パワー、INT UP!
ワシは暇じゃからノーベル賞を考えておった!
もちろんテーマは永久機関じゃ
永遠の悪魔に閉じ込められておる今なんじゃから、考えるにはピッタリじゃろ?
チョンマゲたちはこの状況をどうにかしようと階段を昇り降りウロウロしておったのぉ──
そんなのは、か弱いヤツらのやることじゃ
本物の強者は天井を突き破って上の階に登場するんじゃ
そう、テレビアニメみたいに!
じゃがここは永遠の悪魔が支配する空間
もちろん天井をぶち破っても、そこから這い出したら元の階の床があるだけじゃろう
いや、天井をぶち抜いた途端、わしの足元の床に穴が開くのが先か?
……!
天才じゃ……! ワシは自分の才能が恐ろしい……!
この短時間で、本当にワシはノーベル賞を発明してしまったぞ……!
そうじゃ、天井もとい床に穴をあければいいんじゃ
そんでその穴に何かを、そうじゃなワシのウンコでも垂れてみたらどうなると思う……?
もちろんウンコは穴に落ちるじゃろう
ウンコは物質じゃからの、重力に従って落ちる
リンゴが落ちるのを見ていたニュートンだって知ってることじゃ
じゃがニュートンは考えもしないじゃろうて
ウンコを落とした先は天井の穴に繋がっていて、そこからまた落ちて再び床の穴を通り抜けていく……!
「永遠に落ち続けるウンコの完成じゃ!」
それだけではないぞ?
ウンコには落ちている間、当然重力がかかるからのぉ
ウンコは天井から床に落ちるまでの間に、その質量に見合った重力を受け続けることになる!
それも何度も、何度も、何度でも!
そうやって、ウンコは上から下に落ちる度に重力の影響で加速していくことになるのじゃ!
ワシは血の操作で脳ミソに血流を集中、天才的な計算を行った!
地球の重力加速度は確か9.8 m/s2じゃから、要するにここでの体感1秒ごとにウンコは秒速9.8mずつ加速するということじゃ。つまりたった1分放置するだけでその60倍の秒速588m、マッハの壁を超えて高速移動するウンコの完成じゃっ!
さらに、それを1時間放置してみればどうじゃ?
さらに60倍の速さとなって秒速3.5kmとなってしまうぞい!
こりゃ、光速に達するのも時間の問題かもしれんのう
光速がどれだけ速いか知らんが、タイムマシンとか出来るんじゃないか?
まあ、ワシはとしてはそのウンコをそのまま放置し続けても別に良いんじゃが、ノーベル賞を発明するとなるとそこからエネルギーを取り出さねばならんからのう
エネルギーを取り出すためにはどうしてもウンコの速度を犠牲にしなければならん
ジレンマじゃ……
エネルギーを取り出す方法については、モチロン一つしかないわい
水力も火力も風力も原子力も一緒、当然ウンコでも一緒じゃ
「落下するウンコでタービンを回せば良いんじゃあ~! 永遠にウンコで回り続ける永久機関の完成じゃあ~!」
モーターを逆回転させると電気が生じるという、その原理に基づいて発電機のタービンを回せば電気が発生するのじゃあ~
……いやちょっと待て
発電した電気はどうする?
永遠の悪魔が支配する空間は周囲と隔絶されておるらしいからのぉ
そのまま外に送り出すという訳にはいかん
しょうがないの、一端蓄電池にでも溜め込むか?
大規模な蓄電装置を使えば、貯め込める電力もそれなりになるじゃろうて
「後は永遠の悪魔の能力を一旦解除して、外に電力を送り出せばそれで本当に完成じゃ!」
ノーベル賞は、間違いないのぉ~!
……能力を、解除させることさえ出来れば、の……
「クソォォォ! 結局永遠の悪魔をどうにか出来なければ永久機関もノーベル賞も、どうにもならんじゃろうがぁああ!」
ワシには、正直永遠の悪魔をどうにかする方法が思い付かん!
虚弱なニンゲンどもと違って、小賢しいことを考えるのは苦手じゃっ!
かつてワシが血の悪魔そのものであった頃ならばともかく、魔人となった今ではヤツを従わせるだけの格が少し足りんからのォ──
「こんな時、マキマがいれば簡単にあやつを従わせるのかも知れんがの。あの得体の知れない恐怖感はワシでもチョッピリヤバイからのォ」
……いや駄目じゃ!
マキマが永久機関を手にしたら余計に手が付けられなくなってしまう!
あくまでノーベル賞の発明はワシの手で成し遂げるんじゃ
だが、そうは言っても永遠の悪魔をどうにか出来ねばのう……
そこでワシの脳裏には、一人の男の姿が浮かびおった!
最近出会ったばかりのその男は、ワシの予想を飛び越えて、ワシを困らせておったコウモリの悪魔を撃破、見事ニャーコとワシを救い出してみせおった。
そんなあやつに永遠の悪魔の対処を期待してしまうのは、欲張りというものであろうかのォー?
そんなこと考えておったら、眼帯女がワシの部屋に入ってきおった。
少し話しただけでワシを頭おかしいヤツみたいな目で見て出ていきおった! 失礼な奴じゃ!
眼帯女はすぐに戻ってきおった。アホデンジを連れてな!
じゃからワシは正直にノーベル賞を考えておったことを明かしてやった。
「いつも通りっすね」
「あ、ならいいんだ」
そう、ワシはいつも通り、天才の天才じゃ!
去り際のデンジに、ワシはこう声を掛けてやった!
「なあデンジよ。おぬしが永遠の悪魔をどうにか出来たら、ノーベル賞を半分やってもいいぞ」
「ハァ? なんだそれ」
そんなすました顔をしておれるのも今のうちじゃ
ノーベル賞の賞金を半分でも受け取ったらボンビーデンジのことじゃ
腰を抜かすほどビックリするじゃろうて!
…………半分も?
実質ワシの発明なのに、どうして半分もやらねばいけないんじゃ?
ノーベル賞の共同受賞で賞金も半分、称賛も半分、名誉も半分、ノーベル賞も、半分?
……いや、それはおかしい。その半分ってのも、実はワシのじゃないか?
そうじゃ、ワシのじゃ。全部全部、みなワシのものじゃあ──っ!
END
おまけ
パワーの物理学Ⅱ
「のうのう、チョンマゲ」
「なんだ? 何か気付いたことでもあるか?」
「ワシがしたウンコが光速になったらどうなるかの?」
「……くだらないことを言ってないで、お前もこの状況をどうするか考えてみたらどうだ」
「安易に他人に頼るでない! これだからニンゲンってヤツは、自分で解決すればいいじゃろぉーっ? ワシはノーベル賞を考えるので忙しいんじゃ!」
「……ハァ、いやいい。お前には初めから何も期待していない」
「そんなこと言うヤツに限って本当は何か期待しておるんじゃ。だがの、そんなことしてワシになんのメリットがあるというんじゃ? ニンゲンは本当に愚かじゃ──!」
「ねえねえ、なんの話してるの?」
「おっ、眼帯女か。お前でもいいか」
「先輩、そいつのくだらない話に付き合わないでください」
「いいじゃんもう~、アキ君のケチ。それで? パワーちゃん、どんな話してたの」
「おぬしは分かるかの? ワシがしたウンコが光速になったらどうなるか?」
眼帯女はワシの天才的発想に少し呆気に取られた後、すごく真面目な顔して答えおった。
「パワーちゃん、マジでそういうことしないでね」
「なんじゃなんじゃ?」
「リアルな話すると多分パワーちゃんの住んでる街が消し飛ぶ。まあここみたいな閉鎖空間だと、なおさらオーバーキルって感じになるだろうね。ウンコってだいだい200グラム? 300グラムくらいかな。そういう質量の物体が光速で動いたら想像を絶する衝撃波が発生するんだよ。ましてそれが地表と激突したら地球がヤバイね。パワーちゃんのウンコで地球がヤバイ」
「!!」
「さらにリアルな話をすると、今現在の物理理論では物体は光速に近づくにつれ質量は増加するんだよね。だから射出されたウンコが光速になる瞬間に質量=∞(無限大)となって、重力崩壊を起こし想像を絶するブラックホールが発生するの。それが一瞬で太陽系を飲み込み、5秒以内に銀河を飲み込むのでパワーちゃんのウンコで宇宙がヤバイ」
「!!!」
「またウンコ側をリアルに説明すると、光の速さでウンコをすると、ウンコからはスターボウ(星虹)が見えるみたいなんだ。ウンコの後方は漆黒の闇が、そしてウンコの進行方向には全ての周囲の風景が一点に集まるように見えるはずだよ。そして、ドップラー効果で七色に輝いて見えるんだ。パワーちゃんのウンコ素敵だね」
「!!!!」
ワシにとっても、少しは考え込まされるような話じゃった!
「それってつまり、ワシのウンコ最強じゃないか……?」
「うん、最強だね。パワーちゃんより強いかも」
……!!!
ウンコのくせに、ナマイキじゃーっ!
END
今回で腹の中にあったものは出しました。
水に流さず残しときます。