89式和製ビッグレッド   作:ディア

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【悲報】ウマ娘回は明日無し
【朗報】次の更新は2話更新


ウマ娘4

 皐月賞当日、メイン課程を終えた創也がサードプレジデントの正式なメイントレーナーとなって初めてのレースとなる。

 

「創也様、今日はどんな指示を出しますの?」

 

「そうだねぇ、まずはキャロのレースに対する姿勢を確認しておきたいかな」

 

「あら、どういうことでしょう?」

 

「キャロは去年からずっと追込で走って来たけど、それがキャロのスタイルなのか?」

 

「私が追込なのはご存知の通り、相手のウマ娘が絶望する姿を目に焼き付けたいからですわ。なので逃げも先行も差しも全部やろうと思えばいけます」

 

「なるほどじゃあ、今回は様子見で追込でいこうか」

 

「様子見?」

 

「俺だってまだメイントレーナーになってから数週間しか経っていないんだ。ダービーまでにはキャロがどんな脚質でも走れるように出来ると思うけど今はそうじゃない。キャロのやって来たレースでストレスを発散するほうがいい」

 

「ふふ……それもそうですわね」

 

「まあトレーナーからしてみれば喧嘩売っているようなものだけど、サードプレジデントの存在そのものがURAに喧嘩売っているのと同じようなものだし、今更だよ」

 

「それでこそ創也様ですわ! それでは行きましょう!」

 

 サードプレジデントは今日も元気いっぱいである。

 

【さぁ始まりました! 本日の注目レース! クラシック三冠第1レース、皐月賞! このレースを制したウマ娘の将来は約束されたも同然! どのウマ娘が勝つのか!】

 

 実況の声と共に観客が盛り上がる中、サードプレジデントはゲートに入りスタートの合図を待つ。そして出遅れ、道中まで超スローペース、そしてそれからの急な加速からの52馬身差勝利。不良馬場であるにも関わらずレコード勝利を収める結果に終わる。

 

 

 

「創也様、どうでした?」

 

「いや、どうでしたと言われても……とりあえずおめでとう」

 

「ありがとうございます。それにしても、弥生賞といい今回の皐月賞といい皆様手加減していません?」

 

「いくらお前が貧乏で走れる環境が泥塗れの山しかなかったとはいえ、あの不良馬場をレコードで走れるお前がおかしいだけだぞキャロ」

 

「だから止めて下さいませ!」

 

 サードプレジデントが貧乏を暴露され顔を赤くし、創也の口を塞ぐ。

 

「ふふっ、仲睦まじくて結構ヨ」

 

「あ、貴女は!」

 

「久しぶりね、サードプレジデントに創也クン」

 

「お母様!」

 

 そこに現れたのはサードプレジデントの母親であった。

 

「どうしてここに!?」

 

「ワタシはただ、キャロの晴れ舞台を見に来ただけヨ」

 

「ここは出走ウマ娘の控室ですよ!」

 

「警備員さんにサイン上げたラ快く案内してくれたネ!」

 

「流石米国最強のウマ娘……ところであいつは?」

 

「あいつ? ああ彼女ならここの理事長に「感激! 不思議な運命を感じる!」って言われて連れてかれたヨ?」

 

「理事長ェ……」

 

「さて、そろそろ時間だシ。じゃあまた後でネ」

 

 そう言って彼女は立ち去った。

 

「全く、相変わらず自由なお方ですね……」

 

「でも悪い人じゃないだろう?」

 

「ええ、それはそうですが──」

 

 その時、創也のスマホが鳴った。

 

「もしもし?」

 

「もしもしトレーナーさん、私です、理事長秘書の駿川です」

 

 創也が電話に出ると、相手はトレセン学園の理事長秘書だった。

 

「たづなさん? どうかなさいましたか?」

 

「理事長がお呼びですので理事長室へ向かって下さい」

 

「わかりました、すぐに向かいます……申し訳ありませんがキャロをこちらのホテルに送迎してくれませんか?」

 

「了解ネ」

 

 

 

 

 

 トレセン学園理事長、秋川やよい。

 

 容姿はメッシュの入った栗色の長髪に、青色の瞳。そして何より特徴的なのは見た目が幼い子供であり、言動もウマ娘の為ならば私財を投げ売ってでも実行する行動力のある人物である。

 

 そんな彼女が秘書を通し創也に電話をかけ、理事長室に呼び出していた。

 

「歓迎! よくぞ来てくれた! 私が君を呼び出したのは他でもない、サードプレジデントについてだ」

 

 やよいに歓迎されると、早速サードプレジデントについて質問される。

 

「問答! まず聞きたいことがある。君がサードプレジデントのトレーナーになってくれるということで間違いないかね?」

 

「はい、サードプレジデントは私が見つけてきた名バです。私が責任を持って育てますよ」

 

「疑問! サードプレジデントを奪い取ったというのは事実なのか?」

 

「いいえ。本来であればサードプレジデントと付きっきりで担当する予定でしたがサードプレジデントの成長が早く、当時私はサブトレ資格しか持っていませんでした為に中継ぎのメイントレーナーとして前任者に任せていました。この事は前任者、サードプレジデント自身に確認して下さい」

 

「納得! 確かにその通りであるな。しかし、君はサードプレジデントの才能に気づいていたのではないか?」

 

「はい、彼女の才能には目をつけておりました。しかしそれを抜きにしてもいずれメイントレーナーになるつもりでした」

 

「驚愕! 君はそこまでの覚悟があったのか。だが、その君がなぜトレーナーになったのだ?」

 

「彼女の脚質を見て、他のウマ娘も見てみたいと思ったからです」

 

「納得! 君らしい理由だ。それで、君から見てサードプレジデントはどう見える」

 

「一言で言うなれば『天才』です。レースをするために産まれてきたようなウマ娘といって差し支えありません」

 

「歓喜! 君がそう言うのならそうなのであろう!」

 

「はい。ですが、まだ未完成です。完成させることが出来れば……最強にして最高のウマ娘が誕生します」

 

「期待! 君の手腕に大いに期待しているぞ! では疑問も晴れたことだし特に質問等なければ終わりにしよう!」

 

「では質問しますが、サードプレジデントの妹はどちらに? 理事長が連れていったとお伺いしましたが?」

 

「移動! 彼女は既に私のもとから離れ、母君のもとに向かったはずだ」

 

「ということはすれ違いか……」

 

「残念! まあ仕方あるまい。ではまた会おう!」

 

「はい、失礼致します」

 

 創也とやよいの会話が終わると、創也はすぐに理事長室から出ていった。

 

「キャロのもとにいこうか」

 

 創也は一足先にホテルに戻ると、そこにはサードプレジデント一家(本人、母親、妹)が勢ぞろいしていた。

 

 

 

「お待ちしていましたわ、創也様」

 

「やぁやぁ創也クン、待ってたヨ」

 

「お待ちしていました、創也の兄さん」

 

 3人は創也が入ってきたことに気づくと、一斉に創也の元へ駆け寄る。

 

「一体なんだこれは?」

 

「そりゃもちろんパーティーですわよ?」

 

「パンティじゃないわヨ? エッチなこね、ハハハッ!」

 

 くだらない親父ギャグを言うあたり既に酔っ払っている。

 

「早速ですが創也様がトレーナー活動して初めてのGⅠ競走勝利を祝って、乾杯!」

 

 サードプレジデントがグラスを掲げ、それにつられて創也たちもグラスを掲げ、パーティーが始まった。

 

「ところで、なんでこんなに豪華なんだ?」

 

 余りの豪華さに創也がそう尋ねると母親が答えた。

 

「それは当然ヨ? だってワタシの可愛い娘のお婿さんが初めてトレーナーとしてGⅠ競走を勝った記念すべき日だからネ!」

 

「キャロとは幼馴染ですが、婚約した訳じゃ……」

 

「母さんはそういうウマ娘だよ創也の兄さん。喧しく、節度がなく、マイペース、その上計画性がない。THE・テキトー。それがウチの母さんだし、何なら姉さんにもその傾向があるよ」

 

「なっ、私のどこに喧しさ、節度のなさ、マイペース、計画性のなさがありますの!?」

 

「派手な追込で喧しく、しかもいつどこで加速するかわからない節度のなさ、それまではノロノロと走るマイペース、そして加速で他のウマ娘以上に足に負担をかけさせる計画性のなさ」

 

「うぐぅ! 痛いところをついてきますわね! でも、あなただって欠点があるではありませんか! 私の妹何ですから!」

 

「母さんと血が繋がっていないから私はどちらかというとたらしの親父か母親似だよ。でも私はこの性格が気に入ってるし、むしろ誇りに思ってる。この性格のおかげで今こうして生きているわけでもあるし、姉さん達母娘を止めることも出来る」

 

「くっ……! 私より年下なのに随分大人びてますのねぇ……。でも、創也様に迷惑をかけてませんの?」

 

「安心しろ、サード。少なくともお前のストッパーとしてこいつは役に立っている」

 

「あ、あんまりですわ!」

 

 サードプレジデントが泣き崩れるが実際には泣き真似でチラチラと創也の様子を伺っており、その様子はまるでイタズラ好きの子供だった。

 

「俺はサード、君の走りに惚れ込んだ男だぞ? そんな俺が君に愛想尽かすなんてありえないだろ?」

 

「創也様ったらもう! そんな恥ずかしいセリフをよく言えますわね!」

 

 ポコポコと優しく殴り、照れ隠しをする。

 

「夫婦喧嘩は終わった? そんじゃ私は帰るよ」

 

「えぇ! もう帰るのぉ〜?」

 

「うん。明日から姉さん達はダービーに向けて対策を取らないといけないでしょ? それに部外者がいつまでもいるわけにはいかないし」

 

「んもー、生真面目サンなんだかラ! 私はまだまだいる──」

 

「母さんも帰るんですよ!」

 

「えぇ〜っ?」

 

「駄々をこねない! ほら早く立って片付けするよ!」

 

 妹は母親の腕を掴み無理やり立たせると、そのまま片付けさせズルズルと引きずっていく。

 

「それではまた会いましょう! 創也の兄さん!」

 

「またネ! 創也クン!」

 

 2人が手を振ると、創也が2人に手を振り返すとドアが閉まった。

 

 

 

「全く、立場逆転しているなあの母娘は……」

 

「あ、あの創也様」

 

「どうした? キャロ」

 

「お腹が空きましたわ……」

 

「そこに食べ物があるだろう。それを食べればいいじゃないか」

 

「創也様が食べさせて下さいませ」

 

「仕方のないヤツめ。ほら、あーん」

 

「ん、ふふふっ、美味しいですわ」

 

「そうか。じゃあそっちの料理もあるし自分で食べるといい」

 

「嫌ですわ。創也様が私に食べさせてください。創也様のトレーナーとしてのGⅠ勝利に貢献した愛バが所望しているんですよ?」

 

「甘えん坊め。まぁいいさ、今日くらいはな」

 

「創也様!」

 

「おい抱きつくなって!」

 

「創也様、大好きですわ♡」

 

「わかったから離れてくれ、他のトレーナーや職員に見つかったら面倒だ」

 

「それならいっそ、ここで既成事実を作ればよろしいかと思いますけど」

 

 創也を押し倒し、服を脱がせ顔を近づけ、互いの唇が直ぐ側まで迫る。

 

「創也の兄さん、ちょいと……」

 

 あと数センチで唇同士が触れ合う距離まで近づいたその時、部屋の扉が開かれた。

 

 そこには、先程帰ったはずの妹の姿があった。

 

「姉さん、創也さんのことが好きだからって手を出すのは良くないんじゃないかな?」

 

「ち、違います! これは、その、そう! スキンシップですわ」

 

「姉さん、正座」

 

「はいぃぃ……」

 

「そもそもトレーナーとウマ娘がいかがわしい関係になるとトレーナーの評判が悪くなるのわかっている? あのたらし親父も──」

 

 その後、妹によってサードプレジデントは説教をされ続け、終わる頃にはすっかり夜遅くになり、創也は別室で作業についてしまった。

 

「全く、なんで私がこんな目に遭わなければなりませんの……?」

 

「自業自得だよ姉さん。余計な所ばかり両親に似て……」

 

「あら、あなただって似たところありますのよ? その証拠に──」

 

「はいストップ。それ以上言ったら怒るからね?」

 

「うっ……、わかりましたわ」

 

「……姉さん、私は貴女のことは嫌いじゃないし母さんのことも嫌いじゃない。というかむしろ好きな方だ。そうでなければ姉さんや母さんなんて呼び方はしない」

 

「それがどうかしまして?」

 

「だから、その、私が怒っているのは姉さんや母さんに対する愛情表現なんだ」

 

 恥ずかしげに俯きながら言うと、サードプレジデントはクスッっと笑う。

 

「何笑ってんの姉さん!」

 

「ごめんなさい、まさかそんなことを言われるとは思わなかったものですからつい笑ってしまいましたわ」

 

「もう! 私は真剣なんだ。私の気持ちを茶化すようなこと言わないで欲しい!」

 

「えぇ、それはもう十分理解しておりますわ。でも、私だってあなたと同じことを考えてますわよ?」

 

「え……?」

 

「私と貴女は腹違いの姉妹ですが、血の繋がりなんて関係ないと思っていますわ。私は貴女の姉として、そして母親代わりのつもりで接していますわ」

 

「姉さん……」

 

「ですので、私は貴女の味方であり続けるつもりですよ? もし何かあったら相談してくださいね?」

 

「ありがとう……」

 

「ほら泣かないで。可愛い顔が台無しになってしまいますよ?」

 

 優しく抱きしめ、頭を撫でると泣き止み落ち着きを取り戻すと、2人は部屋を出ていくとそこには創也がいた。

 

「な、何故?」

 

「決まっているだろ? あれからお袋さんからまだ帰って来てないって連絡があってな。不安だったから俺がこっちに来てみたら案の定だったよ」

 

 呆れた様子で言うと、2人は申し訳なさそうな表情を浮かべた。すると創也は2人の頭の上にポンっと手を置く。突然の行動に2人が戸惑った様子を見せる。だが創也はそのまま続けた。

 

 まるで子供をあやすかの様に優しい口調で話す。その姿はまさに父親そのもの。2人の目には涙が浮かんでいた。しばらくそのままの状態でいると、やがて落ち着いたのかゆっくりと離れると、創也は微笑んだ。

 

 その笑顔に釣られて、姉妹もまた自然と口元が緩む。

 

「さて2人共、今日はもう遅い。親御さんには説明するから今日はホテルのベッドで寝るように」

 

「はて、ベッドはシングルベッドの筈……ということは私が創也様と一緒に寝れば──」

 

 言い終える前に妹がサードプレジデントを睨む。その眼光に圧倒された彼女は萎縮した様に黙り込んだ。

 

「俺はソファで寝るから気にすることはないさ。それじゃあまた明日な」

 

 2人にそう告げて別室へと戻る創也。こうしてサードプレジデントが皐月賞を獲った日を終えた。

 

 

 

「創也の兄さん、これからよろしく!」

 

 そしてその翌日、妹がトレセン学園に転入し、創也の担当ウマ娘の一人となった。




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尚、次回更新は明日0時です

番外編は何が見たいか

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  • ナインティギアとクラフトボーイの活躍
  • ウマ娘サードプレジデント転生者疑惑
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