89式和製ビッグレッド   作:ディア

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第10話

 落鉄したにも関わらず弥生賞のレースレコードを更新したサードプレジデント。あまりの強さに皐月賞のオッズは元返し、つまり単勝1.0倍、支持率85%を超えていた。

 

 そんな中、創也はもどかしさを感じていた。それというのもサードプレジデントを最も扱えるのは自分であり、騎手となったにも関わらず規定により皐月賞を始めとしたGⅠ競走の出走馬に鞍上することが出来ず、ただ見守るだけしか出来ないという状況だったからだ。

 

 もしも創也が1年生まれるのが早ければサードプレジデントに騎乗出来ただろうが、現実はそうではない。

 

 だがそれでも創也は挫けず、菊花賞に向けて平地障害問わず勝ち星を重ね、既に25勝していた。このペースなら菊花賞どころかダービーにも間に合う。そう思わせる勢いのある騎手で、新人の中ではかなり、というか割りと天才と呼ばれる騎手の中でも優秀な方である。

 

 

 

「創也さん、大丈夫ですか?」

 

 創也を見かけた美亜が声をかけると創也が震えており、その目には涙があった。

 

「ええ、美亜さん。ただ騎手であるにも関わらず自分がサードプレジデントに乗れないことをもどかしく思っているだけです」

 

「確かにサードプレジデントは強く、そして速い馬です。それを十二分に発揮させられないのは、もどかしく思うのは無理はありません。ですから私は菊花賞トライアル以降貴方を主戦騎手に採用させる予定でいるんですよ?」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ、本当です。ですからその時が来たらサードプレジデントに乗れるようにして下さい。それが私からの願いです」

 

「分かりました。必ずサードプレジデントに騎乗してみせます!」

 

「頼みましたよ、私の愛しい人……」

 

 美亜の最後の呟きは創也に聞こえず、皐月賞のファンファーレが響いた。

 

 

 

【いよいよ皐月賞です。米国には三代目ビッグレッドの称号を早くも獲得したイージーゴアがいますがこちらにはそれよりも強いビッグレッドがいます。その馬の名前はサードプレジデント!】

 

 その実況とともに鳴り止まぬ大歓声。しかし創也はそれを聞いていなかった。観客席にいるにも関わらずまるでサードプレジデントと心が一緒になったかのようにゾーンに入っていたからだ。

 

「……来る」

 

【各馬ゲートに入り体制整いました。スタートしました!】

 

【皐月賞スタートしましたが、やはり出遅れたサードプレジデント。しかしこの馬に出遅れは関係ありません。まず始めにいったのは──】

 

 サードプレジデントはいつものように出遅れ、最後方でノロノロと走り、先頭集団を見つめている。まるで自分の出番はまだだと言わんばかりに。

 

 他の騎手達はその間に少しでも引き離そうとし、馬に加速するように指示するが弥生賞同様に不良馬場で加速がしにくく、思うように差を離せない。

 

 サードプレジデントの長所は加速力でその起点はパワーである。米国競馬はダートであり、サードプレジデントの父セクレタリアトや母父バックパサーはその能力の高さ故に芝でも走れたが本来はダート馬であり、パワー型の競走馬だ。そんな2頭の血を継ぐサードプレジデントはパワーを使う不良馬場にこそ発揮される。

 

 

 

【さあいよいよ半分を過ぎ、サードプレジデントが一気に爆発! 物凄い勢いで加速してグイグイ来ている!】

 

 そして半分を過ぎると蜂に刺されたかの如く物凄い勢いで加速、それはサードプレジデントの父セクレタリアトや母父バックパサーとも違う。シルキーサリヴァンそのものであり一気に先頭を捉え、そして……

 

【今、最後の直線に入った! ここでサードプレジデントが先頭のまま一気に突き放す! これはもう追いつけないぞ、リードは既に20馬身以上ある! これはもう余裕、圧勝ムードだぁっ!!】

 

「は……?」

 

「おい嘘だろ? あれからまだ加速するのか!?」

 

 サードプレジデント鞍上以外の騎手がそう叫ぶが手も足も出せず、そのままサードプレジデントをゴールさせてしまう。

 

【サードプレジデントいま一着でゴールイン! 弥生賞同様、不良馬場でも日本レコードを更新しました! お見事! 2着に……あっようやくドクタースパートがゴールしました。2着道営馬のドクタースパート、3着ウィナーズサークルです】

 

「……化け物だな」

 

「化け物でごわす」

 

 他の鞍上が口調を崩してしまう程度にはぶっ飛んだことをしでかしたサードプレジデント。それというのも皐月賞だけでなく日本重賞史上、最大着差となる52馬身差勝利であり、世界で見ても近年のGⅠに限ればベルモントSでセクレタリアトが叩き出した31馬身差を超えた最大着差となる。

 

「……次はダービーか」

 

「……ああ」

 

「……勝てるかな?」

 

「……勝つしかない」

 

「……そうだな」

 

「……ああ」

 

 サードプレジデント陣営以外がお通夜の雰囲気の中、創也だけは違った。

 

「サードプレジデント、俺はお前に相応しい男になってみせるよ」

 

 そう言って創也は拳を強く握りしめていた。

 

 

 

『サードプレジデント』

・馬主 星崎美亜

・生産牧場 月夜牧場

・調教師 旭川誠

・性別 牡馬

・毛色 栗毛

・年齢 4歳

・戦績 5戦5勝

・朝日杯3歳S、皐月賞




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尚、次回更新は本日21時です

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