≫もう終わりだからとヤケクソになって書いたら泥沼になりかけたが書けたので今回の更新で記載する。
≫かといってこの話はWikiではない。悪ふざけはしているのでかなり批判も集めるし評価も落とすだろう。それでもどうしてああなったのかの補足説明くらいにはなる
時は流れ、2016年の夏。KGⅥ&QESをサードミステリアスが勝利した月城厩舎に美亜、星崎、そして創也と旭川の四名が集合していた。
「お待たせ致しました。皆様にお集まり頂いたのは他でもありません。競走馬を擬人化したコンテンツ──ウマ娘についてです」
彼らが集合した理由、それはウマ娘なる競走馬擬人化コンテンツについての詳細を担当者から話を聞く為であった。
「娘? 娘がいるということは息子もいるのかい?」
旭川がそう質問すると担当者が首を横に振り否定した。
「いえいません」
「じゃあ牝馬を擬人化するのか?」
「牝馬だけじゃなく牡馬も女の子になるんです」
「はぁ? なんだそりゃ?」
旭川が困惑する中、担当者は淡々と説明を続ける。
「まあまずはキャラクターをご覧ください」
担当からタブレット端末を受け取り表示されたウマ娘のキャラを眺めると全員困惑した表情を浮かべるが、星崎はすぐに理解し笑みを浮かべる。
「なるほどなるほど、そういうことか」
「何がそう言うことなんですか?」
「おそらくだが、この黒髪の女の子はナインティギアの擬人化だろう?」
「よくわかりましたね、流石です! そしてその両隣にいるのがサードプレジデント、クラフトボーイです」
「……は?」
旭川だけでなく美亜、創也も困惑し、そのイラストを二度見する。
「サードプレジデントはなんていうかもっと筋肉質で大柄というか、体格がパーフェクトというか……女の子にするとこれじゃない感がある」
創也がそう呟くと担当者が笑みを浮かべる。
「ご指摘はごもっともです、しかしそこはこのコンテンツの見せ場なので」
「星崎社長、どういうことなんですか?」
担当者の話を理解できない旭川が星崎にそう尋ねると答えた。
「つまりだ、このウマ娘というのは競走馬を人間に限りなく近い女の子にした姿なんだ。我々馬主や競馬に触れている人間は競走馬が走る姿を見るのが楽しいと思うが一般人はそうじゃない。一般人、特に男性は可愛らしい女の子が一生懸命走る姿の方が目に保養だろう?」
この中で二番目に歳を重ねた星崎がウマ娘について理解出来た理由は2つある。一つ目は純粋に携帯会社の社長でありそういったゲームコンテンツに理解があったこと、もう一つが星崎自身が一つの会社の大企業と呼べるまでに成長させたこの頭の回転の良さにあった。
「サイテーションの種牡馬成績もサイテーですがお父様の発想もサイテー」
しかしそれを好意的に受け止められない美亜がジト目で見つめると慌てて弁解する。
「サイテーションの種牡馬成績はそこまで酷くないだろう! と、とにかくだ! そういう需要もしっかり受け入れ、それを反映したのがこのウマ娘というわけだ」
ちなみにサイテーションはベルモントS馬などを輩出しており、日本で失敗したラムタラやサンシャインフォーエヴァー、ジャッジアンジェルーチ、そしてピルサドスキーよりも成功しているので一概に最低とは言えないだろう。
「ようやく理解出来ましたが、別に擬人化するなら競走馬の性別通りの性別でも良かったと思うんだが」
「それは確かに私も疑問に思っていた。女の子同士だと百合の花が咲いて喚き散らす輩もいるが、元の性別通りならカップリングも出来る」
旭川と星崎の指摘は的を射ていた。競走馬の性別通りならそのカップリングが出来るし、それを妄想するファンも現れる。その方がより活動的になれるのではないかと言う指摘であった。
「現実の世界で考えてください、陸上で違う性別の方が一緒に走りますか? それに牡馬モチーフのウマ息子が牝馬モチーフのウマ娘にタックルして怪我なんて負わせたら大問題な訳です」
「まあ確かにそれはそうだ」
「逆の例*1もありますけどね。それを擬人化したら女性が男性を吹き飛ばすことになるのでそれはそれで問題になりますが」
「とまあ様々な観点から考えた結果、ウマ息子はなくウマ娘のみでプロジェクトを進めていこうということになりました。それで馬主の御二人には馬名使用の許可を、そして調教師の御二人には関わりのあった馬がどんな性格をしていたのかなどのインタビューの許可をしようと思いまして」
「なるほどなるほど。よくわかったよ。私はOKだ。美亜、お前は?」
「勿論構いませんよ。でも今のままでは駄目ですね。私が所有する、あるいはしていた競走馬で有名どころは大体夫や旭川先生に関わりがありますのでその言葉を参照に作り直すようお願いできますか?」
「ええ、わかりました。もとよりそのつもりで来ましたから。今回見せたウマ娘はあくまでもサンプルですよ。月城先生が仰ったようにまだ不完全ですからね」
担当者のその言葉に創也と美亜が顔を見合わせる。
創也は何か言いたげであったが、それに気づかず担当者は説明を続ける。
それから数時間後、創也達と担当者が酒を飲み始めグダグダになり始める。
「月城さん、サードプレジデントのウマ娘の姿をどう思います?」
「そうですね。見た目は悪くないと思うんですが……違和感がありますね。サードプレジデントはバックパサーの馬体にシルキーサリヴァンの毛色と末脚、セクレタリアトの身体能力が悪魔合体して出来たような競走馬ですから、もう少し髪色は赤く──いやもう真っ赤に染めましょう。身長とかのプロフィールも盛りましょう」
「もういっそのこと盛りまくって収拾がつかないようにしますか?」
「いいね。でも擬人化コンテンツということも踏まえて美人であることは前提として、そうだ。元々月夜牧場は零細牧場でしたからお嬢様キャラの貧乏人という設定はどうでしょうか?」
「やりましょやりましょ!」
普段なら切り捨てる提案だが担当者が創也に押され、メモしていく。当初の設定はサードプレジデントの末脚の如き速さで消えていった。
「んで更にな、ナインティギアはな、レース嫌いなことを除けば常識人かつ苦労人ってのはどうです? 体もサードと逆でちんちくりんにするのもありですし」
ここにウマ娘のナインティギアがいたら助走つけてぶん殴っていたであろう提案をし、悪ノリが続く。
「じゃあこんなモデルみたいなナインティギアはなしですね!」
ナインティギアの案にペケをし、ダメ出しをする担当者。この時点でストッパーである星崎親子、そして旭川はすでに酔いつぶれていた。
「あ、真木さん、今思いついたんだけどさ、ウマ娘を育てるのってトレーナーって職業であっていやすか? そのトレーナーとサードが幼なじみってのはど? 私と妻も幼なじみで片やアスリート、もう片や支援者という立場ですしな」
「ああ〜、採用です! そういうエピソードはコアなファンに人気が出ますからね! じゃんじゃんゲロっちゃって下さい!」
「私と妻が出会ったのはですね、小学生に入る前の頃なんですよ。そん時に馬に囲まれて困っているのを助けたのが私なんです。それから交流していって、仲良くなって──現在に至る訳です」
「なるほど、なるほど! 詳しく!」
「いやぁ酔っ払っているとはいえこれ以上話したらそこで寝ている妻に怒られてしまいますから、妻に許可取ってからにしましょ。許可とらなかったらサードプレジデントのウマ娘化もなくなりますからね」
「あら~、残念です。そうしますか」
「さてとそれはさておき、真木さん。ナインティギアとクラフトボーイのトレーナーが別につく場合はこんな感じで」
そう言って書きなぐったものを渡すと担当者──真木が頷く。
「そう言えばフジミキセキとかコンコルドオフィスとか、マスターブレイクはどうします?」
「フジミキセキとかフジミとつく競走馬は基本的に名家で良いと思いますよ。基本的に大人しいのが多かったですし本物のお坊ちゃまとかお嬢様みたいな感じでも割と解釈違いにならないと思います。コンコルドオフィスについてはサードプレジデントの再来とか言われていますがなんていうか力強さを感じなかったですし、世間では評価は高くても自身や身内の評価は低い努力家。マスターブレイクは素質のみならトップクラスの怠け者の不良でいいと思います」
「マスターブレイクに関してはナインティギアと被りませんか?」
「そもそもナインティギアの息子ですしね、そこは真木さんの見せ所って奴ですよ。ほらレースに関心があるとかそういったところで差別化をするべきです」
「なるほど、ではこんな感じで!」
そんなグダグダを何度も繰り返し、更に数時間後、深夜となる。
「いやはや何から何までありがとうございます!」
「いいってことですよ、真木さん。さ、もう一杯どうぞ」
こうして悪ノリした大人2人によってサードプレジデントとナインティギアのプロフィールが大きく変わりお偉方から怒られたものの、キャラが濃いという理由で採用されることになった。また勝手にプロフィールを変えて激怒した美亜の要望からサードプレジデントがアプリ内で常に環境に位置するようになったのは社内の秘密であった。
「全くもう! 少しは反省して下さい!」
改訂されたプロフィールを見た美亜と星崎が創也を正座させ厩舎の事務所で反省会を行っていた
「それは、まあなんというか反省はしているぞ。ただ二人共それらしい性格になるようにしているから大丈夫だって」
「まあ創也君がそういうなら大丈夫だとは思うが、いくら私でも怒らせると怖いよ?」
「わかっていますよお義父さん。ナインティの場合は気性難をレース嫌いで表現するだけに留めてマイルドにしているんですよ。そうでないとウマ娘プリティーダービーからウマ娘バイオレンスダービーになりますからね」
星崎がナインティギアがやってきた所業を思い出し、溜息を吐いた。ナインティギアは競走馬時代は気性難とレース嫌いを合わせ、その性格が災いして様々な問題を起こしていた。しかし擬人化したことによって性格をマイルドにし、バイオレンス要素を無くすことに成功した。ただしウマ娘のナインティギアに苦労人というポジションが定着したのは確実である。
「ナインティギアの苦労人という性格はまあ良いとして、クラフトボーイの方はどうなんだ?」
「クラフトボーイは……そうですね。人懐っこさを全面に押し出して多数のウマ娘と交流があるということにしました」
「コミュ強キャラという訳だな。まあクラフトボーイの性格的にも間違いではないし、多数の馬に慕われていたのも事実だ。これで百合の花を乱れ咲きさせる女たらしなキャラにしようとか言っていたらなんとしてでも止めたが」
「お義父さん、そんな事になったらウマ娘プリティーダービーからウマ娘ユリティーダービーになってしまいます。いくら酒に酔ったとはいえそこら辺の区別はつきますよ」
「確かにそうだな。他にも変なことをしていないだろうね?」
「まだまだ原案の段階ですよ。関係者に話を聞いて仕上げる段階なのでもう少し時間がかかるかと」
「美亜、あまりにも変な女の子だったらお前も文句を言いなさい」
「承知しています。とはいえある条件をつけてある程度は自由にさせていますからお父様が文句を言うことが多くなると思います」
「そうさせて貰おうか」
それから星崎は真木と修正案を確認に向かった。
「星崎社長、ナインティギアの何が駄目なのでしょうか?」
「ウマ娘のナインティギアの母とサードプレジデントの母は別にして貰いたいということだ」
星崎が通そうとした案は到底受け入れられるものではなかった。競走馬のナインティギアはサードプレジデントとは種違いの兄弟であり、その要素をウマ娘にも引き継いで貰いたいというものであった。しかしそれは真木を納得させる理由とはならなかった。何故ならウマ娘は全年齢向けのコンテンツを目標にしておりそれを腹違いの姉妹などという生臭い設定を盛り込むのは気が引けたのだ。
「サードプレジデントとナインティギアを同じ両親から生まれた姉妹にすると何か問題あるのでしょうか?」
「ある。サードプレジデントにコンプレックスを持つ形にするには同じ両親では駄目だし、いささか無理がある」
「しかし同じ両親でも能力の違う兄弟は現実にいます! 全年齢向けにする為にも母親を別にして無理して説明するよりも同じ両親の方がいいんてす」
星崎の指摘は理解こそしていたが真木は反論する。しかしそれを読み越したように星崎は反論する。
「確かにクラフトボーイと同じ兄弟なら引き下がっただろう。しかしサードプレジデントはセクレタリアト産駒で和製ビッグレッドの異名もある。そんなサードプレジデントが擬人化したら母親はどんなウマ娘になると思う? まさかアンバーシャダイをモチーフにしたウマ娘にする訳にはいかないだろう」
「それは、その……」
「結局のところ矛盾が起きてしまう。それは私も承知の上だ。しかしサードプレジデントとナインティギアを同じ両親から生まれた兄妹にするとどうしても無理が出てくる。だから妥協案で折り合いをつけたいのだ」
星崎のその言葉に真木は黙りこくってしまった。そして沈黙が続いた後、真木が重い口を開く。
「星崎社長、貴方の言うことも一理あります。上層部の人間をどうにかして説得してみせます。それで説得出来なかったら星崎社長、本社に掛け合って下さい」
「わかった。こちらも無理を言ってすまなかったな」
星崎は真木に頭を下げ、その場を後にした。
後日、サードプレジデントとナインティギアのプロフィールが大幅に変わっていた。理由としては真木が自らの進退を懸けて説得したこと、そしてその影に星崎の姿があったからであった。
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尚、次回更新は明日0時です