異世界の料理本   作:バルバルさん

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荒くれ者への港のスープ

 船の上で料理人に逆らうことほど馬鹿な真似はない。三食乾パンと塩スープで過ごしたくなきゃ、料理人の命令には俺でも従うよ。

 

~ラオミェン船団 二番船船長ラオ~

 

 

 

 

 

 海原を行く船の上や潮風の吹く港町では、ケンカと賭博は毎日のように行われている。

 

 殴り合いのケンカからナイフを取り出して殺し合いになったり、賭博の負けがこんで海に沈められそうになったりと、殺伐としがちな海の生活圏。

 

 だがラオミェン船団が主に停泊しているグレッグの港町は、治安はよろしくないが殺しは起きないことで有名だ。

 

 何故ならこの港町は料理食材ギルドが仕切っており、港町の条例と日々の食事が直結しているのだ。

 

 法を犯せば待っているのは食事的な村八分。

 

 生きる者は食事しなければ生きられず、食事に快楽を見出すのは生きる者の特権だが、そこに著しい制限をかけられる。

 

 その恐怖から、グレッグの港町では重犯罪は中々おこらないのだ。

 

 そんな港町には、船乗りから荒くれ者等の荒々しい男どもに愛されてやまないスープがある。

 

 このスープの香りを嗅げば、例え殺し合い寸前の輩も剣を捨て、一口飲めば、しかめっ面の船乗りもたちまち笑顔。

 

 嘘のような話だが、心休まるタイプの娯楽の少ない港や船の上にて、このスープを味わうのは痛みを伴わない最高の娯楽なのだ。

 

 以下に、一般的な港のスープのレシピを乗せる。各港にご当地スープがあるが、基本はこのレシピである。

 

 

 

●材料:食用油  

    アーニアン

    ギャーリンク

    トルメト

    香辛料

    ブルトー酒

    貝類

    塩等

 

 

 

 

 

●作り方

 

・刻んだアーニアンと塩を油をひいて熱した深鍋で、柔らかくなる程度に炒める。アーニアンは刻むと笑ってしまう成分を空気中に発散するので、水にさらした後に刻むとよい。

 

・刻みギャーリンク、香辛料を加え、香りを出すためさらに炒める。ギャーリンクは精力を高め、力が出るので船乗りたちが好む。

 

・トルメトのペーストを加え、馴染む程度に炒める。トルメトは細長く、赤味の強い色をした物が甘酸っぱく美味しい。

 

・ブルトー酒を加え、少し火を弱めかき混ぜつつ軽く煮る。皮を使用しないブルドー酒で、辛口なものがいい。

 

・店独自の魚の出汁汁を加え、皿に火を弱めてコトコトと煮る。ここに店や料理人の性格が出る。魚のアラ派と、貝類の出汁派で主に二分されるが、甲殻類の出汁も少々値が張るが味わい深い。

 

・小さめの貝を投入し、少し火を強めて五分ほど煮込む。安価で美味しいアッシャー貝が好まれる。砂を吐かせるのは面倒だが、この工程に港の料理人の技量が出る。

 

・大きめの貝を加えて蓋をし、貝の口が開くまで煮込む。アッシャ―貝、あるいはオイッシュ貝をぜいたくに使おう。港町では貝類は他の地方より安価に手に入る。しっかり火を通さないとお腹を壊すので注意。

 

・皿に盛る。熱々を頂かないのは愚かなことだ。焼いたパンはお好みで。

 

 

 

以上

 

 

 

 グレッグの港町では、小さな甲殻類を小さい貝と一緒に投入するのが一般的だが、ここに集まる冒険者の小遣い稼ぎとして、巨大な甲殻類のジャイアントカニーや魔法を使ってくるグレエビの討伐があり、これらの入った港のスープは王宮などでは味わえない野性味と豪快さあふれるスープとなる。

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