≫よくある完結詐欺……かと思ったか?とりあえず【89式ビッグレッド】についてはこれで完結です。これ以上書くとしたらコンコルドオフィスとかその辺になるし、そのプロットすら出来ていないので月一更新は取りやめます
・次に更新する小説は?
≫原作H×Hか、原作ゼロ魔か、原作東方の二次創作のいずれか。原作ダ大は今年中に終わらせる。ちなみに日間ランキングに入ったこともある原作NARUTOの小説は黒歴史なので二度と更新しない
≫もし更新して欲しいものがあったらメッセージボックスまで送って欲しい。感想には送るなよ!振りじゃないぞ!
2018年年末。月夜牧場にて一人の男が倒れ、危篤状態となり緊急搬送され入院することになった。
「お義父様……」
「場長……」
その男は創也の父であり月夜牧場の場長でもあった。そしてその痛ましい姿を悲しげに見つめるのは星崎親子であった。
「う……」
「お義父様!」
「場長!」
「ここは、そうか私は、倒れたのか」
自分の状況を整理しながら理解する場長。二人にそう尋ねると頷いた。
「はい。お義父様、体調の方は宜しいんですか?」
「呂律ガ回ら、ないだけで後は平気れす。美亜さん、社長」
「いや良かった場長。これで死んだら創也君に何と言えばいいのやら悩んでいました」
「それ、よりも美亜さん、社長、紙とペンは、ありますか?」
「ここに」
美亜が筆ペンと紙を取り出し、場長に渡すと場長が拙い文章でありながらも丁寧に書き上げていく。
「よし、出来た……」
「お義父様、無理をなさらないで下さい」
「まさかそれは遺言状では?」
「その通りです。倅は、創也は、私が倒れたと聞いたらどんな行動をすると思いますか?」
「それはやはり牧場に戻るのでは?」
「美亜さん、正解だ。御二人方、創也は過程はどうあれ私の背中を見て育ってきた。サードプレジデントに出会ってから騎手を志し、そして調教師にもなり世界的に活躍する有名人となりました」
「ええ、私のサードミステリアスとお父様のインパクトブレスを預けた際に活躍したのは記憶に新しいです」
「創也は騎手としても調教師としても優秀ですが、それ以上に場長としての素養があります。実際ここ数年の配合はあいつに任せていました。私がやったことは馴致くらいのものです」
「それで場長、一体何が言いたいんだ?」
「美亜さん、社長。私が眠っている間に創也は何としてでも場長になろうとするでしょう。それを阻止して貰いたいんです」
「なっ……!? 正気か!?」
「そうですよお義父様! それに貴方が申し上げたように場長としての素質があるなら早めに就任させた方が宜しいのではないでしょうか!?」
星崎親子が場長の意見に猛反対すると場長が首を横に振る。
「そう言うわけにもいかんのです。引き継ぎ要員の大樹*1に牧場のノウハウを教えていますが父の創也には及ばない上に大也*2は騎手課程途中、美紀に至っては創也の専属の騎手です。昔や任侠の世界であれば子は親の為に尽くすのでしょうが、今は親は子の為に尽くすというのは当たり前のことでしょう?」
「上の二人については理解出来ましたが、大樹が夫に及ばないなら尚更戻った方がよろしいのでは?」
「その点ですが、今のまま引き継がせたら創也も大樹も混乱するでしょう。創也のやり方と大樹に指導しているやり方は違いますからね。しかし大樹に教えたやり方は大樹自身が身につけていない。だから最低でも一年、出来れば二年は創也を場長に迎え入れるのは止めて貰いたいんです」
「そう言うことですか……もし断れば?」
「ご想像にお任せしマス」
脅迫染みた言葉に絶句する美亜達。そこでふと星崎が思いついた。
「(遺言状をなかったことにすれば良いのでは?)」
倫理観もクソもない思考だが強ち間違いではない。そのようにすれば創也の自由は守られるし、何よりも牧場は創也によって引き継がれる。倫理観というものを無視すれば最善のようにしか思えなかった。
「社長、遺言をなかったことにしようとしても無駄です。もう既に弁護士にはこれと同じような内容の遺言状を渡していますし、そのように手続きは済んでいます」
「(エスパーかお前は!?)」
流石の星崎と言えども場長の行動力に絶句する。自分が倒れたことを予測していたとするならとんでもない予知能力の持ち主である。
「まあ、そう言う、ことなんでよろしくお願いします」
再び眠りにつき、美亜が口を開いた。
「お父様、私は覚悟が決まりました」
美亜が決意の言葉を出し星崎に告げると星崎の表情が曇る。
「いいのか? お前達の仲が悪くなるのは目に見えている。お前達の幸せを願うなら私一人を悪役にするだけで十分だと思う。このことを見なかったことにしても良いんだぞ?」
星崎の言う通り創也を牧場長として迎え入れなければ創也と対立することになる。その役割は星崎のみにすることも可能であり美亜は基本的に不干渉、あるいは創也の精神的な支えとなり味方になることも可能だ。しかし美亜はそのように行動しなかった。
「一時的に仲が悪くなるでしょう。しかしお義父様が他の遺言状に何を書いたかまでは私達が知る由もありません。私達の行動次第では私達は当然、子供達や夫にも不利益となります。それにこうなったことを予測している以上仲が悪くなった時のフォローをしているはずです」
美亜が創也の精神的な支えにならなかったのは創也の父である場長を信じているからであり、下手に創也の味方になるように行動すれば夫である創也と本当に別れることになる。美亜としてはそれだけは何としてでも避けたかった。
「頭痛がしてくるな、この問題は……」
「一か八かの大博打、私はお義父様──月城場長のお言葉に従います」
「よし、わかった。私も腹を括ろう。美亜、いざという時は私を犠牲にして和解するんだぞ」
「お父様、それでは私の覚悟を踏み躙る気ですか?」
「……お前の気の強さには参るな。そこまで言うなら茨が敷かれた修羅の道に行こうか」
こうして星崎親子は創也に牧場を継がせまいとありとあらゆる工作をする。例え自分達が悪となろうと構わなかった。それをすることで今まで世話になってきた月城場長への恩返しでもあり、創也や美亜の子供達の為でもあった。
だがしかし10月に創也の父が亡くなり、星崎親子や月城場長にとって大きな誤算が起きてしまった。
「貴方、いますか?」
閑古鳥が鳴く月城厩舎に美亜が創也を尋ねると誰も返事をせず首を傾げる。美亜が訪れた時間帯は必ずと言っていいほど創也がいる時間帯であり、返事が必ず返ってくるはずである。それが何も起きず美亜は違和感を感じていた
「入りますよ、貴方──っ!?」
美紀がそう言いながら入ると独特の冷たい空気を感じ取り、冷や汗を流す。
「貴方、創也さん!」
取り乱したように創也を探すと事務所にはどこにもおらず、馬房へと向かう。そこはかつて旭川厩舎だった頃にサードプレジデントやフジミキセキ、コンコルドオフィスがいた馬房であり、月城厩舎時代はインパクトブレス、サードミステリアスが滞在していた馬房であった。
その馬房に首を吊っている創也の姿があった。
「貴方、しっかりして! 今救急車呼ぶから!」
すぐさま美亜はそれを外し、創也を見ると首が筋肉で覆われるほどに太かったことなどが幸いしていたのか気絶だけで済んでおり呼吸も正常そのものであった。
「ここ、は?」
「貴方、目を覚ましましたか?」
「……何故貴女がここにいる?」
嫌悪感を露骨に出す創也に美亜が笑いかける。
「貴方が首を吊っているところを偶然見つけて救急車を呼びました」
「……それで?」
「貴方、何故あんなことをしたのか教えて下さい」
「貴女には関係ないことだ」
「関係ならあります! 貴方は私の夫なのですから!」
「なら何故年始の時に調教師を辞めさせてくれなかったんだ!」
「それは──」
「それは、所有権が私に移ったからだ」
その言葉と共に星崎が現れそう告げると創也も美亜を目を丸くし、驚愕していた。
「お父様……?」
それは美亜に対しての裏切りだった。創也を傷つける立場は美亜も星崎も変わらない。だがこの場において美亜は創也を見捨てることは出来ず、見捨てようとしても大根役者のような演技になってしまう。星崎はそれを見抜いて悪役を演じようとしていた。
「創也君、あの牧場は高値で売れる。長年をかけて場長を騙したかいがあったと思うほどにね」
「まさか、その為に美亜と私を結婚させたと言うのか?」
「口が過ぎるよ。まあ概ねその通りだ。美亜と創也君を結婚させることで場長との距離が縮まった。信頼をかけて私にあの牧場を譲るように進言したら快く引き受けてくれたよ」
創也は怒りに震えた。その怒りをぶつけるかのように星崎の胸倉を掴むと睨み付けた。
「何故だ? 何故そんなことをした!」
「あの牧場は金になる。それも数千億単位だ。その金を無視するほど私も愚かではない」
「そんな話を聞きたいんじゃない! 何故美亜を巻き込んだ!」
星崎はそんな創也の手を振り払う。その目は冷たく、冷酷な目をしていた。
「君は勝負師だろう? なら交渉の席に着くべきだ」
「話し合いなどする気もない癖に何を言う!」
「まあそれはそうだ。決着は裁判でつけよう。君のお父上の遺言書はいくつかあるがこれが最新の遺言状のコピーだ。本物は私の弁護士に預けている」
「何……?」
創也はその中身を見ると確かに【月夜牧場の所有者を星崎兼好に譲る】と記載されていた。
「これが最新の遺言状のコピーだというのか?」
「間違いなくね。死亡時刻は21時46分。この原書はその約3時間前に書かれたものだ」
「そう、か……」
創也は頭を下げた。創也とて財産分与の優先順位を知らない訳でない。第1に遺言状、それがなければ親族による分担となる。今回の場合は遺言状があったのでそちらが優先される。しかもその遺言状は新しいものほど優先順位が高くなるというものである。死亡3時間前に記載されていたのならそれよりも後に記載されることはないとわかってしまったが故の絶望だった。
「では創也君、実家にある荷物をまとめたまえよ」
そう言いながら星崎が退室し、二人っきりになると創也が口を開いた。
「美亜、お前はなんで調教師を辞めさせてくれなかったんだ?」
その瞬間、美亜は迷った。美亜は星崎に「いざという時は父である私を犠牲にして和解するように」と言われている。しかしその時は否定し、一蓮托生のつもりでいた。
だが美亜は創也が自殺未遂しているのを間近で目撃してしまい、後悔してしまった。その結果創也の事を心配するような仕草をしてしまっただけでなく星崎の言葉に何も口を挟めずに沈黙を貫いてしまい成り行きで創也の味方とも敵とも言えない微妙な立場になってしまった。美亜はそんな自分の情けなさに腹を立て、握りこぶしを作っていた。それを見かねた創也が優しく声をかける。
「もう良い。俺はどうせ場長にはなれないし、聞く必要性がないからな」
そう自虐する創也を見て美亜の心が痛んだ。本来ならこのような結果になるはずがなかった。数ヶ月後には創也を場長として迎え入れる予定だった。だが創也の父が亡くなってしまった事に対して創也の自殺未遂に繋がってしまった。
こうなってしまった原因を作り出した大元は創也の父だが、その一因は自分にもある。そう結論づけた美亜が口を開いた。
「貴方、まだ諦めるには早いわ」
「何だと?」
「私が貴方を調教師を続けさせた理由、それはお義父様の進言よ」
それから美亜は星崎が悪役を引き受けたこと以外包み隠さず全てを話した。
「じゃあお前はずっと俺の為に動いていたのか?」
「ええ、そうなるわ」
「そうか……」
美亜は一呼吸置いてから創也の目を見て話を続ける。
「……ごめんなさい、私は貴方を見捨てようとしたのよ!」
そんな美亜に創也は笑いかける。それは嘲笑でも苦笑でもない純粋な笑顔だった。
「美亜、ありがとうな」
その言葉に美亜は泣き出した。今までずっと嫌われていると思っていた相手に許して貰えたからだ。自分だって出来ることなら創也の味方でありたかったが、それを捨ててまで創也の未来を選んでしまった。本当に創也の為を思うのであれば創也の未来の為ではなく傍にいるべきだと美亜はようやく気付かされてしまった。
「お疲れ、美亜。お前はよく頑張った」
そう言って創也は美亜の頭を撫でる。その目は愛情に溢れており、この上なく優しかった。
「貴方……ごめんなさい……」
「もう良い、過ぎた事だしな」
「でも!」
「謝る必要はない」
創也がそう言うと美亜が抱きつき、創也の胸板に顔を埋める。
「その代わり美亜、教えてくれ。月夜牧場を取り戻す方法を」
「取り戻す方法、それは──」
美亜が創也にそれを説明し移動している頃、星崎は自宅へと戻って来ていた。するとそこには女性が一人待っていたかのようにそこに座っていた。
「それで? 悠木、話はついたのか?」
「ええ。ご指示の通りに」
悠木と呼ばれた女性は星崎の第2秘書であり、社内における星崎の頭脳とも言える女性であった。
「ならばよし。後は弁護士に全てを任せるだけだ」
「でもよろしいのですか? お嬢様や婿様に所有権を渡さないようにするなんて」
「あれは詰めが甘い。だから私がサポートする必要がある」
「サポート? どう言うことですか?」
「悠木、いや金。君が外国国籍のスパイだとわかっている。そして私に毒を仕掛け、病気にさせたこともね」
「なっ……!?」
星崎がそう言うと悠木の表情が一変し、敵意を剥き出しにする。
それは星崎に毒を盛った張本人であり、そしてそれを見抜かれているとは思わなかったからだ。そして同時に理解した。この男は全てを知っていると── それを裏付けるかのように星崎は続ける。
「まあ君が私に毒を仕掛けようがどうしようが関係ない。既に私の策略に嵌っているんだ」
「なに?」
「月夜牧場の所有権は私や会社にはない。何故ならあの遺言状は最新のものではない」
「!」
「つまり君が細工して弁護士に渡した遺言状に価値はないということだ。どんなに弁護士を騙せたとしてもな」
悠木が舌打ちをし、星崎を睨み付けると懐に忍ばせていた拳銃を構える。しかし星崎は微動だにせず悠木を見下していた。
仮にも大企業のトップであり、その身に危険が迫っても全く動じない胆力には感服するしかなかった。だがそれでもこの状況下では悠木の方が有利だった。
いざとなれば拳銃で撃ち殺すことも出来るからだ。
だがそれだけではない。ここで悠木の誤算が生じる。それは自分が不利だと感じている以上に星崎の罠に嵌っているということだ。
「もう私はね、長くない。皮肉にも君が盛ってくれた毒のお蔭で拳銃を突きつけられようとも動じなくなってしまったんだ」
「くそっ!」
サイレンサー付きの拳銃で星崎を撃つと星崎が吐血し、倒れ込む。
しかしそれでもなお星崎は笑っていた。
そして次の瞬間には悠木は取り押さえられていた。
その手際の良さはまさにプロそのもので、星崎の秘書として長年働いていた悠木ですら何が起こったのかわからないほどであった。
だが同時に理解した。自分は最初から罠に嵌められたのだと──
「さて、裏切り者は始末したし、寝るとしよう」
「社長、その前に病院へ!」
ボディガードの一人がそう進言するが星崎が首を横に振りそれを拒否する。
「必要ない。もう手遅れだ」
確かに悠木が仕込んでいた毒と銃撃により命の危機であるのは間違いない。しかし星崎は自らの命を以て娘夫婦達の未来を切り拓くことにしたのだ。それなら無駄に寿命を延ばすよりも安らかに眠りにつけた方が幸せだと星崎は考えていた。
そして星崎は目を閉じ、夢の中へと誘われていった。
その頃月夜牧場
「父さん、二人の祖父さんからの遺言状預かっているよ」
大樹が創也に遺言状を渡し、創也はそれを読み上げる。
【月夜牧場の所有権を我が息子月城創也に譲る】
【星崎兼好の所有する財産をすべて我が息子月城創也に譲渡する】
以上が月城場長からの最新の遺言であった。
創也は頭を抱え、大樹は笑いを堪えきれずにいた。
そして美亜もただ微笑むだけであった。
こうして月夜牧場騒動は一件落着した。
とはいえ実の父を失い、義理の父が寝たきりとなったことで創也の心の傷は完全に癒されることはなかった。ありとあらゆることが空回りし、次第に馬主から自殺未遂等の理由から休養するように進言されると月城厩舎はぺんぺん草も生えないくらい馬房が空き実質無人の厩舎となり、その翌年には調教師を引退し、創也は場長へと就任した。
そして時は流れ2024年、月夜牧場にある一人の老人が来訪した。
「久しぶりだな、ここに来るのも」
その男は昔を懐かしむように牧場を見つめていた。
「あの、もしかしてこちらに御用ですか?」
すると青年が老人に声をかける。その老人の正体は星崎兼好。かつて月夜牧場を狙う国々から自身の命を懸けて守った人物だった。
「まあ、そんなところです。時間を取らせてもらうことになるが場長のところまで案内して貰えるかい?」
「場長は今頃ナインティギア達の墓参りに行っていますよ」
「ナインティギアの墓参りか……いつまであいつは生きていたんだ?」
「丁度一年くらい前ですよ。大往生でした」
「一年前というと36歳!? 結構長生きしたな!?」
「秋古馬三冠馬としては最も長生きしましたよ。でもGⅠ馬としてもっと長生きしているのがウチの看板です」
「長生きしているのがウチの看板って……まだサードプレジデントは生きているのか!?」
「それはもう元気ですよ。現役の馬に引けを取るどころか現役の馬が負ける程度には元気です」
「もはやあいつはUMAだな……」
「ところでどうします? 牧場の中に入って見学でもしますか?」
「そういえば予約をしていたんだったな。受付をしよう」
「こちらです」
それから星崎は受付を終え牧場を見学するとサードプレジデントと触れ合う事になる。
「懐かしいなサードプレジデント」
──おっさん、あんた何年ぶりだ?
星崎とサードプレジデントは縁がなかった訳でない。むしろ他の馬主よりも縁はあった方であるし、サードプレジデントも創也や美亜ほどではないにせよ星崎に懐いていた。
──あんたの毛並みはまあ大丈夫だとしてだ、その身体にすり寄ったら倒れそうだからな。撫でてもいいぞ
サードプレジデントが体を寄せて星崎に撫でさせると星崎が驚きの声を上げる。
「本当にあの青年の言う事は間違いではないな」
サードプレジデントは競走馬どころか種牡馬すらも引退しており、既に38と言う年齢である。人間なら120歳前後の年齢でありながら現役の馬よりも毛並みは良く、体型も全く崩れていない。まるで今この場で仕上がってみせたかのような気すらしてくる程だ。
「(いくら寝たきりとはいえ80も過ぎていない私とは大違いだ。並外れたアスリートというのは老いても尚体型を保てるということか)」
星崎がそう感心しながらサードプレジデントを撫でるとサードプレジデントが突如別の方向を向いた。
──おっさん、相棒が来たようだ
サードプレジデントが見つめた方向を星崎が見るとそこには小柄な体格ながらも横に太くしかし無駄な脂肪を削り落とした筋肉の塊のような中年が現れる。
「は?」
その男性の顔を星崎は知っていた。しかしそれよりも下の部分は今までに見たことないものだった。
「おや、お義父さんお久しぶりです」
「え、創也君なのか?」
以前見た創也といえば痩せマッチョかその一段階上くらいの筋肉の持ち主でありこんなゴリラを小さくしたようなような体格の持ち主ではなかった。しかし今は小さいゴリラと言われても信じられるくらいには筋肉達磨そのものである。
「あれから鬱病克服の為に筋トレをしたらハマりましたからね。お蔭でベンチプレス200kg持てるようになりましたよ」
「200kgは凄いな……」
──おい相棒! 俺のことも構え!
サードプレジデントが星崎と創也の間に割り込み撫でるように交渉すると創也がすぐに対処する。
「はっはっはっゴメンゴメン。サード。お義父さん、せっかくですから美亜や美紀達と会いにいきますか?」
「そうだな」
撫で終えた創也が星崎を引率し、事務所へと向かう。そこにいたのは星崎の孫にあたる三姉弟だった。
「あ、お久しぶりですお祖父さま」
「祖父さま、久しぶり」
「祖父さん、寝たきり状態だったのに大丈夫なのか?」
三者三様とはまさにこのことだろうか。美紀、大也、大樹がそれぞれ星崎に対して接し方を変える。だがそれぞれ創也のように様変わりし過ぎた様子もなく良い意味で成長しているので星崎は安堵のため息をついた。
「母さんは、美亜はどうした?」
「今買い出し中」
「買い出し中? なんでそんなことを?」
「それはお世辞を貰うのが嬉しいからですよお父様」
買い出しから帰ってきた美亜が星崎に声をかけると星崎が再び唖然とする。
以前見かけた時には年相応よりも少し若い程度の女性であった。しかし今は違い、美紀の姉と見間違うほどの美魔女へと変貌しており、星崎の混乱は更に加速した。
「お世辞なんかじゃないって母さんの場合は」
「ふふ、大樹からもそう見えますか?」
大樹が母との再会を喜んでいるように振る舞うが星崎はやはり違和感の方が強かった。
それもそのはず、以前会った時と比べたら肌艶が良くなりすぎていた。まるで10年20年は若返ったかのような印象すら受ける。そして美亜が星崎に話しかける。
「さてお父様、何故偽名でアポを取ったんですか?」
美亜の色っぽい笑顔に星崎は息を呑んだ。それは若い頃の妻に余りにも似すぎて逆に違和感を覚えてしまうほどであった。
「こら、美亜。お義父さんにも事情があったんだろう。あんなことがあったんだから」
「それもそうですね」
「偽名で来訪すれば断られることもないのもあるが、少し驚かせようとしたのもある。とはいえ逆に驚いてしまったよ。心臓に悪い」
「お義父さん、俺はもう帰ります。美亜と積もる話もあるでしょうし」
「いや待て。君とも話がしたいんだ」
星崎が創也を引き止める。
そして美亜と創也は顔を見合わせる。
その二人の姿はまさに夫婦そのもので、星崎は改めて自分の選択に間違いはなかったのだと確信した。
このお話をお楽しみ頂けた、あるいはこの小説自体をお楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、ここすき、感想の方を宜しくお願いいたします。
また感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。
尚、次回更新はこれにて完結なのでありません。あるとしても未定です