OVER×OVER ~H×H原作の最新DMMO始めました~   作:砂漠谷

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目を養いませう

 真っ白になった視界がゆっくりと色づき、形づく。

 

 モモンガとキングゥが飛んできたのは市場の外れ、裏路地に近いところだった。人影はない。

 

「よシ、モモン! 今日からお前は私の弟子ダ! 私の言うことには絶対服従、分かったナ?」

 

「分かりました。強くなって仲間たちに会うためなら何でもします、よろしくお願いします」

 

「マ、非効率なことは教えないから心配するナ! ああ、ハンター協会本部のあの部屋は念の初歩的修行がしやすくなってる特殊な場所だかラ、あんまりあそこの成長速度をアテにすんナ」

 

「了解です」

 

「師匠としての最初の教えダ。まズ、纏は基本、常にしておくこト。寝てても纏ができるようになれば最良ダ。デ、その次は……金集め、だネ!」

 

 モモンガは当然というように頷く。

 

「ネトゲの基本はマネー集めですもんね。わかります。国によって通貨が違うとかありますか?」

 

「無いヨ!殆どの国はJ(ジェニー)! 一部地域で特殊な通貨が使われてるくらいかナ。デ、金集めの方法だけド……それは転売!」

 

 意気揚々と語るキングゥに、モモンガは少しいやな顔をする。

 

「転売ですか……あんまり良いイメージは無いんですけど」

 

「これは原作でも使われてるれっきとした金策方法ヨ! さっさと仲間のところに行きたいんでショ? グリードアイランドのプレイに掛かる費用を集めるための、天空闘技場観戦費を集めるためにも心を鬼にして悪魔超人テンバイヤーになるのヨ!」

 

「わかりました。ですけど私、商品を売りつけるのはともかく、目利きとか転売のノウハウとか自信ないんですけど、転売ってどうやればいいんですか?」

 

「うム、よくぞ聞いてくれましタ! 転売に必要な技能は一つだケ、"凝"ヨ!」

 

 モモンガはそれを聞いて、念能力の応用技能の一つに"凝"があることを思い出した。

 

「"凝"ですか。それはオーラを一部に"凝らす"ということですかね」

 

「ソ!それも眼に凝らすノ。そうすれば物品に宿る微かなオーラが見えて、価値あるものを見分けられル。才能ある製作者が作った芸術品はオーラが僅かに宿るのヨ! 私がやるから真似しなさイ、"凝"!」

 

 キングゥの眼にオーラが凝集される。モモンガもそれに続こうとするが、しかし。

 

「むむむ、次元の目(プレイナーアイ)遠隔視(リモート・ビューイング)鷹の目(ホークアイ)!……難しいですねこれ」

 

 絶望のオーラをイメージして"練"に成功した成功体験故に、ユグドラシルの魔法発動の感覚でオーラ操作に挑むモモンガだったが、なかなか成功しない。

 

「"凝"のイメージハ、架空の力こぶを作る感じヨ。眼の内部から眼球を覆うようにレンズ状の筋肉が出ていテ、そこに力を籠める感ジ。もう一度やってみテ」

 

「レンズ状の筋肉……力こぶ……フン! あ、こういう感じ?ちょっと掴めてきました」

 

「そウ、その感覚を安定させテ。一分間出来るようになれバ、利き目には問題ないワ」

 

 それから二時間ほどで、安定して短時間の"凝"が出来るようになったモモンガは、キングゥと共に市場に繰り出す。天空闘技場の()()()であるここは、土産物が多く売ってあった。土産物は一つ一つ手作りであり、近代的な量産品は売っていない。

 数十分ほど売ったり買ったりして、懐を温かくしようと試みる二人であるが。

 

「う~ん、特に祭りでもないから良い品物が少ないわネ。まア、グリードアイランド代はまた別に集めるかラ、今は眼を養ウために、天空闘技場200階クラスの観戦チケットを買えれば良イ」

 

「ハンター試験で手に入れたムササビスーツ、銃、ヘッドランプを売って手に入れた5万ジェニー、すぐに10万ジェニーまでに増やせましたけど……」

 

 眼を見開いてキングゥはモモンガに振り向く。

 

「エ、この短時間に2倍ってどうやってサマしたのヨ」

 

「いやぁ、『人間心理』って、普通は注意深く見ないとわからないような他人の感情がパッと表示されるんで、交渉が楽でいいですね。引き際や押し時を間違えることが無くって」

 

「アンタ……リアルスキルとの併用っテ、ラノベ主人公かヨ!10万ジェニーで200階層以上のフロアマスター以外の観戦料1日見放題チケットになるから、行ってらっしゃイ」

 

「いえ、たぶんキングゥさん……師匠の解説が無いと分からないと思うので、20万稼いで行きますよ」

 

「モモン……私は孝行弟子を持ったネェ」

 

 眼を潤ませながら上目遣いで見つめるゴスロリ美少女アバターにやや引きながら答える。

 

「キングゥさん、出会って数日の相手に泣き顔を見せるのはどうかと思いますよ」

 

「アンタがそれをいうカ!それに師匠と弟子に時間は関係なシ!さテ、稼ぐわヨ!」

 

 そこから1時間ほどで、営業マンとしての交渉術と『人間心理Ⅰ』、そして"凝"を使って更に30万ほど稼いだ二人(主にモモンガ)は、天空闘技場の215階に上り、観戦をする。

 

『赤コォーナー!変幻自在のマタドール!"三幻色"ダルフ=メルエル!青コォーナー!王道中の王道!"正統騎士"ドルトン=デリック!』

 

 会場に出てきたのは、中世風のフルプレートの鎧を着た白銀の騎士と、赤と金の豪華な服装を身にまとった闘牛士(マタドール)。騎士は剣を腰に佩き、マタドールはマントを手に持っている。

 

(白銀の騎士かぁ……たっちさん、こっちでも楽しくやってるのかな、俺以外のギルメンと……いや、厭らしいことを考えるのはよそう。どちらにしろ俺を待ってくれているのは確かなんだ。一日も早くたっちさんたちのいるサーバーに辿り着かないと)

 

『試合、開始ィ!』

 

 騎士は一歩ずつ摺り足でマタドールに近づき、マタドールは同じく摺り足で一歩ずつ下がる。そのまま円を描くようにお互い距離を保つ。

 

 それに見入っていると、モモンガはキングゥに肩を叩かれた。「"凝"!忘れなさんナ!」

 

 モモンガは言われたまま"凝"をして試合を観戦する。すると、双方ともオーラを用いていることに気が付いた。

 

「マタドールの方はあのマント、具現化物ヨ。"凝"でよく見るト、オーラを発しているでショ?」

 

「見えますね。騎士の方も鎧からオーラが出ている感じするんですが、アレも具現化物なんですか?」

 

「いえ、アレは実物の鎧に"周"、後で教えるけド、オーラで自分以外のモノを強化するこト、それを掛けたモノヨ。物質自身から内在するオーラが漏れているんじゃなくテ、鎧に通したオーラが漏れているノ。ちょっとこれは判別が難しいんだけド、十数試合くらい見れば分かるようになるわヨ」

 

「わかりました……お、動きましたね」

 

 騎士の方が、こらえ切れずに剣を構えて突進した。マタドールは鋭い突きをマントを構えてひらりと避け、同時に蹴りを入れる。騎士は怒りながら振り向いて剣を振り回すが、ひらりひらりと避ける。

 マタドールのマントだけが切り裂かれ、ボロボロになる。だがマタドールが騎士から距離を取って両手でマントを持つと、そのぼろ布はすぐに美しい姿を取り戻す。

 

「うーん、あのマント、"発"としては駄作ネ」

 

「そうなんですか?」

 

「おそらく感情誘導型の操作系念能力ヨ。そして媒体を具現化していル……この時点でメモリの無駄だワ。さらにマントを再生させる能力ももたせテ、能力が発動する条件はマントを見せることだケ……あまりにも制約が緩すぎるシ、マントを傷つけても問題ないと能力に甘えて自身の能力向上が見込めなイ。とんだクソ能力の癖によく粘ってるわネ」

 

「騎士の方はどうですかね」

 

「"周"は念の応用技だけド、メモリの消費は例外を除いてほぼないワ。"発"を使わズ、念使いとしては飛車角落ちデ、それでも騎士の方は瞬殺されてなイ。おそらく手の内を明かしたくない強化系ネ。見込みあリ」

 

「そういう見方をするんですネ……するんですね」

 

「ありゃリャ、喋り方移っタ?」

 

「移ってないです……」

 

 その後は騎士側の消耗負けだった。

 

 他にも、キングゥの解説付きで2試合ほど観戦してから一日を終え、余った金で宿屋に泊まりログアウトした。

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