≫現在欧州を席巻している大種牡馬ドバウィの父でありながら、競走馬としての知名度が高い稀有な例。ここから長くなるので(以下略)
≫何故競走馬としての知名度が高いのか、それは本馬が競走馬として高い評価を得ていたことも関係あるが、種付け初年度である2001年に早逝しドバウィ以下05世代の馬しか後世に残せなかったのもある
≫そんなドバイミレニアムだが本馬は競走成績は10戦9勝、負けたレースは英ダービーのみという素晴らしい競走成績であるが肝心の英ダービーは9着と競走馬として超有名になるかと言われると微妙に思うかもしれない。しかし日本の最強馬論争に加わるサイレンススズカはクラシックは惨敗しているしドバイミレニアムもその類の馬であり、芝ダート問わず2000m以下は無敗かつ最低着差でも2馬身半というサイレンススズカの上位互換のような馬であった
≫そんな彼の血統だが父シーキングザゴールド、母コロラドダンサー、母父シャリーフダンサーという血統であり、父についてはシーキングザパールなど世界各国で幾多の名馬を輩出した種牡馬でありミスタープロスペクターの後継種牡馬として名を馳せた上に、息子であるドバイミレニアムや娘であるシーキングザパールとは異なり31歳まで長生きしている。母父のシャリーフダンサーは父にノーザンダンサー、母にケンタッキーオークス馬スイートアライアンスを持つ良血馬として知られ自身も愛ダービーを勝利したことで当時としては最高額である400万ドルのシンジケートが組まれたことで有名
≫ちなみに史実だとBCクラシック前に故障して引退しているので特別ゲスト枠である
・フサイチペガサス
≫00年のケンタッキーダービー馬でBCクラシックに出走していたので記載
≫フサイチはウマ娘民からすれば大分馴染みはないが、競馬民にとってフサイチは有名な冠名であり96年の日本ダービー馬フサイチコンコルドなどが該当する。
≫そんなフサイチ軍団だがダーレといったように外国人の馬主なのか?と言われればノーでありれっきとした日本人馬主であり、そもそもフサイチという単語は外国人には読み辛いらしく実況にも「フーサーイーチー」と読んでしまうこともあるくらいには難しく、米国ではFupeg(フペグ)と省略されることが多いその割にはフサイチペガサスを預かった調教師はキチンと発音していたらしいが
≫そんな事情はさておきこのフサイチペガサスはセリで400万ドルという同世代世界最高取引額で購入され、新馬戦こそ2着に敗れるがそれ以降は連勝しケンタッキーダービーに挑み5戦目でケンタッキーダービー馬となった。二冠目プリークネスSでは惜しくも2着、気を取り直してベルモントSに挑もうとするも蹄を痛め回避と実力はあれど運がなかった。その後は重賞を1勝し、1番人気でBCクラシックに挑むが……生涯で最低順位となる6着と惨敗であった。その後は引退し種牡馬入りを果たす
≫フサイチペガサスの血統は父ミスタープロスペクター、母父ダンジクとどちらも大種牡馬で解説不要の血統ではあるが今までミスタープロスペクターについて解説していなかったので解説。ミスタープロスペクターは言われずとした大種牡馬であり、日本を含め世界中で流行している系統の始祖と言っても過言ではなく、米国は本馬を始め多数の種牡馬が、欧州ではドバウィが、日本でもキングカメハメハとドゥラメンテがリーディングサイアーに輝いている。それだけでもミスタープロスペクターの恐ろしさが十二分にわかるだろう。しかし真に恐ろしいのはそこではなく、馬場状態を問わない万能さにあり、現在の日本馬が凱旋門賞を勝つキーポイントの一つではないかと筆者は考えている
≫ちなみにミスタープロスペクター産駒で唯一のケンタッキーダービー馬であったが当小説ではフジミエンペラーに敗れている上に名前すら登場しない。カワイソス
・ティズナウ
≫BCクラシックということもあり記載。
≫父シーズティジーと言われてもピンも来ない方が多いのでこの馬はマンノウォー系の馬と一言で言えばわかるだろう。サラブレッドの三大始祖のうちダーレーアラビアンが現在のサラブレッドのほとんどの直系にあたり、バイアリータークやゴドルフィンアラビアンの直系子孫は風前の灯火、虫の息状態である。そんな状況下でティズナウはマンノウォーつまりゴドルフィンアラビアンの直系子孫にあたる競走馬であり、近年で最もマンノウォー系で活躍した馬と言える
≫具体的にはどのくらい活躍したかと言うと史上初のBCクラシック連覇を達成し、また種牡馬としても多くのGⅠ馬を輩出しリーディング3位にまで浮上し、孫世代でも重賞馬を輩出した。近年のバイアリータークやゴドルフィンアラビアンの直系子孫がアレなのにこの種牡馬成績はヤベーんだわ。とはいえ2010年代後半に入り、同系列のオフィサーが韓国で成功したこともありティズナウ系の種牡馬が韓国へ軒並み輸出されてしまっただけでなく米国に残留した種牡馬達が失敗に終わり滅亡の危機にある。かつて日本は種牡馬の墓場と呼ばれていたが韓国は再現してしまったと言えてしまう。そんなところまで真似しなくても良いのに
・レモンドロップキッド
≫BCクラシックで出走しているので記載
≫レモンとつくからには昨年の最優秀ダート馬のレモンポップと何かしら関係あるかといえば大アリでレモンポップは彼の産駒にあたる競走馬である
≫史実の彼はベルモントSなどGⅠ5勝しておりこの時点で名馬であるが父親としてもそこそこに優秀。日本のレモンポップなどを始めGⅠ馬を輩出していることからその様子が伺える
≫父キングマンボ、母父シアトルスルー、母母父バックパサーという血統である。母系でシアトルスルーとバックパサー?という血統で思い出した方もいると思うのでレモンドロップキッドとエーピーインディは従兄弟にあたり、その牝系からは多くの重賞馬を輩出している。父については日本のエルコンドルパサーやキングカメハメハなどを輩出した名種牡馬であり、その血は日本国内で繁栄している
そして迎えたBCクラシック当日、会場は満員御礼で熱気に包まれていた。フジミキセキは単勝1.9倍の1番人気に支持されていた。
「(妥当といえば妥当か? 凱旋門賞を9馬身差で勝った上に米国の英雄サンデーサイレンスに瓜二つのレーススタイルに風貌。人気が出ない筈がない)」
創也は今回出走するフジミキセキの背中に乗り、他の出走馬に目を向ける。
その中で飛び抜けていたのがドバイミレニアム、次点でティズナウ、フジミエンペラー、レモンドロップキッドが横並びになる。
「(改めて見ると化け物揃いだな……)」
フジミキセキやドバイミレニアムも大概だが今回出走してきた馬達はいずれも名馬であり、レベルの高さを改めて実感する。
「(しかしこれも運命なのかね。しばらくはダーレーアラビアンの直系の同士討ちだったのに、バイアリータークやゴドルフィンアラビアンの子孫が歴史的な競走で相まみえるのは二度とないんじゃないのか?)」
現存する競走馬の直系先祖は3頭にたどり着くと言われているが、その大半がダーレアラビアンにたどり着く。その理由はバイアリーターク系もゴドルフィンアラビアン系も、ダーレアラビアンの子孫にあたりファラリスの子孫に生存競争で敗北したからである。ファラリスの直系子孫は他の子孫よりも速く強い馬が生まれやすい傾向があり、馬産界が好んで種付けするようになり他の子孫は駆逐されていった。
しかしフジミエンペラーはトウカイテイオー、シンボリルドルフ……と遡るとトウルビヨン、ザフライングダッチマン、そしてバイアリータークに、ティズナウも同じように延々と遡るとマンノウォー、マッチェム、そしてゴドルフィンアラビアンに辿り着く。
一昔前であればダーレアラビアンのみならず三大始祖の直系子孫同士が大舞台で激突するのは珍しくはなかったが今は違い、ダーレアラビアンの直系子孫のみで回っている状況の方が多い。その為三大始祖の直系子孫同士が争うことは滅多になくなってしまった。
「(これでティズナウかフジミエンペラーが勝てばロマン溢れるんだろうが、現実というものを教えてやる)」
創也がフジミキセキの首筋を叩き、やる気を出させるとフジミキセキがゲートに収まる。そして開始と共に各馬が飛び出していった。
【各馬スタートっ!?】
実況が困惑した声でレース開始を告げた。スタートが上手くいったのはドバイミレニアム、フジミエンペラーの2頭。しかしただ一頭出遅れてしまったのがフジミキセキであった。
【あーっと、これは致命的な出遅れだ! フジミキセキがなんと最後方の位置でレースをしています!】
「(くそっ、しくじった!)」
創也が焦り、フジミキセキのペースを早めようとするがすぐに冷静になり、フジミキセキを最後方で走らせた
【さあ先頭を走るのはドバイミレニアム、それに続きフジミエンペラーと続いていく!】
「(このレース展開はまずいな……)」
創也がそう考える中、レースは淡々と進んでいく。
ドバイミレニアムとフジミエンペラーは長く使える脚を持ち、フジミキセキもそのタイプの競走馬である。その為出来ることなら前目につけて先行させる方が有利となる。例え米国がポジションを確保する為だけにレースを進めるのが主流であったとしても、フジミキセキの強さは失われない。
一応フジミキセキは一瞬の切れで勝負することも可能と言えば可能ではある。しかし母父サードプレジデントやシルキーサリヴァンのような豪脚を発揮するかといえば否。これまでエクリプスSからGⅠ4戦を大逃げで勝ち進んできたこともあり長く使える脚の方が優れているのは創也の身体で理解している。
「(となると、作戦はアレしかなさそうだ)」
創也はそう考えながらもレースを見守る。フジミキセキは後続の馬群に飲まれて全く見えなかったが創也がゾーンに突入したこともあり状況を把握することは出来た。
しかし先頭を走る2頭との差は大きく開き始めており、ここから巻き返すのは困難に思われた。
「(またこうして海外であいつと走れるなんて想像につかなかった)」
フジミエンペラーの鞍上、加東がそう考えながらドバイミレニアムの背中を眺める。
加東はかつてホクトベガと共にドバイWCで創也の騎乗するフルハートと激走した。結果こそシガーに敗れてしまったものの海外でも通じることがわかり、そしてついにシガーのいるパシフィッククラシックSでシガーをも凌ぎ、BCクラシックでも3着とここでもシガーを凌いでみせ、フルハートにも迫った。
しかし加東はその後別の馬に騎乗した際に落馬し腰を痛め、ホクトベガに騎乗することは叶わず、ホクトベガがレース中に故障してしまい、延々と後悔している。
そんなドバイWC当日、ホクトベガが故障したと同時に生まれたのがフジミエンペラーである。そんな不思議な縁のあるフジミエンペラーの主戦騎手は当初こそ創也であったが代打という形でフジミエンペラーにケンタッキーダービーの舞台で騎乗し勝利して以降は加東が主戦騎手となった。
「(エンペラー、ダービーを勝たせてくれてありがとう。そして今日のレースも俺達で勝とう)」
加東の思いと共にドバイミレニアムとフジミエンペラーが競うように最後の直線に入る。
【さあここでフジミエンペラーがドバイミレニアムに並んだがドバイミレニアムも加速する!】
ドバイミレニアムとフジミエンペラーの2頭が後方を突き放し、デッドヒートが繰り広げられる。
「(まだか、まだ来ないのか!?)」
加東がこのレースで警戒していたのはドバイミレニアムの逃げ切りではない。フジミキセキの直線における加速力である。
フジミキセキはたまたま逃げがハマったから逃げ馬になっただけの自在脚質の競走馬である。つまり追込でも一等級の力量を持ち合わせている。
そしてフジミキセキが大外からドバイミレニアムとフジミエンペラーを差しに来た。
「(来たっ! 来たっ! だがこらえろっ! 堪えてタイミングを測るんだ!)」
加東がこれほどまでにタイミングに拘る理由はフジミキセキの弱点を見つけたからだ。フジミキセキの弱点は再加速する瞬間にほんの僅かに失速する悪癖がある。加東も当初は失速する悪癖は再加速した後と比較して相対的に失速しただけかのように思っていたが時計を見る限り相対的ではなく失速するものであったと確信に至った。その失速の瞬間に加速することこそがフジミキセキに勝つ勝利の方程式であった。
「(今っ!)」
そしてフジミキセキが失速したと同時にフジミエンペラーが加速し、ドバイミレニアムを差した。
【フジミエンペラーが半馬身抜けてリード、そして2番手にドバイミレニアムとフジミキセキ!】
「(流石加東さん、美亜やお義父さんの馬に騎乗しまくっただけあっていいタイミングでやってくれる。だけど、それだと……)」
【しかしドバイミレニアムとフジミキセキが更に加速し捉えたか!?】
フジミエンペラーが失速しドバイミレニアムとフジミキセキに差され、3番手に下がり、加東の表情が曇る。
フジミキセキの弱点は再加速する瞬間に失速することでありそのタイミングを加東は熟知していた。タイミングだけで言えば最高のタイミングであった。しかしドバイミレニアムが作り出したハイペースにフジミエンペラーがついて来れなかった。フジミキセキに勝つということだけを重視し過ぎたが故の結果である。
残り100mを切り、ドバイミレニアムとフジミキセキの一騎討ちとなった。
「(差せっ、差し切れっ!)」
創也の心の声に応えるかの如くフジミキセキが差しにいくがドバイミレニアムも加速しフジミキセキに抜かせない。そしてドバイミレニアムとフジミキセキの一騎討ちムードが延々と続くかと思われた。
骨が軋み、割れる音が創也の耳に響いた。
そしてそれと同時にフジミキセキとドバイミレニアムが失速し、いつの間にか3番手に躍り出たティズナウがフジミキセキ達と並び差す。
──抜かせないっ! 絶対に負ける訳にはいかない!
「(……っ!!)」
しかしフジミキセキが最後の最後に力を振り絞り、そのままゴールした。
【フジミキセキか、ドバイミレニアムか、あるいはティズナウか!? さあ誰だ!?】
「(着順なんて気にしている場合じゃねえっ!)」
差し返した感覚すらも忘却した創也が下馬すると共にフジミキセキの脚を触ると創也の表情が曇る。
「馬運車を呼んでくれ! 今すぐフジミキセキを病院に連れて行ってくれ!」
そう大声で叫び、すぐさま駆けつけるとフジミキセキが病院に運ばれていく。その後フジミキセキは右前脚を骨折していたことが判明したものの綺麗に骨折していたこともあり一命を取り留めた。骨折による代償は大きく翌年種牡馬入りするものの種牡馬活動が遅れてしまい、種付けした数は3頭という有り様で、翌年も種付けが上手くいかず数年間は年度に10頭以下というものであった。
しかし2000年代後半になると次第に回復し種付け数もそれに比例し、GⅠ馬を多数輩出するようになり2016年には欧州三冠馬サードミステリアスを輩出しサイアーラインを繋げることに成功した。
そしてフジミキセキと互角に渡り合ったドバイミレニアムも無事には済まなかった。ドバイミレニアムの脚は直線で既に屈腱炎により炎症を起こしていた。最後の最後で失速した理由はドバイミレニアムの脚が炎症により限界を迎えていたからであった。
ドバイミレニアムが屈腱炎、勝者であるフジミキセキが骨折により引退を表明。他フジミエンペラー等の競走馬も多数引退を表明し、このレースは最も競走馬を引退に追いやったレースとして知られるようになった。
またドバイミレニアム、フジミキセキ、フジミエンペラーがサイアーラインを繋げただけでなく子孫繁栄をすることになるのはまた別の話である。
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