Liella!〜恋愛物語〜   作:ジャガピー

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#34 fanfare

 

 

 

 

 

 

 

 昨日のことを今でも頭の中で反駁しては処理落ちして、反駁してまた処理落ちをしてを何度も繰り返している。

 あの時間あの瞬間は一体何だったのかと考えては、モヤモヤとした感情とピンク色の邪な感情が混じり合った初めての感情に困惑している。

 そのせいで今日も、昼からバイトだと言うのに寝付けなかった。

 夏休みも後1週間もないと言うのに、情緒がめちゃくちゃなことになってしまっては、楽しめないではないか。

 ほんとなんなんだ一体。

 

「ただいま」

 

 そうか、僕の頭にゴミが付いていたとかそう言うアレか?

 それとなく取ってくれようとしてあんな形になってしまったのだろう。うんそうだ!きっとそうだ!

 

「ねぇ、ただいまってば」

 

 僕の視界に、ぬるっと入ってきたのは姉の心春。

 

「あ、おかえり」

 

 部活動から帰ってきた、と言うところだろう。

 

「ラーメン、伸びてるよ」

 

「あ」

 

 昼食にと作ったインスタントのラーメンだが、考え事をして時間が経過してしまっているせいか、確かに伸びてしまっている。

 

「あんた、今からバイトだよね?」

 

「あ、うん」

 

「うーん」

 

「なんだよ」

 

 煮え切らないというような反応に引っかかってしまった。

 

「いや、それなら何で…」

 

「何がさ」

 

「千砂都ちゃん」

 

「ゴホッ」

 

 その言葉に咽せる。

 ラーメンのスープが気管に入りそうになったじゃないか。

 

「いや、なんか出掛ける約束でもしてるのかと」

 

「な、なんでだよ」

 

「さっきそこで会って…」

 

「へ」

 

「なんかソワソワしてスマホ確認してて、様子おかしいから声かけたら、圭太を待ってるって…」

 

 そこまで聞いて、僕は飛び出す。

 何だ、何なんだ一体。

 そんな約束、したっけか。

 昨日のあれで、なんか色々記憶とかおかしくなってたのかもしれない。

 

 エレベーターを見ると、上の方に居た。

 階段で降りた方が早いと、5階から駆け降りる。

 エントランスを抜け、外に出る。

 千砂都はマンションの階段壁にもたれる様にして立っていた。

 

「あ」

 

 勢いよく出てきた僕に千砂都は反応した。

 僕は、肩で息をする。

 走ってきたからか、呼吸も鼓動も大きく乱れている。

 

「あー、いやその。今日バイトって聞いたから…。バイト先の神社まで散歩がてらに一緒に、歩きたいなぁ…なんて」

 

 頬を赤くさせて、少し申し訳なさそうにする。

 ソワソワと、あちこちをぎこちなく動かして、僕を見たり目を逸らしたり。

 

「えっと、ごめんね…。急だったよね」

 

 千砂都の眉が下がる。

 違う、そんな顔をさせたい訳じゃ無い。

 

「すぐ…」

 

「え?」

 

「すぐ用意して来るから、待ってて」

 

 僕は千砂都をマンション内に通すと、大急ぎで降りてきた階段を駆け上がった。

 

 

 

 

 

 僕たちは、マンションを出てバイト先である神社に歩き出した。

 昨日の今日で、他愛も無い話…なんて訳にもいかず、どこかぎこちない空気が二人の間に漂う。

 不可抗力とか、そう言う退っ引きならぬ事情だったと言うこと…としか考えられないのだけど。

 

 千砂都はと言えば、チラチラと僕の様子を伺っては、僕と目が合うと慌てて目を逸らす。

 

 その表情はなんですか千砂都さん。

 何か言いたげで、でも言えない。

 もじもじと、恥ずかしそうに。

 一応、社会の窓が空いてないか確認したがちゃんと閉まってる。

 そう言うことでは無いらしい。

 というか、いつもの千砂都なら、そんな事あってもちゃんと面と向かって言ってくるのに。

 

 

「前に言ったことの話…」

 

「え?」

 

「思い出した?」

 

 昨日、アイスを食べながら聞かれたこと。

 心当たりがあるけれど、千砂都のそれが僕の考える答えと当てはまるのかが分からないでいる。

 

「えっと」

 

 誤魔化すのは簡単だ。

 ここで、分からないだとか、適当な事を言っておけば、話は続かない。

 僕の気持ちも、漏れる事はない。

 けれど、そんな事をしたって僕の気持ちが変わらない事は、もう昨日の日に分かった事。

 

 僕の心の中にある、千砂都への恋心。

 

 僕はこの心をどうしたいのか。

 考える時間や機会なんていくらでもあったはずだ。

 でも、怖いからと目をつむって平心を装っていただけ。

 

 望みがある訳じゃ無い。

 でも可能性とか、そんなものを考えても、自分の心には嘘はつけない。

 偶然、偶々、そんなものに縋っても何も起きない。

 

 だから、

 

 

「好きな人がいるって話?」

 

 

 前へ踏み出すことにした。

 玉砕しても、望みがなくても、きっとその方がこの拗らせた心を修復出来るはずだから。

 

 千砂都は、初めはびっくりした様な顔をしだけれど、僕をしっかりと見て優しく頷く。

 

「うん」

 

 向き合って、ダメならそれでも良い。

 ダメでも、僕たちの築いてきた関係は変わらないから。

 千砂都が昨日、同じ事を聞いてきたのは、それを確かめたかったからじゃ無いだろうか。

 

「僕も、」

 

「え?」

 

「僕も、居るんだ」

 

 それを伝えても、きっと大丈夫だと分かるから。

 想いが合わなくても、僕らの関係は終わらない。

 

「それ、」

 

 千砂都は、歩く僕の手を掴んだ。

 震える手で掴んで、でもしっかりとした目で僕を見て、

 

「教えて」

 

 その、見た事もない千砂都の、希望にも焦燥にも見えた表情に、今ここで伝えなければいけない気がした。

 昨日千砂都が僕を抱きしめた意味も含めて、確信じゃ無いけど…そうあって欲しいと、願うくらいには、僕の心は錯乱している。

 

 でも、悪いことでは無い。

 揺れ動く気持ちでも、向き合おうとたった今決めたことには迷いはなかった。

 大丈夫だと。

 

 僕たちは変化していく。

 心も身体も、変化して成長する。

 それでも、変わらずにいられるものもある。

 根拠はないけど確信できる何かがある。

 

 この、気持ちに向き合おう。

 

 

 

「────千砂都が好き」

 

 

 

 

 千砂都の目の瞳孔が開くのが分かった。

 その間、ほんの数秒にも満たない間隔で、

 

 

 

「────私も圭太が好き」

 

 

 

 

 

 

 僕たちは、変わっていく。

 今日と同じ、明日は来ない。

 関係も、距離感も。

 

 この、拗らせ続けた恋心も。

 

 

 

 

 

 

 







ここまで読んでいただきありがとうございます。
お気づきの方もいたと思いますが、千砂都ちゃんがヒロインだと言う事は、最初の冒頭から私なりに隠す事なく書いてきました。

これからもこの物語の核でもある、拗らせという要素をこれまで以上に、他のメンバーも絡み合いなから、2人の変化した新しい未知の世界を進んでいく様子を描いていくつもりです。

アニメ3期もこの物語に含めたいこともあり、アニメが終わるまでは、こちらの方はゆっくりの更新になっていくかと思います。

引き続き、よろしくお願いします。


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