計4000円になってしまう……ムササビスーツでなんとかするしかないか。幸い使い方は一回で覚えた)
そのまま怪鳥に上空に運ばれ、二回目が始まる。
まず、ムササビスーツを用いてあの空中機動が得意なNPCから距離を取る。そして、掏るように手を伸ばしたまま他のプレイヤーやNPCの受験票を盗む。
冷静になって周囲を確認すると、ムササビスーツを着ているプレイヤーは他にも3人、ジェットパックを背負っているのはイヴだけだ。
彼らとも距離を取り、ただ落下しているだけの受験者から掏る。
2回目と3回目でようやく3枚集まり、何とか合格した。
「ふぅ~。ギリギリだったな」
『4次試験終了ゥ!合格者6名は担当の怪鳥に乗ってろォ、最終試験会場、ハンター協会本部まで送っていく。ログハウスの荷物もそちらに送るから心配するなァ』
周りを見てみると、イヴとキングゥは合格していた。そして空中機動が得意なNPC、あとの二人はプレイヤーのようだ。